フルスクラッチ&自作アセット製のアクションに、水晶型ディスプレイで夢を覗くゲーム。学生クリエイターによる意欲作を紹介!【BitSummit the 13th】

フルスクラッチ&自作アセット製のアクションに、水晶型ディスプレイで夢を覗くゲーム。学生クリエイターによる意欲作を紹介!【BitSummit the 13th】

2025.07.22
注目記事イベントレポートBitSummit2025
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2025年7月18日(金)から20日(日)の3日間、京都・みやこめっせで開催された『BitSummit the 13th』。

イベントでは学生クリエイターさんの作品も多数展示され、会場を賑わせていました。本記事ではその中から筆者が気になったタイトルをピックアップして紹介します。

TEXT / ハル飯田
EDIT / 浜井 智史

目次

スペースキーの“押し離し”で空を舞え!爽快アクション『飛べない鯉はただの鯉』

最初に取り上げるのは、日本工学院ゲームクリエイター科の学生さんが開発した『飛べない鯉はただの鯉』。

“鯉のぼり”のような形をした自機を水中で大きく成長させ、勢い良く水面から大ジャンプさせて高度を目指すアクションゲームです。

操作方法は「スペースキーを押すor離す」だけ。自機の鯉は自動で水中を泳ぎ、スペースキーを押している間は浮上・離すと水底に潜ります。

キーをリズム良く押したり離したりすることで波打つような動きを作り、魚を食べて体を成長させます。

体が大きく育ったら、いざ水面から空に向かって大ジャンプ。魚を食べて成長率を高めることで、より高度まで到達できます。

魚を食べて成長すれば左上のゲージが伸び、その数だけロケットの切り離しエンジンのようにブーストして高く飛べる

空中では操作方法が変わり、スペースキー押下中に滑空・離すと自由落下します。

自由落下時には鳥が出現し、その背中に着地することでバネのように飛び上がれます。タイミングを見極めて落下してさらに上昇するという、水中とは異なるプレイ感に変化するのが特徴です。

鳥の頭上にあるバネを上手く利用して飛び上がるのが高スコアのポイント

「第13回全国専門学校コンペティションのプレイアブル部門でグランプリを受賞している本作。ルールが分かりやすく、見た目からもユニークな印象を受ける作品とあって、年齢や国籍を問わず多くの来場者にプレイされていました。

フルスクラッチ開発の力作。気持ちよさを生み出す工夫が随所に

本作を開発するのは学生クリエイター3名によるチーム。ゲームエンジンはDirectX 12で自作したものを使用し、アセットなどを用いずフルスクラッチで開発していることが大きな特徴です。

本作のユニークなゲーム性は、ブレストで飛び出したキーワード「トビウオの動き」と「鯉」を組み合わせたことで誕生しました。

いざBitSummitに出展してみると、その独特な操作性に慣れず、意図せず水上に飛び出してしまうプレイヤーが多かったとのこと。そこで初日の夜にアップデートを行い、2日目からは水深を倍にしたというのも驚きです。

アップデートの甲斐あって狙い通りの遊びを提供でき、水中での操作も楽しまれるようになったとのこと

エフェクトとサウンドも心地よく、とにかく爽快感が印象的な本作ですが、注目は水中と空中でカメラの角度が変わっている点。

水中では自機が波を打つように進むスピード感を楽しみやすくするためにカメラを寄せて、空中は遠方が見えやすいアングルに変更。これもプレイヤーに気持ちよくプレイしてもらうために込められた工夫のひとつなのだとか。

残り時間が0になっても着水するまではプレイ可能。理論上は無限に飛び続けられるシステムですが、描画範囲はX軸1,000mまでに留めて、通り過ぎた部分をどんどん消しているとのこと。

奥行きのある画面も自機のラインと背景の2レイヤーのみで描画しています。そうした工夫を「探りながら」施して軽量化を図っているそうです。

「もっとルールを視覚的に分かりやすくできれば」と、来場者の反応を見てさらなる気付きも

日本工学院ゲームクリエイター科(蒲田校)Xアカウント

村人の快眠を守るため2人でオペレーション!『ドリームメーデー』

続いて紹介するのは「BitSummit Game Jam」コーナーにて展示されていた『ドリームメーデー』。かわいらしいヒツジのキャラクターと、見慣れない水晶型のディスプレイが目を惹く作品です。

水晶型ディスプレイに文字やイラストが浮かび上がる

本作は2人プレイの協力ゲーム。プレイヤーは村人に安らかな眠りを届ける「ドリームサポーター」となり、「夢」と「現実」の双方から住民の夢を守ります

プレイヤーは「夢」担当と「現実」担当に分かれて、片方が本作専用の水晶型ディスプレイで「夢」を見張り、もう片方が通常のモニターとマウスを用いて「現実」で活動します。

夢側のプレイヤーはチャンネルを切り替えながら住民の夢をチェックし、異変を見つけたら現実側のプレイヤーに報告。現実側のプレイヤーは該当する住民の部屋を突き止め、異変の解決にあたります。

「すごく暑そう!」と報告を受ければ「部屋のヒーターを消してあげる」といった具合に、異変の原因を取り除く

操作よりも会話の内容が重要になるコミュニケーション型協力ゲームではありますが、題材が「夢」という何でもアリの要素であるため、異変の報告が難しくもあり面白くもなっているのが大きな魅力。

「これは異変なのか?ただ変な夢を見ているだけなのか?」と迷ってしまうシーンも多く、筆者も試遊時に「なんだか巨大なサバを囲って盆踊りしてます」「プリンセスの部屋にイケメンが来てます!」と大真面目に伝えて、ついつい自分で笑ってしまいました。

最終スコアは朝9時を迎えるまでに夢を救った回数で算出します。ゲーム後半になると異変が起こる頻度もテンポアップして、忙しくも楽しい作品に。夢を覗き見た時に味わえるユーモアと、それを「見ていない人に伝える」難しさが印象的でした。

開発も「夢」と「現実」に分かれて進行

プレイ後、本作を手がけたチームの皆さんにお話を聞いてみました。

企画は「不思議な体験ができるゲーム」を目指してチームで相談を重ね、「現実ともふんわり繋がっていて、不思議な存在」である夢を題材に決定しました。

メンターの先生から「展示会ならではの尖った作品が良い」とアドバイスを受けて、2人プレイ用のゲームを考案。その後、夢の“不思議さ”を演出するのにピッタリな水晶型ディスプレイと出会ったことで、現在の形に辿り着いたそうです。

水晶型ディスプレイは4つのキーでチャンネルを切り替えられる。

構想段階では「通常のモニターを4つ並べて監視する」アイデアもあったのだとか

水晶型ディスプレイは画面端が見えづらい形状なため、できるだけ映像の中央に情報を集める工夫をすることで、遊びやすさを向上しています。

ゲームエンジンはUnityを使用。開発時も「現実」と「夢」で分担して作業することが多かったとのこと。特にプログラム面では、夢と現実のつなぎ役を果たす「異変が解消したことを伝達するインターフェース」の開発に力が入れられました。

大盛り上がりのデモプレイ中の様子

アートスタイルにおいては、3人のデザイナーがそれぞれ持つイラストのタッチを1つの作品に合わせる大変さなど、チーム開発ならではの苦労も聞くことができました。

最終的に夢と現実で少し趣向の異なるアートスタイルを味わえる、こだわり抜いた仕上がりとなっているようでした。

△本作は見事ゲームジャムアワードを受賞。おめでとうございます!

『ドリームメーデ-』紹介ページ|itch.io

さらなる進化を見せた「BitSummit Game Jam」出展タイトル

例年ユニークなアイデアやデバイスが集まり来場者を楽しませている「BitSummit Game Jam」。今年も20作品以上が展示され、大いに賑わいました。

そんな「BitSummit Game Jam」の出展タイトルは現在、「itch.to」の特集ページにて公開中。会場でしか遊べないタイトルとの出会いも魅力的ですが、中には特殊なデバイスを用いずに遊べるタイトルや、ブラウザでプレイ可能なタイトルもあるので、ぜひチェックしてみてください。

「BitSummit Game Jam」特集ページ|itch.io「BitSummit」公式サイト
ハル飯田

大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。

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