この記事の3行まとめ
- 3DCGツール「Blender」バージョン4.2 LTSのベータ版がリリース
- 互換性があるバージョンアップがほとんどだが、一部手動で移行作業が必要なものや動作が変わった機能もある
- レイを指定された位置に転送するRay Portal BSDFノードや新しいスカルプトツールなど新しい機能も多数追加されている
Blender開発チームは2024年6月5日、オープンソースの無料3DCGツール「Blender」のバージョン「4.2 LTS」ベータ版をリリースしました。
This also means that Blender 4.2 LTS has officially entered Beta stage.
⬇️ Download the Beta now, test it as much as possible and report any issues you find so we can all enjoy a stable release next month https://t.co/LnRbEMXXVj🧡
✨ What's new: https://t.co/fj855COlNV #b3d pic.twitter.com/0HzJ76urjo
— Blender 🔶 (@Blender) June 5, 2024
This also means that Blender 4.2 LTS has officially entered Beta stage.
⬇️ Download the Beta now, test it as much as possible and report any issues you find so we can all enjoy a stable release next month https://t.co/LnRbEMXXVj🧡
✨ What's new: https://t.co/fj855COlNV #b3d pic.twitter.com/0HzJ76urjo
— Blender 🔶 (@Blender) June 5, 2024
バージョン4.2はLTS(長期サポート版)として開発されており、正式リリースは7月16日を予定しています(現地時間)。
ベータ版では、レイを指定された位置に転送するRay Portal BSDFノードが追加されました。Ray Portal BSDFは、扉の向こうに広がる異空間や同じ室内に設置された監視カメラの映像などの表現に利用できます。また、任意の面で隠すことができる「Lasso Hide」などの新しいスカルプトツールも追加されています。
他にも、最終レンダリング時のGPUでの高速化や「元に戻す」操作時の時間短縮など、既存機能にもさまざまな改善・強化が行われています。
Ray Portal BSDFで2つの空間をつなげる(画像は公式ドキュメントより引用)
2つの空間を接続した表現が可能な「Ray Portal BSDFノード」が追加に
Ray Portal BSDFノードは、シーン内に別の場所のレイを転送します。
ポータルを通過する際の色・新しい場所でのレイの開始位置・新しい位置でのレイの方向を指定することで、2 つの空間を接続するポータルのような効果を表現できます。
また、レイの位置と方向を置き換えることで、画面上のカメラフィードのような効果も実現できます。
(画像は公式ドキュメントより引用)
それぞれの場合のノード設定例はBlender 4.2マニュアルを参照してください。
レンダリングエンジン「EEVEE」の改善
EEVEEに大幅なリファクタリングが実行され、グローバルイルミネーション、ライト、シャドウなど広範囲にわたる機能改善がなされています。
- すべてのBSDF(双方向散乱分布関数。シェーダーの計算に使われる)でスクリーンスペースのレイトレーシングを使用するように変更
- BSDFの数値制限、シーン内のライトの個数制限(※)撤廃
※ ただし、同時に表示できるライトは 4096 個まで
- シャドウは仮想シャドウマップを使用してレンダリングされるように変更
- Material > Blend ModeはMaterial > Render Methodに置き換え
- SSS(サブサーフェススキャッタリング)の機能改善
- 被写界深度機能の最適化
- 太陽光の影響の計算方法変更 など
※ ただし、同時に表示できるライトは 4096 個まで
多くの機能は互換性が保たれていますが、環境光やシャドウ、一部のマテリアル関連機能、ブルームなど一部の機能は手動で設定が必要です。設定が必要な機能と設定方法については公式ドキュメントをご確認ください。
コンポジットでのGPU使用やKhronos PBR Neutralビューの追加などレンダリングの機能強化
最終レンダリングのコンポジットが、GPUを使用して高速化できるようになりました。GPUを使用するかどうかは、コンポジターエディターのプロパティパネルで設定できるほか、Render settings画面からも設定可能です。また、CPUベースのレンダリングコンポジターも改善の結果、高速になったとのこと。
また、Khronos PBR Neutralビュー変換が追加されました。グレースケール照明の下で、マテリアルの入力sRGB ベースカラーにできる限り近づけたsRGBカラーを出力レンダリングで取得するもので、PBRカラーの再現に特化して設計されています。
マッパーによる色味の差(画像は公式ドキュメントより引用)
既存のバージョンと動作の変わる変更もされています。
ノードは左から右へと処理されるように変更されました。これにより、一度縮小したピクセルは再度拡大しても元の情報を復元せず、ピクセルが縮小したままとなります。
他にもこのノード処理の変更により、繰り返しやサイズの推論、画像サンプリングなどの場面で影響がおよぶ可能性があります。
詳細は公式ドキュメントをご確認ください。
任意の面で隠すことができる「Lasso Hide」など9種のスカルプトツールを追加
以下の9種のスカルプトツールが追加になっています。
- Polyline Mask
- Lasso Hide
- Line Hide
- Polyline Hide
- Line Face Set
- Polyline Face Set
- Line Trim
- Polyline Trim
- Grow & Shrink Visibility
Lasso Hide(動画は公式ドキュメントからの引用)
ほかにも、ジオメトリノードのパフォーマンス向上や、同じアセットを再エクスポートするプロセスの効率化など、複数のアップデートが行われています。
また、アルファ版で実装となった、「Blender Extensions」上のAdd-ons/ThemesをBlenderに追加できる機能も引き続き利用できます。
アップデートの詳細は、公式ドキュメントやBlender 4.2 Reference Manualをご確認ください。
Blender 4.2 リリースノート | Blender 公式ドキュメントBlender 4.2 Reference Manual