インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン8」レポート。波打つ足場を利用するアクションパズル、ホラーテイストなタイピングゲームなどピックアップして紹介

インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン8」レポート。波打つ足場を利用するアクションパズル、ホラーテイストなタイピングゲームなどピックアップして紹介

2025.05.22
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2025年5月4日(日)、東京都立産業貿易センター浜松町館の2階・3階展示室にて同人・インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン8」が開催されました。

本記事では同イベントの様子や、出展作品をピックアップして紹介します。

TEXT / じく
EDIT / 藤縄 優佑

目次

290以上のインディーゲームが出展し、3,100人以上が参加

「東京ゲームダンジョン8」の会場は、同イベントでは最早おなじみの東京都立産業貿易センター浜松町館。2階・3階展示室の2フロアを使用し、290以上のインディーゲームが出展しました。

2フロアを使った開催は2024年10月の「東京ゲームダンジョン6」ぶりで、今後も1日・2フロア開催が続くことはアナウンスされています。

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今回の会場施策で目に留まったのは、会場内や公式サイトなどで公開された会場マップです。

今までは机の配置と出展リストが別々になっていましたが、今回は配置図に作品&出展名やカットイラストが直接掲載されており、直感的にわかりやすく利便性の高いものとなっていました。

休憩スペースに置かれた会場マップ(左)と会場マップ画像(右)(会場マップ画像は公式サイトより引用)

また、これまで出展紹介映像はプロジェクターをメインに再生されていましたが、今回は一部のチラシ置き場に設置された巨大モニターでも映るようになっていました。

気になる作品たちをフォトレポート!

『Wave Leads You...』 / 米八分刀

『【Steam版】Wave Leads You… PV』

波のように揺れるブロック状の足場を使ってゴールを目指す、ステージクリア型のアクションパズルです。

緑色の操作キャラは左右移動やジャンプのほか、足場に急降下して波を立てる「ヒップドロップ」も可能で、これらアクションを駆使しながら黄色いゴールに触れればステージクリアとなります。

波によって足場の高さが変化するギミックを生かそう

ステージに設置されたレーザー・銃弾に触れたり、キャラが画面外に出てしまうと攻略失敗。

アクションゲームでのミスは悔しさ、本作品では波などで予想外な動きからミスすることがあり、ミスしても悔しさとともにクスッと笑ってしまうような面白さも生まれ、すぐにリトライしたくなる魅力を感じました。

ヒップドロップだけでなく、ステージ上の銃が放つ弾が足場に当たることでも波は生まれる

ステージ上に複数の波を発生させることも可能です。

2つの波が重なると「合成波」となり、重なり具合によって足場の波がより大きくなったり、相殺されたりします。

合成波の巨大な揺れで画面外に飛ばされたり、波が相殺される地点が安全地帯になったりなど、波の発生のさせ方も重要になる

本作を開発している米八分刀のpowder氏は、かつて「Unity 1週間ゲームジャム」のお題「つたえる」で本作のベースを投稿したところ、周囲の反応が良かったのが本作を作るきっかけになったとのこと。それを受け、改めてステージ構成なども配慮しながら開発を進めています。

『Wave Leads You…』は、Steamで2025年中にリリース予定です。

『Wave Leads You...』Steamストアページpowder氏 Xアカウント

『Dyping Escape』 / ヘビサイドクリエイション

『DYPING ESCAPE Trailer(JP)』

死に満ちたゲームから脱出する、メタ的なホラーやローグライク要素を持つタイピングゲームです。

「私は、このゲームで受けるあらゆる損害を受け入れます。」とプレイヤー自身が入力してゲームが進行する

ゲームをスタートすると、画面上の「目玉」から不穏なテキストの入力を強要されます。タイピングゲームで入力する一つの文章に過ぎないと思って入力を済ませると、勝手に宣誓書が作られてしまいます。

単なるタイピングゲームではなく、入力したテキストそのものがゲーム進行に影響するのだと気づかされる

その後も、ゲームの描画や解像度に関する権限を譲渡するようなテキストが、タイピング文章として提示されます。

筆者が言われるままにタイピングを完了させると、画面の描画や解像度が乱れ、「目玉」にジャックされたような状態になりました。

ゲーム画面の描画が乱れ、解像度も低いまま固定されてしまう

「残りの権限をすべて渡す」旨の文章が表示され、タイピングし終えると……。

「アプリケーションを実行するための権限が不足しています。アプリケーションを終了してください。」とエラーメッセージが表示され、PCの権限がすべて奪われた状態となり、ゲームが終了しました。

以上はイベント用の体験版でしたが、これにも複数のエンディングが用意されていました。またSteamストアページで公開されている情報からは、「目玉」が提示する理不尽なタイピング文章を回避する方法など謎解き要素の存在がほのめかされています。

『Dyping Escape』を開発するヘビサイドクリエイションのたらひろ氏には、「プレイヤーが意図していないことをタイピングで打たされる恐怖や、それを回避するための謎解きを楽しんでほしい」とコメントしていただけました。

『Dyping Escape』は、Steamで2025年7月にリリース予定です。

『Dyping Escape』Steamストアページ「ヘビサイドクリエイション」Webサイト

『ラーメンクライシス』 / ヨウスコウTV

『ラーメンクライシス』トレーラー

新人のラーメン配達員として、積み上げたいくつものラーメンを落とさずにお客さんへ届けるコメディアクションゲームです。

コミカルなグラフィックとは裏腹に、スピードやバランス感覚が求められる、シビアな面も持ち合わせています。

障害物を避けながら道中に落ちている味玉などのトッピングを拾い、ラーメンを落とさずできるだけ早いタイムでのクリアを目指す

積まれたラーメンのきわどい傾きや道中のえげつない障害物など笑えるギミックが多く、面白おかしく失敗をくり返しながら腕前が上達していく内容となっています。

ステージ上になぜかぶら下がっている鉄骨が、せっかく運んできたラーメンを根こそぎなぎ払う

本作を開発するヨウスコウTV氏は、前作としてはソウルライク3Dアクションゲームを制作・リリースしましたが、今回は「そんなことあるかい!」と予想外なギミックなどを楽しめる、笑えるアクションゲームを開発したかったそうです。

なぜラーメン配達なのかお聞きしたところ、実はご実家がラーメン屋さんとのことでした。

車にひかれるとラーメンの丼ぶりとともにフニャフニャの体が豪快に飛ばされてしまう

『ラーメンクライシス』は、Steamで2025年中にリリース予定です。

『ラーメンクライシス』SteamストアページヨウスコウTV氏 Xアカウント

『死んで死んで強くなれ!…?』 / 死にスタ

「【PV】『死んで死んで強くなれ!…?』【死にゲーRPG】」

Steamストアページによれば、本作は「死」を多く扱っており、シナリオ分岐によってはショックの強い表現が描写される可能性があるなどに注意してほしい旨が記載されている

「死」によって肉体的にも精神的にも成長するシステムを備えた、いわゆる死にゲージャンルのRPGです。

「苦しみ」にフォーカスした重いテーマながらも、どこかかわいらしさや癒しの要素も感じられるゲームです。

ドット絵と3DCGを掛け合わせたグラフィックが特徴的。バトルは一見すると一般的なコマンド選択式のものに見える。モンスターに倒されると、死因の詳細が表示される

主人公は、物語の冒頭で「森ウサギ」に倒されてしまいます。しかし、死んだはずの主人公が復活すると、その森ウサギの能力を習得しています。

復活後、耳や脚などが森ウサギの外見に変化しており、その能力も使えるようになっている

こういったシステムならば死ねば死ぬほど能力をたくさん身に付けられるように思えますが、主人公は攻撃を受けたり能力を使ったりすると「心」が傷つき、その数値が0になるとアイテムや能力をすべて失ってしまいます。

物語の冒頭で出会う相棒の犬は、傷付いた「心」を癒してくれる

死にスタの高村 檸檬氏は、いわゆる死にゲーでは死因に関係なくゲームがリスタートするのに対して、死に方もゲーム進行に関係するようにしたかったと話します。

そして今回試遊できた範囲にはありませんでしたが、「落下死」「窒息死」「環境死」などバトル以外の死因も能力獲得に対応しているそうです。

『死んで死んで強くなれ!…?』は、Steamで2026年にリリース予定です。

『死んで死んで強くなれ!…?』Steamストアページ『死んで死んで強くなれ!…?』 Xアカウント

『The Doppel』 / Nerdrinkers

『”The Doppel” 1st trailer』

プレイヤーと同じ動きをして追いかけてくる影「ドッペル」から逃げながらゴールを目指す、横スクロールアクションゲームです。

主人公は落ち目の小説家。夢の世界の中に登場する「ドッペル」の追跡から逃れながら、失ってしまった大切な想いを取り戻していくストーリーとなっています。

白黒を基調としたシンプルなグラフィック。ドッペルに触れられると体力が減る

ステージにはさまざまなギミックがありますが、最も重要なものは「暗闇」です。暗闇の中に入れば主人公の体力は回復し、その間はドッペルも影を潜めます。

何とか暗闇までたどり着くと、ドッペルの姿が消える

しかし、ステージを進むには再び光の中へその身をさらす必要がありますが、それはすなわちドッペルの脅威が復活することにつながります。

これは暗闇にいる間は脅威から逃れられるが、前に進むためにはそれを振り払い克服しなければならないというテーマにもつながっています。

白黒2色のピクセルで描かれた夢の世界は印象的で、落ち目の小説家である主人公の深層心理を表現しているように見える

開発のNerdrinkersの方々にお話をうかがったところ、追いかけてくる自分自身との駆け引きという要素が本作品のアプローチにあり、暗い場所は安心するという心理的な面もアイデアとして取り入れたとのことでした。

『The Doppel』は、Steamでのリリースに向けて開発中です。

『The Doppel』Steamストアページ「Nerdrinkers」Xアカウント

『モンスターコマンダーズ - 深淵の夜想曲 -』 / BB58(Studio51 インディーズチーム)

『【紹介動画】Monster Commanders 2025.02.21』

「魔物使い」としてプロンプト(指示文)を駆使してモンスターに命令を下す、ターン制ストラテジーゲームです。ゲームシステムは既存のAIをカスタマイズして使用しており、創造的な命令文を大規模言語モデル(LLM)が解釈して物語調で戦闘を描写してくれます。

さらに本作品では、魔物使いとして操るモンスターもAIによって生成されます。自然言語でモンスターの見た目や概要を入力すると、AIがゲームシステムに合わせて特徴・弱点・スキルなどを設定してくれます。

モンスターの見た目をテキストで入力するとAIが自動で画像を生成し、何度かの調整を重ねることができる(画面写真内のテキストや画像は、筆者が実際にその場で入力・生成したもの)

戦闘シーンはAIが生成したテキストベースで進みます。自ら生み出したモンスターが自分の考えた文章で行動し、敵のリアクションや戦闘描写もLLMが解釈したオリジナルの文章で表現されるのは、まるで人と対面してTRPGをプレイしているような感覚でした。

クエストには自分が生成したオリジナルモンスターや、ランダム生成されたモンスターを編成して出撃する

TRPGのGMともいえるAIの解釈によって、入力した指示が物語や戦闘に反映されていく。そこには一期一会ともいえるオリジナリティと強いインタラクティブ性が感じられた

Studio51のインディーズチーム「BB58」の湊氏にお話をうかがうと、かつて『プラスリンクス』という恋愛アドベンチャーゲームでディレクターを務めており、そこではプレイヤーからのチャットに対する返信を手動による人力で行っていたそうです。

こういった仕組みをAIで実現できないか、という発想から本作品の開発に至ったとのことでした。

『モンスターコマンダーズ – 深淵の夜想曲 -』は、Steamで発売中です。

『モンスターコマンダーズ - 深淵の夜想曲 -』Steamストアページ『モンスターコマンダーズ - 深淵の夜想曲 -』Xアカウント

「東京ゲームダンジョン」はインディーゲーム開発者やそれを楽しむ人たちに浸透してきた印象があり、SNS上でも強く感じられます。東京ゲームダンジョン公式Xでも多くリポストされていますが、来場者による試遊したゲームに関するポストだけでなく、インディーゲーム開発者同士が互いに出展を紹介しあう横のつながりも広く見受けられます。

安心してインディーゲームを発表し、それを語り合う場として定着しつつある「東京ゲームダンジョン」を今後も注目していきたいと思います。

「東京ゲームダンジョン」公式サイト「東京ゲームダンジョン」Xアカウント
じく

ゲーム会社で16年間、マニュアル・コピー・シナリオとライター職を続けて現在フリーライターとして活動中。 ゲーム以外ではパチスロ・アニメ・麻雀などが好きで、パチスロでは他媒体でも記事を執筆しています。 SEO検定1級(全日本SEO協会)、日本語検定 準1級&2級(日本語検定委員会)、DTPエキスパート・マイスター(JAGAT)など。

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