アークライトは12月9日(土)と10日(日)、東京ビッグサイトにて国内最大級のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2023秋」を開催した。
ゲームマーケットについて改めて説明すると、ボードゲームを中心にカードゲームやマーダーミステリー、テーブルトークRPG(TRPG)など非電源ゲームが一同に集まった祭典で、コミックマーケットのボードゲーム版という感じの立ち位置だ。
アークライトは12月9日(土)と10日(日)、東京ビッグサイトにて国内最大級のアナログゲームイベント「ゲームマーケット2023秋」を開催した。
ゲームマーケットについて改めて説明すると、ボードゲームを中心にカードゲームやマーダーミステリー、テーブルトークRPG(TRPG)など非電源ゲームが一同に集まった祭典で、コミックマーケットのボードゲーム版という感じの立ち位置だ。
TEXT / 松井 ムネタツ
EDIT / 藤縄 優佑
ゲームマーケットは毎年春と秋(冬)の年2回開催されており、今回は同人と企業を併せて1,100以上と過去最高のブースが並んだ。
参加者は2日間で計25,000人とコロナ前に迫る勢いで(参加人数最多は2019年秋の29,300人)、両日とも午後1時くらいまではかなり混雑していた印象だ。
本記事では、企業ブースがどんな新作をひっさげて出展していたのかをまとめつつ、ゲームマーケットの取り組み、「ゲームマーケット2023秋」における傾向をレポートし、最後に筆者が気になった一般ブースのゲームを紹介する。
では早速企業ブースから。エリア名のA01からB01~の順で掲載している。
「ゲームマーケット2023秋」の主催であり出展社でもあるアークライトのブースでは、新作の『六華』が目立っていた。大ヒットした『タイガー&ドラゴン』の制作陣が手がけたゲームが先行発売ということもあり、注目度が高かった。
ボードゲームショップの老舗であるメビウスゲームズとテンテイズゲームズが合同出展。メビウスゲームズは1995年に発売された名作の新版『エルグランデ』を、テンテイズゲームズはロール&ライト(ダイスを振り、その結果を元にシートへ書き込む)の『ハウス・オブ・キャッツ』を出展していた。
デジタルゲームも手がけるオインクゲームズは、小箱ケースに収まる統一サイズ(厚みはゲームによってまちまち)でボードゲームをリリースし続けているメーカー。
今回の新作は『いかだの5人』と『ヒュードロドロップ』の2作。『いかだの5人』はデジタル版(Switch/Steam/iOS/Android)も同時期に発売されたバランスゲームで、『ヒュードロドロップ』は片手でアイテムを握って落とすユニークなパーティゲームだ。
洋酒とボードゲーム好きな著名人が集まる「LIQUOR GAMES CLUB supported by SUNTORY(LGC)」が考案した『ミッドナイトカクテル』と『バーテンダウト』がとにかく人気。こちらも開場時から速攻で大行列が形成された。
日本のボードゲーム・アナログゲーム業界を牽引してきたメーカーのひとつ、ホビージャパンのブースでは、新作試遊や販売などを実施。壁に新作ポスターが貼られていたのだが、そこにさりげなくボードゲーム版『The Elder Scrolls V: Skyrim』の告知が……!
スクウェア・エニックスMDのブースでは、『ファイナルファンタジーVII リメイク ボードゲーム マテリアハンター』『チョコボの不思議なダンジョンボードゲーム』の試遊、『ファイナルファンタジーXIV TTRPG スターターセット 日本語版』の展示が行われていた。これは注目!
ボードゲームカフェ「JELLY JELLY CAFE」を運営するピチカートデザインのボードゲームブランドが、このJELLY JELLY GAMESだ。
今回の新作は2タイトルで、ひとつは同人サークルStudio GGがゲムマ2021年秋に発売した『きけんなさいくつ』をJELLY JELLY GAMESで製品化した『てのひらダンジョン』。もうひとつは、カナイセイジ氏がテスト版として「ゲームマーケット2022秋」に発売した『ローレルクラウン:デュエル』の製品版となる『ウィザーズカップ』だ。
どちらも15~20分でサッと遊べつつ、カードプレイが悩ましい内容となっている。
また1000円ガチャを実施し、とくに特賞の『ファーナス』セットを目当てにチャレンジしている人が多かった印象だ。
ハズレなしの1000円ガチャとっても好評です!特賞まだあります🔥#ゲームマーケット2023秋 pic.twitter.com/sCA2megrDe
— JELLY JELLY GAMES (@jelly2games) December 10, 2023
『HacKClaD』が大ブレイクしたSUSABI GAMESは、ファン獲得を競うアイドルカード対戦ゲーム『アイドルアライブ』を先行発売。こちらも発表時から話題で、あっという間に完売していた。
ittenはコンポーネントが凝っていることで有名なメーカーだ。今回出展された新作『TOKYO HIGHWAY Rainbow City』はまさにコンポーネントそのものの魅力が詰まったゲームといえる。
柱を積んで道路を立体的に交差させてクルマを置いていく内容で、とにかく映える。インパクトは写真を見ただけで「遊んでみたい!」と思わせるものだ。
ちなみに本作は、以前発売された『TOKYO HIGHWAY 4人版』をリニューアルしたもの。
『カタン』日本語版を手掛けているジーピーは、5種類の資源カードを交換しながらコンプリートを目指す会場内イベント『リアルカタン』を開催。また、毎度おなじみの『カタン 3D版』(定価46,200円)が当たる1000円ガチャも実施し、多くのファンが並んでいた。
『パンツァードラグーン』を作った二木 幸生氏が社長を務めるグランディングは、ドイツ年間ゲーム大賞ノミネート『街コロ』シリーズの最新作『街コロライフ』を出展した。同シリーズはこれまで「街作り」をテーマにしていたが、今回は「人生設計」がテーマとなっている。
一般ブースでは新作を中心に「これは新しい!」「これは何ともユニーク!」と感じたものを中心に紹介する。掲載順はブース番号順とした。
フルーツがたくさん書かれた透明なカードを配置して、自分のフルーツを並べてポイントを稼ぐ。2016年生産分がもう完売しているので、ボードや箱をリッチに、ゲームデザインも一部見直した新装版。見ているだけで美味しそう!
空気ポンプを使って風を送り、自分の船コマを一番先にゴールさせるレースゲーム。実際に風で船を動かすシンプルさが受けていたようで、試遊も盛り上がっていた。
プレイヤーが協力して星空を作り、お題を当ててもらう価値観×推理な協力ゲーム。星にはヒントとなるワードが書かれているが、星と星を結ぶ線が不等号チップとなっており、どちらのワードがより回答に近いかを表現するという内容だ。「ゲームマーケット2023秋」では400個が完売し、12月20日より一般販売を開始するという。
エナジードリンクを適量だけ飲んでハッピーを集めるカードゲーム。テーマがわかりやすく、カードを重ねて置くことで缶のサイズが大きくなっていくのをイメージしており、ビジュアルの完成度が高い。
ストリートアートとなる巨大なキカイを作って、ファンを獲得する2人専用ゲーム。とにかくそのアートデザインが目を引く! パッケージを見て「なにこれ?」と足を止める人を多数目撃した。
カードを配置して、恐竜の復元を目指すカードゲーム。可愛いイラストで、首や尻尾がどんどん長くなっていくのは子どもと一緒に盛り上がりそう!
マンカラ+バランスゲーム。シーソーのようなボードの上で、2種類の球を操作してバランスを取り、相手側にシーソーを傾かせるよう仕向ける。お手製のため数量は多く作れなかったとは思うが、予約だけで完売していた。
本を燃やして宗教や学問を弾圧する、4人専用の推理・投資ゲーム。本のカードが折り曲げられており、以下の写真のように並べることで隣の人のカードを半分だけチラっと覗き見できる、という仕組みがユニーク。
パッと見、似たような魚の写真を使った神経衰弱。カードには魚の名前が書かれていないので、ちゃんと見比べないと正解かどうかわからない(一覧はマニュアルにあり)。魚ごとの特徴をつかむのがコツなんだとか。
『オジサンメッセージ2』は、『オジサンメッセージ』の独立拡張(単品でも遊べるし前作と混ぜて使うこともできる作品)。ワードを組み合わせてオジサン構文を作るゲームとして、シリーズ累計3万部の大ヒットを記録している作品群だ。
出展された『オジサンメッセージ2』はゲームルールはそのままに、すべて新しいワードが収録されている。
布製の靴型と靴紐を使って、お題のオシャレな靴紐を完成させる。靴型のデザインは多彩で、どれを買うかを選ぶ段階ですでに楽しい。
2人でサッと遊べる紙ペンゲーム。ビジュアルが往年のレトロアニメを思わせるデザインで、デジタルゲーム好きならば『Cuphead』を彷彿とさせる。
特殊なデザインの折り紙を3回折って、お題と同じ模様を作るパズルゲーム。答え合わせする際は2枚の鏡を直角になるよう立てかけ、鏡の角に折り紙を設置してチェックする(下の写真参照)。
同じ重さのものを当てる神経衰弱。一流のシェフがバターの重さ比べに挑む……というフレーバーもよく、見た目も可愛らしくできている。重量は5段階で、必ず赤と青のセットで持ち上げていく。
2023年の流行語大賞にノミネートされた「蛙化現象」を題材にした、トークテーマ系ゲーム。時流に乗ったものをすぐゲーム化できるのも、アナログなゲームの強みかもしれない。
フェルトのボードに2色の毛糸を使ってお題を完成させ、他の参加者にお題を当ててもらうゲーム。何らかの制限がある中でお題を作る(書く)作品は今までもいくつかあったが、「縫う(実際はフェルトの穴に毛糸を通す)」アイデアは秀逸!
ラフレシアを模したボードに向かって円形のカードをプレイヤーが一斉に投げ、自分の色を3枚並べられたら点を得られるアクションゲーム。得点すればするほど投げる位置が遠くなるのが良いアクセントに。パッケージの箱を展開するとボードとして使える仕組みも面白い。
カードを獲得したら、そこに書かれた禁止・命令事項に従っていく……というまさに過酷な神経衰弱。
陣取り+セットコレクションゲーム。ネコの縄張りをテーマにしているが、ネコのコマが可愛い!! 筆者もほしくて取材の合間にかけつけたのだがすでに売り切れだった……。この内容での再販は予定してない、とのこと。
ゲームマーケットでは、企業やサークルのブース出展以外にもさまざまなエリアが用意されており、来場者がもっと楽しめたり、出展者がゲーム制作するうえで手助けになるような取り組みが行われている。その中からいくつか特徴的なものを紹介しよう。
アークライトブースのすぐ隣にあったのが、「ゲームマーケット・チャレンジ」コーナーだ。
これは事務局が提案するお題に沿って作られたゲームが展示されており、今回のテーマは「ポストカードが主役のゲーム」。限られたサイズの中でどんなゲームが生み出されているのか……みんなの創意工夫を見ることができて、「なるほど!」「そうきたか」という新鮮な感動もあった。
まだ手探りな企画コーナーではあるが、引き続き注目していきたい。
「ゲームマーケット・チャレンジ」は、この企画をキッカケにゲーム作りをしてほしい……というものでもあるのだが、この「チャック横町」は、実際に作ったものを売る場所として新たに設定されたエリアだ。
今でこそゲムマに出展されるゲームは、印刷所に刷ってもらう本格的な作品が目立つが、100円ショップで買い集めたものとプリンターで出力したものでまとめた、なんていうまさに手づくりな作品がたくさん並んでいたこともあったと思う。
このチャック横町は、そうしたかつての雰囲気を醸し出しつつ、もっと気軽に出展できる場所があってもいいのではないかということで、「箱無しのチャック袋ゲーム」のコーナーが設けられた。
同コーナーでは、2日間総入れ替えで合計60ブースが出展。話を聞いてみると「初めてゲームを作ってみました」という人が多く、かつてのゲームマーケットはこういうゲームがたくさんあったのかな、という雰囲気を味わうこともできた。
7枚のカードを使って立ったままで5分で遊べる2人対戦ゲーム『デュエルボーイポケット』が販売(500円/カード7枚)。遊びたい人が集まるプレイ用エリアも設定され、大きな盛り上がりを見せていた。
本作は、ゲームデザイナー上杉真人氏が「ゲームマーケット2022秋」で生まれた『デュエルボーイ』をベースにバージョンアップを重ねたもの。
それまでの『デュエルボーイ』とは互換性はなく、それまでのバージョンのカードを併用して遊ぶことはできない。だが、今回は事前にゲームマーケットのパンフレットにルールを載せていたこともあってか、過去2回とは比べものにならないほど多くの方々が会場内で遊んでいた。
対戦後は勝者・敗者が持つカード2枚を交換。交換するカードは敗者が選ぶため、敗者は強いカードをゲットしやすく、勝者はデッキが弱くなる。このルールのおかげで負けてもあまり悔しくないし、むしろ嬉しい場合もあるくらいだ。
何時間もずっと遊んでいる人もいて、まさにゲームマーケットならではの盛り上がりを見せていた。たくさんの人と対戦してカードをトレードする楽しさが大きな魅力の一つといえるゲームなので、事実上、ゲームマーケットに来場した人だけが楽しめる作品と言っていいだろう。次回以降も『デュエルボーイ』関連の展開があるかどうかはわからないが、もしあったならぜひ体験してみてほしい。
今回から試験的に導入された「ゾーニングエリア」も注目したい。
ゲームマーケットでは、過度なR18表現を使わない限りは基本的に出展可能だが、子どもへの配慮という事情から初めてゾーニングエリアが設置された。出展者側の判断でゾーニングが必要かどうか判断する仕組みだったが、今回は初めてということもあってか、「間違えてゾーニングエリアに申し込んでしまいました」というサークルが3~4箇所ほどあった模様。
たとえば、ホビージャパンから製品化された『Cat in the box』を生み出したサークル「操られ人形館」は、今回ゾーニングエリアにて出展。とはいえ、性描写のある作品を出展していたわけでもなんでもなく、単に間違えてゾーニングで申し込んでしまったという。
今後はこういったミスも減り、正しくゾーニングエリアが使われることを願う。
ゲームマーケットで購入したものをSNSで報告する際、その写真とともに「#ゲムマ戦利品」というハッシュタグを付けることが、いつからか通例となった。ここに目を付けた運営は、会場内に戦利品撮影スポットを設置。
ただ、気が付いた人が少なかったのか、活用している人はあまり見かけず、SNSに投稿した方もあまり多くなかったようだ。
試みとしては悪くないと思うし、積極的に利用できればしたいコーナーではある。実際のところ、箱を並べて真上(もしくは斜め上)から撮りたいという人が多いようなので、スポットそのものに改善の余地はありそうだ。
筆者は2012年ごろからゲームマーケットに一般参加や取材で足を運んでいるが、直近のゲームマーケット2023春および秋で感じたことをいくつか述べておく。
AIを使ってイラストを描くだけでなく、出題の答えをAIに聞く仕組みを取り入れたゲームも現れた。これからもさまざまな形でAIを活用したゲームがアナログゲームにも登場しそうである。
「ゲームマーケット2023秋」の来場者数25,000人という数字は、コロナ禍前に戻ってきた印象だ。東京ビッグサイトの西1ホールと西2ホールをつなげた広いエリアを利用して開催しているものの、正直今回は「狭い」と感じてしまった。
まず出展数が多い。2日トータルで1,100以上あり、会場内ほぼすべてが出展ブースで埋まっている。これまでのTRPGコーナーや名作を試遊できる「本当に面白いユーロゲームの世界」コーナーなどは、前回まではホールの中央あたりにドドーンと構えていたのだが、今回は壁沿いのエリアに押し込まれたように感じた。
また、2日目の日曜日は出展者が減り、多少なりとも空いたスペースに特設コーナーが設置されていたのだが、今回はそんな余裕もなく2日間ともブースでビッチリ。西1・2ホールだけではそろそろ手狭になってきた印象だった。
2024年の春に開催されるゲームマーケットの開催場所をカタログを確認したところ、東京ビッグサイトの東1~3ホールと明記されていた。これなら増え続ける出展者数にも対応しつつ、さまざまな特設サイトも設置が可能となるだろう。
取材する側としては「広すぎ・増えすぎで取材しきれない!」とマジな悲鳴となるが、今後も動向を追いかけていきたい。
ゲームマーケット 公式サイトアークライト 公式サイトパソコンゲーム雑誌、アーケードゲーム雑誌、家庭用ゲーム雑誌を渡り歩き、現在はフリーのゲーム系編集/ライター。マイベストゲームは『ウィザードリィ 狂王の試練場』で、最近だと『Forza Horizon』シリーズに大ハマリ。メインPCはAlienware Aurora。セガ・レトロゲーム系メディア「Beep21」副編集長をやりつつ、ボードゲームメディア「BROAD」編集長も兼任。
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