ゲームへの情熱あふれる「C4 LAN 2023 SPRING」
「C4 LAN 2023 SPRING」は無料・有料のゾーンに区分けされており、ゲームを持ち込む「BYOC席」は有料ゾーンに含まれます。
BYOC席の方々は、それぞれのスタイルで好きに遊んでいます。配信をしたり、仲間とその場で対戦したり、1人でゲームに没頭したり。ゲームをプレイする取り組み方はそれぞれでも、ゲームに対する好きへの気持ちは共通しているように感じます。
大勢が各々好きにゲームを楽しんでいる様子を目の当たりにすると、それだけでなんだかこちらも楽しくなってきます。
有料ゾーンにはステージも設けられ、オープニングや対戦会など、さまざまなイベントが実施された
一方の無料ゾーンでは、RTAイベント「RTA in Japan ex #2」、テクニカルクリエーションパーティ&コンペティションイベント「SESSIONS」が開かれたほか、プロゲーマーのボンちゃん選手と交流する「BONCHAN’s ROAD TRIP RETURNS」、ストリーマー6名による「超騙し合いブラザーズ」などのイベントも実施。
無料ゾーンはストリーマーなどによるイベントもあったからか、ゲーム好き以外の方々も多く訪れているように見えました。
「RTA in Japan ex #2」は無料ゾーンで展開されており、入場者は自由に観覧できた
「BONCHAN’s ROAD TRIP RETURNS」での様子(画像は公式サイトより引用)
静岡特産品の販売ブースや、PCの展示・体験ブースなども展開されていた
「C4 LAN」で「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」を実施した意図は?
「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」は、有料ゾーン内で展開されていました。同エリアでは個人・小規模のゲーム開発者が、ひたすら自作ゲームを開発する場所として使われます。
企画目的は、開発中ゲームの進捗を出し、修正したビルドをすぐに来場者に触ってもらうこと、としています。
同企画の発案・実施および運営は、ヘッドハイが担っています。今回の取り組みは初めてで実験的な意味合いも含んでおり、同氏の知り合いを誘ったうえで実現したと、ヘッドハイの一條氏は話します。
ヘッドハイ以外の参加チームは以下の通り。
UNLIMITED GAMES(Twitter/Webサイト)
イモタベルカ(Twitter/Webサイト)
XiKO(Twitter)
超OK(Twitter)
ノナプルナイン(Twitter)
「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」のコーナー
一條氏に、「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」についてお話を伺いました。
――どうしてこの企画を開催したのでしょうか。
一條:現在の日本で開催されているインディーゲームイベントは、「ゲームの展示」が主です。ゲーム開発者と来場者が互いに交流できるイベントが多いのは良いことです。しかし、イベント前後は準備や設営・撤収作業がありますし、期間中も接客対応などで忙しくなります。
もちろんそれがダメというわけではありませんが、肩肘張らずに楽しめて、お互いがフラットな立場で交流できるイベントもほしくなります。
今回の「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」は、そんな場を作りたくて試験的に企画しました。まずは、開発者自身が楽しいイベントであることを掲げて、合宿と展示の中間地点を目指しました。
「社会人パソコン部」というタイトルは、高校のパソコン部が学祭期間中に部室で好き放題やっていた雰囲気を再現したいという思いを込めています。
――「C4 LAN」の有料ゾーンを選んだ理由についても教えてください。
一條:会場までゲーミングPCを持ち込んでゲームを楽しむような、ゲーム愛にあふれたプレイヤーであればゲーム開発者と交流しやすいのではないかと思い、そんな方々のいる場所で実施することにしました。実際に、ブースに立ち寄って試遊していただいた参加者も多くいらっしゃいました。
私としては、ゲームを作る人の華やかな面だけではなく、普段の実態をゲーマーに見てほしいという意図がありました。9割以上の時間はツールを使った地味な作業と延々と向き合ったり、地道にコツコツとコーディングしたりしています。
なので、このイベントを「ゲーム開発者の蔵開き」と表現しています。
「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」の様子と参加者の感想
この企画を主導する一條氏もゲーム開発を進め、「なかなか手を出せずにいた地味な部分をやっつけるぞ!という気持ちで作業をして、なんとかその部分は形にできました」と、進捗報告しています。
一條氏は開発に励むだけではなく、インディーゲーム開発に関するミニ勉強会も実施した
「静岡はおいしいクラフトビールが多くて開発が捗ります。レンタル業者を通じて冷蔵庫を会場に取り寄せ、地元の酒屋で地元のビールを堪能しました」とも一條氏は話す。なお、酒類に関する「C4 LAN」の規約は「持ち込んだ本人が適度に楽しむ場合に限定し、アルコール度数10%以下の飲料に限り持ち込みが可能です。また、安全への配慮からガラス瓶の持ち込みも禁止されています」とのこと(「C4 LAN」公式サイトより引用)
本企画に参加したいくつかのチームに、企画への参加理由や開発中ゲームの進捗、感想などを伺いました。
UNLIMITED GAMES
UNLIMITED GAMESのtake氏が1人で開発する『VARIAVLE ARMS FRONTIER – 暁の皇女と忘れさられた惑星 –』は、戦闘機と人型の形態に変形できる可変メカが主役のオープンワールドTPS。
ツインスティックとフットペダルでの操作にも対応し、「C4 LAN」ではそれらを用いた試遊が可能でした。
参加経緯・目的
一條さんのツイートで本企画を知りました。インディーゲーム開発者さんと話をしてみたかったという気持ちと、イベントが地元での開催だったという事情から、参加してみました。
参加する際に課した目標と成果
操作チュートリアルの作成を目標にしました。また、目標地点や目標の敵の発生システム、ミニマップの表示など、ベースのシステムを完成させることができました。
感想
3日連続で参加できたこともあり、他の参加者さんと会話する機会が自然と増え、楽しく開発できました。モチベーション向上にもつながりました。
今回、初めて外でゲーム開発をしたのですが、家で作業するよりもしっかり成果を出したいという気持ちが強まりました。こういったイベントがまたあれば、ぜひ参加したいです!
本企画は夜になると一旦解散するが、take氏は遅くまで残って開発していた
「いつか整理しないといけないと思っているのですが……」と言いながら見せていただいた、素人目にも大変なことになっていることがうかがえる開発画面
ノート型ホワイトボードに仕様などを書き出すこともしながら、開発に取り組んでいる
イモタベルカ
イモタベルカは、デザイナーのべる氏、プログラマーのhkt氏の2人組のインディーゲームサークル。札幌を拠点にして活動しており、2023年3月に会社とチームを2人で起ち上げたばかり。
同サークルが開発している『Duel of the Grimoire(デュエル・オブ・ザ・グリモワール)』は、クトゥルフ神話をモチーフにした対戦型カードゲームです。カードの特徴が異なる3つの組織から1つを選んでデッキを構築し、リスクをはらむカードを駆使することが求められます。
ボードゲームオンラインセッション支援ツールを使って試遊
2023年にオンラインセッションツールで遊べる形態で頒布する予定で、デジタルカードゲームアプリも開発中だとしています。
なお、イモタベルカは、2023年7月30日(日)に開催するインディーゲームイベント「東京ゲームダンジョン3」にて、『Duel of the Grimoire』とは別に開発している「ぎゃる×紙相撲アクションゲーム!!」と銘打つ『ぎゃるすも』を出展する予定です。
参加経緯・目的
イモタベルカとしての開発の実績がなく、まず何のイベントから参加しようか悩み、一條さんに相談したところ今回の企画に誘われました。
参加する際に課した目標と成果
『Duel of the Grimoire』のゲームルールは作成していましたが、カードは仮デザインで、開発者以外でのテストプレイをしていない状態でした。ですので、目標はカードのデザインを進捗させること、そして、来場者の方に試遊していただくことに設定していました。
成果として、デザイン面では世界観を練ることに費やし過ぎて形としての進捗は生まれませんでした(笑)。試遊に関しては、Webブラウザで動作するボードゲームオンラインセッション支援ツール「ユドナリウム」を活用することで、試遊できる環境を整えました。試遊のおかげで、ゲームルールを一部見直す気付きを得ることもできました。
感想
3日にわたって他のインディーゲーム開発者さんとともに開発することで、交流を深められたり、刺激を受けながら開発が進んだりしたので、モチベーションが大きく上がりました!
また、「C4 LAN」自体に見どころが多く、魅力的なコンテンツに囲まれていたので、気分転換の休憩にも困りませんでした。
余談ですが、隙間時間で静岡観光や食事を満喫できたのも良い思い出です。機会があればぜひ、また参加を検討したいです!
カードの仮デザインとして、画像生成AIを用いている
ノナプルナイン
『ノナプルナイン』は、開発10年目を迎えた横スクロール探索型・科学アドベンチャーゲーム。研究施設のような建物の32階から出られない少女を誘導し、気になる場所を調査しながら物語を進め、謎に迫ります。
本作のメイン部分は1人で開発し、スクリプトエンジン、音楽、イラストなどの制作は都度依頼する形を採っているそうです。そんな『ノナプルナイン』も、東京ゲームダンジョン3に出展します。
参加経緯・目的
一條さんから誘われて参加しました。「C4 LAN」のことはまったく知らず、「開発合宿」という単語の印象から、旅館や畳の上で行うのかとイメージしていました。想像とまったく違ったイベントで驚きました。
参加する際に課した目標と成果
普段の作業の続きをするつもりでした。いつもはデスクトップPCを使っていましたが、持ち込むには大きすぎたのでノートPCを使って企画に臨みました。自分のノートPCの性能で作業できるタスクに絞り、開発していました。
感想
非常に面白い試みで楽しかったです。他の開発者さんとの出会いや交流もあり、すばらしい機会となりました。遠方から来られた方もいらっしゃって、こういう機会がなければそもそも知り合うことがなかったと思います。「C4 LAN」自体も、まったく知らないものだったのでとても新鮮な気持ちで参加できました。
ほかのチームもバリバリ開発
回避の楽しさに重点を置いた、スタイリッシュなアクションゲーム『ExXxE』を開発するのは、チーム「XiKO」です。今回の企画には、チームのうち2人が参加していました。
「超OK」は、水中・空中の動き方や読み合いが大切な対戦ゲーム『ツキササリーナ』を開発していました。なお、同チームは「『FAIRY TAIL』オリジナルゲームコンテスト」で大賞を受賞しており、『ムキムキ筋トレ競争課』も開発しています。
次回の「C4 LAN」でも開発の様子は見られる?
次の「C4 LAN」は、2024年4月27日(土)〜29日(月)の日程で、ツインメッセ静岡にて開かれることが発表されています。
ヘッドハイは、「開催のフォーマットは固まったので、もし次回があるならば公募したい」とお話していたので、次回の「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」の開催も期待できそうです。
個人的には、初めて参加した「C4 LAN」の居心地が良すぎて、2日目で帰る予定を延期。宿も取っていなかったので3日目の朝まで会場に滞在し、寝不足のまま次のゲームイベントに参加することになりました。次回は、「BYOC席」で一般参加しながら「社会人パソコン部 インディーゲーム開発合宿」の様子を見に行けたらと思います。
「C4 LAN」公式Twitter「C4 LAN」公式サイト
編集プロダクション「浦辺制作所」に所属。ITやゲームにかかわる書籍・Webメディアにおいて、執筆と編集を担当している。ゲーム全般が下手だけど好き。
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