2024年7月19日(金)から21日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催された『BitSummit Drift』。展示されたゲームの中から、今回はSubtales Studioが制作する3Dパズルアドベンチャーゲーム『Gloomy Juncture』(BitSummit Drift ビジュアルデザイン最優秀賞受賞)を紹介します。
口調もヒント。あえて日本語吹替をやめた『Gloomy Juncture』はヒッチコックなどの映画に影響を受けた高難易度パズルアドベンチャー(ビジュアルデザイン最優秀賞)【BitSummit Drift】
TEXT / 酒井理恵
目次
サイコスリラー映画やヒッチコックからインスパイア。90年代を舞台にした、すべて手描きの高難易度3Dパズルアドベンチャー
『Gloomy Juncture』はポルトガルのスタジオSubtales StudioのFilipe Rodrigues氏が手掛ける高難易度の3Dパズルアドベンチャーです。
キャラクターやオブジェクトは、すべて手描きしたものをスキャンしてテクスチャ化。90年代初期の頃の3Dポリゴンゲームをイメージしたモデルに貼りつけていく形で作られています。
蛇口から出る水や洗面台に溜まる水も手描きです。これに水面の揺らめきを加える形であるため、イラストが本物の水のように波打つ不思議な視覚体験を味わえます。
プレイヤーは一人の平凡な清掃員。退勤前の最後の仕事として、必要な道具を集めて洗剤を作るなどのミッションを進めます。
ゲームはポイント&クリック方式で進められ、インタラクト可能な場所は小さな四角いマークが表示されます。
本作の世界観は90年代頃のサイコサスペンスやネオ・ノワールな映画、ヒッチコック作品などから影響を受けて制作されています。
具体的には、アルフレッド・ヒッチコック監督の『めまい』、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』、パク・チャヌク監督の『オールド・ボーイ』といった作品の影響が色濃いとのこと。
また、ビジュアル面では『サスぺリア』、『ブルーベルベット』、『レクイエム・フォー・ドリーム』も参考にしているそうです。参考作品名を知ったうえで改めてビジュアル面に目を向けると、納得する映画ファンもいるのではないでしょうか。
実は、こうした作品群からのリスペクトはビジュアル面だけにとどまりません。なんと、ゲーム中のボイスも参考作品の俳優の演技を意識した内容になっているとのこと。このため、本作では全文日本語化対応がされているにもかかわらず、あえてボイスに関しては日本語吹替をしなかったそうです。
また、ナレーションの口調はパズルを解くヒントにもなっています。パズルの難易度がかなり高めに設定されているとのことで、こうしたヒントも有効に活用してほしいとのことです。
すべて手描きで制作したのはゲーム制作初心者だったからこその発想
本作の翻訳にも一部携わるSubtales Studioの方(名前非公開)にお話を伺いました。
本作はRodrigues氏の個人プロジェクトであり、物語の内容はRodrigues氏自身の経験をオーバーに描いたものになるそうです。
開発はコロナ禍に始まりました。
初めは自分自身がゲームを楽しむつもりでしたが、自分の好きな要素をもっと詰めこんだゲームがやりたいと、本プロジェクトが走り始めました。
Rodrigues氏はゲーム制作やプログラミングに興味があったものの、実際にゲーム制作するのは本作が初めて。
すべて手描きのイラストというアートスタイルは、3Dモデリングが難しかったことから偶然生まれたものです。Rodrigues氏はプロではなかったものの幼い頃から絵を描くのが好きでした。そこで、あらゆるものを絵で描き、スキャンして取りこみました。折り紙のような本作のビジュアルは、こうした経緯で作られています。
また、90年代をゲームの舞台にすることで、このビジュアルは当時の3Dゲームを思い起こさせる効果ももたらしています。
Steamでは現在、日本語化対応したデモ版が配布されています。製品版ではデモ版以外のパートも日本語化対応したうえでリリースする予定とのことです。
『Gloomy Juncture』公式サイトBitSummit Drift 公式サイトゲームメーカーズ編集。その他、ソーシャルゲーム、ボイスドラマ等のフリーのシナリオライターとしても活動中。突き抜けた世界観のゲームが好き。
『サガ・フロンティア』のアセルス編などのゲームを心のバイブルにして生きてます。
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