2025年8月20日〜24日(現地時間)、ドイツ・ケルンのケルンメッセにて世界最大規模のゲームショウ「gamescom 2025」が開催されました。
本イベントでは日本から複数チームが参加し、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)も「ジャパンパビリオン」ブースを出展しました。
本記事では、現地でブース運営を担ったVIPO 出版・ゲーム事業部のメンバーが、gamescom 2025の様子やジャパンパビリオンを展開した感想などを昨年に引き続きレポートします。
2025年8月20日〜24日(現地時間)、ドイツ・ケルンのケルンメッセにて世界最大規模のゲームショウ「gamescom 2025」が開催されました。
本イベントでは日本から複数チームが参加し、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)も「ジャパンパビリオン」ブースを出展しました。
本記事では、現地でブース運営を担ったVIPO 出版・ゲーム事業部のメンバーが、gamescom 2025の様子やジャパンパビリオンを展開した感想などを昨年に引き続きレポートします。
TEXT / 中村 クリストファー、田口 椋介(VIPO)
EDIT / 藤縄 優佑
gamescom 2025は会期中に72か国から1,568の事業者が出展し、イベント全体には128か国から約35万7,000人が来場した、世界最大規模のゲームショウです。
『That was gamescom 2025 – THANK YOU!』
gamescomの会場はおおまかに、一般来場者向けのBtoCエリアとゲーム業界の方に向けたBtoBエリアに分かれています。
BtoCエリアの中で最も大きな面積を占めるエンターテインメントエリアは主に大手企業が出展する場所で、それぞれの企業が趣向を凝らした豪華絢爛なブースを構えていました。
このエリアには日本企業も多く出展しており、『バイオハザード』シリーズなどで知られるカプコンのブースでは3時間待ちの列ができ、入場規制が掛けられるほどの盛況ぶりでした。
ジャパンパビリオンが出展した場所は、昨年と同じくBtoC内のインディーエリア。各事業者の出展規模は決して大きくありませんが、インディーゲームを中心として世界各国から多彩なジャンルのゲームが集まっていました。
また、同じフロアには、レトロゲームやアスレチックが楽しめるレトロ&ファミリーエリアというスペースが設けられており、アミューズメント施設のような空間が構築されていました。
その影響もあり、普段からインディーゲームに慣れ親しんでいる方に加えて、お子さんを連れたご家族のグループも多く見られました。出展者の方にとって、幅広い年齢層の方に試遊してもらえる絶好の機会となった印象を抱きました。
インディーエリアには、日本の株式会社Phoenixxさんや株式会社room6さんも出展していました。
ジャパンパビリオンの話をする前に、各社の担当者さんにgamescomに参加して良かったこと、大変だったこと、gamescomへ参加を検討している方へのコメントをお伺いしました。
参加して良かったこと
gamescomは世界最大規模のゲームイベントなだけあって来場者が多く、弊社のタイトルに触れてもらえる機会も増えたことが良かったです。
試遊を通してさまざまなレスポンスが得られ、またgamescomのページや各メディアによる取材記事を通して弊社とそのタイトルを知ってもらえて良かったと思います。ビジネス面においては欧米圏を中心とした商談を多く組むこともできました。
大変だったこと
gamescomに限らず、会期中はお客さんが限られた時間でたくさんのブースを回るので、少しの時間で印象を残せるようにすることが大変なポイントです。 ゲームの一番面白いポイントを体験してもらうため試遊の準備をする必要がありました。
そして、実際に試遊を見ることで改善点が見えてくるので、次回に向けて改善をしたり、開発者にフィードバックをしたりしております。
gamescomへ参加を検討している方へのコメント
gamescomは欧米のゲームプレイヤーが試遊に来るだけでなく、ゲーム関係者・メディアなども一堂に会する場所です。
そういった場を活用して得る生の知見・つながりは、日本だと得られづらい、参加する大きなメリットだと思います。ぜひこういった海外出展の知見を共有し、一丸となって海外でも戦っていけたらいいなと考えています。
参加して良かったこと
欧米のユーザーが弊社のゲームにどのような反応をいただけるか気になって見ておりましたが、足を止めてPVを見てくださったり、アートワークスタンドで写真を撮ってくださったりする方が本当に多かったです。
試遊台も並んで待ってくれる方がいるほどで驚きと手ごたえを感じ、「インディーゲーム」が好きなユーザーが欧米には本当にたくさんいるんだなと実感しました。やはり実際にゲームをブース出展してみないとわからない生の反応が見られて本当に得難い体験でした。
大変だったこと
まずは距離で、渡航するのにドバイ経由で20時間かかりました。また日本ではシンプルなブースを作るなら簡単ですがドイツという遠隔で、初めてのイベントということでブースの申し込みなどは業者さんにお願いしましたが、ブースの位置や背面レイアウトなど直前になって変更されたりとかなりドタバタしました。
gamescomへ参加を検討している方へのコメント
ドイツということでやはりハードルが高いイメージがあるのですが、行ってしまえば最高のイベントでした。
いまや世界一のゲームイベントと言われているgamescomですが、規模だけではなく参加している方の熱気や盛り上がりも世界一だったかもしれません。gamescomが大好きな開発者もたくさんいて、交流もたくさんできたのも収穫です。
ハードルは高いのですがぜひ、一度現地に行ってみてもらいたいイベントです。
ここからは、VIPOのジャパンパビリオンについてお話していきます。そもそも今回出展したジャパンパビリオンは、経済産業省「令和6年度補正クリエイター・事業者⽀援事業費補助⾦(クリエイター・事業者海外展開促進)」の一環として、日本のゲーム産業の海外展開の促進を目的に実施した施策です。
ジャパンパビリオンに展示する作品は2025年5月に募集を実施。選出した以下の10タイトルを現地で展示しました。
VIPOによるジャパンパビリオンでの実施内容、サポート内容は以下の通り。
実施内容
サポート内容
ジャパンパビリオンはインディーエリアの2F(Hall 10.2)に、ブースを構えました。ブース内には試遊台だけでなく、商談用のテーブルなども用意しました。
ジャパンパビリオンは10台あるどの試遊台も、つねに誰かがゲームをプレイしている状態で、試遊待ちの列ができることも少なくありませんでした。
受付で配布していた小冊子600部、ステッカーと缶バッジそれぞれ300部も、会期3日目にはそのほとんどがなくなってしまうほど多くの方に来場していただきました。
会期の前半である平日はビジネス目的の方や記者の方、ネット配信者などを中心として大人の来場者が多かったです。その他にも、日本のアニメのコスプレをしたサブカルチャー好きの方々が、日本のゲームに興味を持ち、ゲームを遊びにきてくれました。
後半である週末は家族連れの方も来場するなど、子どもの来場者も目立つようになりました。とりわけ興味深かったのは、ゲームさえプレイしたことのない方もジャパンパビリオンでゲームを試遊していたことです。普段はゲームに馴染みのない来場者の姿も見られ、それだけ注目度の高いイベントなのだと実感した瞬間でした。
ジャパンパビリオン内の出展者の方々に、今回gamescomに出展した感想をお伺いしました。
『DRIFTED』UrbanFox
世界最大規模のゲームイベントであるgamescomに出展することで、自身の作品を広く発信できるだけでなく、より大きなコミュニティとのつながりを築き、将来につながる新たな可能性を生み出せると考えたため。
『Jelly Troops』Nukenin株式会社
当時、発売まで残り数か月という段階であり、Steamのウィッシュリスト登録数を伸ばしたかったため。
『Out of Skull』イノナカゲームス
ジャパンパビリオンの募集について知った際に、特にゲームのマーケティングに課題を感じており、パブリッシャーを探していたことから、展示とビジネスマッチングを両立できる本イベントへの出展を決めました。
『G’AIM’E × タイムクライシス+』達成電器株式会社
世界最大級のイベントと言われているだけあって、さまざまな国からの来場者に直接ヒアリングできる機会はgamescomならではかなと思います。
発売前の製品を試遊展示していたので、発売に向けてマーケティング戦略にも活かすデータを収集でき大変有意義でした。
また、ショッピングを目的としてご来場いただく方も多かったので、セールスの点でも費用対効果が非常に高いイベントだと思います。
『Out of Skull』イノナカゲームス
普段出展している小規模イベントよりも多くのプレイヤーから反応を直接いただけた点が非常に有益でした。
特に、これまで接点の少なかった子どもなど幅広い層のプレイを観察できたことは大きな収穫でした。
『Jelly Troops』Nukenin株式会社
普段の仕事が忙しかったため、渡航前にメディアへのリーチなどがまったくできなかったのが反省点です。
そのため、もともとの目標であったSteamのウィッシュリストの増加も限定的なものとなってしまいました。
『CASSETTE BOY』株式会社ワンダーランドカザキリ
900枚のチラシと200枚のコースターをもっていったが、もう少し持っていっても良かった。
『Out of Skull』イノナカゲームス
ゲームのビルドに関して準備不足があり、イベント中に改善点が多く洗い出されました。今回の反省を今後の開発にしっかり活かしていきたいと考えています。
『SKY THE SCRAPER』Ryo Kobuchi
ビルドに関してはドイツ語対応をしていなかったため、不便させた方が一部いたのが心残りでした。
『Jelly Troops』Nukenin株式会社
渡航費は35万くらい、ホテル代は6泊で10万ほどしました。飛行機はVIPOに選ばれてすぐに取ることで、多少安くはなったんじゃないかと思います。自分の場合は高知発なので、関東や関西から出発する人より数万円高くなっていると思います。
宿泊費節約のため、ケルンではなくデュッセルドルフに宿泊しました。デュッセルドルフでは駅近ホテルであっても、ケルンで宿を取るより1泊当たり1万円以上安く泊まれるので、これは良かったです。
デュッセルドルフからケルンまでの移動には、58ユーロで乗り放題のドイツランドチケットを利用しました。
『Out of Skull』イノナカゲームス
宿泊についてはケルンメッセまで徒歩圏内のホテルを確保しましたが、非常に高額で確保も困難でした。
デュッセルドルフのホテルも検討しましたが、移動時間や直前までゲームの準備に集中したいことを考え、ケルンに宿泊したことは結果的に良い判断だったと思います。
食事に関しては現地の物価が高く、特に負担を感じました。節約のため、スーパーでパンをまとめて購入し朝食に充てるなど工夫しました。
『CASSETTE BOY』株式会社ワンダーランドカザキリ
イベント出展は簡単に費用対効果がわかるものではないですが、世界のゲームの盛り上がりを肌で感じることができるので、出展することはとても有意義だと思います。普段なかなか届かない客層や、メディアの方に出会えるチャンスです。
『Jelly Troops』Nukenin株式会社
毎日10〜11時間出展を5日続ける超ハードなイベントですが、お祭り感が楽しいので行ったことのない方は機会があるならぜひ参加されることおすすめします!現地で日本人と会うとめっちゃテンション上がって仲良くなります。
ワンオペはハード過ぎるのでおすすめしませんし、可能であれば開発者がブースにいなくてもオペレーションがスムーズに行くように用意していくべきです。展示した『Jelly Troops』は対戦ゲームなこともあって、一人で試遊される方がいた場合は対戦相手になっていたため、それは叶いませんでしたが。
イベントが終わった後の達成感は今まで出展したどのイベントよりも大きかったです。
『BANDIT KNIGHT』GameFloat
gamescomは世界中のプレイヤーや業界関係者と直接触れ合える非常に貴重な機会だと感じました。
会場はとても広いため、事前準備やスケジュール管理が重要になりますし、長時間の立ち仕事や移動も多いので、日頃から体力を鍛えたり体調管理に気を配ったりすることも大切だと思います。
私たちVIPOがgamescomに出展してみて、気づいた役立つ情報と注意点をお伝えします。
インディーエリアには「Indie Arena Booth」や「Home of Indies」など、インディーゲーム関連企業の出展を支援しているスペースがあり、Indie Arena Boothでは機材代やパネル印刷代などの費用も込みで16,500ユーロ(約290万円)から出展できます。
東京ゲームショウなど日本のゲームイベントよりはるかに高額なのですが、gamescom内では安価な部類に入ります。また、これらのスペースに出展するためには選考プロセスを通過する必要がありますが、gamescomへの初出展の足がかりとして、検討してみるのもよいかもしれません。
またIndie Arena Boothでは、USKの審査(後述)やgamescom内でのPRプランをはじめ、gamescom会期中における飲み物の差し入れやネットワーキング・パーティーへの招待などもサービスの中に含まれています。
ドイツでは適切な年齢制限をコンテンツに設けるために、USKという公的機関のレーティング審査を受けることが法的に義務付けられています。ドイツでゲームを販売する・しないに関わらず、gamescomのBtoCエリアに出展するなら、USKの審査を受ける必要があります。
この法的拘束力をもつ年齢制限は、IARCやCEROなどUSK以外の審査機関によるレーティングの流用もできません。
加えて、ブースを運営する際には対象年齢以下の青少年がゲームを遊ばないように監視することや、専用ステッカーの貼り付け、ブースレイアウトの工夫が求められます。
この件について、USKの審査責任者であるMarek Brunner氏からコメントをいただいています。
ドイツにとって少年保護は憲法にも書かれるほどデリケートな話題です。ブースやアートワークにも関わりますので、出展を決めた時点でUSK審査を念頭に置いた準備を早めに実施してください。次のgamescomにてお待ちしております!
ジャパンパビリオンもUSKのスタッフの方には、審査を受ける前にレーティング区分の予想をいただいたり、想定外のレーティング結果が起こった際の異議申し立ての方法を教えていただいたりと、手厚いサポートを受けられました。
USKの審査に不安や疑問をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談されることをおすすめします。
gamescomにおけるUSKの審査について今回の「ジャパンパビリオン」では、昨年の「ジャパンブース」から出展数を3作品から10作品まで増やして出展しました。
特にインディーゲームの開発者の方は商談よりも一般ユーザー向けに試遊台の展示を希望する傾向があり、昨年から引き続きBtoCエリアでの出展を行いました。
日本のゲームを海外のユーザーに知っていただくという観点で、多くの方に来場していただき成功を収めたと自負しております。gamescom出展を通して、約3,400名の方に試遊いただいた事例(※2人プレイメインのゲーム)やSteamのウィッシュリスト登録数が4,000件以上に増えた事例などの成果も出展者の方から伺っております。
また、BtoBの面でも力を入れていた出展者からは、継続的な商談や成約があったと報告がありました。ジャパンパビリオンとしても、プロフェッショナルアドバイザーの方の協力いただき、現地で出展者と海外のゲームパブリッシャー、PR・マーケティング会社と引き合わせる機会を提供しました。
出展者の方からも好意的な感想をいただいており、機会があれば来年度もジャパンパビリオンを開催したいと考えております。
なお、ジャパンパビリオンの他にもVIPOでは、JLOX+という補助金の事務局も担当しています。こちらをご活用いただければ、海外出展に関する費用に対して半額補助が受けられます。
今回のgamescomでも、本補助金を活用した出展の事例が増えています。もし来年度も同様の補助金が実施される場合は、ご活用をご検討いただければと思います。
本記事が、世界最大規模のゲームショウの展示や海外展開を検討している方々のお役に立てれば幸いです。
gamescom公式サイト特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)公式サイト
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