「創風」全体の概要
創風とは?
創風は、経済産業省が主催し、読売広告社が事務局として実施するプロジェクト。国内外で活躍する意欲を持つ若手クリエイターの支援を目的としています。
採択されたクリエイターには、「制作費等の補助」や「メンターによるマーケティングや・スタジオ運営面のサポート」、「(各分野の業界関係者への)作品をプレゼンテーションする場の提供」といったサポートが提供されます。
また、採択者には最大500万円の補助金が支給され、申込者自身の人件費やグラフィクス・楽曲などの外注費を充てることができます。創風はパブリッシングを行うプログラムではないため、提供された補助金は売上などから返す必要がない資金となっています。
創風のスケジュールなど事業の概要は下記記事もご覧ください。
クリエイターの応募要件
クリエイターの分野共通の応募要件としては、個人もしくはチームであること、2024年4月1日時点で中学校を卒業しており、 35歳未満であること、日本国籍もしくは日本の永住資格を有していることなどが創風の公式サイト上で告知されていました。
説明会では上記に加え「会社員であるなど現在なんらかの公的・民間組織に従事している場合(組織に従事する応募者)は、所属組織からの了解を証明する承諾書を採択決定後の契約に際し提出する」ことや、「本事業への応募日時点で未成年(18歳未満)の場合、父母もしくは同等の親族等、保護者からの了解を証明する承諾書を面談審査の際に提出する」といった追加要件が述べられました。
追加要件の承諾書に関しては、「組織に従事する応募者」が採択決定(6⽉上旬)後の契約時に、「18歳未満の未成年」が面談審査時(5⽉下旬〜6⽉上旬)と提出時期が違うことに注意が必要です。
なお、未成年応募者の提出する承諾書、予算書や制作スケジュールなどのテンプレートフォーマットは、創風の公式サイトよりダウンロード可能です。
(画像は公募要項(3/28作成、バージョン1.1)より引用)
応募事業は、以下の条件を満たす必要があります。
<ゲーム分野の必要要件>
・PC(STEAM)・家庭⽤ゲーム機・XR機器・スマートフォン向けに、単体の有償販売を予定していること
・特定ゲームソフトやアプリ内のみで動作するゲーム、無料プレイ、アイテム課⾦制のゲームは対象外
・「デモ」または「バーティカルスライス(主要部分が確認できるデモゲーム)」を提出できること(企画書のみは不可)
・パブリッシャーと契約を交わしていないこと(交渉中は可)
・⼀週間あたり1〜3時間程度のトレーニング、講義およびメンターとの定例打合せに参加できること
・資⾦調達を⾏っておらず、他社と資本関係がないこと
・プログラム内の英語プレゼン(カンペ読み可)の訓練に参加できること(英語能⼒⾃体は不問)
・参加希望者およびチーム⾃ら、応募作品の著作権および知財を単独で保有していること
・チームメンバーに、プロググラマーまたはゲーム開発ツールを使った主な制作を担う作業者が含まれていること
<禁止事項>
・コンテンツの⼀般公開を⽬的としていないもの(私的な利⽤を⽬的とするもの)
・政治的または宗教的な宣伝意図を有するコンテンツ
・成⼈向け(性的な内容等)要素を有するコンテンツ
・差別的な要素を有するコンテンツ
・慈善事業への寄付を主な⽬的とするもの
・既に国⼜は地⽅公共団体、独⽴⾏政法⼈等からの補助⾦、助成⾦及び委託費等が⽀出されているもの(※)
※ クラウドファンディングによる資⾦調達や、⺠間事業者が拠出する基⾦事業による助成は上記に含まない
事業の完了要件は、2025年2月の最終成果発表会での成果物の発表です。この場合の成果物は、映像・映画部門ではパイロットフィルムや完成品等、ゲーム部門であれば試作品やプロトタイプ、バーティカルスライス、完成品等を指します。
期間内に作品を完成させる必要はありません。最終成果発表会で成果物を発表できないクリエイターは、本事業を完遂できなかったものとみなされ、受領済みのものも含めて補助⾦の全額を返さなければなりません。
チームで事業に取り組む場合は、チームリーダーが離脱したときに他のチームメンバーも「事業を完遂できなかった」とみなされるため注意が必要です。
その他、精算やクレジット表記などいくつか完了とみなされるための要件がありますので、詳細は公募要項(PDF)をご覧ください。
応募申請は創風の公式サイトの「応募はこちら」ボタンから可能です。申請には、クラウドストレージ上への企画書の提出、Google Formsでの応募者情報登録や、予算書・制作スケジュール・ポートフォリオなどの書類添付が必要です。
審査方法
採択する事業は書面による一次審査、面談による二次審査の後に外部審査委員会を経て決定します。
一次審査では、全企画書を対象に書面による審査が行われます。これは作品のクオリティやオリジナリティのほか、「提案内容が本事業の趣旨に適合しているか」「応募者の要件を満たしているか」についても確認しています。
二次審査では、一次審査を通過した応募者に対して面談が行われます。前述の通り、事業への応募日時点で未成年のクリエイターは、この時点で承諾書を提出する必要があります。
その後、外部審査委員会に諮問し採択案件を決定。Webサイトおよび応募者への個別連絡を通じ、採否が通知されます。
(画像は公募要項(3/28作成、バージョン1.1)より引用)
この他、補助対象費用の計上方法や採択後の対応についても説明がありました。こちらの詳細については公募要項(PDF)をご覧ください。
「創風」ゲーム部門
概要の説明後、映像・映画部門とゲーム部門に分かれてセッションが行われました。
ゲーム部門はiGi indie Game incubatorが担当。本記事では、ゲーム部門のセッションをレポートします。
「iGi indie Game incubator」とは?
iGi indie Game incubator(以下、iGi)とは、マーベラス主催のもと運営されている、インディーゲーム開発者向けのインキュベーションプログラム(※)です。
インディーゲーム開発者に対して開発面や、マーケティングや契約関連など、ビジネス面の専門家によるサポートを無償で提供しています。iGiは本年度で4年目を迎え、のべ22作品(22チーム)の支援を行っています。
※ 英語で卵の「ふ化」のこと。転じて、新しい事業に対する支援などをインキュベーションと呼ぶ
創風におけるiGiとは?
今回発表された創風において、iGiはゲーム分野の担当として実際のクリエイターサポートを担います。ゲーム分野における創風は、特にゲームを海外に売り出していきたい人に向けたアクセラレーションプログラム(後述)だと説明しています。
具体的には、iGiのプログラムの特徴である、ゲームクリエイターとして独立するために必要な知見の提供を含めた幅広いサポートを創風の採択者に対しても提供すること。その中でも、創風では特にビジネス面や、専門家とのネットワークを中心にサポートしていくという説明がありました。
ビジネス面では、実際の開発段階だけではなく、SNSの運用方法やゲームの販売、マーケティング方法のほか、パブリッシャーとの契約、ゲームにまつわる法務や税務などさまざまなノウハウを提供します。
また、こういったサポートは実際にインディーゲームの開発・販売に関わる専門家とともに行うため、今後ゲームを販売していくにあたっての専門家とのネットワーク構築も支援していくとのことです。
創風参加者の目標
創風 ゲーム部門における参加者の目標は、「作品を世界に届ける」こと。そのために、ゲームの販売元となるパブリッシャーとつながることは大きな目的の一つです。
ただし、「必ずパブリッシャーを経由して作品を販売しなくてはいけない」というわけではありません。契約成立も確約していないため、最終的な交渉はクリエイター自身が選んだパブリッシャーと行います。
作品を世界に届けるための具体的な目標(手段)として提示されたのは、バーティカルスライス(パブリッシャーからの契約を獲得するためのデモ版)を開発すること。直訳すると「縦に切ったもの」になりますが、例えるならばホールケーキを縦に切ったショートケーキは、上に乗ったイチゴやクリーム、断面のスポンジなど美味しそうなポイントを全て見せられます。
プログラム期間中に目標とするのは、この縦に切ったショートケーキのような作品の面白さが伝わるデモであり、完成作品ではありません。
メンタリングやセッションの形式
ゲーム部門で提供されるメンタリングやセッションは、大きく3種類に分かれます。
「レクチャー」は、今回採択されたゲーム部門の参加者全員が出席するものです。頻度は月に2回から4回を想定、1回60分の講義形式となっています。専門分野の知見や経験を共有する、専門家による講義です。
チーム別で行われる「メンタリング」は月2回行われ、1か月ごとに「担当メンター」と「月別メンター」に1回ずつ相談などを行います。「担当メンター」はプロジェクトを通してチームの開発全体を見るメンター、一方の「月別メンター」は、SNSの運用やローカライズなど、ピンポイントに質問できるメンターです。
「スプリントミーティング」もチーム別で、2024年の7月と10月、2025年2月の計3回行われます。こちらは、バルセロナの支援事業「GameBCN」協力のもと、開発の進捗管理・課題解決・計画更新を行います。
この3つは週に1時間から2時間ほどオンラインで実施されます。
プログラム内容とスケジュール
プログラムは、専属メンター(担当メンター)や個別メンター(月別メンター)、オーディット、デモデイなどのセッションで構成されます。開会式が行われる7月には稼働が多くなります。
「オーディット」では事業開始時に各チームの作品の強みや弱みを分析します。
「デモデイ」は開発者がパブリッシャーや投資家に対し短いプレゼンテーションを行うもので、事業の中間報告会も兼ねています。これは10月に行われます。
「iGi」と「創風」の比較
iGiが新たなビジネスを応援する「インキュベーション(ふ化)プログラム」であることに対し、創風では海外に向けたゲームの開発・販売にあたって加速させていく「アクセラレーション(加速)プログラム」であるという違いがあります。
そのため、iGiでは作品完成度の初期から中期、創風では中期から後期をサポート。
対象プラットフォームもiGiはPCに限られるのに対し、創風ではPC以外にもモバイル、XRなども対象となります。
応募に向けてのアドバイス
応募者に向けて、タイトルの要件の抜粋やアドバイスも行われました。
ゲームの動画や資料は、分かりやすく、ゲームならではの魅力が伝わることが重要です。これからプロトタイプに実装する内容や、クリエイター自身が実現していきたいことは、資料で明確に伝わるようにしましょう。
ゲーム分野における補助金が活用できる出費の例
創風は、採択者に対し最大500万円の補助金が提供されます。ゲーム分野における実際の補助金の活用例の詳細は事務局からの回答になるとしつつ、iGiから3点の事例が紹介されました。
まずは申し込んだクリエイター自身の人件費が計上できます。また、イラストレーターや3DCG制作者・楽曲制作者・声優などへの素材発注に利用できます。ほかにもUnity ProやAdobe CCなど、月額サブスクリプション形式のソフト契約などにも使用できます。
ただし、ソフトウェアに関しては、本事業採択時点からの新規契約に限定されること、事業期間中に支払った費用のみが対象になることに注意が必要です。事業終了とともにこちらの契約補助も終了するため、期間終了後の継続は自費となります。
詳細は、創風公式サイトや公募要項をご確認ください。
「創風」公式サイトプレスリリース(マーベラス)
ゲームのタイムアタックを中心に、ストリーミングサイト・Twitchで活動をしているストリーマー。ゲームイベントの紹介記事など、WEBメディアでの活動実績もあるが、繰り出されるダジャレのクオリティには賛否両論がある。
https://www.twitch.tv/serenade_yuuki