“会話”だけが頼りの2人協力フライトシム『Over the Radio』試遊レポート。操縦士/ナビゲーターで挑むリアルな飛行体験【TGS2025】

“会話”だけが頼りの2人協力フライトシム『Over the Radio』試遊レポート。操縦士/ナビゲーターで挑むリアルな飛行体験【TGS2025】

2025.09.27
注目記事イベントレポート東京ゲームショウ2025
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2025年9月25日(木)から28日(日)の4日間、幕張メッセにて『東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)』が開催されています。展示された数多くのゲームタイトルの中から、本記事では「Polygoose Studio」が手掛ける2人協力型フライトシミュレーションゲーム『Over the Radio』を紹介します。

TEXT / 種村朋洋

目次

クリアの鍵はプレイヤー2人のコミュニケーション。パイロットとナビゲーターに分かれて大自然でのフライトを体験

『Over the Radio』紹介映像

 『Over the Radio』は、自然豊かな土地を飛行し物資を届けるバックカントリーフライトをモチーフとした協力型フライトシミュレーションゲームです。

 プレイヤーは小型飛行機を操縦する「パイロット」と、パイロットを誘導する「ナビゲーター」に分かれ、燃料が切れるまでに指定されたキャンプ地まで物資を届けることを目指します。

パイロットの画面から地図を見ることはできず、自分の位置や目的地までの安全なルートがわかりません。そのため、周囲の地形やオブジェクトといった情報をナビゲーターに伝え、目的地まで誘導してもらう必要があります。

ナビゲーターが持つ資料には、地形やオブジェクトといった地図情報のほか、乱気流が発生する危険な空域範囲、キャンプ地に向けて発信する無線番号といった、様々な情報が記載されています。

ナビゲーターはゲーム画面を見ることができないため、手元の資料やパイロットからの情報を基に、誘導に必要な情報を判断しなければなりません。

フライトの成功には、お互いの情報が不十分な状況の中で、相手の状況や必要な情報を想像しながらコミュニケーションを取ることが不可欠です。

ナビゲーターは紙の資料を基にパイロットを誘導する。アナログの手触りがある点も本作の特徴の一つ

フライト終了後には出発から配達完了までの過程を見ながら、相手がどのような状況にあったか、指示がどう聞こえていたのかを振り返る、というようにゲーム後までコミュニケーションを楽しめる作品となっています。

展示されたバージョンで用意された地図は一種類のみで、各所のオブジェクト配置が特徴的で情報を伝えやすいレベルデザインとなるように工夫しているそうです。

製品版では、複数の地図を組み合わせたステージを実装し、何回でも遊べるゲームを目指しているとのこと。

会場では2回試遊をさせていただいた。1回目は途中マップの境目を彷徨い迷子になりかけたが、どうにか配達成功!

メンバーを変えて2回目のチャレンジ。マップ上に配置された給水塔を目印に進んだが、よく似た別のポイントと混同してしまい失敗となった。

挑戦を繰り返し、コミュニケーションのコツを積むことが成功率を上げる鍵となる

自家用パイロット免許を持つ経験から、カジュアルながらもリアリティのあるプレイ感を生み出す

本作を手掛けたゲームスタジオ『Polygoose Studio』のブースにて、開発に関するお話を詳しく伺うことができました。

プログラミングを担当するオオカワ氏は、渡米後にパイロットの免許を取得しており、本作に登場するような小型飛行機の操縦経験もあるそうです。本作の開発にはオオカワ氏のパイロットとしての訓練・操縦の経験が活かされています。

オオカワ氏(画像中央)をはじめ「Polygoose Studio」ブースの皆さんにインタビューに応じていただいた

 パイロットの訓練では、限られた情報でパイロットの状況を伝達し、パイロットを誘導する無線交信の訓練に難しさを感じたといいます。そのような難しさの中でも訓練を繰り返すことで無線交信の技術が上達していくことに体験の面白さを感じ、ゲームとして表現することを考えたそうです。

ナビゲーターとパイロットがお互いの状況を伝え合うことで安全に飛行機を飛ばしたり、トラブルに対処したりといった、実際のフライトにもあるシチュエーションを、飛行技術に触れる機会のないプレイヤーにもカジュアルに楽しんでもらうことを目指しているといいます。

乱気流に巻き込まれ、機体の制御が効かなくなる場面も。状況を冷静に判断し、ナビゲーターに伝えなければならない

本作はTGS2025の「Selected Indie 80」への応募を目指し、2025年4月頃から制作が開始されました。限られた開発リソース・開発期間でも効率的に開発を行う工夫が必要であったといいます。

開発エンジンはUnityを使用していますが、本作のマップは地図の端がループする構造となっており、地形をシームレスにつなげるため独自システムを制作したとのこと。

また、ナビゲーターが参照する資料はFigmaを利用して制作しています。アナログの地図とゲーム内の地形データを一致させるため、作成した資料をデータに変換し、ゲーム内で確認できる拡張機能も自作したそうです。

特徴的なアートスタイルを持つアセットは、すべてアート担当者がオリジナルで制作したもの。

ゲームに登場する航空機のデザインにリアリティを持たせるため、アメリカ・ウィスコンシン州オシュコシュにて開催された世界最大規模の航空ショーを取材し、綿密な調査を実施しています。

その他、実際に用いられる航空資料を基にしたアナログ資料のデザインや、実際の飛行機にてフィールドレコーディングされた操縦音など、デフォルメされつつもリアリティのあるデザインにこだわって制作しているそうです。

自然あふれるマップのアートデザインは、アメリカの国立公園をモチーフにしているという

本作はプレイヤー同士のコミュニケーションに重きが置かれており、遊ぶプレイヤーによって情報の伝え方や遊び方に違いが見られるといいます。

「ゲームの遊び方に拘るのでなく、ゲーム内でのコミュニケーションを通じたプレイヤー独自の遊びのバリエーションがある部分も楽しんでもらいたい」と、Polygoose Studioの皆さんよりお言葉をいただきました。

公式サイト https://overtheradio.polygoose.studio/
Steamストアページ https://store.steampowered.com/app/3790280/Over_the_Radio/
配信開始日 2026年予定
『Over the Radio』SteamストアページPolygoose Studio公式サイト
種村 朋洋

ゲームデザインとプレイヤーのインタラクションを考察しながらゲームを遊ぶのが好きです。

ゲーム以外では謎解きイベントや漫画が好きです。

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