2024年3月2日(土)と3日(日)の2日間、東京都武蔵野市の武蔵野公会堂や吉祥寺東急REIホテルにて「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024」が開催された。本記事では、同イベントに出展したタイトルのうちいくつかをピックアップして紹介する。
TEXT / 松井 ムネタツ
EDIT / 神谷 優斗
目次
前回より大きく規模が拡大した地域密着型イベント
「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024(以下、TIGS2024)」は運営協力に武蔵野市が入っており、地域とのつながりを感じるインディーゲームイベントだ。
前回は1日開催で会場は武蔵野公会堂のみだったが、今回は吉祥寺東急REIホテルの宴会場もメイン会場として使用し、さらには2日間開催となるほど規模が拡大。出展タイトル数は、前回から約1.6倍の133タイトルに増え、見どころたっぷりなイベントとして大いに盛り上がった。
実際に試遊できた7タイトルをレポート!
ここからは、実際に筆者がプレイした7作品を紹介しよう。
ひたすら上に登っていく水墨画アクション『点睛』
モノクログラフィックが目を引く『点睛』は、上へ上へと登っていく3Dエンドレスアクションゲーム。低重力を感じさせるふわっとしたジャンプで、足場を確認しながらひたすら天に向かって登る。オーブを止めるとその姿が龍になって一気に上昇できるのは、なかなかの気持ちよさだった。
開発時の苦労として、水墨画調のグラフィックは現在の形になるまでかなりの試行錯誤があったことが挙げられた。強弱が付いた輪郭線はとくに苦労した箇所だったそうで、Steamで配信中のデモ版でぜひそのあたりを体験してみてほしい。
穏やかな禅の風景とともに、心と向き合う体験を。https://t.co/xJfB5shDke#点睛 #TENSEI #TGS2023 pic.twitter.com/rtoh3pFn4h
— 👀ProjectPegasus🐕 (@PRpegasus) September 15, 2023
穏やかな禅の風景とともに、心と向き合う体験を。https://t.co/xJfB5shDke#点睛 #TENSEI #TGS2023 pic.twitter.com/rtoh3pFn4h
— 👀ProjectPegasus🐕 (@PRpegasus) September 15, 2023
専門学生開発による『新年3秒前』はSwitch向けに発売
『新年3秒前』は、年越しの瞬間にジャンプする文化を題材にしたジャンプゲーム。年越しまでの3秒間、アイテムを踏み台にジャンプし続けてとにかく空中に居続けるのが目標だ。
プレイしたところ、失敗すると悔しくて「もう1回!」とリトライしたくなった。
本作は日本工学院専門学校の学生チームによる作品で、日本ゲーム大賞2023の「アマチュア部門」で大賞を受賞。メディアスケープの「Play,Doujin!」ブランドのもと、Nintendo Switch向けに2024年内の正式リリースを目指して開発が進められている。
開発でこだわっている部分は、とにかくバカゲーに振り切ることだそう。日本ゲーム大賞のアマチュア部門に応募される多くのゲームが真面目なものだったため、あえてバカゲーに舵を切ったとか。効果音をすべて人の声にしているのも、そうしたバカゲーらしさを追究した結果であろう。
ゲーム実況で盛り上がりそうなテイストであるため、発売後の反響が楽しみな1作だ。
移植とともに追加予定の新しいステージタイプ「サンセット」の動画です!
シルエットしか見えないオブジェクトを踏んで年を越せ!#新年3秒前 #unity #gamedev #indiedev #indiegamedev #screenshotsaturday #ゲーム制作 #ゲーム開発 pic.twitter.com/hUvSuw0fjx
— 新年3秒前公式 (@ShinSan_JITNY) January 27, 2024
移植とともに追加予定の新しいステージタイプ「サンセット」の動画です!
シルエットしか見えないオブジェクトを踏んで年を越せ!#新年3秒前 #unity #gamedev #indiedev #indiegamedev #screenshotsaturday #ゲーム制作 #ゲーム開発 pic.twitter.com/hUvSuw0fjx
— 新年3秒前公式 (@ShinSan_JITNY) January 27, 2024
ドット絵で描かれたオープンワールド+総勢350人のキャラ!『ELEMASTA』
「ドット絵オープンワールドRPG」というキャッチが目を引く本作は、teamエレマスタ 代表 小林 光氏がサウンドとキャラクターイラスト以外のほぼすべてを1人で開発している意欲作だ。
主人公は、最初は何もスキルを持たないが、パーティーメンバーと仲良くなるとスキルを教えてもらえるようになる。仲間からたくさんスキルを教えてもらうことで、主人公がどんどんパワーアップしていく。
スーパーファミコン時代の16ビットRPGテイストを意識しており、グラフィックはすべてドット絵。パーティーメンバーにできるキャラクターは350人以上、武器やアイテムは3,000種以上あり、これらすべてを小林氏1人でコツコツと描いているという。
開発が始まって5年目となり、「あとはひたすらデータを作り込むだけ」という段階だそう。本作は2024年中の発売を目指している。
本作は開発に「RPGツクールMZ」を採用。今回話を聞いたクリエイターの多くがUnityを使う中、「RPGツクール」で開発している点は珍しく感じた。
取材時点ではSteamでの配信を予定しているほか、家庭用ゲーム機向けも検討中とのこと。
#TIGS2024 にて「#エレマスタ 」出展します!
吉祥寺東急REIホテルRC-02bにて、ほぼ完成している序盤が遊べます!
RPGなのにサクサク進むのでお気軽に手に取ってくださいませ~
お待ちしております!#pixelart #ドット絵 #RPGツクールMZ pic.twitter.com/3rtwBpwNgF
— 小林 光(Hikaru Kobayashi)3/2-3/3吉祥寺TIGS2024【RC-2b】 (@65535dot) March 1, 2024
#TIGS2024 にて「#エレマスタ 」出展します!
吉祥寺東急REIホテルRC-02bにて、ほぼ完成している序盤が遊べます!
RPGなのにサクサク進むのでお気軽に手に取ってくださいませ~
お待ちしております!#pixelart #ドット絵 #RPGツクールMZ pic.twitter.com/3rtwBpwNgF
— 小林 光(Hikaru Kobayashi)3/2-3/3吉祥寺TIGS2024【RC-2b】 (@65535dot) March 1, 2024
ボクセルグラフィックの中で猫を探す『Eye On The World』
『ウォーリーをさがせ!』に代表される特定のオブジェクトを探す絵本を、3Dボクセルグラフィックのゲームにしたら……というのが、この『Eye On The World』だ。街の中に設置されている監視カメラの視点から、迷子の捜索や落とし物の発見などのミッションをこなしていく。
本作を開発するりりぃカンパニーは長くモバイルゲームを開発してきたため、本作も当初の予定ではスマホ/タブレット向けを検討していたという。ただ、実際にゲームがある程度仕上がってくると、ゲームデザイン的にモバイル端末よりもPCの方が適していることが分かり、PC向けに方向転換したそうだ。
今回の試遊でユーザーの反響をチェックしつつ、バランス調整をしてブラッシュアップしていきたいとのこと。本作は2024年内にSteamでの発売を予定している。
3D版ウォーリーをさがせ!「Eye On The World(アイ・オン・ザ・ワールド)」を開発中です🎮
今まであまり紹介していなかったステージを中心にPVを作り直してみました。
ウィッシュリスト登録も受付中です!よろしくお願いします🐈⬛🐈#スーパーゲ制デー
▼ Steamhttps://t.co/I3m0nqa5nO pic.twitter.com/QBVccnkMcd
— おれんじりりぃ@りりぃカンパニー (@orange_lily1127) December 9, 2023
3D版ウォーリーをさがせ!「Eye On The World(アイ・オン・ザ・ワールド)」を開発中です🎮
今まであまり紹介していなかったステージを中心にPVを作り直してみました。
ウィッシュリスト登録も受付中です!よろしくお願いします🐈⬛🐈#スーパーゲ制デー
▼ Steamhttps://t.co/I3m0nqa5nO pic.twitter.com/QBVccnkMcd
— おれんじりりぃ@りりぃカンパニー (@orange_lily1127) December 9, 2023
流体力学をゲームに取り入れた『スーパーフリュードランダー』
宇宙船を操作してアイテムを獲得しつつゴールを目指すアクションゲーム。本作はSteamで販売中の『フリュードランダー』の続編にあたる。
最大の特徴は流体力学を取り入れたゲームシステムだ。ロケットから噴射した火は空気(流体)力学によって動く。
今作はSteamのほか、Nintendo Switchに向けても開発中。開発のtoropippi氏によると、Nintendo Switch向けの開発で一番苦労したのは、十分な処理速度がなかなか出なかったことだという。計算アルゴリズムを見直して最適化を図り、出展されていたバージョンでは60fpsを実現していた。
流体力学を取り入れたグラフィックは大きなインパクトがあるため、ぜひ動画などをチェックしてみてほしい。
「噴射が楽しい」流体ゲーム、スーパーフリュードランダーです!
3月2日(土)3日(日)の2日間にTokyo Indie Games Summit 2024というイベントで出すので試遊しに来てくださいね!(3/2はビジネスデイ)#TIGS2024 #SuperFluidLander pic.twitter.com/wnSWdNSBvI
— toropippi@TIGS2024 3/2,3 吉祥寺東急REIホテルRF-1b (@Red_Black_GPGPU) March 1, 2024
「噴射が楽しい」流体ゲーム、スーパーフリュードランダーです!
3月2日(土)3日(日)の2日間にTokyo Indie Games Summit 2024というイベントで出すので試遊しに来てくださいね!(3/2はビジネスデイ)#TIGS2024 #SuperFluidLander pic.twitter.com/wnSWdNSBvI
— toropippi@TIGS2024 3/2,3 吉祥寺東急REIホテルRF-1b (@Red_Black_GPGPU) March 1, 2024
ずっと遊んでいられる新感覚パズル+ローグライト『CUBEN ADVENTURE』
同じ色のキューブをスライドさせてマージ(統合)する、独特の世界観が特徴のパズルローグライトゲーム。同時に4つのキューブをマージすると、敵を攻撃してくれる味方キャラクターを生み出す白いキューブが生成される。多くのキューブをマージして味方キャラクターを生成・成長・強化させながら敵を倒していくのが目標だ。
見た目を立体的なキューブスタイルにしたのは、新しさのあるビジュアルを目指した結果だそう。
1日目(ビジネスデー)では常に誰かが遊んでいるほどの盛況具合。一度プレイを始めると、ついついずっと遊んでしまう……という人が続出していた。
発想元となったパズルゲーム『2048』は「2048」を作ることがゴールだが、wool studio プログラマー RYO SUGIMURA氏は「そこで終わってしまうのが残念でならなかった」そう。「もっとずっと遊んでいたいのに……」という思いから、本作の開発に着手したという。
取材時点ではSteamでの発売を予定しているほか、スマホやタブレット向けも検討したいとのことだった。
次はTOKYO INDIE GAMES SUMMITへ出展します!「Cuben Adventure」ぜひぜひ遊びに来てください😊 #TIGS2024 pic.twitter.com/VMxbncY8XE
— wool studio(TIGS2024出展-RK-1a『CUBEN ADVENTURE』) (@wool_studio) January 21, 2024
次はTOKYO INDIE GAMES SUMMITへ出展します!「Cuben Adventure」ぜひぜひ遊びに来てください😊 #TIGS2024 pic.twitter.com/VMxbncY8XE
— wool studio(TIGS2024出展-RK-1a『CUBEN ADVENTURE』) (@wool_studio) January 21, 2024
リズムで強くなる2Dアクション!『紙装甲主人公と不死身のカエル』
主人公は敵の攻撃に極めて弱いが、BGMのリズムに乗ってジャンプや攻撃を行うとどんどん強くなっていくリズムアクションゲーム。とにかくリズムに合わせてボタンを押すだけでコンボがつながって強くなる……というゲームだ。
これまでゲーム音楽の作曲を行ってきたシロ氏は、初めてインディーゲームイベントに参加した際にその楽しさに感動したそう。「自分も出展者として参加したい!」という気持ちからゲーム開発を始め、今回の出展に至った。シロ氏のXでは、「初めてのUnity!!」と題して日々の進捗を投稿している。
初めてのUnity!!
第百五十五話
【自走式】
ヘッドホンガエルがうっかり落とす時限式グレネードのスクリプトを
主人公を追い回す敵キャラクターのスクリプトに組み込むだけで
驚くほどたやすく、想定していたタイプのキャラクターが出来上がりました😮
人はこうやって道を踏み外すのか…#紙エル pic.twitter.com/gqsMlJ9qJx
— シロ(墨染サウンド) (@petit_zome) February 28, 2024
初めてのUnity!!
第百五十五話
【自走式】
ヘッドホンガエルがうっかり落とす時限式グレネードのスクリプトを
主人公を追い回す敵キャラクターのスクリプトに組み込むだけで
驚くほどたやすく、想定していたタイプのキャラクターが出来上がりました😮
人はこうやって道を踏み外すのか…#紙エル pic.twitter.com/gqsMlJ9qJx
— シロ(墨染サウンド) (@petit_zome) February 28, 2024
開発で苦労した箇所は「BGMのリズムとゲームシステムの同期」だという。敵の動きやボタン入力などあらゆる処理をリズムに合わせるようにすると、すべての処理が同じタイミングに集中して重くなってしまったそうだ。
「今回の出展では、難度が高すぎたことがよくわかった」とシロ氏。それほど長いステージではないものの最後まで到達できる人が少なかったため、敵の配置や攻撃方法などを今度調整していくとのこと。
デジタルゲームだけでなく、ボードゲームも出展
今回はKADOKAWAのアナログゲームブランド「カドアナ」や、ボードゲーム専門店「すごろくや」など、アナログゲームの出展もあった。
吉祥寺駅周辺には多くのサブ会場が設置
TIGS2024のメイン会場となった武蔵野公会堂と吉祥寺東急REIホテルは、吉祥寺駅から徒歩2分とアクセスしやすい場所だった。今回、駅周辺にはサブ会場が設置されており、吉祥寺マルイ、吉祥寺パルコ、キラリナ京王吉祥寺などで物販や展示会が行われていた。
今回のTIGS2024は、前回以上に「吉祥寺」という街を挙げてのイベントとなっていた印象だ。そういった意味でも、ほかのインディーゲーム系のイベントとは明らかに違う盛り上がりを見せていたように思う。独自の発展をしていく本イベントが今後どうなっていくのか、来年以降も楽しみにしたい。
「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024」 公式サイト『TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024 Day1 ステージイベント』『TOKYO INDIE GAMES SUMMIT 2024 Day2 ステージイベント』パソコンゲーム雑誌、アーケードゲーム雑誌、家庭用ゲーム雑誌を渡り歩き、現在はフリーのゲーム系編集/ライター。マイベストゲームは『ウィザードリィ 狂王の試練場』で、最近だと『Forza Horizon』シリーズに大ハマリ。メインPCはAlienware Aurora。セガ・レトロゲーム系メディア「Beep21」副編集長をやりつつ、ボードゲームメディア「BROAD」編集長も兼任。
関連記事
注目記事ランキング
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
連載・特集ピックアップ
西川善司が語る“ゲームの仕組み”の記事をまとめました。
Blenderを初めて使う人に向けたチュートリアル記事。モデル制作からUE5へのインポートまで幅広く解説。
アークライトの野澤 邦仁(のざわ くにひと)氏が、ボードゲームの企画から制作・出展方法まで解説。
ゲーム制作の定番ツールやイベント情報をまとめました。
東京ゲームショウ2024で展示された作品のプレイレポートやインタビューをまとめました。
CEDEC2024で行われた講演レポートをまとめました。
BitSummitで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
ゲームメーカーズ スクランブル2024で行われた講演のアーカイブ動画・スライドをまとめました。
CEDEC2023で行われた講演レポートをまとめました。
東京ゲームショウ2023で展示された作品のプレイレポートやインタビューをまとめました。
UNREAL FEST 2023で行われた講演レポートをまとめました。
BitSummitで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
ゲームメーカーズ スクランブルで行われた講演のアーカイブ動画・スライドをまとめました。
UNREAL FEST 2022で行われた講演レポートやインタビューをまとめました。
CEDEC2022で行われた講演レポートをまとめました。
今日の用語
ロード(Load)
- コンピューターの補助記憶装置(HDDなど)に保存されたデータを読み込んで、主記憶装置(メインメモリ)上に展開すること。
- ゲームにおいて、セーブデータを読み込んで中断時の状況を再現すること。