2022年8月7日(日)、東京都立産業貿易センター 浜松町館にてインディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」が初めて開催されます。ゲームイベントの主催といえば企業・団体というイメージを抱くかもしれませんが、東京ゲームダンジョンの主催は岩崎 匠史氏ただ一人のみ。自身もインディーゲーム開発者である岩崎氏に、東京ゲームダンジョン開催のいきさつや詳細を伺いました。
INTERVIEW & TEXT / arissa
EDIT / 藤縄 優佑
岩崎
2016年からUnityのもくもく会を70回以上開催、2022年に東京ゲームダンジョンを立ち上げる。30代後半から個人でゲームを作り始めたおじさん。
インディーゲーム開発者が参加しやすい展示会に
ー「東京ゲームダンジョン」の概要を教えてください。
「東京ゲームダンジョン」は、インディーゲーム開発者さんが一般の方に向けて作品を披露し、試遊などしていただける展示会です。気軽に参加可能な発表の場を設けることで、開発者さんがやる気になって作品を完成、ないし区切りの良いところまで作り上げる原動力になれたらと思っています。
僕は、Unityを使った勉強・開発をしている人たちが集まってもくもくと作業する「Unityもくもく会(以下、もくもく会)」を5年ほど主催しています。「東京ゲームダンジョン」は、開発者さんを応援するという意味では、もくもく会の延長線上にあるものと捉えています。
ー「東京ゲームダンジョン」に出展する方々も、もくもく会に参加している方が多いのでしょうか?
僕が主催するもくもく会は作品を作る場でもありますが、参加者さん同士がどれだけ苦労しているのかを知っているので、作品に対して公平な評価をしづらい傾向にあります。ですので、もくもく会のことを知らない方々に作品に触れていただき、改善点などに気付きやすくする環境としても提供しています。
そういった意図もあったので内輪ノリの強い展示会になるかもと予想していたのですが、ほとんどの出展者さんはもくもく会と無縁の方たちですね。驚きと同時に嬉しくも感じています。
ー公式サイトを拝見すると、出展料が安いことを特徴の一つに挙げています。
出展料を安価にして、出展のハードルを少しでも下げたい狙いがあり、180×90cmのスペースで5,500円に設定しています。欲を言えば、赤字を覚悟してでももっと安くしたかったですね。ただ、この企画を知り合いに話すと、「1回で終わりにしないでほしい」と皆さんが言ってくれました。
期待に応えるべく安価な出展料でも運営できる会場を探したところ、産業貿易センターさんにたどり着きました。産業貿易センターさんは中小企業を応援していまして、「東京ゲームダンジョン」もその恩恵を受けられた結果、この料金を実現できました。
ー出展に関して条件などは設けていますか。
出展者さんのオリジナル、かつ成人向けでないデジタルゲームであることは出展の条件にしています。できる限り出展者さんの要望に合うものを展示させたいので、出展に関するルールはあまり設けないようにしています。
「インディーゲーム展示会」と掲げているので、大きなゲーム会社さんが応募してきたら困ってしまいますが、小規模や個人で作っていれば問題なく申し込めます。
ー料金も条件も出展しやすさに寄与していて、岩崎さんのお話する通り、インディーゲーム開発者さんにとって参加しやすそうな展示会だと感じます。「東京ゲームダンジョン」の開催を発表してからの反響はいかがでしたか。
80スペースの募集に対して145件の申し込みがありました。4割ほどの方は出展できなくなってしまい、申し訳なく思います。
もくもく会に頻繁に参加している方にとっては、「岩崎が面白いことをしているぞ」という風に楽しみにしてくれていますが、僕のことを知らない人からしたらよくわからないイベントに見えるだろうと考えていました。しかしながら、個人からメディアの方まで開催情報を掲載・拡散していただけました。開催日当日は取材に来てくれるメディアさんやテレビ局もいるみたいですし、想定より反響が大きくてありがたいです。
ー「BitSummit」の開催日が重なってしまったのが残念でしたね。
知り合いに開催日が重なったことを教えてもらって初めてそのことを知りまして、「えぇ!?」とびっくりしました(笑)。「東京ゲームダンジョン」は今年2月に開催日を発表し、その時点では「BitSummit」の開催日はわかりませんでした。「BitSummit」の開催時期は流動的で、なんとなく今年は9月かなと踏んで、重ならないよう8月に設定したつもりでした。
開催日が重なったことが判明してから、知らない人からもDMが届くくらい、いろいろな方々に励ましの言葉をいただきました。残念がっていた方も多かったのですが、僕はあまり落ち込んでいません。開催地が東京と京都で遠いですし、規模も違います。インディーゲーム開発者さんから見たら、出展するハードルも異なります。「インディーゲームのイベント」という点は同じでも中身は全然違うので、影響はそこまで大きくないのかもしれません。
「東京ゲームダンジョン」への思いと今後の開催予定
ー「東京ゲームダンジョン」という名称は目を引きます。
知り合いと案を出し合って決めました。試遊会やお披露目会という趣旨で開催するイベントですので、ビジネスっぽさを感じさせない名前にしたかったですね。ゲームに触れてきた方々であれば馴染み深い言葉でありながら、イベント名にはあまり使われない単語が良い、と考えた際に「ダンジョン」を付けることを思い付きました。
僕にとって出展者の皆さんは「モンスター」というイメージを抱いていて、「ダンジョン」はしっくりきている単語です。
ー出展者さんはダンジョンで待ち構えているモンスターのポジションなのでしょうか。
そうですね。ゲームを開発していると、作っているものが面白いのかわからなくなったり、終わりが見えず迷宮入りしてしまったりしてしまう苦しみがつきものですが、それでも作らずにはいられません。そうした苦しみを背負いながら年中ずっとゲーム作りに囚われているゲーム開発者さんたちを、モンスターに見立てています。
「東京ゲームダンジョン」では、モンスターは作品という宝物(モンスターによっては墓標になっているかもしれません)を携えて会場でお待ちしているので、来場者の皆様には冒険者としてお宝を探しにきていただきたいです。好みの作品が見つかるかもしれないですよ。
ー「東京ゲームダンジョン」ならではの世界観ですね。そんな「東京ゲームダンジョン」の主催は、岩崎さん一人なのですね。
一人だとイベントの方針を素早く決めやすいため、一人で動きたい性分なのでしょうね。僕はソロでインディーゲームを開発することが多いですし、もくもく会も一人で始めたので、その流れでやっちゃっています。
もし規模が大きくなってもコアな部分は一人で進めていくはずですが、すべて一人とはいかないでしょう。「東京ゲームダンジョン」も、開催当日はスタッフの方に助けてもらいますしね。
ー次の開催についても考えているのでしょうか。
2回目は今冬に開催しようと計画していまして、会場も押さえています。始めるよりも継続することのほうが大変ではありますが、長く続く展示会にしたいです。
直近の目標としては年に2回、安定して開催できるように考えています。もしも出展の応募が毎回殺到してしまったら、年4回くらい開催するのも良いですね。気付いたらいつも開催している展示会があるな、と皆さんに認識してもらえるように運営したいです。
ー開催を終えていないので気が早いかもしれませんが、今回の運営で気付いたことなどはありますか。
今回の出展の申し込みにおいては抽選方式を採っていますが、申し込みの手順で一部の方を混乱させてしまいました。申し込みページに申し込み方法と手順は書いていましたが、意図せずキャンセル扱いになってしまった方がいました。次回からは、こちらから確認メールを送るなどして対策するつもりです。
また、次回は抽選ではなく先着順に切り替えようと考えています。 主催が僕一人なので、抽選と謳いながらも僕がコントロールしていると思われる可能性があることに気付いたからです。それに抽選だと当落の待ち時間が長く、スケジュールを組みづらくなるんですよね。でも、先着順なら出展できるか否かがその場でわかり、目標が立てやすくなりますし、モチベーションも保ちやすくなります。
ーインディーゲーム開発者さんに寄り添って改善される姿勢が見え、今後の「東京ゲームダンジョン」も期待できますね。最後に、「東京ゲームダンジョン」の出展者や来場者の方々に向けたメッセージをお願いします。
ぜひ来てください~!とは気軽に言えない、時世的に非常に厳しい中での初開催となりました。出展者も来場者の方も、健康を最優先に考えていただければと思います。
バラエティ豊かで面白い作品が多く集まりましたので、皆の期待を裏切らないようなイベントだと自負しています!当日お会いできるのを楽しみにしています。「東京ゲームダンジョン」やもくもく会などを通じて、インディーゲーム界隈を皆と一緒に盛り上げていきたいです!
東京ゲームダンジョン東京ゲームダンジョン チケット情報インディーゲーム翻訳者、ゲームデザイナー勉強中。時々ゲームメディアにも翻訳、インタビュー、イベレポ記事の執筆で関わっています。ゲーム以外は、旅人映画が好き。
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