2024年3月7日、東京国際フォーラム・ホールD5にて東陽テクニカ主催セミナー「Perforce on Tour」が開催されました。「ゲーム・クリエイティブ業界の未来予想」と題された基調講演では、サイバーコネクトツー代表の松山 洋氏が登壇。ゲームやクリエイティブ業界の市場状況や将来性について語られた本講演をレポートします。
TEXT / じく
EDIT / 神山 大輝
目次
ゲーム業界は右肩上がりの成長産業。グローバル市場も拡大傾向
登壇したのは、福岡に本社を持つサイバーコネクトツー代表取締役の松山 洋氏。サイバーコネクトツーは家庭用ゲームソフトの企画・開発を柱に、アニメ・コミック・ノベルも手掛けてIP戦略を展開する開発会社で、松山氏はゲーム開発の総指揮を執るかたわら、漫画『チェイサーゲーム』などエンターテインメント領域で幅広く活動を続けています。
講演冒頭、松山氏は日本と世界のゲーム産業を語る上で前提となる基本的な情報を説明しました。日本国内のゲーム市場規模の推移は右肩上がりで、ゲーム業界は大きな成長市場であることが分かります。
海外市場との比較では、2022年の日本国内市場規模が2兆円である一方、世界全体のゲームコンテンツ市場は26兆8,005億円。売上ベースで比較すると、既に日本市場は1割にも満たない状態です。
少子化が進む日本国内の状況もあることから、サイバーコネクトツーでは20年前から開発体制を変更。現在では全世界同時発売を前提とした12言語のローカライズを行っています。
松山氏によれば、全世界のゲーム市場は2021年の21兆650億円から2030年には95兆3770億円になるという市場予測があるとのこと。「ゲーム市場は今後も右肩上がりで大きな成長が予測されている」と強調しました。
販売形態も変化。海外ではダウンロード販売が約9割を占める
ゲーム市場を語るもうひとつの重要なトピックとして、松山氏は販売形態の推移を挙げました。かつてゲームの流通は小売店によるパッケージ販売が主流でしたが、現在は日本国内で約7~8割、世界で約9割がダウンロード販売によるものとなっています。
日本国内においてパッケージ販売が根強く残っている点について、一例として「子どもがカードリッジの貸し借りをして遊ぶ」というプレイスタイルがあることが挙げられました。一方、世界のゲームプレイヤーは大人が大多数を占めており、ダウンロード販売による利便性を優先する傾向があります。
ダウンロード販売数の増加は家庭用ゲームだけでなく、コミック市場にも当てはまります。日本のコミック市場では約7割が電子コミック、約3割が紙コミックとなっています。かつては約2万軒あった書店が今では約1万軒と半減しています。残り約3割の紙コミックも、内訳は特定のいくつかの人気マンガが占めており、大多数のマンガはほとんど電子コミックとして販売されているのが実情です。
いずれにせよ、現代の子どもたちはデジタルネイティブ世代であり、ダウンロード&デジタル販売が大半を占めることになるだろうと松山氏は語りました。
ソフト単価と開発費用・期間の上昇
続けて、松山氏はゲームソフトの販売価格推移について紹介しました。例えば、家庭用ゲーム機PlayStationでは、ハード別ソフト平均価格はおよそ7年周期で代を重ねるごとに上昇しています。
この要因には、ハード機能が向上に応じてソフト開発規模が高騰したことが挙げられます。開発予算もかつては約5,000万円~1億円と言われていましたが、現在は10億円でも低予算とされるのが実情です。例えばRockstar Gamesの『グランド・セフト・オートV』は全世界で1億8,000万本以上の売上を記録しましたが、同作の開発費は約250億円と言われています。
開発費は開発期間の長さに比例しています。タイトルによって異なりますが、かつての開発期間は1タイトルあたり1年から1年半程度でした。しかし現在は3年以上かかるタイトルが一般的となっており、AAAタイトルと呼ばれる大規模開発では6~8年程度を要するケースも増加しています。
現在のゲーム市場は世界中のお客様の目が肥えた状態であり、中途半端な作品ではヒットせずに終わってしまうことも少なくありません。
小規模開発の台頭や新たなマネジメント職の登場
AAAタイトルを中心とした大規模タイトルが増えてきた一方、個人によるインディーゲームをはじめとした小規模開発の台頭もビジネスモデルの変化と言えます。
一例として、Nintendo Switch向けソフト『スイカゲーム』があります。もともとは開発会社のAladdin Xが展開するプロジェクター商品に収録されていたミニゲームですが、Nintendo Switch向けに配信したところ累計ダウンロード数が600万を突破する大ヒットとなりました。
小規模開発の台頭には、かつてはメーカーでなければ困難だったゲーム開発がゲームエンジンによって可能となったことが挙げられます。現在はアンリアルエンジンやUnityなど、機能が充実したゲームエンジンを個人が使えるようになり、以前に比べてゲーム開発のハードルが大幅に下がっています。
また、大規模開発をするゲームメーカーにも変化が生まれれており、数百人規模のゲーム開発においては「開発をマネジメントする人をマネジメントする」管理職が必要となってきました。業界や企業によって職種は異なりますが、例えばアニメ業界では制作進行の重要性が増しています。
開発スタッフが全力を出せるようにプロジェクトを円滑に回す人材の必要性が高まっており、プログラムやグラフィック、シナリオなどに直接携わらないプロジェクトマネジメント的視点も求められています。松山氏はこうした背景から、より多くの人材が活躍する業界として今後も拡大を続けていくであろうと予測。
松山氏は基調講演の結びとして「ゲーム市場の未来は明るく、ゲーム業界を目指す若者を育成する気も満々です。これから一緒に面白いことをやっていければと思います」と熱く語り、講演を締めくくりました。
ゲーム開発を支えるPerforce Software社のソリューション
3Dグラフィックスの生成に欠かせないアンリアルエンジンやUnityなどのゲームエンジンですが、そこから生み出される高精度で大容量なデータを管理することは容易ではありません。AAAタイトルを制作している世界のゲームスタジオTOP20のうち、19のスタジオが導入するPerforce Software社のバージョン管理ツール「Helix Core」はソースコードから、ペタバイト級のバイナリファイル、動画、3Dモデルまで、あらゆる種類のデータをひとつのリポジトリで管理可能。主要なゲームエンジンとの連携にも優れています。
また、エンジニア以外のクリエイター向けのアドオン「Helix DAM」や、プロジェクト管理ツール「Helix Plan」をはじめ、Perforce Software社ではゲーム開発の現場をトータルに支えるソリューションを各種提供しています。
Perforce社のゲーム開発ソリューションPerforce on Tourゲーム会社で16年間、マニュアル・コピー・シナリオとライター職を続けて現在フリーライターとして活動中。 ゲーム以外ではパチスロ・アニメ・麻雀などが好きで、パチスロでは他媒体でも記事を執筆しています。 SEO検定1級(全日本SEO協会)、日本語検定 準1級&2級(日本語検定委員会)、DTPエキスパート・マイスター(JAGAT)など。
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