初開催の「愛知ゲームキャッスル」に初出展ゲーム多数集まる!注目作品をピックアップして紹介【イベントレポート】

2025.03.29
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2025年3月23日、愛知県名古屋にてインディーゲーム展示会「愛知ゲームキャッスル」が初開催されました。

会場となったのは、各線名古屋駅から徒歩5分前後とアクセス抜群の「ウインクあいち(愛知県産業労働センター)」8階展示室。本稿では50以上の作品が集まった会場内の模様を、ライターが実際にプレイして気になった作品を中心にレポートします。

TEXT / ハル飯田
EDIT / 酒井理恵

目次

可愛くて不思議な前方後円ADV『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』

見つけた、ぼくの死体」という何やら物騒なキャッチコピーのポスターでインパクトたっぷりなブースを構えていたのは、ジュブナイルアドベンチャー『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』です。

表情はよくわかりませんが、どうやら明るい男の子のようです

本作の主人公となるのは、誰もが「古墳」と聞いて思い浮かべる前方後円墳なスタイルの男の子・こふんくん。自らを古墳だと思い込んでいるこふんくんが「偉い人が埋葬されているほど立派である」という古墳ならではの価値観を元に、自分の中に埋葬されるにピッタリな死体を探しに冒険を繰り広げる、可愛くも奇妙なストーリーが展開されます。

今回プレイできたのは、円形の公園のような舞台でハニワくんと謎のオブジェクトを調査していく序盤のチュートリアルステージ。自由にキャラクターを動かし、公園内を探検したりハニワくんと会話したりとオーソドックスなアドベンチャーゲームになっています。

キャラクターの3Dモデルをはじめとするリッチなグラフィックが印象的で、滑り台をすべったり鉄棒やブランコで遊んだりと、目的以外のオブジェクトでもさまざまにインタラクトできるので短い時間でも遊びの満足度も高め。色々なアクションで貯めた「アクションポイント」を使えば、攻略のヒントが得られる仕組みにもなっています。

アクションポイントを消費して「かんがえる」と、こふんくんがさりげないヒントを呟いてくれる

無事に目的を達成するとムービーが流れ、ちょっとしたハプニングにこふんくんがパワフルな解決法を繰り出すところでデモ版は終了。なかなか展開の予想がつかない絶妙な「ゆるさ」のファンタジーアドベンチャーの雰囲気が楽しめました。

アイデアのスタートは「古墳クッキー型」

開発を手がけるのは『わすれなオルガン』や『くちなしアンプル』などの作品でも知られるCAVYHOUSE。これまでの作品ではイラスト調のグラフィックを採用していましたが、本作では一転してリアル路線のビジュアルになっているのが特徴です。

Unreal Engine 5を使用しており、BlenderやAfter Effectsを活用して作中のモデリングを開発しているとのこと。特にデモ版の舞台となっている公園はアセットをほぼ使用しておらず、「9割以上が自作」という労力の詰まったステージに。

滑り台を登る時にちょこっと手すりをなぞるなど、細部のモーションも可愛らしい。独特な骨格のこふんくんたちには人間用のモーションアセットが使えない大変さも

可愛らしいキャラクターのアイデアの元となったのは「古墳の形が作れるクッキー型」だそうで、開発者の善乃さん曰く「ちょっと柔らかそうなところや、全面緑だと美味しくなさそうなので背中側が茶色いところ」にクッキーの面影が残っているのだとか。善乃さんは企画からグラフィックやモーション、BGMなど幅広く担当しており、クリエイター本人のカラーを強く反映した作品に仕上がっています。

穏やかな歌も印象的

本作は現在のところ開発を始めて約3年。初期はグラフィックへのこだわりもあってかなり動作が重たかったものの、機能を整理するなどして処理負荷軽減に尽力しているとのこと。今後もボイスの搭載など実現したいアイデアにチャレンジしながら、今夏~秋頃のリリースを目指して開発が進められています。

CAVYHOUSEの善乃さん

タイトル:『こふんは生きている ーマホロヴァ・クラブの死体さがしー』https://store.steampowered.com/app/3218790/
開発:CAVYHOUSE https://www.cavyhouse.net/
ゲームエンジン:Unreal Engine 5
リリース予定日:2025年内
ジャンル:アドベンチャー
プラットフォーム:Steam

誠実さで生き残れ!ヴァンサバライク×恋愛ゲーム『ごめんなサバイバー』

「〇〇ライク」な作品と出会えるのもインディーゲーム展示会の醍醐味。続いて紹介するのは大ヒットしたローグライトなアクション『Vampire Survivors』テイストで、ゾンビではなく「告白してくる女子」の大群から生き残る『ごめんなサバイバー』です。

主人公の「一途野 誠」は心に決めたひとりの女性がいるものの、ある日突然モテモテに。名前に恥じぬ一途で誠実な彼は、押し寄せるモブ女子たちを断って断って断りまくります。

ゲームは移動と「ごめんなさい!」攻撃が出る方向を決めるシンプルな操作で、窮地は回復アイテムの取得や無敵技で乗り越えていくオーソドックスなルール。レベルアップごとに選択できる強化アイテムには「お母さんに買ってもらった服」など、モテなくなりそう(※筆者の主観です)な装備が入っているのもユニークです。

一定時間生き残れば登場するボス(ヒロイン)を撃破すればステージクリア。ギャルゲーパートへと進み、個性的なヒロインたちとのアドベンチャー要素が楽しめます。

魅力的なビジュアルのヒロインが目を惹き、綺麗なドットグラフィック&一目でヴァンサバライクと分かるゲーム性で非常に遊びやすい仕上がりに。しかし単調なプレイだけではクリアできない歯ごたえもあり、多くの来場者が激戦を繰り広げていました。

デザイナー3名のこだわりアートと実装チャレンジ

ヴァンサバライクに恋愛ゲームのテイストを加えた本作を開発するのは、デザイナー専門学校出身の3名によるチーム「たけのこゲームズ」の皆さん。

グラフィックに長けたメンバーが揃っている長所を生かし、可愛いキャラクターの立ち絵はもちろん、「Aseprite」やマップエディタ「Tiled」によって細かく作り込まれたドット絵を実現しています。

一方で実装面については「手探り(本人談)」での開発となっており、ゲームエンジンにUnreal Engine 5を採用したのも実装担当の「たけのこ.Jr」さんが仕事で扱った経験があるという理由から。FPSが落ちないよう敵女子の出現数上限を70体に設定したり、レベルデザインの数値化に苦戦したりと、試行錯誤しながらの開発を続けてきたそうです。

現時点でも個性ある作品に仕上がっていますが、デザイナー集団だけあって「背景をアニメーションさせてもっと動きをつけたい」など、ビジュアル面には更なる向上心も。ゲーム性についてもアクションパートとアドベンチャーパートの分離を課題に挙げ、「ヴァンサバ×ギャルゲー」というアイデアの可能性を一層引き出せる可能性にも言及していました。

「たけのこゲームズ」のメンバー。写真左から、えばさん、たけのこ.Jrさん、箸Kさん

本作はSteamにて4月末ごろの配信を予定しており、更なるクオリティアップを目指してクラウドファンディングも実施中。可愛いイラストやドット絵を使用したリターン品もラインナップされていますので、ビジュアルやゲームが気になった方はチェックしてみてください。

タイトル:『ごめんなサバイバー』https://store.steampowered.com/app/3405490/
開発:たけのこゲームズ
ゲームエンジン:Unreal Engine 5
リリース予定日:2025年4月
ジャンル:ハーレムお断り系ヴァンサバライク2Dアクション
プラットフォーム:Steam

何を注文しても地下に通される『アイアイ喫茶店』

もしも、何気なく訪れた喫茶店が「何を頼んでも合言葉になっちゃってる、裏の顔がある喫茶店」だったら……。そんなユニークな設定で作られたインディーゲームが『アイアイ喫茶店』です。

ゲームはテキストを読み進めていくノベルゲーム形式で進行し、主人公が早朝から開店している怪しげな喫茶店に入るところから物語はスタート。およそ喫茶店らしからぬものを含む数多くのメニューから好きな食事を注文するのですが、オーダーを聞いた店員さんに深刻な表情で「それではこちらへどうぞ……」と店の地下へと通されてしまいます。

地下ではマスターからよく分からないアイテムをいただき、そのまま帰路へ。しかし不意に商店街に銃声が鳴り響き、気になって引き返してみるももの先ほどの店員さんに追い返されてしまい、後にニュースで事件を知ることに……。という流れで最初のプレイは「エンディング1」へと辿り着き終了に。

この1回5分ほどのプレイを繰り返していくゲーム性になっており、入手したアイテムや情報を引き継いでさまざまなオーダーや行動を試しながら物語の真相に迫っていく、周回形式のアドベンチャーゲームになっています。

演出やルックも非常にシンプルですが、手描き調アートならではの温かみや細かな表情表現が味わい深く、シリアスさとユーモアが同居する本作品の雰囲気にマッチ。ついつい何度もチャレンジしてみたくなる手軽なアドベンチャーに仕上がっています。

イベント初出展!魅力ある設定作りの裏には「お笑い」の経験も⁉

『アイアイ喫茶店』を手がけるのは、ゲーム制作団体「麺屋すぱいす 東京支店」。3人チームで複数のタイトルの開発に取り組んでおり、今回がイベント初出展とのこと。

非常にユニークな設定とゲーム性の本作は「ノベルゲームの題材となる面白そうな設定を考えよう」という試行錯誤から生まれたそうで、企画担当の開発者さんのアマチュアでの“お笑い”経験も生かされているかもしれないとのこと。確かにそのままコントにもなりそうな設定で、細かな言い回しにもユーモアが盛り込まれているのが印象的でした。

メニューにもユーモアたっぷり

ユーザーを楽しませる仕組みは他にもあり、作中に「特殊な操作をした人だけ楽しめる隠し要素」も。しかし今回の展示会中にはボタンを同時押しすることでバグも発生してしまったそう。同時にいくつものメニューを注文できてしまうので膨大な組み合わせが想定される注文パートのフラグ管理にもかなり苦心しているそうです。

使用エンジンはUnityで、現在の完成度は80%程度。PC向けにリリースが予定されています。

タイトル:『アイアイ喫茶店』
開発:麺屋すぱいす 東京支店 https://x.com/men_spice_tokyo
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:未定
ジャンル:短編ADV
プラットフォーム:Steam

当たって砕けてOK!自爆も武器のSTG『神風帝国』

弾やボムで敵をなぎ倒していくシューティングゲームは爽快感が魅力な一方、難易度が高くなると敵の攻撃にすぐやられてしまってなかなか楽しめないという難しさも。しかし、そんな悩みは不要な「やられても大丈夫」なSTGが、神風工房が開発する自爆STG『神風帝国』です。

本作はキュートな人型兵器を自機として操作し、ステージクリアを目指す2D横スクロールシューティング。そして最大の特徴は攻撃手段として「自爆特攻」が可能な点で、被弾して倒される瞬間だけでなく、任意のタイミングでも大爆発を起こして敵を巻き込めてしまいます

自機の周りの大きな円が爆発範囲を示している

爆発は敵だけでなくオブジェクトを破壊しての進路確保もでき、戦略的な使用がポイント。敵の攻撃を食らっても爆発まで猶予時間があるため「できるだけ敵の中心部に行って爆発してやる!」と“最後の粘り”を利かせられるのも面白く、自爆後のリスタートも素早く残機は無限なのでストレスなく攻略が進められます。

エフェクトはリッチに使われているものの、弾幕はほどほどで画面の視認性も◎

自爆攻撃&残機無限のため、クリア時にはタイム・出撃数・撃破スコアの3点でプレイを評価。機数をかければ誰でもクリアできるシステムながら高評価を目指す緊張感も失われておらず、ビジュアルを含めたポップさとシューティングの醍醐味が上手く融合した作品となっています。

倒されないからこその難易度設定もこだわりポイント

『神風帝国』の開発を手がけるのは「神風工房」。使用エンジンは「GameMaker」で、開発者さんはイラストも自ら描き下ろしており、知人に協力を依頼している音楽以外は独力で開発を進めています。

神風工房では前作で高難易度設定のシューティングジャンルを扱ったことから、今作では新たに「誰でも遊びやすい」仕組みにチャレンジしたとのこと。最初は「攻撃用の弾を自分で操作できる」アイデアからスタートし、やはり自機も操作できるようにと、自機そのもので自爆攻撃ができる現在のシステムに辿りついたのだとか。

開発はおおよそ完了しており、多言語設定にも対応予定。まずはSteamで発売され、今後は他プラットフォームへの移植にも意欲的とのことでした。

神風工房の漆原榊原さん。拠点が中部地方ということで愛知ゲームキャッスルは「出展しやすい」イベントだったそう

タイトル:『神風帝国』https://store.steampowered.com/app/3031720/
開発:神風工房 https://x.com/URSK999
ゲームエンジン:GameMaker
リリース予定日:近日中
ジャンル:自爆系STG
プラットフォーム:Steam

50以上の作品が集まった「愛知ゲームキャッスル」は多くの来場者で盛況に。出展スペースとその間隔が広く取られたレイアウトのおかげで体験待ちや「ちょっと見ているだけ」な回り方も快適。複数人でプレイするタイプの作品も出展しやすく遊びやすかったのでは

本イベントの主催者であり、インディーゲーム「なごやインディーゲームもくもく会」の主催でもあるヒガタニ氏にお話を伺うと、想定を上回る出展・来場者数に「とても良いイベントで、混雑しすぎていないのも丁度良かった」とコメント。「(準備に忙しく)自分の開発をもっと進めたかった」という開発者目線での反省はありつつも、来年以降の開催に向けても意欲を覗かせていました。

交流用ホワイトボードも盛況

「愛知ゲームキャッスル」公式サイトヒガタニ氏 Xアカウント
ハル飯田

大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。

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