「どんなゲームか説明できない」、それでもいい。クリエイターの哲学が生んだ意欲作『Dreams of Another』のコンセプトを紐解く【簗瀬×神山のゲームデザインインタビュー #2】

「どんなゲームか説明できない」、それでもいい。クリエイターの哲学が生んだ意欲作『Dreams of Another』のコンセプトを紐解く【簗瀬×神山のゲームデザインインタビュー #2】

2026.04.09
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ゲームメーカーズ編集長の神山大輝とユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬洋平が気になるインディーゲームのゲームデザインやクリエイティブを深掘りしていく連載インタビュー企画「Unity簗瀬×神山のゲームデザイン深堀りインタビュー」。

第2回では10月10日にリリースされた『Dreams of Another』をピックアップ。『PixelJunk』シリーズで知られるQ-Gamesの最新作は、抽象化して散らばった世界を「銃で撃つ」ことで具体化していく、新感覚のプレイが楽しめる3人称アクションゲーム。

誰もが目を奪われる新感覚ビジュアルやシステム、そして「破壊なくして創造はない」というテーマなど、作品の世界をインタビューでじっくり解き明かしていきます。

INTERVIEW / 神山大輝、簗瀬洋平

TEXT / ハル飯田

EDIT / 神山大輝、Baiyon

目次

「変な人」と出会い、『PixelJunk Eden』誕生へ

神山 大輝(以下、神山):ゲームデザイナーの簗瀬さんと一緒にさまざまなゲームを深掘りする連載企画!今回は『Dreams of Another』を取り上げます。

簗瀬 洋平(以下、簗瀬):ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの簗瀬です、よろしくお願いいたします。

神山 大輝

ゲームメーカーズ 編集長

簗瀬 洋平

ゲームデザイナー/シナリオライターとして17年間ゲーム開発に従事。現在はユニティ・テクノロジーズ・ジャパンでアドボケイトとして活動

Baiyon氏(以下、Baiyon):Q-Games クリエイティブディレクターのBaiyonです。「マルチメディアアーティスト」として、音楽やアートから始まり、ゲームだけでなく、ビジュアル作品やレーベル運営、以前は漫画を手がけたり、ファッションなど、とにかくやりたいこと、やれることはやってみようというスタンスで活動を続けています。

最新作Dreams of Anotherでは企画ディレクション、アート、サウンド、シナリオなどを手がけました。

Dylan Cuthbert氏(以下、Dylan):Q-Games代表取締役社長、Dylan Cuthbertです。キャリアのスタートはプログラマーですが、技術もゲームデザインも大好きで、アートやミュージックも含めてすべてに興味があります。

Q-Gamesは24年前に設立して、これまでもさまざまなジャンル・種類のゲームを作ってきました。『Dreams of Another』はその最新作です。

Baiyon

Q-Games クリエイティブディレクター。マルチメディアアーティストとして、音楽やアートからゲーム、ビジュアル作品まで幅広く手がける

Dylan Cuthbert

Q-Games代表取締役社長。プログラマーとしてキャリアをスタートし、技術とゲームデザインの両面からゲーム開発に取り組む

「マルチメディアアーティスト」がゲーム制作を始めた理由

神山:まずはBaiyonさんがどのような理由でゲーム開発に興味を持ったのか、そしてDylanさんと出会い、今回のような挑戦的なタイトルを作ることになったのか、経緯を教えてください。

Baiyon:僕の場合はそもそも音楽やアートを「あっちやったりこっちやったり」していたんですが、その両方が交差するポイントを探して、自分の運営するレーベルのために音楽だけではなくCDやレコードのデザインも手がけていました。ただ、CD時代の終わりも同時に来ていました。

当時は「STUDIO VOICE(スタジオボイス)」というサブカルアート、グラフィックデザイン業界の登竜門的な雑誌があって、長年活動する中で、特集として作品群を紹介していただいたのですが、そのタイトルが「CD消滅前の最終ジャケット・デザイン大全」だったんです。

Baiyon:音楽を作って、一緒に楽しんでもらいたい世界観をビジュアルで表現しても、おそらく音楽データを取り込まれた後の自分のCDが発売数日後に中古屋に並んだり。それで「他の方法で僕の音楽と、それをより楽しんでもらえるなにかをセットにしたものを作ることはできないだろうか?」という気持ちになり、以前から大好きで、音楽やビジュアル作品などを作る時にインスピレーションを貰っていたゲームを作りたいと思うようになりました。

昔からゲームは好きでしたが、若い頃は「遊び」としてしか捉えていなくて、例えば『ワイプアウト』は面白くて他とは違う、そしてかっこいいとは思ったけど、イギリスのリバプールで作られたこととか、デザイナーズ・リパブリックが生み出した世界観やカルチャー背景とかまでは全く気づいてなかったですね。

後にアイルランドの音楽フェスに参加した時に、PlayStationがスポンサーをしていたり、イギリスのクラブでDJした経験などを通して、ヨーロッパの音楽の歴史や、クラブカルチャーを実際に体験して、このようなカルチャーや感覚をゲームを通して伝えようとしていた人はずっと前から存在していて、ゲームはその交差点になり得るのだと実感すると共に、僕は一人ではないのだと勇気づけられましたね。

当時の初代PlayStationの時代は、戦略的にアーティストやクリエイターが前に出ていくタイミングでもありました。あれは、音楽でやってきた「アーティストを前に出す売り方」を、ソニーがゲームにも応用したような動きだったと思うんです。つまり、作品だけでなく「誰が作ったのか」を含めて提示するやり方が、ゲームの世界にも持ち込まれた。

僕にとってそれは大きな出来事で、「ゲームはクリエイターの表現メディアになり得る」という可能性を意識するきっかけになりました。ゲームもまた、作り手の思想や美意識を前面に出せる場なのだ、と意識するきっかけになりました。

Baiyon氏はゲームディスクをアーカイブする「Gamedisc Beauty」というInstagramアカウントを運用している。「こういうコレクションをするくらい、PlayStationの影響は大きかったんです」(Baiyon氏)

簗瀬:PlayStationの時代というと、かれこれ30年ほど前ですね。

Baiyon:当時中学生の時、PlayStation発売前に創刊したゲーム雑誌の一つにコントローラーのプロトタイプのモックアップが大量に並んでいる写真が載ってたんですよ。僕にとっては「プロダクトの歴代ボツアイデアを見せる」という過程を見せてくれる感じがすごくクールに写ったんです。

デザインは完成に近づきクオリティーが上がるほどに、苦労した作業の痕跡は消えていくという宿命のような部分がありますが、こういった“本来は表に出るはずがないもの”を共有して、何かが生み出される瞬間の高揚感を共有しようとするプロモーションを仕掛けてきたことにグっと来た記憶があります。

神山:そこからゲーム開発への道が繋がると。Dylanさんとの関係はどのように始まったのでしょうか?

Baiyon:ゲームを作りたいとは思っていたのですが、当時はゲームエンジンもないですし、やり方も分かりませんでした。そんな時、たまたまDylanと共通の知り合いの忘年会に参加したことで知り合ったんです。

僕が「ゲームを作りたい!」という話をしたら「じゃあ1回会社に来てみる?」という流れになって、それが『PixelJunk Eden』の原型になっていきます。

2008年リリース『PixelJunk Eden』(画像はSteamストアページより)

Dylan:ゲーム(『PixelJunk Eden』の発売)が2008年だったから、確かあれは2006年の忘年会だね。

神山:お互いの最初の印象は覚えていますか?

Dylan:共通の友達からは会う前に「ゲームを作ろうとしている変なやつがいる」とは聞いていて、パーティーで出会った時にはすぐその話になりました。よく考えたら結構な偶然だったんですが、お互いに「もしかして話に聞いていた人?」みたいになって。

簗瀬:その「変な人」というのも、関西の人にとっては「面白い人」のような褒め言葉ですよね。

Dylan:僕はその時『PixelJunk』シリーズを作り始めたばかりでした。最初は昔のゲームセンターにあるような2Dゲームを作ろうとしていて、2番目はちょっと任天堂っぽいゲームにしようと思っていました。その2番目の作品が『PixelJunk Monsters』ですが、これも当初は『ゼルダの伝説』シリーズのような作品を意識しながら作りました。

3番目のゲームでは、アートが強い抽象的なゲームを作りたかったんですが、どう作るのかアイデアも全然なかったので、京都のローカルなアーティストを探していたんです。というのも『PixelJunk Monsters』の時にも京都のミュージシャンに参加してもらっていたのもあって、ローカルのアーティストやミュージシャンとコラボレーションしてみたかったんですよ。そこでちょうど音楽もアートもできるBaiyonと出会えて、すごく良いタイミングでした

神山:Baiyonさんが「ゲームを作りたい」と公言していたことで、友人を介して事前に話が繋がっていたのが良かったですね。

画像は『PixelJunk Monsters Ultimate』のもの(Steamストアページより)

Baiyon:その後ゲーム関係だと『リトルビッグプラネット2』や、インディータイトルなどに参加したり、『ストリートファイターII』や『ダライアスバースト』などゲーム音楽のリミックスも色々手がけたりしました。そして、Q-Gamesとは再びコラボレーションしてPS3/Moveコントローラー専用タイトル『PixelJunk 4am』を制作しました。これは元々Edenの好評だったビジュアル部分でビジュアライザーを作ろうという流れから、自分で音楽を作ることができる配信プラットフォームという形まで発展していったタイトルです。

当時『リトルビッグプラネット2』の音楽を作るために開発元のMedia Moleculeのあるイギリスのギルフォードまで行って、しばらく滞在していました。ギルフォードはピーター・モリニューが設立したライオンヘッドスタジオなどの流れがあり、小さな町ですがゲームのコミュニティーがあって、さまざまな開発会社の人がいたので、夜な夜な地元のバーに行って、いろんな人と交流してとても有意義な時間を過ごしました。

そして、飛行機で帰ってきたその足でディランとQ-Gamesのメンバーで山奥に行って自ら出演する『PixelJunk 4am』のトレーラーを撮影したので、撮影時は時差ボケで死にそうになってました。

神山:Q-Gamesにジョインする前から、ずっとお付き合いは続いていたんですね。

Baiyon:仲は良かったし、ウェルカムな雰囲気も感じてはいたんですけれど、「自分で色々なことをやってみたい」と思っていたんですよ。

ただ、Q-Gamesに僕の仕事が好きだと言って面接に来る人がポツポツ要るとも聞いていました。また、フリーランスでやっていると毎回違うチームと制作することになり、チームに共有した制作に至るまでの感覚や、知識などが毎回リセットされてしまうから、そういうものを継続的に共有できる場所はないだろうかと思うようになり、自然とQ-Gamesにジョインする流れになりました

「ポイントクラウドありき」で生まれたゲームデザイン

神山:ここからは、長年の関係であるおふたりの最新作『Dreams of Another』について聞いていきたいと思います。今回のプロジェクトにおける役割と関わり方、そして開発規模や期間についても教えてください。

Baiyon:プロトタイプで6ヶ月で、開発全体は約3年です。僕は最初の「こういうゲームで、ゲームプレイがこうなって」というコンセプトを作って、アートのディレクションとサウンドをやりつつ、キャラクターやシナリオとセリフも書いて、全体を見ていました。

僕は本格的に3Dゲームをディレクションするのは初めてでした。またポイントクラウド演出もあって、『PixelJunk Eden』みたいに自分自身の作ったものが直接描画される訳ではなかったので、ここはDylanの力が必要でしたし、後半はポイントクラウドのビジュアルのブラッシュアップをすごく本気でやってくれました。

Dylan:最終的に僕が入らないとBaiyonが考えているビジュアルにならないかなと思って。でも、前半のプロトタイプの時もかなり力を入れてやりましたよ。

開発規模としては、プロトタイプ時点ではプログラマー、アーティストなど3、4人ぐらいでしたね。本制作のメインチームは10人~12人くらいですかね。

本制作ではメインのプログラマー、アーティスト、3Dモデル担当がいて、パーティクルに関わるプログラマーも2人います。あとはゲームプレイプログラマーが2、3人。ほかはプランナーやオーディオなどの職種でした。

Baiyon:僕が一番最初に作ったコンセプトアートがあるんですが、今のゲームのビジュアルとほぼ一緒なんですよ。それを技術的にどれぐらい表現できて、どうやったらリッチに見せられるかを、Dylanがかなり掘ってくれました。

最初期のコンセプトアート

簗瀬:このゲームは、ルックの研究をしている時間が長かったのか、それとも実装しながらルックを調整していく方が長かったのでしょうか?

Dylan:ずっと並行してやっていた感覚ですね。一番最初にゲームが生まれた時は、Baiyonのアイデアがベースでしたが、やっぱりビジュアルも含めたインパクトのあるものが欲しいと思ったんですよ。

きっかけは、とあるアーティストが作っていたUnityによるパーティクル表現のデモを見かけたことです。「Unityでこんなインパクトあるものが作れるよ」とBaiyonに伝えたら、その時は「へえ〜」という感じで。

その後に新しい企画を考える時に、「ポイントクラウドを使うこのアイデアはどうですか」と出てきたのが、今の“『Call of Duty』の逆“みたいなゲームでした。

ポイントクラウドで表現された、ぼやけた世界を銃で撃つ。少しずつ具体化され、世界が現れるという斬新なシステムは、まさに技術先行で生まれたゲームデザインと言える

Baiyon:以前からポイントクラウドは様々な映像作品やクラブのVJなどでも見たことがあったんですが、ポイントクラウドの映像って、「粒が集まってモノになる」という見せ方が多いじゃないですか。それを見たときに、「これを逆にしたらどうだろう?」と思ったんです。

大きなポイントクラウドの粒を銃で撃つと、衝撃で細かくなって飛び散り、同じ場所にまた戻ってくる。それを繰り返すことで、どんどん具体化されてモノが形作られ、世界の解像度が上がっていく。そうすれば、撃つことで“壊す”のではなく、“創っている”感覚にできるんじゃないか、と。

その発想と、「破壊と創造」という自分の中にあったテーマが、ポイントクラウドと全部つながった感覚でした。

Dylan氏の高い技術力で実現したポイントクラウド&透明表現

Baiyon:ポイントクラウド表現に対して、「透明」というのが自分にとってすごく重要だったんです。すべてを透けさせたいと思ったんですが、最初は描画が大変でオペーク(不透明)のままで。ただ、僕としてはもう「透明以外ありえない」くらいの感じでしたし、開発途中に透明が入ることで一気にレベルが一段あがった感覚がありました。

簗瀬:奥行きも大きさもある半透明のモノが重なっていくというだけで、負荷を考えるとゾっとしますね。ポイントクラウドの数も多いので、技術的にも高度だと感じます。

Dylan:プロジェクト終盤、最後の1年ぐらいはずっとビジュアルばかり修正していました。Baiyonはエンジニアではないので、私が議論に入ることもありました。最も大変だったのはフレームレートの維持です。最適化にはごく一般的なものが多いですが、時間を使いました。

簗瀬:データの持ち方はどうなってるのでしょうか?複数段階の解像度をモデルデータとして持っているのか、位置関係のようなデータがあって、そこから広がったものを生成していくのか。

Dylan:基本的にはベースとなるモデルが配置されたレベルがあって、ロードした段階でポイントクラウドに変換されます。ポリゴンがあったところにパーティクルが作られる形で、粗さや密度設定も可能です。これを撃つことで元(のモデル)に戻っていきますが、ポリゴンレベルまでは戻らなくて、その近い形まで変化するようなイメージです。

ポイントクラウドにはいくつか設定があって、抽象化される際の動きや大きさなどがパラメータで制御できるようになっていました。これは「抽象化システム」と呼ぶことができるでしょう。その上に「演出システム」が乗っているような仕様になっています。

Unityの各レベルにモデルをロードし、事前計算ではなくリアルタイムにポイントクラウドに変換する

簗瀬:最初にモデルデータをロードしてから抽象化された状態を計算しなければならないので、時間がかかりそうですね。ただ、周りのものはほとんど全て抽象的なので、あまり遠くのものをロードしなくてもいいのでしょうか?

Dylan:いいえ、基本的にはすべてロードしています。オリジナルのカリング技術を用いているので、ロードにも大きく時間は掛かりません。エディタ上ではカリングされるパーツがピンク色で表示されているので、カメラを動かしながらカリング位置を調整していきました。

完璧に計算しようとすると本当に重いんですが、うまく誤差の範囲で80パーセントぐらいカリングできるようになっていて、速度がかなり違います。そこまで完璧に計算する必要がないというのが一番大事でした。

Baiyon:ポイントクラウドは「あればあるほど美しい」という訳ではもちろんないですし、アートのコンポジションの美しさは本質的には物体そのものよりも隙間が大事なんですよ。これはアートやデザインの基本です。

そう考えていくと、僕からすると、全体の風景で捉えた時にはカリングも一種のペインティングにおける「主となる要素に対するマイナス部分」と捉えられるんですよね。「もうちょっと少ない方がかっこいいな」とか「良いバランスだな」といった感じで調整を進めました。

神山:改めて整理しますと、抽象化用のシステムと演出用のシステムの2つがあり、抽象化システムは元のモデルに対して「粗さ」や「ポイント数」という変換のための設定項目によって、モデルをポイントクラウドに変換しているということですね。

Dylan:そうですね。加えて、3Dセクションの場所ごとに「抽象度」と言いますか、どの程度具体化するかというデータがあって、作られたポイントクラウドがデータに応じてさまざまな状態で描画されるというのが基本のシステムです。

神山:それはモデル単体がそれぞれ持っているパラメーターとは別なんですね。

Dylan:最初はポリゴンデータがあって、ロード時にパーティクルに変換されます。その後にリアルタイムで抽象化システムが入って、本当にピンポイントで演出用のシステムを使えます。例えば「この抽象化されているパーティクルを竜巻みたいに動かしてください」とか、「プレイヤーを溶かしてください」とか、そういった演出が可能です。

白黒が混ざり合う、実存的な場所

神山:システム面についてのお話でも触れられていましたが、改めて『Dreams of Another』の核となるコンセプトを、Baiyonさんの言葉で紹介していただけますか。

Baiyon:先ほどDylanから『Call of Duty』というタイトル名が出ましたが、自分が以前からTPS/FPSをプレーしていた時に、ちょっとした実験をして遊んでいたんです。

どういう実験かというと、プレーする時のBGMをグレン・グールドのソナタのようなクラシック音楽などに変えてみるというものです。

すると、ゲームの雰囲気はガラリと変わり、感傷的な空気が漂うようになりました。 そして、「今撃ち殺した人にも家族がいたのかな」とか、「今ぶっ壊したマンションで誰かが家族団欒していたかもしれないな」とか、敵という一括りで捉えていたものが解きほぐされ、個々のパーソナリティが気になるようになったんです。

つまり、作り手がおそらく想定していなかった、一種の実存的な場が立ち上がってくる感覚があったんです。ここで言っている「実存的な場」というのは、世界をシステムや役割としてではなく、一つ一つの存在として感じてしまう瞬間に立ち上がる体験のことです。

神山:面白い感覚ですね。同じシーンにおいても、異なる音楽が別の体験や感情をもたらすと。

Baiyon:僕は音楽を作ってるから、「この効果いいな」って思ったんです。そしてもう一つ大きかったのが、ピアノソナタみたいな少し悲しい音楽が流れている状況で敵を銃で倒していく… その画面を見ている時に、「死」ではなく、むしろ逆の「生」が浮かび上がるような感覚を覚えたんです。

例えば、僕は花火が好きなんです。特に音がすごく好きで、近くに行けば行くほど涙が出るくらいに。皆さんも大きい打ち上げ花火が夜空に消えていく瞬間は好きじゃないですか?あれは「全ての人間はいつか死ぬ」ということと響き合うことで生まれる感動だと思いますし、だからこそその“消える瞬間”にこそ儚さと共に生を感じたりするものだと思っています。

簗瀬: ゲーム内のパラメーターのやりとりとしては通常のTPSと同じでも、表現が違えばまったく別の印象になるということですね。

Baiyon:生を知覚するには死を知らなければならない。逆もしかりです。その考えに完全に納得しているわけではありませんが、生と死を分離不能な一つの構造として捉えると、その境界線には何があるのか、あるいは二項対立だけでは見えてこない部分に、自然と興味が向いていきます。そうした関心が、ポイントクラウドを見たときに、「生と死」というイメージと強く結びついたんです。

Dylan:「Creation from Destruction」とか「Destroy to Create」みたいな感じですね。

Baiyon:ものを作るということは、何かを壊したり、手放したりすることと切り離せない。一種の儚さを含んでいると思います。 ただ、その儚さと強さは矛盾せずに共存できる。僕らはそのあいだのグレーの中を、少し濃くなったり、少し薄くなったりしながら、日々行き来しているんじゃないでしょうか。

『Dreams of Another』では、その感覚をもとに、「人によっては笑えて、人によっては泣ける」——笑いと涙が同時に立ち上がる体験を作りたいと思っていました。たとえば『探偵ナイトスクープ』のように、くだらなさの中に、ふと心を掴まれる瞬間がある。あの感じです。

白黒では割り切れない、混ざり合った場所のバランスを、僕自身ずっと探し続けています。そして、そういうものに惹かれる人は、僕と同じで決して精神的に強いタイプではないかもしれない。だからこそ、その人たちにとっての心の隠れ家のようなものを作れたらいいなと思っていました。

アイテムに込められた意図をDylan氏が汲み取って完成した「渡す」システム

神山:序盤から登場する「離婚してしまった人の結婚指輪をオークションなどで集めたモニュメント」は印象的でした。

Baiyon:そうですね。結婚指輪は、実際にオークションなどで売られているんですよ。 ゲームとは特に関係なく、以前からその状況自体が気になっていて調べていました。 単に手放す人がいる、ということ以上に、 名前や日付が刻印されたままの指輪を売る人がいる、という事実にまず驚いたんです。 さらに、それを買う人がいるという点も含めて、とても興味深く感じました。

しかもオークションという形式では、そこに込められていた個人的な価値や背景とは関係なく、あくまで「物」として価格が競り合われていく。ただ、元の持ち主にとっての価値は、おそらくその値段とはほとんど別のところにあったはずなんですよね。

なので、結婚指輪そのものより、刻まれた文字を消す「加工」のほうに、以前から興味がありました。 それで、いわゆる結婚指輪を扱っているお店に行って、変な顔をされながらも 「指輪に刻まれた文字を消す加工ができるのか」「それはいくらかかるのか?」「実際にそうした依頼をしてくる人はいるのか」 といったことを聞いて、リサーチしていたんです。 そうした経験が、後からゲームのアイデアを考えているときに、ふとうまく繋がりました。

最初から離婚後の話を聞いてくる客はいないでしょうから、かなり変人扱いされましたけどね。

神山:そのあたりも取材に基づいているんですね。

Baiyon:常に日常から気になることは調べたり、メモをとったり、音をとったり、ライフワークとしてやっています。それらが制作で想像もしない形で結びつくことは本当によくありますね。

このモニュメントは「エターナル・アップサイクル」という名前で、「終わってしまった“永遠の愛”を、別の形で循環の中に戻し生まれ変わらせる」という意味を込めています。あえて「リサイクル」ではなく「アップサイクル」としているのは、単に再利用するのではなく、より良いものとして再生している、という製作者側の思想を示すためです。ただ、その考え方を少し引いた視点で見ると、「愛以上に価値のあるものが、この世界に本当に存在するのか?」という疑問も同時に浮かび上がってきます。そうした矛盾や違和感を内包した存在として、このモニュメントを設定しています。

そして周囲には剥がれ落ちた結婚指輪が拾えるアイテムとして、無意味なほど大量に落ちています。最初に指輪を拾ったとき、多くのプレイヤーは「何か重要なアイテムなのでは?」と感じると思います。 ところが実際には、指輪は無意味なほど大量に落ちていて、すぐに「なんだこれは?」という感覚に変わっていく

ゲームというメディアでは、意味がありそうなものが実は何の役にも立たなかったり、同じアイテムが極端な数で配置されていたりすると、それ自体が“異常”として知覚されます。こうした配置は、これまで自分自身がゲームを作り、また観測し続けてきた中で身についた「お作法」を、あえて逆手に取ったユーモアでもあります。プレイヤーがこれまでのゲーム体験から無意識に抱いてきた期待やクリシェを、少し違う形で展開することで、結果的に体験そのものが「ゲームとは何なのか?」という問いを自然に投げかけるようになっています。

神山:確かにそうですね。ただ、落ちているアイテムは「リソース」になります。ゲーム中では軍人がショップのような役割として、拾ったアイテムをパワーアップアイテムやグレネードなどと交換してくれますよね。

さらに、渡すアイテムについては「自分で選ぶ」か「軍人に選んでもらう」かの2択があります。これはどういった考え方になっていますか?

Dylan:僕がやりたいと言ったシステムです。プレイ中、拾ったものに対して妙に愛着が湧き、渡したくない気持ちになることがあって。急いでいるなら向こうに任せても良いですし、大切なら自分で選んでもいい。

Baiyon:ゲームを進めていくと、あり得ないくらい長い名前のアイテムも登場するんです。それを見てDylanが「これはすごく考えて作ったんじゃないの?もっと大切にした方が良いんじゃない?」と言い出して。

そのどうでもいいようなアイテムを、Dylanは「俺、これは人にあげたくない」って。

Dylan:そうそう。逆ギレして、そこから議論にもなったよね。

Baiyon:「せっかく自分が拾ったのにあげたくない」というのはわかるけど、こんなに意味不明でどうでもよさそうなアイテムをあげたくないというのは僕としては「変な人だな」と思いましたけど。

ただ、Dylanが言った「アイテムの名前を丁寧に作ったのに、設計上もそれらを大事にして、ユーザーに伝える努力をしている仕様になっていない」という言葉が響いたんですよ。

Dylanからすれば、「このアイテム名は面白いから、ゲームのアイデアを少しでも入れて機能として使えるようにしたい」ということだったと思います。なるほどと思って、渡し方にバリエーションが生まれました。

神山:なにが大切かは人によって違うから、軍人へのアイテムの差し出し方にも違いがあるということでしょうか。

Baiyon:英語だと特に分かりやすいんですが、軍人へ渡す表現を「Give」ではなく「Pass」、日本語だと「あげる」じゃなくて「渡す」にしています。「あげる」と言っても、相手が欲しいかどうか分からないですし、単純に「物がA地点からB地点に移動した」という意味だけにしたくて、こだわった記憶がありますね。

簗瀬:チームの中にファンがいたから仕様が変わった」というエピソードですね。Baiyonさんがある意味アバウトに入れ込んだ要素がゲームの中に深く刺さっていて、Dylanさんがそれを見出した。そこから生まれたものがユーザーテストやデバッグの段階で意外なものとして返ってくる、というのは良くありますね。

Baiyon:でも、それだとDylanが僕のアイテム名のファンってことになるけど。

Dylan:そうだと思うよ。

簗瀬:ただ、こういう「どうでもいいところにすごくこだわってくれる」ファンの存在は、発売後に”勝ち”を確信する瞬間だとも思うんですよ。

Baiyon:確かにそうですね。自分としては「引っかかる人が引っかかってくれれば良い」程度のさりげない要素でしたが、Dylanからするとそうではなかった。自分的には少し恥ずかしくて勇気が要りましたけど、面白いと身近に言ってくれる人がいるなら大丈夫、という気持ちはありました。

どのルートで、どの深さで読んでも意味に辿り着くシナリオ

簗瀬:人間は、存在していても意識していないものについては、存在していないのと同じように扱ってしまいます。つまり、認識されない限り、それは思考の外に置かれてしまう。その意識していなかったものに意識を向けることが本作のポイントなのではないかと感じています。

Baiyon:はい、まさにその通りです。 ゲーム中には、青い「アウラ」と呼ばれる存在が登場しますが、これはドイツの哲学者ヴァルター・ベンヤミンが定義した概念に由来しています。

ベンヤミンがこの言葉を用いたのは、産業革命以降あらゆるものが複製できるようになった時代でした。複製によって情報の共有や伝達は速くなり、コンテキストも広まり、大衆のリテラシーも向上していきます。しかしその一方で、「一体どれが本物なのか?」という問いが生まれる。その結果、本物が持っていた固有の存在感、つまり「アウラ」は失われていく、と彼は考えました。

「パジャマの男」(操作キャラクター)は、物が放つエネルギーを感じることができる存在として設定されています。そのため、“物の言葉を聞くことができる”という能力を持っていますが、この「アウラ」には、簗瀬さんがおっしゃった通り「自分の眼差しを向けて見なければ、そこには存在していない」という意味合いも含まれています。つまり、存在は最初から固定されているものではなく、見る側との関係のなかで立ち上がってくるものだ、というニュアンスです。

簗瀬:ポイントクラウドの表現技術が最初にあった上で、本作のテーマが導き出されていく制作フローがすごく面白いですよね。シナリオライターは最初にシナリオを考えがちではあるんですが、ゲームデザイン先行である『Dreams of Another』はまさにゲームクリエイターによるストーリーの作り方だと思います

私自身も技術とメンバーの特性による掛け合わせでストーリーを作っていくのが得意ですが、本作はまさに技術とQ-Gamesがあって生まれたテーマだと感じました。

Dylan:ポイントクラウドから世界観が作られて、Baiyonの妄想が爆発して、開発当初に想像したボリュームの10倍くらいになりました

Baiyon:「ゲームを作る、アートを手がける、キャラクターをデザインする、シナリオを書く、セリフを書く、音楽を作る」と手を広げれば広げるほど、自分で自分を追い込むことになります。それでも最初から、「これだけは提示しなければ責任を果たせない」という最低限の表現は自分の中にありました。

Dylan:その最低限のラインが、当初想定の10倍ぐらいだったんですよ。

簗瀬:短い時間遊んだだけでも「ちゃんと全てに意味がある感」が伝わるのがすごいです。「なぜパジャマなのか」「なぜマシンガンなのか」と、遊びながら常に深読みして考えてしまうんです。

例えば、パジャマは「日常で幸福に寝ている時間に突然叩き起こされて、何が起こるかわからない」みたいなことなんだろうか。「世の中の不安感から身を守るための銃」なんだろうかと、すごく意味を感じてしまいますよね。

「ポイントクラウドを撃つことで物体が具現化・可視化される」という最初の手触りが、このゲーム全体を通して「この奥に何かある!」という信用に繋がっているんだと思います。

Baiyon:コンセプト、ゲームプレイ、ビジュアル、サウンド、あらゆるものがひとつの収束点に向かっていることが、プレーしてもらったら伝わるはずです。それは、このゲームに”無理やり持ってきたもの”がないからです。

神山:実際の哲学者の思想を反映はしているけれども、それが分かっているかに関わらず楽しめると。

Baiyon:そうです!どこまで掘っても意味に行き当たるように設計したので、真剣に考察してもらっても嬉しいですが、笑ってさらっと流すのも自由ですから。

サウンドデザインは、この複雑な世界に対する「歌詞」になる

神山:アーティストのBaiyon氏に、ぜひ『Dreams of Another』の音楽のコンセプトを教えて欲しいです。ちょっと不安になるような、浮遊感のあるサウンドだと感じました。

Baiyon:ポイントクラウドで「夢の世界」のようなものを作れると分かった段階で、「どうやったら夢のような儚くて不安定な雰囲気が作れるのか」などの実験を始めました。これはミュージシャン的に難しい部分でしたが、作曲では楽曲を「完成させすぎないこと」を意識しました。ちなみに、DAWはAbleton Liveを使っています。

綺麗に盛り上がる展開を作ったり、ブレイクが正確に入ったり、整ったパンニングをしていると、夢の世界としては音楽が少しシャキシャキしすぎているんじゃないかと思ったんです。夢のように不安定で、曖昧で、それでいて流れるような感覚のほうが、この世界をうまく表現できると思いました。実際にそういう音を試していく中で、作品全体の質感のようなものが掴めた感覚がありました。また、シナリオを書いてカットシーン切って、と、ほぼ全ての作業を同時並行で進めていきました。

電源供給すら不安定な音の作り方も研究しましたし、楽器だけでなく非楽器の音も取り入れたかったので、日用品を使った録音素材も多用しました。音楽が鳴って、この楽器を使うとこう聞こえて、このタイミングでこのイベントが起こって、セリフと連動した空気が生まれ、その文脈は……というように、自分の中で組み立てていきました。

神山:確かに音楽だけを聞いてみると、トランジェントが立ったサウンド(アタックが強い、はっきりした音)はひとつも入っていませんね。目的は「夢の中にいる不安定感」というコンセプトだったのでしょうか?

Baiyon:はい、まさにアタックを削っていく感じで作っています。不安定さや曖昧さ、儚さのようなものに近いですね。そうした輪郭の曖昧さが、自分にとってはエモい感覚なんです。だから自然とリバーブやディレイが多くなっています。

神山:非楽器で使用したものも気になります。

Baiyon:オープニングに「破壊無くして想像はない」と文字が出てくる場面で鳴るポロンポロンという楽曲には、「おきあがりこぼし」を使っています。その構造を見てみると、内部にある長さの違う金属の棒に玉みたいなものが当たってメロディーが生まれる仕組みになっていて、それがまず面白いなと思いました。それに、もともと赤ちゃんをあやすためのものでもありますし、パジャマの男がベッドで眠っているという導入とも相性がいい。どこか夢の入り口のような感じがするんです。

そのおきあがりこぼしを色々演奏して、テープディレイやサチュレーションをかけていったら、「これだ!」という音になったんですよね。こういった非楽器の話は変なエピソードばかりなんですが、夜中に道でマンホールの蓋を、韓国の金属製の細い箸をドラムスティックの代わりにして叩いて、クリックを聞きながらリズムを録音したこともありました。序盤のほうにマンホールアウラが出てきたじゃないですか。

簗瀬:ありましたね。動き回るマンホールを撃っていくイベントシーンですね。

Baiyon:あのシーンで流れている楽曲は、実際にマンホールの蓋を叩いた音を使っているんです。他には自動販売機のシーンのために、実際の自動販売機の音を録りに行きました。何度も小銭を入れてガチャガチャといじりながら録った音を使っています。

いくつかのシーンは、自分の記憶や実体験をベースにしています。川のシーンもその一つで、その楽曲のために、子どもの頃によく通っていた川まで数時間かけて行き、水の音や石を擦り合わせる音を録りました。

椅子やテーブル、自動販売機が自身の心境を語る。それも"フルボイス"で

Dylan:サウンド関連で一番大変だったのは「オブジェクト」の声ですね。テーブルやドアなどが自分の気持ちを喋るのですが、ボイス収録が大変でした。

Baiyon:オブジェクトの声は、男性と女性の声が混ざった合成音のように聞こえると思いますが、実際には同じセリフを男性と女性それぞれに演じてもらい、それをミックスしています。

時間もコストも倍かかりますが、それでもどうしてもやりたかったんです。主観的な押し付けはしたくなかったですし、「”モノ”に性別を与える」ということは本質的に不可能なので、考えられませんでした。感じ方は一貫してプレイヤーに委ねています。プレイヤーが「この木は男っぽい」と感じれば自然と男性の声を受け取るだろうし、女性らしいと感じれば女性の声を受け取るはずだと思っています。

神山:そうだったんですね。自分はプレイしたときにまんまと「これは男性っぽい」「女性っぽい」と感じてしまいました。

Baiyon:それは狙いが成功してますね!実は日本語字幕には、「私」「僕」「俺」といった異なる一人称を入れているんです。ただ、「俺」と書いてあっても、女性の声のほうが強く聞こえることもあります。

翻訳は一人称に性別の区別がない英語をベースに多言語化しているので、まず英語をすべてチェックしたうえで、元の日本語版の一人称がどうなっているかを一つずつ書き出しました。そして、「翻訳先の言語でも一人称が区別できるなら、このニュアンスを残してください」とお願いしました。

神山:ここも「グレーの部分」に繋がりますね。一貫して、白黒のない、真ん中、不安定さに繋がっている気がします。

Baiyon:その通りです。そして、すべてのセリフは徹底して、「どういうルートを通って、どう解釈しても必ず意味がある」ように設計しています。ただ、その意味は「結論」ではありません。すべてがグレーの中にあるので、どう捉えてもらってもいいんです。

ただ、少なくとも「掘っていった先に何もない」ということだけはないようにしました。

その分、間の取り方やカットシーン、ページ送りに至るまで、すべてチェックする必要がありました。収録のときも、声優さん一人ひとりに「あなたは木です」「あなたは今からモグラです」と伝えました。

簗瀬: ボイスの収録は、後から追加や録り直しがしにくいので緊張感がありますよね。台本執筆や確認は実際に動いているさまざまなケースを想像して漏れなくやらないといけないので、大変だったのも良く分かります。

ここまでする理由の一つは、この作品のセリフが、自分が作った音楽に対する「歌詞」のようなものだからです。人によって味わい方が複数あって、表面上は変なことを言っているように読めるし、もう一歩踏み込むと、別の意味が立ち上がってくる。

そうやって立体的に、いろいろな角度から自分を投影できる視点を用意しています。一見どうでもいいような話から始まり、読み進めていくうちに、気づけば存在や主体の話にまで踏み込んでいるような構造になっています。

哲学的な問いに親しんでいる人が見れば、「なるほど、最初のセリフでこういう思考を経たから、最後にこの解釈を持ってきているんだな」と味わいはより深くなると思います。ただ、そこまで読み込まなくても、「なんだかバカな話だね」と笑ってもらってもまったく構いません。

「こういうゲームだ」と考えずにプレイして欲しい

神山:たくさんのお話が聞けて興味深いインタビューとなりました。最後に特に注目してほしいところがあればぜひお願いします。

Baiyon:単純に「ぜひプレイしてほしい」ということに尽きますね。とにかく世界を具体化して、好きなように彷徨ってほしいです。”モノ”のセリフも、「昔、自分にもそんなことがあったかもしれないな」と、過去の記憶と重ねながら受け取ってもらえたら嬉しいです。

人生って、良いこともあるけれど、生活はなかなか大変で、結構つらいじゃないですか。だからこそ、少しぼーっとして、自分と向き合う時間になってくれたらと思っています。“モノ”がいろいろ喋るのも、「こんな気持ちになったことがある気がする」とか、「誰かが似たようなことを言っていたな」とか、そんな記憶に触れるきっかけになればと思っています。

神山:ありがとうございます。疲れた現代人に向けて癒しを。

Baiyon:いや、癒しとまでは言わないです。とにかく、自分と対話する時間になってくれたらと思っています。

モノと話して集めたセリフは「Sentiments」に本のように集まっていくようになっていて、ベッドのシーンのメニューからすべて見られるようになっています。それをただ眺めながら、ぼーっとしてもらうのもいいと思います。

簗瀬:普通、ゲームを紹介する時は「こういうゲームです!」とすぐ分かるような説明をしたいものじゃないですか。ただ『Dreams of Another』はあまりそういうカッチリとした説明を受けず、素のままでプレイしたい気がしました。

分かりにくいものを分かりやすく説明するのが正義ではなく、ちゃんと「分かりにくいもの」「感じにくいもの」のまま受け止めたいなと思います。

小難しい感想を言わなくちゃいけない気持ちにさせられるかも知れませんけど、もっと素直な気持ちで向き合いたいゲームでした。

Dylan:簗瀬さんのコメントと似た感じになりますが、今回は普段のゲームとちょっと違うベクトルになっているので、イノセントな感じで遊んで欲しいですね。これまでのQ-Gamesのゲームには存在しない要素が多く、それは例えば遊び方とか考え方とか、ストーリーもリニアな真っ直ぐじゃなくて複数の要素がありますから、最初から「こういう感じのゲームだろう」と決めずに、イノセントに作品に入って欲しいかなと思います。

そして、ひとつ伝えておきたいのは、このインタビューでは普段あまりしないような真剣でシリアスな話をしてきましたが、ゲーム自体は少し雰囲気が違うということです。シリアスな部分の中にも独特のユーモアが織り込まれています。そのユーモアが響くかどうかは人それぞれですが。

Baiyon:好きになったら何回でもプレイして欲しいですし、何回遊んでも新しい発見があると思います。……少なくとも、2回やる意味は十分あると思います。

神山:今回は本当に色々なことが聞けて充実したインタビューでした。おふたりともありがとうございました!

『Dreams of Another』Steamストアページ『Dreams of Another』Q-Games公式サイト

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