2024年7月19日(金)から21日(日)の3日間、京都みやこめっせで開催された『BitSummit Drift』。展示されたゲームの中から、今回はGames By Martiansが制作するSFアドベンチャー『Ex Nihilo』を紹介します。
元AAAタイトルのプランナーが開発するSFアドベンチャー『Ex Nihilo』。本作のアイデアは、ホラーゲームで脅威が過ぎ去るまで何もできない不満から生まれた【BitSummit Drift】
TEXT / 神谷 優斗
脅威と対峙したときは「目を細める」。脅威の視界も狭まり、見つかりにくくなる
『Ex Nihilo』は、主人公がポッドから目覚めるシーンから始まります。
どうやってここに来たのかは記憶にありませんが、目覚めた場所は無機質な空間が続く謎の建物のようです。プレイヤーは建物内を探索し、脱出を目指します。
最初のうちは、ロックされた扉によって進める場所が限られています。探索を進め、どこかに落ちているカードキーを入手すれば、対応した色の扉を開けられるようになります。
探索の途中からは、本作の脅威となる、目玉を模した巨大な生命体が出現するようになります。プレイヤーは生命体に見つからないよう、うまくやり過ごす必要があります。
プレイヤーは「目を細める」と「目を閉じる」アクションが可能。自身の視界が狭まるリスクもありますが、同時に生命体の視界も狭まり発見されにくくなるメリットも存在します。そのため、生命体と対峙したときは目を細め、見つからないようそっと移動します。脅威がすぐそばに迫っている恐怖と視界の悪さが緊張感を高めます。
今回筆者がたどり着いたのはAエンド。本作は1プレイを何度も繰り返すループ構造になっており、探索する場所やプレイヤーの行動によってさまざまなエンディングに到達できます。そのほかのエンディングで脅威の正体やストーリーの背景が明かされるのではと、物語の広がりにワクワクしました。
背景はすべて自作。モジュール化を意識し、制作点数を少なく抑える
本作を開発するMartijn Heule氏にお話を伺いました。
メインとなる開発メンバーは、Martijn氏のほかに友人の3Dアーティスト1名を加えた2人。開催時点での開発期間は1年で、さらに1年間の開発を経てリリースされる予定です。次の作品の開発をすぐに始められるよう、短い期間での開発を考えているとのこと。
以前は日本のスタジオでAAAタイトルの開発にも携わっていたMartijn氏。現在は公務員として働くかたわら、空いた時間で開発を進めています。スタジオ時代はプランナーとして開発に従事していましたが、本作の開発にあたってはほとんどすべての工程をMartijn氏が担当。ボイスも自身で収録しています。
「目を細めると敵の視界も狭まる」アイデアは、自身がホラーゲームをプレイしている際に感じた、脅威が過ぎ去るのを物陰で何もせず待ち続けることしかできない不満から生まれたとMartijn氏は語ります。
BitSummitには以前より参加していましたが、インディーデベロッパーとして出展するのは今回が初めて。今回の出展を、参加者のプレイからフィードバックを得て、作品をよりブラッシュアップするよい機会として捉えているそうです。
世界観や想定するプレイ体験の都合上、プレイヤーに説明する部分と、説明せずに考えさせる部分のバランスには気を使っているそうです。今回、プレイヤーの反応を見て、説明すべき部分と説明しなくてもよい部分に対する認識がより明確化したと言います。
本作のエンバイロメントはすべて自作。ただ、3Dアーティストの友人が使える工数は限られています。そこで、部屋のパーツそれぞれをモジュールとして制作し、パーツ同士を組み合わせることで多様な部屋が構成できるよう工夫しています。これにより、少ない制作点数でも柔軟な構造が作れます。
一方で、それぞれの空間が画一的に見えるデメリットもあるそう。各部屋を識別しやすくするのには、さらなる工夫が必要だとしています。
『Ex Nihilo』ストアページBitSummit Drift 公式サイトコーヒーがゲームデザインと同じくらい好きです
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今日の用語
ロード(Load)
- コンピューターの補助記憶装置(HDDなど)に保存されたデータを読み込んで、主記憶装置(メインメモリ)上に展開すること。
- ゲームにおいて、セーブデータを読み込んで中断時の状況を再現すること。