2024年3月30日(土)、大阪の梅田スカイビル10階アウラホールにてインディーゲームイベント「ゲームパビリオンjp」が開催されました。
昨年3月の初開催から1年ぶりに大阪・梅田に帰ってきた春のインディーゲームイベントは、出展タイトル数も100を超えるなど規模を大きく拡大。春の陽気に包まれ多数の来場者でにぎわったイベントの模様を、ライターが実際にプレイして気になったタイトルのフォトレポートを中心にお届けいたします。
2024年3月30日(土)、大阪の梅田スカイビル10階アウラホールにてインディーゲームイベント「ゲームパビリオンjp」が開催されました。
昨年3月の初開催から1年ぶりに大阪・梅田に帰ってきた春のインディーゲームイベントは、出展タイトル数も100を超えるなど規模を大きく拡大。春の陽気に包まれ多数の来場者でにぎわったイベントの模様を、ライターが実際にプレイして気になったタイトルのフォトレポートを中心にお届けいたします。
TEXT / ハル飯田
EDIT / 神山 大輝
「ゲームパビリオンjp」では「ロボゲー祭」や「シューティングゲームオンリー」などジャンルに沿ったタイトルが一団になった展示方式「プチオンリー」を採用。来場者が好みの作品を見つけやすいだけでなく、同じジャンルの開発に取り組むクリエイター同士の活発なコミュニケーションにも繋がっていました。
最初に紹介するのは、そんなシューティングゲームエリアの中でも2人同時にプレイできるデモ版が目を惹いた、びっくりソフトウェアの『Revolgear Zero』です。
本作は自機を操作して迫りくる小型機や大型のボスを破壊していく王道の2D横スクロール型シューティング。援護射撃を繰り出す2機のガンビットは合体状態と分離状態で機能が変わる仕組みになっており、強力な必殺技やシールドを駆使したプレイが楽しめます。
今回出展されたデモ版には、簡単なチュートリアルに加え、小型機を殲滅する爽快な序盤戦と巨大な敵に挑むボス戦で構成された1ステージが収録。直感的ですぐに思うように動かせる操作感が特徴で、筆者も一度はボスに倒されてしまったもののすぐに復活して攻略に成功しました。
2人プレイ用「DUOモード」によってイベント中は開発者自ら来場者とプレイしながらゲーム内容を解説することもあれば、来場者同士での協力プレイも繰り広げられ、2人プレイ対応ゲームならではの光景が見られるブースとなっていました。
びっくりソフトウェアの代表である白銀ねこびさんにお話を聞くと、『Revolgear Zero』は「強い自機を直感的に操作できる、昔ながらのシューティングゲームの魅力」の表現を目指し、耐えるようなプレイイングではなく、自ら積極的に動くスタイルで楽しめるようデザインされているとのこと。
同サークルはこれまでにも数々のシューティングゲームをリリースしていますが、今回は前作『Graze Counter GM』に続いて開発ツールに「GameMaker Studio 2」を使用。こだわりはEDGE2で描かれたドットグラフィックで、特にキャラクターのグラフィックは線画から人力でプリレンダリングして制作されています。まだまだ前半段階ながら「過去作の経験から試算できる部分もある」と、ノウハウを生かしながら開発を進めているそうです。
会場にはシリーズ作品のファンの方も数多く訪れており、白銀さんも「やっぱりファンの方が来てくださるのは嬉しいです。触ってもらった感想をフィードバックとして受け止めてこれからも開発していきます」と、喜びを口にしていました。
Pico Gamesの新タイトル『百合太刀降魔伝』も、弾幕をかわしながら敵を倒していくスクロール型アクションシューティングゲームです。本作の特徴は射撃だけではなく刀での接近戦も楽しめるシステムで、押し寄せる弾幕も刀の一振りでかき消してしまえます。
敵の攻撃をパリィして一定の無敵時間も生み出せる「刀」は窮地を打開できる攻防一体の要素ですが、耐久の限界が設定されており“消せない弾”も存在するため、過度なインファイトは禁物。ステージを進めると複数の強化要素が提示され、射撃面を成長させるか刀の性能をアップさせるかが選択できるので、戦い方やバランスがプレイヤー次第で変化していくゲーム性となっています。
主人公となる刀を擬人化したキャラクターたちによる“百合”なテイストを感じさせる掛け合いも可愛らしく、妖怪モチーフらしき敵キャラクターなど和風テイストの世界設定も魅力。シンプルさと歯ごたえのある難易度が共存した遊び心地が楽しめました。
「弾幕シューティングが好きなんですが、下手なのですぐやられてしまうんです。それなら敵の弾を消せれば良いのでは?と思って生まれたのが『百合太刀降魔伝』です」と、着想のきっかけを説明していただいたのは開発のPico Gamesさん。
開発エンジンにはUnityを使用しており、背景などにはアセットを使いながらもキャラクターは自らデザイン。特に作中の食事シーンには力をいれており、思わずお腹が減ってしまいそうなほど美味しそうな料理のイラストだけでなく“食べるごとに少しずつ減っていく描写”も取り入れています。これは開発者が大好きな作品をリスペクトして導入している要素で「時間とコストをかけてでも」と、単なる回復要素で終わらせないこだわりを見せてくれました。
作者はグラフィック畑出身ということもあり、開発では「弾が消せるシステムなど独特のゲーム性については手探りでプログラミングを進めている面もある」と新たなチャレンジへの苦労も感じているそうです。Pico Gamesはこれまでに『ドールエクスプローラー』などの作品もリリースしていますが、本作は一味違ったプレイ感のゲームとして仕上がりが期待されます。
開発は40%程度完了しており、今冬のリリースを目指して制作中。最終的にはビルドによって近接と遠距離のどちらに特化しても戦えるようなバランスやプレイ感を目指しているとのこと。イベント中も「自分ひとりで調整しているので、操作に慣れて難しくしすぎてしまったかな」と、来場者の意見や反応を今後の参考にしていました。
シンプルながらもアイデアが試されるプレイ感が光ったのは、Kei26氏の手がける『ロープくんアドベンチャー』です。
タイトル通り「始点を決めてロープを伸ばしていく」能力を持った主人公のロープくんがさまざまなステージをクリアしていくアクションゲームで、仕組みは非常にシンプルながらステージごとに伸ばせるロープの長さに上限が設定されており、動きに応じて“たわむ”挙動などを上手く利用することが攻略のポイントになっています。
今回のデモ版ではギミックを解いていくパズル調のステージと、敵をロープで縛って倒していくバトルテイストとで2種類のステージが登場。ロープを結ぶべき最善のルートをじっくり考えるパズルの魅力と、敵の動きを見ながら素早く立ち回るアクションの要素がどちらも楽しめ、シンプルなルールと適度に“ゆるい”ビジュアルが生み出すカジュアルさが心地よく遊べるゲームに仕上がっていました。
この『ロープくんアドベンチャー』を生み出したのは、個人クリエイターのKei26氏。仕事をしながら独学でゲーム開発を始め、本作が2作目にあたります。
開発にはUnityを使用しており、作中のキャラクターイラストは自ら担当。今後はロープの挙動をリアルにしていく調整に加え、硬いロープで敵の攻撃を跳ね返すなど新しいアクションも取り入れていきたいとの開発方針も明かしてくれました。
まだゲーム開発を始めて日が浅いこともあり、Kei26氏にとって初参加となったゲームパビリオンjpはデモ版のアピールだけでなく「周りの開発者さんとたくさん情報交換をしたい」と、クリエイターコミュニティ参加の場としても貴重な場に。遠征ではイベント後の懇親会にもなかなか参加しづらい関西圏のクリエイターさんにとっては、各方面からアクセスしやすい大阪・梅田でのイベントならではの魅力もあったようです。
会場内でもひときわポップなビジュアルが目を惹いたのは、福岡発の学生インディーゲーム開発サークルが手がける『ザコのあひる』です。
プレイヤーはあひるのおもちゃとなり、「回転する」と「口から水を吹き出してジャンプする」の2つの操作だけで足場を登っていきます。シンプルなアクションゲームながら、高難易度のアクションに何度もチャレンジしていく“登山ゲー”の要素も持っています。
特筆すべきはチュートリアルやプレイヤー落下時に語り掛けてくるゲーム内ガイド役がいかにも生意気な幼女、つまりは「メスガキ」なキャラクターであるという点。「お兄さんにできるかな?」「ザ~コ」など、定番とも言えるセリフを浴びせられながらのチャレンジはついつい焦りに繋がりますが、人によってはモチベーションアップにも繋がる可能性も考えられる、ユニークなシステムはインパクト抜群。
あひるのおもちゃは素早く回転するため、なかなか狙い通りのジャンプを決めるのは難しく、5回まで空中でもジャンプ可能でありながらチュートリアルクリアも至難の業。公衆の面前でメスガキちゃんの生意気なセリフを聞いている気恥ずかしさも感じつつ、それでも「次はクリアできそう!」と思わせる程よいバランスで、多くの来場者を楽しませていました。
本作を手がけるサークル「FUファイターズ」は福岡県の学生クリエイターコミュニティ「作るっちゃん」から生まれたチームです。メンバーのイラストレーターが生み出したメスガキ調の女の子イラストを使って何かゲームが作れないか?とアイデアを練っていたところ、代表を務める豊田さんが何度もクリアするほどやりこんだ作品『Getting Over It with Bennett Foddy』のゲーム性を組み合わせることを閃いて生まれたゲームなのだとか。
豊田さんはこれまで主にアンリアルエンジンを扱っていたものの、本作の開発にはUnityが適していると感じたため、冬休みを利用して3週間でC#プログラミングを猛勉強。上級生も集まるチームをまとめての開発は大変なことも多く、途中では「面白くできているのか?」と思い悩むこともあったそうですが、イベントへ出展して「難しくても粘ってプレイしてくださる人が多く、間違っていなかったと感じて嬉しかった」と一定の手ごたえを感じているそうです。
今後はステージの充実だけでなくストーリー面や女の子のキャラクター性の掘り下げを目指しており、2024年夏頃のリリースを予定しています。
初開催から1年ぶりとなった今回のゲームパビリオンには100以上の出展が集まり、昨年より大きく規模が拡大しました。好天と穏やかな陽気にも恵まれたこともあって開場直後から多くの人出で賑わい、来場者の中には当日受付でふらりと立ち寄った家族連れや外国人の方も目立ちました。
主催者の方からは「来場者が増えてるだけでなく、出展が集まるペースも昨年よりかなり早かった」とのコメントもあり、クリエイターにもイベントの認知が拡大していることが感じられます。
今回取り上げた作品は奇しくも関西をはじめ西日本を拠点に活動されているクリエイターの方々が開発を手がけているものばかりで、なかなか関東圏のイベントに参加できない方にとっても貴重な機会となっているようです。
お疲れ様でした。 pic.twitter.com/WX1euYdkdC
— ゲームパビリオンjp準備会|3月30日梅田スカイビルで開催 (@gamepavilion_jp) March 30, 2024
「前後に大きなイベントがないタイミングが丁度良いという声もあるので、来年以降も3月で続けていきたい」との展望もあり、今後は春のインディーゲームイベントのひとつに「3月の梅田」が定着していくのではないでしょうか。
「ゲームパビリオンjp」公式サイト「ゲームパビリオンjp準備会」Twitterアカウント大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。
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