2024年8月21日~25日(現地時間)、ドイツのケルンメッセにて「gamescom 2024」が開催されました。
世界最大規模のゲームショウである本イベントでは、日本から複数のチームが参加しており、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)も「ジャパンブース」として出展していました。
本記事ではVIPO 出版・ゲーム事業部の部長である内島 靖人氏に、gamescom 2024の様子や、ジャパンブースを展開した感想などをレポートしていただきます。
2024年8月21日~25日(現地時間)、ドイツのケルンメッセにて「gamescom 2024」が開催されました。
世界最大規模のゲームショウである本イベントでは、日本から複数のチームが参加しており、特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)も「ジャパンブース」として出展していました。
本記事ではVIPO 出版・ゲーム事業部の部長である内島 靖人氏に、gamescom 2024の様子や、ジャパンブースを展開した感想などをレポートしていただきます。
TEXT / 内島 靖人(VIPO)
EDIT / 藤縄 優佑
VIPOは、経済産業省・令和5年度「我が国の文化芸術コンテンツ・スポーツ産業の海外展開促進事業(コンテンツ産業の海外展開等支援)(JLOX+)」の一環として、日本のインディーゲームの海外展開を支援することを目的に、gamescom 2024で「ジャパンブース」を出展してきました。
同ブースでは、2024年5月に募集した作品から選出した3作品を展示しました。今回の施策では、試遊を中心に以下のようなサポートも提供しています。
作品募集後、外部有識者による審査・選考を経て、選出した作品は次の通り。
『ウィザードリィ外伝 五つの試練』は、2006年に発売された同名の3DダンジョンRPG(ダンジョンクローラー)をリニューアルしたタイトル
『ほりほりドリル』は、カスタイマイズした自作のドリルで地下999階を目指してひたすら採掘、資源収集に没頭できるゲーム
『CUBEN ―キューブン―』は、バトルを有利に運ぶアイテムを配置しながら、キューブ型パズルをプレイして敵を倒すパズルローグライトゲーム
gamescom 2024に出展することを決めたのが遅かったため、急きょUkiyo Studiosさんのブース内に試遊台3台をお借りする形でジャパンブースを出展しました(規模が小さいので、ジャパンパビリオンとは言わず、ジャパンブースと呼称しています)。
ブースの場所はインディーゲームエリア(Hall 10.2)の下の階、Hall 10.1でした。
ブース内にはミーティングルームも設置しており、一般ユーザー向けの試遊だけではなく、海外パブリッシャー等との商談も実施しました。
また、ジャパンブースの横には『Omega Crafter』『ShapeHero Factory』なども出展しており、日本勢としてまとまった形での出展となりました。
今回ジャパンブースとしてはBtoCエリアへの出展となりましたが、gamescomには巨大なBtoBエリアが存在し、そのエリアには各国のパビリオンが出展されていました。
ざっと見て回っただけでも、25か国以上のパビリオンが確認できました。
2022年にVIPOも関与する形でBtoBエリアにジャパンパビリオンを出展しましたが、それ以降は大規模なパビリオンを出展できていないので、来年こそは関係者の皆様と協力して、ジャパンパビリオンを復活させたいと考えています。
ただし、BtoBエリアにジャパンパビリオンを出展すると、一般ユーザーにゲームを試遊してもらえないので、BtoBエリアとBtoCエリアのどちらに出展するかは要検討かと思います。
Hall 10.2には巨大なインディーゲームエリアが広がっていました。その中でも、「INDIE ARENA BOOTH」と「HOME of INDIES」に数多くのインディーゲームが集約される形で出展されていました。
日本勢としては、このエリアに「Phoenixx」「GYAAR Studio」「集英社ゲームズ」が出展しているのを確認できました。
「INDIE ARENA BOOTH」内にスイスが「SWISS GAMES」として、まとめてインディーゲームを出展していたので、来年以降に実施するジャパンパビリオンはこの形を参考にできそう
ジャパンブースへ出展した『ウィザードリィ外伝 五つの試練』のパブリッシャーであるGame*Spark Publishing担当者、『ほりほりドリル』開発の「とーらい」氏、『CUBEN ―キューブン―』開発の「WOOL STUDIO」担当者に、出展の感想などを伺いました。
正直なところ、かなり心が折れかけました。
日本のインディーゲームイベントでは言語の障壁以前に大体どんなゲームか把握している、ちょっと触れば大体どうすれば良いかわかる、そもそも『ウィザードリィ』をプレイしたことがある。試遊してもらえたうち、7~8割くらいの方がこういった層でした。
しかしながら、gamescom 2024では『ウィザードリィ』を知っている試遊者が2割以下で、ダンジョンクローラーというゲームを理解している層も3割以下。
“not my game”とすぐに放り出していくプレイヤーさんもいて、本作がなぜ欧州で売れないかが身をもって体感できました。
さっそくシナリオなども見直して、今後の展示に向けてアップデートしたり、わかりやすい操作説明を準備したりと、今後に向けてかなり学びがありました。
少し触ってすぐ止める人、長く遊んでくれる人で真っ二つにわかれた印象です。クリアまで約20分ほどかかる試遊版を遊びきってもらえたのは、試遊者のうち30%ほどでしょうか。
また、試遊時に「配信で紹介する」とお話してくれたTwitchストリーマーさんもいらっしゃいました(後日、実際に配信してくれたことも確認できました)。
試遊者のうち大半の方には楽しんでもらえていましたが、チュートリアルの文字が少し多いせいか、チュートリアル中に止めてしまったり、チュートリアルをスキップしたためにゲームルールを把握しきれず止めてしまう人も多かったです。
流れの中でチュートリアルを行う必要があるなと感じました。
Steamでの露出の影響が多かったかとは思いますが、前一週間比で数百%近くウィッシュリストが増加しました。
直接的なコンバージョンを求めると費用対効果が悪い、という判断もできなくはないですが、総合的に判断した時のイベント出展の価値を感じました。
Steam特設ページの影響もあり、想定以上に増えました。これまで海外からのウィッシュリスト登録はほぼ0だったので、大きな収穫です。
試遊台が1台だったので、遊んでくれた人数としてはBitSummitと変わらないかそれ以下だったはずなのですが、ウィッシュリストに関してはBitSummitの期間よりも多くのウィッシュリストの増加が見られました。
それまでは北米や欧州からのウィッシュリストが少なかったので、とても価値ある5日間だったなと思います。
gamescom 2024の開催期間よりも手前にウィッシュリスト追加のピークが来ているので、おそらくgamescomのSteam特設ページからの流入が多いのかなと考えています。
事前にセッティングをしきれなかったので、単に身一つで行って新たな出会いがあったか、といわれると正直なところNOです。ここは自分の準備不足もありますし、飛び込みで大手と話ができるような感じではないのも要因かと思います。
やはり大手とは事前に調整をしたうえでしっかりとアポイントを取って臨まねばと反省しました。しかしインディーなどのブースではいろいろな話ができたのと、知人と現地で会えなくても商談の機会にはつながったので、決して無駄な機会ではなかったように思います。何事も事前準備が大事だなと思いました。
イベント期間中の商談については反省点がいくつかありますが、大きな反省点としては商談を組む準備が遅れたことです。
主にMeetToMatchを使って商談を組みましたが、登録がイベント直前になってしまったこともあり、予定を取るのが難しかったです。
ただ、事前に英語のピッチ資料について、この事業のアドバイザーからフィードバックをいただく機会があり、そちらはとても助かりました。実際の商談でもピッチ資料をもとに説明すれば良いため、初めての英語での商談でしたがなんとかなりました。
MeetToMatchに登録し、複数の企業とMTGを行いました。ほとんどはローカライズやサウンドなど、向こう側からの営業という形でしたが、パブリッシャーとのMTGも組むことができました。
好感触で、次のステップへ進んでいます。ただ、いくつかこちらから連絡を取った会社もありましたが、それらに関しては、商談まで至りませんでした。望んだ企業とマッチングするというのはなかなか難しいのかもしれません。
普段はメディアとして参加しているので、
ほかのデベロッパーさんとのコミュニケーションも少ないながらに取れたのも、学べることも多かったです。
あとは一緒に出展したとーらいさん、WOOL STUDIOさんともコミュニケーションが取れたのもよかっ
なにより、今回のようなサポートがなければ、
「海外の方がプレイしている様子を見る」→「ビルドを調整する」というサイクルを5日間回せたので、ゲームの質はかなり向上したと感じています。
当日のブースについてはUkiyo Studiosさんが管理してくれたので、会場を見て回り他の展示の様子を勉強したり、商談に行ったりと自由に行動できたのはありがたかったです。
また、自分は長期にわたる展示会に出展したのが初めてだったこともあり、展示に関する大変な準備等をUkiyo Studiosさんにおまかせできるのは助かりました。
世界最大のゲームショウに出展できたという実績を作れたこと。なかなかできることではないので、その機会を得られたことはとにかく幸運でした。海外ユーザーの反応を見れたことはとにかくよかったです。
BitSummitでも海外の方に試遊してもらえましたが、それは「日本にいる、または住んでいる海外の方」で、日本のインディーゲームに友好的な方たちでした。
gamescom 2024は日本のゲームに興味があるかどうかもわからない海外の方が多数派なので、その反応を直に見れたのは良かったです。ハマる人にはハマるし、そうじゃない人はすぐに止めちゃうなとか、日本で見られない反応を得られたのは良かったです。
もう少し準備していれば、とある新たな発表もできたかもしれないの
宣伝、商談……などなど準備不足だったと反省しきりです。
あとは英語をあと400倍くらい頑張ってコミュニケーションを取れるようにならねばと決意しました!
ゲームにもよると思いますが、『ほりほりドリル』は小学生くらいの子どもが試遊してくれる機会もかなりありました。
そのため、英語以外の言語設定(とくにドイツ語)は準備しておくべきだったと思います。また、試遊版クリアまでの時間が長すぎたのも反省点です。
完成度が低い状態で出展したので、もう少し完成度を上げてから出展できるとよかったなと思いました。仮の部分が多々あり、やっぱりそこで引っかかるよなぁというところが多かったので。
また、会期中に体調を崩してしまいました。体調管理や対策は万全を期すように気を付けるべきでした。気温がやや肌寒く感じるときもあり、室内着などももう少し気をつければよかったなというのもあります。
体調が良かったら、もう少しいろいろなパーティに出席するなどしてgamescom 2024を楽しめたのかなぁと思います。
英語でのコミュニケーションはマスト。皆さん気合いで乗り切っている感じもあるので、なんとかはなるかなと思います。ゲームは世界共通言語ですし。
ただ商談のレベルになると結構苦しいのかなとは思います。あと、東京に比べるとかなり英語表示は少ないですが、通じはするのでそんなに困ることはないのかな~というのが肌感です。
感想や要望を伝えてくれる方も大勢いたため、最低限は英語で話せる必要があると感じました。ただ英語が主言語ではない来場者も多く、そこまで身構える必要はないかと思います。
「どんなゲームなの?」と聞いてきたり、あるいはブースの前で止まって興味がありそうにしている方に説明するための、自分のゲームを表す英語のキャッチフレーズは準備しておくべきだと思いました。
自分のゲーム『ほりほりドリル』の場合は、“Minecraft combined with Diablo.”と説明していました。
英語に関しては、日常会話程度しかできない状態でしたので、ネイティブの発音を聞き取るのはそれなりに苦労しましたが、翻訳アプリを使うことでそれなりに問題なく会話できました。
たまたまかもですが、優しい方が多く、翻訳に手間取ってもしっかり付き合ってくれたので、意外と何とかなるもんだなというのが感想です。
出展費用はさておき、大変に物価が高く、コーラを2本買ったら2,000円しました。直行便でそこそこ近いホテルを取ろうとすると、三桁万円は余裕で見えてくるレベルで、正直ここがサポートされないと個人の開発者や小規模な会社はかなりハードルが高いと思います。
とはいえ、REWEというスーパーチェーンやdm、Rossmann、Müllerといったドラッグストアチェーンはぶっちゃけかなり安かったです。飲み物含めてほぼ日本のコンビニ程度という感じで、もちろん高いものもありますが、日用品は日本の価格と変わらないのでは……という印象でした。
gamescom 2024の会場であるケルンメッセに近いホテルをとったため、宿泊費はかなりかかりました(そもそもgamescomの影響で、周りのホテルの宿泊費が軒並み上がっていました)。
会場近くには駅があるので、会場から遠めのホテルを取るといった工夫次第で宿泊費は抑えられそうだと思います。
準備面や費用面でのコストが高かったです。金銭面でも、用意するものに関しても。法人ではないため、VIPOの補助金制度「JLOX+」を利用できなかったのは残念でした(※)。
※ 記事執筆時点において、個人ではJLOX+に応募できない
渡航宿泊費に関しては、今回出展した3作品の中ではかなり安く抑えられた部分はありました。それでも数十万円かかりましたが。
安くできた要因としては、会場から30キロ離れた隣町に泊まったのが良かったようですが、電車が動かなくて会場に向かえないということもあり、メリデメがあるなと思いました。
電車が1か月49ユーロで乗り放題の「Deutschland-Ticket」を使ったので、交通費の面ではかなり助かりました。解約時期に失敗して98ユーロ支払うことになりましたが(笑)。
VIPO単体としてgamescomに出展するのは初めてだったのですが、Ukiyo Studiosさんのご協力もあり、出展した3タイトルの皆さまには基本的にご満足いただける内容になったのかなと思います。しかし、準備期間が短かったこともあり、事前の商談設定のサポートがほとんどできなかったので、その点は悔やまれます。
gamescom 2024に出展した日本のインディーゲームはかなり少ないので、そこをどう後押ししていくのかが、今後の課題だと思いました。BtoBエリアに多数の国別パビリオンが出展されているのに、日本のパビリオンがないのは正直寂しく感じました。
この記事が掲載される頃にはすでに応募が締め切られていると思いますが、VIPOでは、JLOX+という補助金の事務局も担当しています。
こちらをご活用いただければ、海外出展に関する費用に対して半額補助が受けられます。来年度も実施されるか現段階ではわかりませんが、もし来年度も同様の補助金がある場合は、是非ご活用をご検討いただければと思います。
日本のゲームを世界に発信するためには、やはりジャパンパビリオンとして大きく出展するべきだなという思いを新たにしました。これはVIPOだけの力でどうにかなるものではないので、ゲーム業界の皆様と協力して、実現に向けて動いていきたいなと思います。
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