【現地レポ】開発者もファンも楽しめる「エンタメ系」ゲーム業界カンファレンスへ。9年目を迎え、独自路線に磨きのかかったCEDEC+KYUSHU 2024レポート

2024.12.26
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2024年11月23日(土)、コンピュータエンターテインメント開発者向けカンファレンスCEDEC+KYUSHU 2024」が九州産業大学で開催されました。

ゲームメーカーズとしての参加も3回目。2015年の初開催から9年、いまや日本有数のゲーム業界カンファレンスとして成長した本イベントの様子をレポートします。なお、今年度も講演は別途取材しておりますので、ご興味のある方はレポート記事をご覧ください。

TEXT / 神山 大輝

目次

数多のゲーム&アニメクリエイターが福岡に集結!

福岡で例年行われるコンピュータエンタテインメント開発者向けのカンファレンス「CEDEC+KYUSHU」。レベルファイブ、サイバーコネクトツー、ガンバリオンという九州のゲーム会社3社が中心となり、福岡市も後援として名を連ねる一大イベントです。

ゲーム業界中心のカンファレンスながら、今年はアニメ系講演も注目が高く、『ダンジョン飯』を手がけた株式会社TRIGGERや20周年を迎える株式会社A-1 Picturesが登壇したほか、「ゲーム産業とアニメ産業の融合とその未来」と題した講演を株式会社グラフィニカが行うなど、エンタメ全般の知見が広く語られていました。

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特別招待講演として、TVシリーズ『ぼっち・ざ・ろっく!』『葬送のフリーレン』の監督を務めた斎藤 圭一郎氏も登壇。演出の基本から制作の裏側まで広く語られた。

写真撮影/SNS投稿NGということで、実際に参加しなければ聞けない貴重な講演も多い

私は前日の金曜日に福岡入りし、現地のクリエイターや出張組と長く語らう時間を頂きました。その夜は2万円以上したアパホテルで就寝。後から聞いた話でしたが、昨年に引き続き矢沢永吉のライブがCEDEC+KYUSHUの日程と重なっており、他にもイベントが近辺に固まっていたことからホテル価格がどこも高騰していたとのこと。

来年度は日程が解禁次第、必ずその日にホテルを予約することを固く誓いました。

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CEDEC+KYUSHU 2024開幕!列車事故もスマートに対応

いよいよ開催当日。早朝からJR九州鹿児島本線事故のため全線で遅延が発生し、会場の九産大前駅へ電車で辿り着くのが難しい状況となっており、「基調講演を30分遅らせる」という異例の対応が行われました。

CEDEC+KYUSHU運営のXアカウントでは8:19時点で遅延が報告されており、その後すぐに基調講演の順延が通知されたため、アナウンスは素早く適切かつ柔軟な対応だと感じました。

本家CEDECとは異なる雰囲気のバラエティ豊かな全36講演

博多駅からタクシーで移動し、いよいよ会場へ。株式会社アトラス 和田 和久氏と、講演モデレーターを務める株式会社サイバーコネクトツー 松山 洋​氏が登壇した基調講演「ペルソナのこれまでとこれからの話」は、定刻より約30分遅れでスタートしました。

そもそもCEDEC+KYUSHUは、毎年パシフィコ横浜で行われる国内最大のゲーム開発カンファレンス「CEDEC」の名前を冠した福岡独自のイベント。運営組織も違えば、講演・展示内容にも違いが見られます。CEDEC本家はどちらかといえばエンジニアリング色の強いカンファレンスですが、CEDEC+KYUSHUは学生の参加者が多いこともあってか表現・演出面やキャリア形成に関する講演が多いように感じられます。

今年度は「『A-1 Pictures』20年にみるアニメスタジオ成長の鍵」(A-1 Pictures)、「ゲーム開発を支える必須ツールとキャリア形成のヒント〜プロフェッショナルたちの経験から探る〜」(東陽テクニカ)などの講演でキャリア形成に関する話題に触れられたほか、「たくさんの人が関わるアニメ制作の現場
」(斎藤 圭一郎氏)では具体的なアニメーションの演出にまで踏み込んで語られていました。

2024年度版のタイムテーブル。講演は全部で36。CEDEC+KYUSHUは1日開催のため、全ブースを回り、全講演に参加し、インディーゲームの気になるタイトルを遊ぶといった時間的余裕は少ない。「講演を見るべきか遊ぶべきか、あるいはブースに足を運ぶべきか?」を現地で適切に判断するため、見たい講演は前日までに固めきっておこう

CEDEC+KYUSHU 2024 セッション一覧

1日では回りきれないほどの大量の展示も特徴

2階サブホールではインディーゲームコーナーが開催されています。カンファレンスとインディーゲーム展示会を兼ねるイベントは大変珍しく、これもCEDEC+KYUSHUの特色と言えるでしょう。基調講演などが行われるメインホールに近いことから、講演の合間には多くの方が訪れていました。

インディーゲームコーナー 出展タイトル一覧

今年から新たに登場したのは、会場となっている九州産業大学内のプロジェクト「ゲーム作ろうラボ」の作品展示。講義やサークルといった枠組みではなく、一部教員と有志によるプロジェクトであり、3~4名編成チームが毎年ゲーム制作に励んでいるとのこと。また、福岡工業大学との共同ゲームジャムで制作された作品の展示もありました。

作品展示のほか九州産業大学の歴史に触れる資料も展示されていた。そういえば、毎年キャンパス内で開催されるにも関わらず、なかなか大学の情報に触れる機会がなかった。その意味でも興味を惹かれたブースだった

実際に「ゲーム作ろうラボ」によって制作されたタイトルで、ブース内では動画がループ再生されていた。同プロジェクトではTGSへの出展や、福岡のゲームコンテスト「GFF AWARD」への取り組みも盛ん

お昼は「セデ弁」。名産品の多い九州ならではの施策

九州の名産品を詰め込んだ弁当「セデ弁」。ラインナップは運営側がしっかりミーティングで協議して決めているようで、昨年から内容も変化していました。

福岡といえば博多ラーメンや水炊き、もつ鍋といったイメージを持ちますが、現地ではうどんが好まれており、かしわ飯(鶏肉の炊き込みご飯)と一緒に食べられているようです。今回のセデ弁は冷めても美味しいかしわ飯をメインに、熊本の辛子蓮根、鹿児島のさつま揚げ、デザートには福岡のあまおう葛餅など、彩りを感じられる内容となっていました。

運営サイドの一押しは「あまおう葛餅」とのこと。2023年度版からはご飯が変更されており、白米ではなくかしわ飯だったのがポイント。現地ではうどん屋で一緒に頼む定番品だ

『ダンジョン飯』カット袋が大量に並ぶ展示コーナーも登場

Ⓒ九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会

講演タイトル展示コーナーは昨年から場所を変え、教室の一室に。「今回も講演で使用されるゲームを遊べるのかな?」という期待のもと部屋に伺ったところ、いい意味で期待を大きく裏切られました。

そこで大量に展示されていたのは、アニメ『ダンジョン飯』の映像制作で作成された素材(複製)のカット袋。シナリオ、絵コンテ、各種設定、イメージボード、レイアウト、原画、動画、色彩素材、背景など、リアルな素材が手に取れるかたちで展示されていました。

Ⓒ九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会

Ⓒ九井諒子・KADOKAWA刊/「ダンジョン飯」製作委員会

ブース展示&書籍販売コーナーも盛況

1階にはスポンサー企業によるブース展示も。入り口付近のエピックゲームズ ジャパンブースに始まり、奥側にはボーンデジタルによる書籍販売ブースや、運営に携わるサイバーコネクトツーのブースもありました。

希望者には代表 松山氏によるサインが可能とのことで、周辺ブースは賑わいを見せていました。

講演の切れ目の時間などは書籍ブースが大いに盛り上がっていた

ブース出展は1階エントランスすぐ。講演中は撮影ができたが、講演の合間などは参加者で大いに賑わっていた。11月下旬開催ということでエントランスはやや肌寒く、ホッカイロを持って展示に臨むチームも

エプソンのPC「Endeavor」を展示していた菱洋エレクトロ。通りすがりの参加者が起動していたBlenderでモデリングし、クロスシミュレーションを行った物体(?)がそのまま展示されていたのが印象的だった。また、ワコムブースでも参加者がこぞってお絵描きに興じており、ブースを見て回る雰囲気も本家CEDECとはなんとなく違うイメージがある

アンリアルエンジンについてなんでも相談できる部屋も。教室が丸ごと一部屋割り当てられており、とにかく広かった

シメは懇親会「Developers’ Night」。福岡の夜は長い

Developers’ Nightは撮影不可のため、写真はない。代わりに翌日食べた長浜家を掲載

会期終了後には懇親会「Developers’ Night」も用意されています。本家CEDECと同じく、大体は二次会、三次会、四次会へとなだれ込むのですが、パシフィコ横浜との違いは周辺の食事処の多さ。オシャレなレストランから風情のある屋台、そして三歩歩けばラーメン屋に出会える素晴らしい場所であることから、参加者は思い思いの夜を楽しく過ごしていたようです。

カンファレンスとしての面白さ、そしてセデ弁などご当地的な面白さ、さまざまな側面の魅力を持つCEDEC+KYUSHUは来年で10周年を迎えます。今から開催を心待ちにしつつ、改めて次年度は「開催日時が出た瞬間にホテルを予約する」を徹底したいと思います。

ご興味のある方は、ぜひ来年現地でお会いしましょう!

CEDEC+KYUSHU 2024 公式サイト

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