プレイできる環境を限定。3D化された抽象絵画とゲーム体験の奇跡的な融合が魅せる作品『Sandbox』【BitSummit the 13th】

プレイできる環境を限定。3D化された抽象絵画とゲーム体験の奇跡的な融合が魅せる作品『Sandbox』【BitSummit the 13th】

2025.07.20
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2025年7月18日(金)から20日(日)、京都みやこめっせで開催されている「BitSummit the 13th」。本記事では展示作品の中から、木村 友輝氏が開発した作品『Sandbox』を紹介します。

TEXT / tyap
EDIT / 藤縄 優佑

目次

3D空間で表現された抽象絵画は必見。自身の操作で完成する芸術的作品

『Sandbox』は、抽象絵画と3D空間をかけ合わせたアドベンチャーゲームです。

『Sandbox』

本作に明確なゴールやクリア、ゲームオーバーは存在せず、3D空間内をひたすら自由に移動できます。

ゲームの進行にあたって唯一存在するのはワールドの移動方法。オブジェクトに衝突すると別のワールドに移動するというサイクルでゲームが続きます。

本作では数十種類を超えるワールドが用意されており、BitSummitでの試遊ではその中の一部を巡れました。

画面いっぱいに広がる鮮やかな色彩と立体的なレイヤーで構成された空間は、まるで絵画に沈みこむような没入感に浸れます。時間制限なく思うままに移動できる自由さに加えて、ゆったりとしながらも遅すぎない移動スピードの絶妙な調整も、没入感を深める手助けになっていると感じました。

ループアニメーションも組み込まれた空間は、思わず時間を忘れてしまいそうなほどついついプレイし続けてしまう魅力がある

3Dデジタルアートとなった抽象絵画とゲーム操作が融合した本作は、唯一無二の体験になるでしょう。

開発のきっかけはデイリーコーディング。持続可能な開発を実現させるためのマイルールとは

『Sandbox』の開発経緯や、ワールドづくりのアイデアを木村氏にうかがいました。

『Sandbox』開発者の木村 友輝氏

木村氏は過去に業務でUnityを使用していた経験から、本作でも開発ツールとしてUnityを採用しています。

現在は東京藝術大学大学院映像研究科に在学中で、大学院ではアニメーション作品をメインに制作しており、本作にもアニメーション素材が使用されています。

ワールド構成の着想を聞くと、油絵作品を制作していた経験から、油絵を描くような感覚でワールドを作っているとのこと。

元々はデイリーコーディング(※)アーティストである高尾 俊介氏の影響を受け、プログラミングで2Dアート作品を毎日制作していましたが、さらなる独自性を追求した結果、約半年前にゲームエンジンを使用して3D空間上に絵画を構成する手法にたどり着きました。

※ プログラミングでアート作品を毎日制作する活動

Unityの経歴とアニメーション技術、油絵に対する感性をかけ合わせた本作は、木村氏の経験が存分に生かされた作品といえるでしょう。

走査線で表現されたデジタル感は、3D作品ならでは

多数のユニークなワールドが登場する本作ですが、半年で制作できたのは「1日に1つ必ずワールドを作り、翌日に修正したくなっても絶対に直さない」ルールが大きく影響しています。

さらに、毎日の開発を継続させるために、「1つのワールドにつき開発時間は約3時間」「使用素材は使い回しでも構わない」「短時間でもいいので毎日必ず作業する」と厳密でありながら余裕のあるルールを定義。持続的な開発習慣を可能にしました。

短時間の作業だと時間が足りずワールドの開発に苦戦しそうな印象を受けますが、時間がないときほど「今日は失敗してもいい」という気持ちで作業に取り組んでいるため、かえって実験的なワールドを開発できるそうです。

毎日ワールドを開発するからこそのゆとりある実験的作業が、作品のバリエーションを豊かにしています。

本作は、Steamなど各プラットフォームでの配信を予定していません。これは、自宅より、映画祭での上映や美術館、ゲームイベントなどの外部での作品体験を重視しているからです。

ゲームイベントの出展はBitSummitが初めてだと話す木村氏。「研究者やゲーム開発者の方に興味を持っていただく機会が多かったです」と反応を振り返りつつ、「初めてゲームイベントに出展したため、設営やマーケティングで参考になる場面がたくさんありました。これからも本作のアップデート、もしくは新作で積極的に出展したいです」と今後の展望を語りました。

木村 友輝氏 公式X「BitSummit the 13th」公式サイト
tyap

ゲームを遊び、ゲームを作り、絵を描き、文章を書くエビです。

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