最強のオリジナル魔法を構築するハクスラローグライク『Spell Fragments』。組み合わせ爆発に対し「あえてバランス調整しない」ゲームデザイン上の理由を聞いた【TGS2024】

2024.09.26
注目記事イベントレポート東京ゲームショウ2024
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2024年9月26日(木)から29日(日)の4日間、幕張メッセで開催されている「東京ゲームショウ2024」。展示されたゲームの中から、今回は「Cocoro Software」が開発するTPSローグライクゲーム『Spell Fragments』を紹介するとともに、同作品の開発者 西井 裕介氏に本作の起こりや膨大な組み合わせを生む「魔法のビルドシステム」におけるバランス調整の方針を聞きました。

TEXT / 神谷 優斗

目次

ダンジョンを探索して魔法の「パーツ」を獲得。自身で魔法を組み立てる

本作は、自身で魔法を構築するシステムが特徴のローグライクTPSアクションです。プレイヤーはダンジョンに潜り、敵を倒しつつ奥へ進み踏破を目指します。

プレイヤーは、自身でビルドした魔法を使って攻撃できます。ダンジョンの探索を通して魔法を強化することで、より強い敵が倒せるようになっていきます。

魔法をビルドする際のパーツとなるのが、敵を倒した際のドロップや宝箱から入手できる「呪文の欠片」です。

呪文の欠片は、魔法の発動条件となる「トリガー」と、魔法の効果となる「スペル」、後述する「オプション」の3種類に分類されます。トリガーとスペルを5×5マスのグリッドに配置し、接続すると、1つの魔法ができあがります。

左クリックが発動条件のトリガー「初級トリガー1」と、ダメージを与える弾を発射するスペル「初級射撃魔法」を組み合わせた魔法を構築。接続中の呪文の欠片は、黄色の鎖で示される

左クリックで初級射撃魔法を発射し、攻撃できるようになった

スペル同士を連結し、「連鎖魔法」を作ることも可能です。1つのトリガーに対し、連結したスペルが順番に発生します。

例えば、先ほど配置した初級射撃魔法に、新たなスペル「初級分散射撃魔法」を接続します。すると、初級射撃魔法と初級分散射撃魔法が順番に発生する魔法が生まれます。

初級射撃魔法が消滅した場所から初級分散射撃魔法が発生するようになった

トリガーとスペルのほかに、「オプション」と呼ばれる呪文の欠片も存在します。オプションは、接続したスペルに対して追加効果を与えます

初級分散射撃魔法に、スペルが敵を追尾するようになるオプション「初級追尾軌道」をつなげると、弾が敵をホーミングするようになります。

追尾することで、弾が当たりやすくなった。その分、魔法を使うためのコスト(マナ)やクールタイムが増加するトレードオフがある

このように、多彩な呪文の欠片を組み合わせて、自分だけの魔法をビルドするのが本作の醍醐味です。

探索を進めると、ダンジョン内でのみ有効な強化要素「アーティファクト」が取得できます。獲得したアーティファクトによって、ビルドの方針が決まる側面もあります。

ダンジョンから出ると、アーティファクトは消滅する

同じ呪文の欠片であっても、ランダムに付与される追加効果(パークのようなもの)によって性能が異なります。

レアリティによって、付与される追加効果の数が異なる

ダンジョンでは、プレイヤーの防御力や呪文の攻撃力を向上させる装備品も手に入る

死亡するなどでダンジョン内から帰還すると、獲得した呪文の欠片や装備のほとんどは消えてしまいますが、いくつかを持ち帰ることが可能です。持ち帰った報酬は以降の挑戦でも使用できるため、何度もダンジョンに挑戦することで、自身の魔法がより強化されていきます。

どこまで到達できたかによって持ち帰れる報酬の数が異なる

あえて魔法のバランス調整を行わないことで、「バランス崩壊」を面白さにつなげる

Cocoro Software 代表 西井氏

本作におけるメインの開発メンバーは西井氏ただ1人。3Dモデル(プレイヤーキャラクター)や2Dアート、BGMは外注で制作しており、外注を含めると10人弱のメンバーとなります。

プレイヤーキャラクターの3Dモデル

ゲームエンジンはUnity。そのほか、DCCツールなどは使用していません。

本作の開発期間は、出展時点で1年半です。西井氏はシステムエンジニアを本業とするかたわら、2023年3月より本作の開発をスタート。その後、2024年3月に独立とともにCocoro Softwareを設立し、専業での開発となりました。

本作は、自身の好きな「TPS」「ローグライク」「魔法のビルドシステム」「マルチプレイ」を組み合わせたゲームが遊びたい、という思いから作られているとのこと。

特にマルチプレイにおいては、パーティで進める際、メンバーによって進行度が異なり、強さに大きな差が生まれてしまうのをなくしたいと考えているそうです。具体的には、ダンジョンによって持っていける魔法のコストに上限を設ける仕組みが挙げられました。この仕組みにより、強さの差が開きすぎるのを抑えるだけでなく、限られたコスト内でより強い魔法を用意しておくやり込みも促せます。

プロトタイプの段階から、魔法のビルドシステムはほとんど確立していたと西井氏は言います。ビルドシステムのベースになっているのは、TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の「条件を満たしたときに発動できる魔法」が、本作の「トリガー」と「スペル」のシステムに通じているそうです。

プレイヤーの回避行動によって発動するなど、さまざまな条件で発動するトリガーが用意されている

「魔法のビルドによる組み合わせ爆発が起きるのは把握しているが、本作ではあえてバランス調整しない方針をとっている」と西井氏。調整コストの大きさも理由ですが、「バランス崩壊」もゲームにおける楽しみの1つとして取り入れたい意図があるそうです。

バランスの調整は強さに上限を設けてしまい、「どのビルドでも結果は同じ」になりかねません。それよりも、制限を設けない方が「ゲームを壊す楽しさ」につながると西井氏は語ります。テストプレイでは、その場に立っているだけで周囲の敵を倒し続けるビルドや、コスト0かつクールダウン0秒で11万ダメージを叩き出すビルドなども生まれたそうです。とはいえ、進行に伴う敵の強さの上昇幅や、過度に強いビルドへの調整は、今後必要だろうとしています。

ビルドシステムにおいて試行錯誤を要した点としては、「パラメータの種類」が挙げられました。値の変化による性能の違いが生まれず、後に削除したパラメータがいくつかあったそうです。一方で、スペルの発生を遅らせる「遅延」のパラメータは、値によって挙動が大きく変わることに気づき、後から採用されました。

ビルドシステムの実装では、「パラメータの計算」や「ホーミングなど機能の付け替えへの対応」などに苦労したとのこと。インスタンスが大量に生成され重くなる、重力のパラメータが極端になり一瞬で画面外へ消えるなど、自由度の高さゆえの悩みがあったそうです。

本作のリリース時期は未定。今後は、ダンジョンや魔法の追加、UIの調整などを進めていくそうです。

「呪文の欠片をリスト表示する際に、どの程度詳細な情報を見せるか」などは今後変更される可能性があるそう

また、開発中のバージョンをプレイできる権利を特典として、クラウドファンディングを行うことも視野に入れていると西井氏は語りました。

販売サイト(ストアページ) https://store.steampowered.com/app/2976030/Spell_Fragments
リリース時期 未定
『Spell Fragments』Steamストアページ東京ゲームショウ2024公式サイト
神谷 優斗

コーヒーがゲームデザインと同じくらい好きです

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