『Monster Hunter Now』ゲームディレクターに聞く、機能「探索拠点」に込めた思いとは。モンハンらしさと位置情報ゲームならではの新たな魅力を両立させる

『Monster Hunter Now』ゲームディレクターに聞く、機能「探索拠点」に込めた思いとは。モンハンらしさと位置情報ゲームならではの新たな魅力を両立させる

2026.03.06
取材レポート注目記事インタビューゲームデザイン
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Nianticとカプコンのコラボレーションで誕生した位置情報アクションゲーム『Monster Hunter Now』。本稿では、ゲームディレクターの菅野 千尋氏に、2周年に合わせてリリースされた機能「探索拠点」の開発背景を中心に、Nianticの位置情報ゲームへのこだわりやチーム体制について聞きました。

※編集注:本稿のインタビューは2025年12月上旬に実施しました。

INTERVIEW & TEXT / NUMAKURA Arihito

PHOTO / 神谷 優斗

目次

菅野 千尋(かんの ちひろ)

Nianticが開発・配信を担う『Monster Hunter Now』のゲームディレクターを務める。長年にわたりゲーム業界に従事し、ソニー・インタラクティブエンタテインメントにおけるコンソールゲーム開発を経て、現在はナイアンティックにて『Monster Hunter Now』のゲームディレクション、ゲームデザインを担当。

2025年の『Monster Hunter Now』開発では、特に探索拠点を中心に新機能のディレクション、企画を手がけ、プレイヤーが継続的に楽しめるゲーム体験の構築に注力した。

個人的な『モンスターハンター』シリーズとの出会いは『モンスターハンター ポータブル2nd』で、仕事仲間と熱中した経験が開発における原点(モンハンシリーズを通してハンマーを愛用)。

外に出かけて一緒に狩りをしよう。〜『Monster Hunter Now』が目指すもの〜

――2周年を迎え、そして間もなく2.5周年となりますが、改めて『Monster Hunter Now』の開発で大切にしていることを教えてください。

菅野:本作は「ゲットアウト&ハント・トゥギャザー(外に出かけて一緒に狩りをしよう)」というキャッチコピーを掲げて開発を進めてきました。原作となる『モンスターハンター』シリーズは、雄大な自然の中で巨大なモンスターに立ち向かう、ネットワークを介した協力プレイが醍醐味のハンティングアクションゲームです。

ハンティングアクションという、これまでNianticが開発してきたゲームとは異なるゲーム性が求められましたが、過去にモンハンシリーズの開発に携わったメンバーをはじめ、シリーズに対する解像度が高いメンバーがチームに参加しています。そうしたメンバーとともにモンハンらしさを追求しつつ、従来のシリーズにはなかった要素も加えることで、現実世界に出かけて遊ぶというNianticが最も得意とする位置情報ゲームならではの体験と、ハンティングアクションの手応えを兼ね備えたモバイルゲームの魅力を追求し続けています。

——『Monster Hunter Now』に込められたモンハンらしさの強みと、Nianticのプロダクトとしての強みをそれぞれ教えてください。

菅野:モンハンらしさとして一番の強みは、何と言っても「手応えがあって、何度でも遊べるアクション性」ですね。“何度でも”というのは同じ武器を使い続けても毎回確かな達成感があるし、同じモンスターを狩るとしても武器を変えればまったく別のゲーム体験が得られます。

さらに素材を集めて装備を強化するというRPG的な戦略性も魅力です。それに加えて、「協力プレイ」という一緒に遊べるゲームであることも大きな強みだと改めて実感しています。

一方、Nianticがつくるゲームの強みは位置情報を使って外で遊んでもらえること。通勤中や休み時間などルーティンに組み込んでもらいやすい点は、意外と見過ごされがちな特徴なんですよ。

僕自身がモンハンにハマったのは『モンスターハンター ポータブル 2nd』(2007)でしたが、PSPを持ち寄ってみんなで遊ぶコミュニケーションツール的な楽しさが原体験です。これはNianticの「リアルワールドソーシャル」という理念とまさに重なるところです。大人になると減ってしまうそうした体験を、本作を通じてもう一度楽しんでもらいたいと考えています。

「遊びの循環」を生み出すプラットフォームを目指す。「探索拠点」の実装における技術的なチャレンジとは?

——2025年9月10日に正式リリースされた「探索拠点」のコンセプトと、実装で特にこだわった点を教えてください。

菅野:シーズン7の新機能となった「探索拠点」は、ハンターの皆さんが協力し合いながら成長させる、地域のランドマークです。Nianticが開発するゲームには「外へ出かけて新しい場所を発見し、人と出会い、絆を深めてほしい」という会社としてのミッションが込められています。

実は「探索拠点」については、『Monster Hunter Now』リリース前からTo Doリストにありました。人が人を呼び、一緒に遊ぶうちに次は自分から友達を誘うようになる。そうした「遊びの循環」を生み出す仕組みとして企画しました。

菅野:「探索拠点」の実装は、ひとつの機能を作るというよりは、プラットフォームを作っている感覚に近いものでした。特別な情報を持った場所を設けることで、ゲーム内にさまざまな要素を載せられる基盤になると考えたんです。

実際、シーズン8では新コンテンツ「拠点要撃戦」が加わり、通常よりはるかに手ごわい「次元臨界モンスター」に同じ拠点のハンターたちと挑むことができるようになりました。

——技術面で苦労したのは、どのあたりでしたか?

菅野:全世界のハンターの活動データをエリアごとに記録・集計するシステムの構築が大仕事でした。さらに難しかったのがバランス調整です。拠点が多すぎるとハンターが分散し、少なすぎると移動距離が長くなる。ファーストフード店のフランチャイズで、エリアに何店舗が最適かを考えるようなものでした。

トライ&エラーを重ねる必要があったため、βテストをはさんでからリリースすることにしました。βテストでまず「大量出現」を、その後エリア限定で「探索拠点」を検証し、手応えを確認しながら開発を進めていきました。

まずは「袖振り合うも多生の縁」を大切にしたかった。〜探索拠点のコミュニケーション設計と反響〜

——「探索拠点」の正式リリースからしばらく経ちましたが、プレイヤーの反響はいかがですか?

菅野:最初の大量出現イベントとなった「イビルジョー(次元変異)(★8)」は特に反響が大きく、2025年9月から10月の約1ヶ月間で12万人のハンターが2.5万の拠点で800万頭のイビルジョーに遭遇したというデータを得ることができました。

育成面では同じ期間に毎日平均14万人が取り組み、全体の7割以上の拠点が日々育成されていました。全世界で最も育った拠点はβテスト時と同じ台湾の大安森林公園でしたが、日本の拠点もかなり肉薄していましたよ。

——リリース後、プレイヤーの盛り上がりが想定以上だったとおっしゃっていましたが、どんな反響が印象に残っていますか?

菅野:SNSでは「イベント中に声をかけられた」「フレンドになった」という投稿があり、まさに期待していた反響で嬉しかったです。

——コミュニケーション設計で特に意識されていることを教えてください。

菅野:実は開発当初、チーム内からは「拠点内で使えるチャット機能など、もっと深いコミュニケーションが行える機能を入れるべきでは?」といった意見もありましたが、僕が考えたのは「袖振り合うも多生の縁」ということでした。

自分の住む地域でのつながりが深くなり過ぎてしまうと、かえって重荷になりかねません。だからまずは「こんにちは」とか「お疲れ様です」などと軽く言葉を交わす程度の軽めのコミュニケーションを目指そうと、強く主張していました。先ほどNianticのミッションについてお話しましたが、自分の周りに他のハンターがいると感じてもらうことが現時点で一番達成できていることかもしれません。

またβテストへのフィードバックについては、日本のプレイヤーからプライバシーに関する意見を多く寄せていただきました。そこで正式リリースに際して、探索拠点画面のハンター活動状況からハンター名やアバターが表示されないように改善しました。

βテストに対するフィードバックをふまえ、正式リリース時に改良された「ハンター活動状況(Hunter Activity)」UI

エンジニアは技術のスペシャリストである以前に、対等なクリエイターである。〜スモールチームで開発する理由〜

——「探索拠点」については、2025年7月にβテストを行い、そこから寄せられたフィードバックを参考に改善や機能の追加をした上で9月10日に正式リリースされました。2ヶ月弱という限られた期間でスピーディーに開発できた要因は何ですか?

菅野:Nianticのエンジニアたちが高い技能を有していることに加えて、「その機能で何を達成したいのか」といったことへの理解度が非常に高いことが大きいと思っています。

仕様の背景にあるゲームデザインまで理解しようとしてくれているので、「その目的であれば、仕様をこう変えた方がいいのでは?」といった提案をしてくれることもよくあります。だから、手戻りが起きる前に軌道修正を行えています。

——それは素晴らしい! エンジニアとの関係づくりで心がけていることはありますか?

菅野:エンジニアを単なる作業者だとは捉えず、意図をしっかり説明して対等な立場で建設的な議論ができるようにすることですね。デザイナーと話す感覚でエンジニアとも話しています。

開発規模が大きくなるとワークフローが工業的になりがちですが、『Monster Hunter Now』のように前例のないものを生み出すことが常に求められるタイトルでは、できるだけ少人数で密にコミュニケーションを取りながら進める方が上手くいくと実感しています。

『Monster Hunter Now』の開発・運営には多くのスタッフが携わっています。ですが、新しい機能を実装したり、その時々のイベントといった具体的な施策については、小規模の専門チームを編成して取り組むようにしています。

楽しさを分かち合う“遊びの循環”を、10年先も世界中に広げていく

——武器やモンスターなどを追加する上で、位置情報ゲームならではのこだわりはありますか?

菅野:原作にはない本作独自の縛りとして、狩猟時間は最長75秒というルールがあります。原作シリーズからのファンの方々にとっては短く感じられるかもしれませんが、外出先でプレイする位置情報ゲームならではの「手軽さ」と、モンハンにおける狩猟の醍醐味を凝縮して両立させることを目指しました。

この限られた時間内でモンスターの魅力や武器の機能性を表現する必要があります。スキルも同様ですね。

また、モンスター1体の制作には最低でも4カ月以上、大型の場合は約6カ月を費やしています。カプコンさんからお借りしたアセットをモバイル仕様へ最適化し、モンスターの挙動を制御するAIの構築やカプコンさんによる監修も含めたトータルの期間です。その中で、モンハンIPとしてカプコンさんが大事にされている部分と、狩猟時間をはじめとする本作独自のアレンジを両立させることにこだわって開発しています。

——これまで実装した機能で、特に会心の出来だと感じているものを教えてください。

菅野:2025年にリリースした「スタイル強化」「次元変異モンスター」です。モバイルゲームでは過去にリリースした要素が徐々に遊ばれなくなるリスクがありますが、この2つは過去に狩ったモンスターをもう一度狩りたくなる動機を生み出すことができました。

さらに初登場時はあまり注目されなかったモンスターやスキルに脚光が当たるなど、ゲームの盤面を変える要素を数多く取り入れられていることは、『Monster Hunter Now』が長期間遊んでいただける原動力だと思っています。

「次元変移モンスター」解説ムービー

——最後に、ゲームメーカーズ読者に向けて今後の展望をお聞かせください。

菅野:僕のモンハン原体験は『モンスターハンター ポータブル 2nd』で、みんなで遊ぶ・交流するということ自体がIPとして大好きな部分です。Nianticが目指す「ソーシャル」というミッションを体現するプロダクトとして、2026年以降も誰かと遊ぶゲーム性を強化していきます。

先日、サーバーエンジニアたちが休憩時間にペイントボールを持ち寄って遊んでいるのを見かけて、思わず撮った写真があるのでぜひご覧ください。

——すごく楽しそうですね!

菅野:僕も素敵だなと思って、こっそり撮っちゃいました(笑)

大人になっても、ほんのわずかな休み時間にゲームを通じて自然にコミュニケーションが生まれている。

この素敵な体験を、3年後、5年後、いや10年後も続けて、日本各地はもちろん世界中に広めていくために何ができるのか。それが僕たちの目指すところです。

『Monster Hunter Now』公式サイト
NUMAKURA Arihito

フリーランス編集者&ライターほか。総合商社プラント営業>CM系オフラインエディター>CGWORLD>Vook>独立。Hello, I’m a Japanese editor focus on film, video & digital contents.

https://www.linkedin.com/in/arhtn3109/

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