ニンジャの激しいイクサを再現した横スクロール2Dアクション
全世界を震撼させているというサイバーパンクニンジャ活劇『ニンジャスレイヤー』。2010年よりX(旧Twitter)などで連載されている小説作品です。世界を裏側から支配する半神的存在「ニンジャ」に苦しめられる力なき人々が、近未来のサイバーパンク都市「ネオサイタマ」で必死に生き抜く様子が描かれています。
主人公のフジキド・ケンジは、妻子を邪悪なニンジャに殺され、自らもニンジャに命を狙われます。その瞬間、謎のニンジャ「ナラク・ニンジャ」のソウルに憑依され、ニンジャを殺すニンジャ「ニンジャスレイヤー」として復活、一命を取り留めます。フジキドは、全てのニンジャを自らの手で殺害することを誓い、終わりなき復讐の戦いへと身を投じることになります。
硬派で重厚な作劇がファンを魅了する半面、少し調子の外れた素っ頓狂な日本感やセリフ回し「忍殺語」に象徴される独特な世界観が反響を呼んでいます。
主人公のフジキド・ケンジは、ニンジャに復讐を誓うニンジャ「ニンジャスレイヤー」として、日夜激闘を繰り広げる
そんなニンジャスレイヤーを題材にした2Dアクションゲーム『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上』。主人公のニンジャスレイヤーを操作し、クローンヤクザなどの敵キャラクターが次々に襲い掛かるのをスリケンやカラテで薙ぎ倒しながら颯爽と駆け抜ける、横スクロール型のアクションです。発売日は2024年7月24日(水)、対応ハードはNintendo Switchの他、Steamでも購入できます。
試遊版では8つのステージをプレイ可能。全てのステージをクリアすると、ラスボスの「ラオモト・カン」に挑戦する道が開かれます。
ステージ選択画面。8つのステージをクリアすると、中央にそびえる「トコロザワピラー」から、ラスボス「ラオモト・カン」に挑戦できる
アクションゲーム初心者の筆者は、スタッフの方に比較的初心者向けな「ソニックブーム」のステージをおすすめいただきました。
煌びやかなネオンの光に包まれるネオサイタマの街中に、とある男の姿を発見。街を裏から牛耳る暗黒組織「ソウカイヤ」に所属する邪悪なニンジャ「ソニックブーム」です。
彼が狼煙を空に上げる光景を目撃したニンジャスレイヤーは、その後を追いかけます。
暗黒組織「ソウカイヤ」に所属する邪悪なニンジャ「ソニックブーム」。このステージのボスキャラクター
プレイ画面は、2D風味で描かれた近未来都市「ネオサイタマ」の世界が広がります。ニンジャスレイヤーが街を駆けると、黒い背広をまとった戦闘員ポジションの「クローンヤクザ」に取り囲まれ、攻撃を受けます。ニンジャスレイヤーの鋭い一撃でクローンヤクザたちは吹き飛んでいきます。
クローンヤクザはHPが少なく、一撃で吹き飛んでいく。大勢並んだクローンヤクザを連続で撃破する様子は爽快
攻撃方法は、Xが通常攻撃、Yがダッシュ攻撃、Bで飛び道具「スリケン」の投擲。原作のニンジャスレイヤーらしい俊敏な動きで攻撃を仕掛けます。
移動はLスティック操作で行います。Aでジャンプ、Rスティックでドウグ社製のフックロープによる移動も可能です。他にも、回避動作の名称は「ブリッジ回避」。原作小説や漫画版を知っている人なら思わず笑みがこぼれるネタがふんだんに盛り込まれています。
左上のゲージが溜まるとコマンド入力で発動できる強力な攻撃「ヒサツ・ワザ」は、「タツマキケン」「ツヨイ・スリケン」など、原作で頻出する代表的な技を再現しています。
腕の筋肉に力を込めて縄のように隆起させ、投擲武器「スリケン」を全力で射出するニンジャスレイヤーの代表的な技「ツヨイ・スリケン」の発動シーン
親しみ深いニンジャスレイヤーの技やスキルを活用して遊べると意気揚々に挑みかかる筆者でしたが、アクションゲームに不慣れな筆者のプレイスキルでは、スピーディに跳躍するニンジャスレイヤーの操作感に追いつけず、敵に囲まれて集中攻撃を受けてしまいます。
HPゲージも尽き、もはやこれまでと思いきや、突如ニンジャスレイヤーの目が剣呑に輝き、「ナラク・ニンジャ」の力が表出します。赤黒い光に身を包んだニンジャスレイヤーが縦横無尽に跳躍し、戦闘再開。一度だけHPが回復し、リトライできるシステムです。ナラク発動中だけ無敵時間が発生します。
HPが尽きるとナラク・ニンジャの力を引き出して復活、一定時間のみ無敵状態で活動できる。効果発動中は、左上に禍々しい書体で「NARAKU MODE」と表示される
これで反撃開始かと思われましたが、僅かに復活したHPもあっという間に削られてしまい、無念の二度目のゲームオーバー。「ナミアミダブツ」の文字が空しく浮かびます。
HPが尽きてゲームオーバー。マッポーの世とBitSummitの僅かな試遊時間は、ニュービーゲーマーの成長を待ってはくれないのだ
キャラクターデザインは、漫画版ニンジャスレイヤーの作画を担当する余湖裕輝氏が手掛けています。試遊ブースで配布されたステッカーのイラストなども、余湖裕輝氏の描き下ろしだそうです。
BitSummit試遊ブースで配布されていた特製ステッカー
原作者による手厚い監修も。ファンも新鮮な驚きを体験できる、原作エッセンスの再現手法をインタビュー
本作のディレクターを務める立石 真基氏にお話を伺いました。
制作期間は約1年、開発に使用したのはアンリアルエンジン。3Dの素材を2D風味で活用し、横スクロールアクションを制作しているそうです。
企画段階から既に横スクロールアクションを開発することは決まっていたとのこと。昔ゲームを遊んでいた人に懐かしさを感じてもらえるレトロな雰囲気や、ニンジャスレイヤーならではのスピード感を演出するため、2D横スクロールを選んだといいます。
Skeleton Crew Studioで本作のディレクターを務める立石 真基氏
ニンジャスレイヤーの原作のストーリー展開は、クローンヤクザや下っ端ニンジャを前座敵に瞬殺し、最後にラスボスである大物ニンジャと戦うパターンが多く、その構成の時点で既にゲームのフォーマットとして利用できると考えたそうです。そういったゲーム的なストーリー展開を演出できるエピソードやキャラクターを中心に選び、本作に取り入れたといいます。
ボスキャラクターの技を実装する際も、ゲーム開発の視点から選定を行ったとのこと。まずステージやボスのコンセプトを決定し、原作に登場した技からコンセプトに合致するものを探します。原作の技だけでは足りない場合は、そのキャラクターが原作で使ってもおかしくないオリジナルな技を考案します。
原作らしさを生み出すため、本作では原作者の監修が全体を通して行われています。例えば映像面では、開発当初のニンジャスレイヤーの走り方はバタバタした動きでしたが、原作者の助言をもとに、よりスマートなニンジャらしい動きに変更されました。
また、イベントシーンなどのセリフは、最初は原作通りのセリフを使用していましたが、原作者が「この構成ならもっと良い言い回しがある」と書き換えてくれたそうです。原作既読者でも読んだことのない新規テキストを味わえるといいます。
原作を彷彿とさせる独特なセリフ回しは、原作者による手厚い監修の結果生み出されたもの
ファンに楽しんでもらう要素として、原作ではお決まりのセリフなども多数使われています。ボスのニンジャを撃破すると「サヨナラ!」と爆発四散。クローンヤクザたちは原作通り「ザッケンナコラー!」と口々に叫びながら襲い掛かり、撃破されると「アバーッ!」と絶叫を上げながら吹き飛んでいきます。
クローンヤクザのお決まりの脅し文句「ザッケンナコラー!」や、攻撃を被弾した際に発する苦悶の声「アバッ!」といったセリフが戦闘中に飛び交う
原作らしさを生み出す工夫として、他にはキャラクターの攻撃モーションが挙げられました。小説では一言「一刀両断」と書かれるだけのシーンや、漫画では腕を振り上げる1コマが描写されたシーンなどは、各媒体においては適切な情景描写として事足りますが、ゲームで再現するには一連のアクションを映像化する必要があります。ニンジャスレイヤーらしいかっこよさを映像で再現するのに苦労したといいます。
原作を読んでいる人でも新鮮な驚きを体験できる一方で、原作らしいエッセンスはしっかりと残されている。既存のファンにも喜んでもらえるように、原作以上のクオリティを目指して開発に取り組んだといいます。
本作は原作の最初期の章である「ネオサイタマ炎上」をもとに作られており、登場キャラクターもネオサイタマ編のニンジャたちがほとんどです。邪悪なニンジャたちを倒し、宿敵のラオモト・カンに立ち向かう王道的な魅力が詰め込まれています。
『ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上』公式サイトBitSummit Drift 公式サイト
ゲームメーカーズで編集や諸業務に携わっています。『星のカービィ』シリーズと『ポケモン不思議のダンジョン』シリーズが好きです。