インディーゲーム開発者向け無償支援プログラム「iGi」第4期生が卒業。卒業した6チームによるパブリッシャーへのプレゼンを紹介

2024.10.29
注目記事イベントレポート
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

インディーゲーム開発者に向けた無償の支援プログラム「iGi indie Game incubator(以下、iGi)」は、2024年内第5期生の募集開始を予定しています。

本記事では、iGiの第4期生として採択された6チームが、2024年10月11日(金)に開発中の作品をピッチ(短時間のプレゼンテーション)した「DemoDay2024」の模様をレポートします。

TEXT / セレナーデ☆ゆうき

EDIT / 神谷 優斗

目次

iGiとは

iGiとは、インディーゲーム開発者向けのインキュベーションプログラム(※)です。マーベラスが主催し、ヘッドハイ、ルーディムス、GameBCNなどの協力のもとに運営されています。
※ 英語で卵をふ化させる孵卵器のこと。転じて、新しいビジネスに対する支援などをインキュベーションと呼ぶ

iGiに採択されると、開発だけでなく販売に関するセッション・トレーニングを国内外の専門家から受けられるうえ、パブリッシャーと関わる場も用意されるなど、数多くのサポートが提供されます。

画像は、2023年に行われたiGi 第3期DemoDayのもの

プログラムの期間は半年で、2024年4月12日(金)に採択された第4期生の6チームが、DemoDay(デモデイ)をもってiGiから卒業します。

DemoDayでは、各チームがあらかじめ用意したピッチ動画がスクリーンに映された後、質疑応答の時間が設けられます。質疑応答では、同イベントの主な来場者である国内外パブリッシャーの担当者たちが、ピッチを行ったチームに質問します。

開会の挨拶を担当した、マーベラス 知念 さおり氏

司会進行は、マーベラス 関口 一氏が担当

閉会の挨拶を務めた、ルーディムス 佐藤 翔氏

なお、2024年3月には、若手クリエイターの支援を目的とした経済産業省主催のプロジェクト「創風」が開始。同事業は「ゲーム部門」「映像・映画部門」に分かれ、ゲーム部門の運営をiGiが担当しています。

関連記事
経済産業省、ゲーム・映像を作る若手クリエイター向け支援プログラム「創風」を開始。補助金上限500万円、講義やメンタリングの実施など
2024.03.26

ここからは、DemoDay2024が進行した順に、チームと作品を紹介します。

『黒ニ狂 / -Summoner of Greats-』 / lidlocks

『黒ニ狂 / -Summoner of Greats-』ティザー動画

チーム「lidlocks」が開発している『黒ニ狂(クロニクル) / -Summoner of Greats-』は、タワーオフェンス型のリアルタイムストラテジー(RTS)です。

ピッチを担当した熊沢 新之助氏は、マキビシ(現lidlocks)として独立後、20年にわたりデザイナー・プログラマーとして広告制作に従事しています。lidlocksは、世界三大広告賞である「The One Show」など国内外のさまざまな広告賞・ゲーム賞を獲得しているほか、公益財団法人 日本ゲーム文化振興財団から助成対象として選出された実績を持ちます。

本作の制作チームは、熊沢氏のほか、キャラクターデザインやストーリービジュアルを担当する田中 孝弘氏や、色彩設計を務める田中 陽子氏(『おしりたんてい』シリーズなどの制作チーム「トロル」のメンバー)などを加え、合計5名で構成されています。

本作は、世界各国のさまざまな歴史的偉人を召喚して戦うシステムを特徴としています。歴史が好きな熊沢氏が普段から行っていた「ナポレオンと織田信長はどちらが強いのだろう」といった想像が基になっているそうです。

本作は、「難しい」「時間がかかる」「とっつきにくい」といった印象を持たれがちなストラテジーを、誰でも楽しめるカジュアルなゲームにすることを目指して開発されています。

ストラテジーに遊びやすさをもたらす特徴として、ピッチでは「ユニークな偉人デザイン」「カジュアル・シンプル」「ストーリー」の3つが挙げられました。

本作には、200人以上の偉人が登場し、それぞれの偉人は史実や動きに沿ったデザイン・解説が施されています。

例として、オーストリア帝国のグレゴール・ヨハン・メンデルが紹介されました。えんどう豆の交配実験により「遺伝子」を発見したメンデルは、本作においては豆をモチーフにデザインされています。

合計74の国と地域から偉人が選出されている。プレイヤーが歴史に興味を持つきっかけになるだろうと熊沢氏は語る

また、3分で決着がつく戦闘システムにより、カジュアルさ・シンプルさを実現しています。短時間の戦闘にストラテジーの楽しさを凝縮し、初心者から上級者まで楽しめるようにしているそう。プレイヤーが考慮すべきポイントを「キャラクターの選択」および「召喚するタイミング」の2つに絞ることで、詰将棋のようにシンプルかつ奥深い戦術性を生んでいます。

ストーリーに対する工夫も挙げられました。本作は、偉人の肖像画をテーマにした、独自性の高いストーリーを持っています。美しいイラストとアニメーションにより、歴史に詳しくないプレイヤーでも世界に没入できると熊沢氏は語ります。

本作のターゲットには、ストラテジーをプレイしたことのないライトゲーマーを設定。

加えて、ビジュアルや陰鬱な世界観などの強みから、アニメ・漫画などに好意的なプレイヤーもターゲットとしています。

販売価格はパブリッシャーとの相談のうえで決定したいとしつつ、20ドルを想定。発売時期は2025年の第4四半期を予定しています。現在は、リリースに向けて開発およびブラッシュアップを行っているとのこと。

パブリッシャーへ期待することには、ローカライズ、QA、PRマーケティング、ユーザーサポート、開発資金の支援が挙げられました。特に、英語圏へのPR拡大を強く希望しているそうです。

質疑応答では、ゲームシステムについて「それぞれのキャラクターに異なる能力があり、事前にデッキを組むような形式になる」ことなどが伝えられました。

タイトル:『黒ニ狂 / -Summoner of Greats-』
開発:lidlocks
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:2025年第4四半期
価格:20ドル
ジャンル:リアルタイムストラテジー
プラットフォーム:Steam、各種コンシューマー機

『黒ニ狂 / -Summoner of Greats-』Steamストアページlidlocks 熊沢 新之助氏 Xアカウント

『Indomitable Blade』 / NanbuWorks

『Indomitable Blade』トレーラー

チーム「NanbuWorks」が開発する『Indomitable Blade』は、ダークファンタジーの世界観を基調としたターン制シミュレーションRPGです。「重厚な戦記物語と、シビアな戦略性を兼ね備えている」ことを特徴としています。

ピッチを担当した南部休み氏は、2015年よりTRPGのシナリオブック執筆や、ビジュアルノベルの制作などに携わった経歴を持ちます。2023年からは、ゲーム会社のプログラマーとして、Nintendo SwitchやSteam向けの複数タイトルの開発に従事しています。

本作の開発チームは、開発全般を担う南部休み氏と、『エルデンリング』やシミュレーションRPGなどの音楽制作を経験する作曲家 工藤 吉三氏の2名で構成されています。

シミュレーションRPGを愛する南部休み氏は、特に重厚なストーリーを持つクラシックな名作に触れる中で、自らも「深い世界観と没入感の中、長く遊べる作品を求めていた」と語ります。そうして生まれたのが『Indomitable Blade』であるとのこと。

ターン制シミュレーションRPGの潮流には、『ファイアーエムブレム』シリーズや『ファイナルファンタジータクティクス』のような「重厚な物語のあるシミュレーションRPG」と、『Othercide』や『Wartales』のような「モダンなローグライク」の2つが存在すると語る南部休み氏。

本作では、2つの潮流どちらの要素も併せ持つ作品を目指して制作されています。

主人公たちは、北欧をイメージした中世ファンタジーの世界に生きる一民族。ある出来事をきっかけに、大国との戦争に突入します。

自らの文化を捨て、外国に取り込まれて生きていくのか? あるいはアイデンティティを守り、滅びに向かうのか? 南部休み氏は「価値観が目まぐるしく変化する今の時代に訴求する物語の展開を目指している」と述べました。

一般的なRPGにおける攻撃は「HPのパラメータを減少させるもの」として扱われます。本作の戦闘システムは、「攻撃によって減少させるパラメータを、プレイヤーが指定できる」特徴を持っています。

これにより、「守りが堅い敵には、まず守備力(DEF)を削る」「攻撃力が強い敵には、まず力(STR)を減らす」など、各局面に応じた戦略が生まれます。

また、ストーリー展開や加入する仲間が毎回変化する、ローグライクをベースとしたゲーム体験も売りのひとつです。

 HP / 力(STR) / 守備力(DEF) / 速さ(SPD) / 意志力(WILL)などのパラメータを攻撃対象にできる

プレイによってゲーム体験が変わるリプレイ性の高さも強みとする

1マップの攻略時間は10~15分、1プレイは8~10時間(40マップ分程度)を想定しているそうです。

ターゲットは、シミュレーションRPGが好きなコアゲーマーを想定。価格は20ドルで、プラットフォームはSteamを予定しています。また、可能であれば各種コンシューマー機での展開も考えているとのこと。

本作の高いリプレイ性は、シミュレーションRPGのファン層にも合致するとしている

リリース時期は2025年末を予定しています。各種コンシューマー機への移植は、Steam版のリリース以降に検討するとしています。

シミュレーションRPGが世界的に人気であることから、本作は日本だけでなく欧米や中国での展開も目指しています。そのため、パブリッシャーに期待していることとして、特にローカライズやPRについてのサポートが挙げられました。

また、イベントへの出展費用を含む、50,000ドルの開発費用の投資なども希望しています。

質疑応答では、全滅のリスクを軽減する工夫として「戦闘で死んでしまったキャラクターは生き返らないが、新たなキャラクターを補充する手段が提供される」ことなどが語られました。

タイトル:『Indomitable Blade』
開発:NanbuWorks
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:2025年12月
価格:20ドル
ジャンル:シミュレーションRPG
プラットフォーム:Steam、各種コンシューマー機

『Indomitable blade』SteamストアページNanbuWorks 南部休み氏 Xアカウント

『MotionRec』 / HANDSUM

 

『MotionRec』は、デザイン事務所「HANDSUM(ハンドサム)」が開発する、ピクセルアートが特徴の2Dパズルアクションゲームです。制作には、2D向けゲームエンジン「GameMaker」を使用しています。

ピッチを行ったshoma氏が主な開発を担当。そのほか、グラフィックデザイナーおよびビデオエディターを奥山 拓朗氏、ピクセルアーティストをm7kenji氏が務めます。サウンドは外注しており、アーティストのkyoheifujita氏が担当しています。

『MotionRec』の特徴は、キャラクターの動きを記録・再生する」メカニクスです。プレイヤーは、自身が行った移動を「記録」する能力と、記録した移動をそのまま繰り返す「再生」能力を持ちます。

例えば、プレイヤーがエレベーターに乗っている時に記録能力を使うと、上昇する動きを記録できます。その後、ジャンプでは届かないほど高い段差の下で上昇する動きを再生することで、段差の上へ移動できます。

記録能力(左)を使い、エレベーターで下から上へ上がる動きを記録。記録した動きを再生すると、高い段差に登れる(右)

本作の世界観は、多くの人がゲームメカニクスを理解できるよう、カセットテープをモチーフとしています。加えて、記録・再生操作をLボタン・Rボタンにそれぞれ配置することで、まるでカセットプレーヤーを操作しているような体験を作り出しています。

「記録」「再生」以外の操作は「移動」「ジャンプ」のみとシンプル

本作のパズルアクションは、『ElecHead』や『Braid』などを参考にしているとのこと。

Celeste』が持つ高いリプレイ性やRTAとの親和性(※)についても参考にしているそう。「ミスからすぐリスタートできるようにする」「難しい代わりにショートカットになる脇道を用意する」などにより、タイムアタックも楽しめるように設計されています。
※  「Real Time Attack」の略。やりこみプレイの一種で、主にゲームのスタートからクリアまでの最速記録を狙う遊び方

インディーゲームを中心とするマーケットプレイス「itch.io」で公開中のプロトタイプは1,700回プレイされ、5点満点中4.7点の評価を受けています。

また、shoma氏によるギミック紹介のポストは、6,600を超えるリポスト、34,000を超える「いいね」、200万を超えるインプレッションを記録。メカニクスを評価する多くの意見が寄せられたとのことです。

プロトタイプは、「PICO-8」を用いて開発されている

本作のSteamでのウィッシュリスト登録者数は3,000を超えており、多数のメディアによる紹介も行われています。

さらに、2024年7月に行われた「BitSummit Drift」では、ゲーム・デザイン最優秀賞にもノミネートされました。

ターゲットは、Nintendo Switchでゲームを遊ぶライト層。また、画面を見ながら親子でパズルを解くような遊び方も想定しているとのこと。

イベントで試遊展示をした際には、子どもが夢中になって遊んでいた姿が印象的だったそう

プラットフォームはNintendo SwitchおよびSteamへの展開を予定。価格は15ドルで、プレイ時間はおよそ5時間(5ステージ+ボーナスステージ)を想定しています。

スケジュールとしては、2024年12月までにゲーム全体をテストプレイできるようにする予定とのこと。その後、2025年5月までにステージのボリュームアップや調整、7月にSteam版のリリースを計画しています。

パブリッシャーには、開発資金の提供やPRマーケティング、ローカライズやコンソールへの移植のサポートを希望しています。

質疑応答では、今後増やしていく予定であるステージのバリエーションについて、新たな道を開く「鍵」やワープシステムなどの導入を考えていることが明かされました。

タイトル:『MotionRec』
開発:HANDSUM
ゲームエンジン:GameMaker
リリース予定日:2025年7月
価格:15ドル
ジャンル:2Dアクションパズル
プラットフォーム:Steam、Nintendo Switch

『MotionRec』SteamストアページHANDSUM shoma氏 Xアカウント

『nerd:tracing dayline』 / Evan

『nerd: tracing dayline』トレーラー

『nerd: tracing dayline』は、3Dの背景と2Dのキャラクターが特徴的な、サイドビューのアドベンチャーゲームです。

本作は、Evan氏1人による個人開発。大学の映像学科を卒業後、本作の制作をスタートしたそうです。

Evan氏のYouTubeチャンネルでは、過去に制作した楽曲およびMVなどが視聴可能

本作は、「一曲のためのゲームを。」をコンセプトに、ビジュアルやサウンド、シナリオが、1つのミュージックビデオ(MV)に帰結するさまを描くことを目標としています。

Evan氏は、ゲームのエンディングにおいて、流れる曲の展開や歌詞がゲームのストーリーと重なることで、より高い解像度」で楽曲を聴く体験ができると主張します。

本作では、あるひとつの楽曲を「より高い解像度」で聴くために、楽曲のあらゆる要素ゲーム内の要素と対応するように制作されています。

歌詞とストーリー、メロディーとBGM、楽器と効果音、映像と画面演出などを対応づけることで、「新鮮かつ高い解像度」で楽曲を聴けるとEvan氏は語る

解像度を高める工夫のひとつとして、「ゲーム中に主人公がギターの練習をすることで、音色をプレイヤーに覚えてもらう」などが挙げられました。

本作のビジュアルは、楽曲のMVにすることを前提に作られている

本作の舞台は海沿いの町で、主人公は人との会話が苦手な転校生の女の子です。シナリオを通して、クラスメイトたちとの交流を重ねていきます。

メインターゲットは、アニメ調で雰囲気のいいアドベンチャーゲームを好む20〜30代。サブターゲットとして、ユニークな体験に興味があるインディーゲーマーを挙げています。

ボリュームは、休日の1、2日ほどでクリアできる4~6時間を目安としています。MVに到達するまでにプレイヤーがゲームの内容を忘れることがなく、かつ思い出として記憶に定着させられるような長さを考慮し、上記のボリュームにしているそうです。

価格は、同じ規模のアドベンチャーゲームと同程度の20ドル前後を予定しています。

本作は、2025年にアルファ版、ベータ版の開発を進め、2026年夏頃のSteam版リリースが予定されています。

パブリッシャーには、PRマーケティングやNintendo Switchへの移植、ローカライズ、QA、技術支援、資金援助などを希望しています。

援助を受けたいとしている開発費用の内訳は人件費がほとんどとのこと。そのほか、高いクオリティの編曲や歌唱、MIXを目指すための外注費に充てられます。また、追加の資金があれば、Evan氏個人では時間のかかるキャラクターアニメーションについても外注したいとしています。

Evan氏は本作品のミッションを「ゲームの要素からなるMVの制作」としています。次回以降の作品でも、「選択肢による映像や曲調の変化」「選択肢によらない体験のMV化」といった、よりプレイヤーの体験に沿うようなMVを模索していきたいと述べ、ピッチを結びました。

質疑応答では、本作の主となる楽曲は、作中で流れるBGMの印象に残る部分をつないで作るような形式であることなどが語られました。

タイトル:『nerd:tracing dayline』
開発:Evan
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:2026年8月頃
価格:20ドル
ジャンル:アドベンチャー
プラットフォーム:Steam、Nintendo Switch

『nerd:tracing dayline』SteamストアページEvan氏 Xアカウント

『Reso-Seeker(リゾシーカー)』 / R-ta Games

『Reso-Seeker(リゾシーカー)』トレーラー

「R-ta Games」が開発する『Reso-Seeker』は、明るいメトロイドヴァニアをイメージした、リゾートホテルが舞台の2D謎解き探索アクションです。

本作を制作するR-ta氏は、Web開発やインディーゲーム開発を行っており、過去には脱出ゲームを3作品制作しています。また、アニメーション制作も得意とし、札幌国際短編映画祭では最優秀賞を受賞した経歴を持ちます。

R-ta氏は、プログラミングやアニメーション制作のほか、イラスト、UIデザインなどのスキルも持っている

本作は、『「暗い」「シリアス」「怖い」作品が多いメトロイドヴァニアに対し、「明るいメトロイドヴァニア」を作れないか?』といった考えから生まれました。

幼い頃に旅行でリゾートホテルに宿泊した際にすべてを探検し尽くしたい探究心が生まれた体験から、リゾートを舞台にしたとR-ta氏は語ります。

本作のゲームサイクルは、「リゾートの各エリアで謎を解き、得られた新たな仲間やスキルでボスを倒す」→「新たなエリアが解放される」流れとなっています。このサイクルを5回ほど繰り返した後、ラスボス戦へ向かいます。

隠し部屋、収集イベントの「おみやげ集め」、NPCキャラクターとの交流イベントなども寄り道要素として用意されている

本作のユニークセールスポイント(USP ※)のひとつとして、現実世界に近いリゾート地で、旅行気分が楽しめることが挙げられました。ホテルの客室やロビー、水の仕掛けが多数ある巨大なプールなどが探索可能なエリアとして用意されています。
※ 商品が提供できる独自の価値

2つ目のUSPは、サブイベントの豊富さです。このリゾートには、主人公の友人や初めて出会うキャラクターなどNPCが多く登場し、「みんなで写真を撮る」などのイベントが用意されています。

ほかにも、リゾートならではのアクティビティや「おみやげ集め」イベントといったやり込み要素も豊富に用意されているとのこと。

3つ目のUSPは、手描きアニメーションによるグラフィックです。生き生きと動くキャラクターや、青を中心としたポップでおしゃれな色味を特徴としています。

開発の初期段階ではピクセルアートで制作が進められていたものの、iGiのプログラムを通して全体をアニメ調のイラストに変更するに至った経緯があるそうです。

最後に「飽きさせないストーリー展開」が挙げられました。

主人公や友人にはリゾートに訪れたきっかけについての記憶がないほか、謎の生き物の存在など、多くの謎や問題が発生します。ゲームの進行に従ってリゾートや生き物たちの正体が明らかになっていく、続きが気になるストーリーが展開されるとのことです。

本作品と似たタイトルとして、『Hollow Knight』や『Animal Well』のほか、同ジャンルのタイトルの中でも初心者・ファミリー向けである『ディズニー イリュージョンアイランド ~ミッキー&フレンズの不思議な冒険~』が挙げられました。

プレイ時間は5~7時間、価格は20ドルを予定。プラットフォームは、SteamとNintendo Switchでのリリースを優先的に行い、その後PlayStation 5やXbox Series X|Sへの対応も検討しています。

パブリッシャーには、ローカライズ、他機種への移植、マーケティング、資金援助、QAなどを期待しています。ローカライズは英語を優先したうえで、多言語へのローカライズも相談して決めていきたいとしています。

希望する資金援助額は、外注費用含む70,000ドル。売上目標は、15,000本の売上による300,000ドルの粗利です。

2025年前半にアルファ版の完成、2026年第1四半期までにベータ版、第2四半期にSteam版のリリースを目標としています。その後、2026年末を目安に、他機種へのリリースを予定しています。

質疑応答では、行ける場所が徐々に増えていくメトロイドヴァニアが持つ特性を、リゾートでどう表現するのかについて質問が挙がりました。

これに対し、「プールエリアでは最初は泳げず、浮き輪を取得することで泳げるようになる。また、シャワーがあることで進めないエリアでは、傘を持った友人と交代することで水を防いで進行できるようになる」とR-ta氏から回答がありました。

タイトル:『Reso-Seeker(リゾシーカー)』
開発:R-ta Games
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:2026年末
価格:20ドル
ジャンル:謎解き探索アクション
プラットフォーム:Steam、各種コンシューマー機

『Reso-Seeker(リゾシーカー)』SteamストアページR-ta Games R-ta氏 Xアカウント

『SHADOW LEAP』 / Leapers

『SHADOW LEAP』トレーラー

神戸電子専門学校のゲーム制作チーム「Leapers」が開発している『SHADOW LEAP』は、ローグライク要素を持つアクションゲームです。

本作は、iGiにおける産学官連携による特別枠として選出されています。

ピッチを務めた阿部 晃大氏がリーダーを務めるLeapersは、神戸電子専門学校の3年生7人で構成されるゲーム制作チームです。

メンバーは全員がプログラマーで、実装を分担することで効率的に開発を進めているのが強みであるそう。また、先生やほかの学生など、大人数にテストプレイをしてもらいやすいことも強みのひとつです。

メンバーは、それぞれ5本以上の作品制作の経験を持つ。メンバーが制作した作品の中には、東京ゲームショウに出展したものもあるという

本作のコンセプトは、夜の世界を跳び回り、自分の影分身と協力して敵を倒す「シャドウクローンアクション」です。

NieR:Automata』のコンボや回避を用いた激しい戦闘、『Ghostrunner』のスピーディーな移動、『Hades』のランダムなスキル選択システムなどを参考にしている

戦闘における大きな特徴は「影分身を出現させ、共に戦える」点です。影分身と位置を入れ替えて敵の背後をとる、影分身に敵を空中に切り上げ空中戦に持ちこむなど、影分身を活用することで戦闘を優位に進められます。

戦闘だけでなく、移動の楽しさにも重点を置いています。

阿部氏は、「戦闘は楽しいが、移動がただ歩く・走るだけ」のアクションゲーム体験にモヤモヤとした気持ちを抱えることがあったそう。

そこで、本作では戦闘パートの間に、マップを爽快に駆け回る体験に集中できる移動パートを設けています。

移動パートでは、空中を素早く移動し、壁を走る体験を楽しめる

「昔ながらの日本の要素」「サイバーパンクな近未来」を掛け合わせた独特な世界観も、本作の特徴です。

世界観やアクション、ランダムなスキル選択といった特色や、短いプレイ時間で爽快なゲーム体験を味わえる本作の特徴から、メインターゲットには10代から20代の男性ライトゲーマーを設定しています。

販売価格は、ライトゲーマーでも手を出しやすい15〜20ドルを予定。はじめにSteamに向けてリリースし、その後にPlayStation 5やXbox Series X|Sへ移植することを計画しています。

スケジュールとしては、2025年前半にベータ版の完成後、2025年内のSteam版リリースを予定しています。

パブリッシャーには、イベントへの出展サポートを含むPR、他機種への移植、QAなどを期待しています。本作は文字数がそこまで多くないゲームであることから、ローカライズのサポートは不要としています。

30,000ドルの資金援助も募っている。ただし、現在では購入したモデルをカスタマイズして使用していることから、援助なしでもゲーム自体は完成するとしている

質疑応答では、ランダムなスキル選択によるビルドの多様性について質問が挙がりました。

本作では、スキルを発動するために必要なリソース「影ゲージ」が戦闘システムに組み込まれています。阿部氏は「攻撃力は低いがゲージ消費量が少ないため多く撃てるスキル、消費量が大きい代わりに一撃で敵を倒せるスキルなどがあり、それらを選択する楽しみ方がある」と話しました。

タイトル:『SHADOW LEAP』
開発:Leapers
ゲームエンジン:Unity
リリース予定日:2025年
価格:15~20ドル
ジャンル:ローグライクアクション
プラットフォーム:Steam、PlayStation 5、Xbox Series X|S

『SHADOW LEAP』SteamストアページLeapers Xアカウント

以上が、iGi第4期生のチームと、各チームが開発している作品です。

冒頭でお伝えした通り、iGiは2024年内に第5期生の募集開始を予定しています。

詳細は、iGi公式サイトをご確認ください。

「iGi indie Game incubator」公式サイト「iGi indie Game incubator」Xアカウント
セレナーデ☆ゆうき

ゲームのタイムアタックを中心に、ストリーミングサイト・Twitchで活動をしているストリーマー。ゲームイベントの紹介記事など、WEBメディアでの活動実績もあるが、繰り出されるダジャレのクオリティには賛否両論がある。

https://www.twitch.tv/serenade_yuuki

関連記事

『SINoALICE ーシノアリスー』が『シノアリスだったナニカ』に移行するまで。アプリサーバーなしで7年間のプレイ記録を後続アプリへ引き継ぐ【CEDEC2024】
2024.11.20
同人・インディーゲーム展示・即売会「デジゲー博2024」レポート。「平成レトロ」な団地が趣深いドット絵アドベンチャーや、信号機が爆発するブロックパズルなど5作品をお届け
2024.11.14
インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン6」レポート。“1ターン”で勝敗が決まるカードゲーム、障子を破りまくるネコが主役のアクションゲームなどをピックアップして紹介
2024.11.12
『Sky 星を紡ぐ子どもたち』他人に優しくなれるゲームデザインの作り方。プレイヤーの行動はどう決まるのか、代表 ジェノヴァ・チェン氏にメールインタビュー
2024.11.12
「ニンジン配達2Dアクション」開発はわずか30時間。ゲームジャムに参加したプロが語るスピード開発裏話【Sapporo Game Camp 2024】
2024.11.08
「UNREAL FEST 2024 TOKYO」最速フォトレポート。約2,000人のUE5ユーザーが集ったリアル会場の雰囲気を写真でお届け
2024.11.02

注目記事ランキング

2024.11.14 - 2024.11.21
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

フォワードシェーディング(Forward Shading)
フォワードシェーディング オブジェクト毎にライティングの計算を行い、その計算結果を描画するレンダリング手法。フォワードレンダリングともいう。ディファードシェーディング(Deferred Shading)に比べてポストプロセスの自由度は低いが、(何も物を配置しなかった際にかかる)最低限の描画コストが低く、アンチエイリアス処理などにおいてフォワードシェーディングの方が有効な分野も存在する。
VIEW MORE

Xで最新情報をチェック!