2023年9月21日(木)から24日(日)の4日間、幕張メッセで開催されている『東京ゲームショウ 2023』。
展示されたゲームの中から、今回は「Black Salt Games」が開発するフィッシングアドベンチャー『DREDGE』を紹介します。加えて、Black Salt Gamesのプログラマー・シナリオライター Joel Mason氏とクリエイティブディレクター Alex Ritchie氏の両名に本作の起こりや開発の流れ、クトゥルフ要素を取り入れた理由などを聞きました。
2023年9月21日(木)から24日(日)の4日間、幕張メッセで開催されている『東京ゲームショウ 2023』。
展示されたゲームの中から、今回は「Black Salt Games」が開発するフィッシングアドベンチャー『DREDGE』を紹介します。加えて、Black Salt Gamesのプログラマー・シナリオライター Joel Mason氏とクリエイティブディレクター Alex Ritchie氏の両名に本作の起こりや開発の流れ、クトゥルフ要素を取り入れた理由などを聞きました。
TEXT / 神谷 優斗
『DREDGE』は、漁業とコズミックホラーが融合した、シングルプレイのフィッシングアドベンチャーゲームです。2023年3月31日にリリースされ、記事執筆時点でSteamでは16,500件以上のレビュー、「圧倒的に好評」のステータスを獲得しています。
『DREDGE』 ローンチトレーラー
プレイヤーは船を操縦して海を探索し、釣りやサルベージによって魚や資材、海に沈むお宝などを入手します。釣った魚は地元民に売り、そのお金で船をアップグレード。アップグレードすると、より遠くの海へ行けるほか、今まで釣れなかった魚を釣れるようになります。
昼間の航海は快適なものですが、夜になると雰囲気は一変します。周囲は霧が立ち込め何も見えなくなり、拠点に帰るのもままならなくなります。そのまま暗闇に居続けると、海の底から得体の知れない何かが…。
ストーリーが進むにつれ、「奇形種」と呼ばれる異形の魚を釣りあげるようになるなど、ゲーム全体が不穏な空気を帯び始めます。
のどかな雰囲気のなか釣りを楽しめる昼間と、恐ろしさが一気に顔を見せる夜の大きな対比が印象的な作品です。
Black Salt GamesはAlex氏、Joel氏のほか、CEO Nadia Thorne氏と3Dアーティスト Mikey氏の4名で構成されています。本作はこの4名に加え、外部のサウンド担当2名で開発されました。
2020年7月ごろに所属していたスタジオから独立し、Black Salt Gamesを立ち上げた時から本作の構想はあったとのこと。2021年1月から各作品2週間ほどをかけ、計3作品のプロトタイプが制作されました。『DREDGE』のもととなる作品以外に、ストラテジーやステルスゲームを作ってみたそうです。その後、家族や友人とテストプレイを行った結果、「最も反応がよかった『DREDGE』でいこう」となったそうです。
プロトタイプを2週間で作り上げることに対しては、「普通のことじゃないけど、独立前からずっと一緒に働いてきたからできた」とAlex氏。Joel氏は、「まず作ってみて、そこから判断することを重視するのが自分たちの開発スタイルである」と言います。よいかどうかわからないものにたくさん時間をかけるより、とりあえずここまでにやる!というスタンスでいったん作り、そこから判断するようにしているそう。
Production art is still under wraps at the moment but I was able to smuggle this shot of the prototype out! #screenshotsaturday #DredgeGame #indiedev #indiegame #madewithunity pic.twitter.com/eE5pz2ELgZ
— Black Salt Games 🎣 DREDGE (@BlackSaltGames) February 20, 2021
※初期の『DREDGE』
また、開発においては「とにかくテストプレイをすること」に重点を置いています。例えば、製品版の開発に着手してから2週間程度の、まだ何もできていない状態でもテストプレイを実施し、フィードバックを得るようにしたとJoel氏は語ります。以前の開発スタジオで、フィードバックを得ることの大切さを学んだため、やり方をそのまま継承しているそうです。
今までずっと使ってきたこともあり、開発環境はUnityを採用。だからこそ2週間でプロトタイプを、製品を2年で作れたそうです。主なDCCツールは、Alex氏がBlenderとPhotoshop。Mikey氏がMayaを使用しています。
本作の起源は、Joel氏が釣りゲームが好きで、ずっと釣りゲームを作りたかった思いにあるそう。釣りにプラスアルファの要素を加えることを考えた時、海の怖いイメージからホラー要素に思い至ったと言います。「釣り+ホラー」のアイデアをJoel氏が決めた後、Alex氏がゲームの雰囲気や世界観を固めていきました。「不穏な空気をもって怖さを表現したい」と考えていたため、「海の下に理解を超えるなにかが存在している」といった怖さを生み出すクトゥルフをテーマに据えたとのこと。
みんなで好きなものと嫌いなものを洗い出したとき、全員が共通して好きだったのが「アップグレード」要素でした。本作の「海に出て魚を取って売ってお金を得て船をアップグレードしていく」ゲームサイクルには、それが反映されていると言います。
「プロトタイプ段階では、魚釣りのミニゲームはなく、ボタンを押すだけですぐ完了でした。インベントリのシステムもありませんでした。これはつまらないと感じたので、Alexが思いついたインベントリのテトリス要素を導入して、そこから少しずつ面白くなっていったんです。」とJoel氏。
魚釣りのミニゲーム(画像左)。タイミングよくボタンを押すアクションに成功すると、釣りにかかる時間を一気に短縮できる。
インベントリ(画像右)。パズル要素があり、とった魚などを、船倉の形にうまく配置しなければならない
釣りのミニゲームを今の形にした理由は、主に2種類の緊張感を演出したいからであるとJoel氏は言います。1つは時間に対する緊張感です。本作の夜は非常に危険であるため、できる限り早く釣って夜までに拠点に帰らなければなりません。「早く終わらせるためにアクションを成功させなければならないが、アクションをミスしたら余計に時間がかかってしまう」リスクとリターンで緊張感が生まれます。
もう1つは視界による緊張感です。釣りをしている間は強制的に上からの俯瞰視点になり、周囲を見渡すことはできません。釣りの間は視界を狭め、「すぐそこまでモンスターが迫ってきているのではないか」と想像させることでも緊張を生んでいます。
ほかにこだわった点として、ストーリーがあるとAlex氏は語ります。本作のバックストーリーはあえて全容を隠して、ヒントを少しずつ出すことで不穏さやプレイヤーの想像を徐々に強めていく作りになっています。それらを支えるボトルの手紙や黒い石などは最初からすべてアイデアがあったわけではなく、作りながら、こういうのがあったら面白いんじゃないか、と付け足していったそうです。
最後にJoel氏からプレイヤーへ「Discordのコミュニティなどでうれしい反応がもらえるとそれだけでいい1日が過ごせる!みんな楽しんで!」とコメントをいただけました。
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