2023年2月17日(金)から4月9日(日)にわたって開催された、アンリアルエンジンの学習を目的としたゲーム制作コンテスト『第19回UE5ぷちコン』。今回は「ロック」をテーマに110作品の応募がありました。
本記事では、最優秀賞を受賞した『Countdown to Explosion』の制作者であるkakuniさんに、企画から実装に至るまでの工夫やこだわりについて伺いました。
2023年2月17日(金)から4月9日(日)にわたって開催された、アンリアルエンジンの学習を目的としたゲーム制作コンテスト『第19回UE5ぷちコン』。今回は「ロック」をテーマに110作品の応募がありました。
本記事では、最優秀賞を受賞した『Countdown to Explosion』の制作者であるkakuniさんに、企画から実装に至るまでの工夫やこだわりについて伺いました。
TEXT / 佐藤 悠介
INTERVIEW / 神山 大輝
EDIT / 神谷 優斗
kakuniさん
もともとゲーム内でのコンテンツ制作が好きなこともあり、ゲーム制作にも着手。アンリアルクエストやぷちスタにも参加し、今回の『第19回UE5ぷちコン』で最優秀賞を受賞。
Twitter:@kaku_n2i
――まずは自己紹介をお願いします。
kakuniと申します。学歴や仕事はゲームとは関係ないですが、趣味としてゲーム制作を行っています。昔からゲームは「プレイする」のも「見る」のも好きで、その延長として「つくる」ことにもチャレンジしています。
――いつからゲーム開発を始めたのでしょうか。
もともと、ゲームの中で何かをつくるというのが好きで、『Minecraft』や『フォートナイト』のクリエイティブ、『Fallout 4』、『Cities: Skylines』など、プレイヤーがコンテンツを作成できるゲームを好んでプレイしています。
ゲーム開発にも興味はあったのですが、プログラミングができないことが大きな障壁となり、踏み出せずにいました。どうしようかと思っていたとき、プログラミングの知識なしでもゲームを制作できるアンリアルエンジンの存在を知ったことが、ゲームづくりを始めるきっかけになりました。現在はゲーム開発歴2~3年ほどになりましたね。
――ぷちコンへの参加のきっかけを教えてください。
最初、アンリアルエンジンの使い方はUdemyで勉強していました。しばらくしてアンリアルクエスト(※1)の初回が開催されることを知り、こちらも勉強になると思い参加しました。それからUE5ぷちスタ☆(※2)に2回参加して、最終的にぷちコンにも挑戦してみたという経緯です。ぷちコンは今回で2回目の参加ですね。
※1 エピック ゲームズ ジャパンが主催し、ヒストリアが運営するユーザー参加型イベント。課題を通して、アンリアルエンジンを使ったゲーム開発を学ぶことができる
※2 ぷちコンと同時期に開催されるサイドイベント。1週間の短期集中で開催され、ギミックなどの仕組みや見た目、UIのつくり方などを学ぶことができる
――ここからは最優秀賞受賞作『Countdown to Explosion』についてお伺いします。まずは、簡単にゲームの紹介をお願いします。
『Countdown to Explosion』は、爆発までの時間が異なる5つの爆弾を使ってステージ上にあるすべての岩を破壊するゲームです。爆弾を発射するアクションと、位置を「ロック」するアクションを駆使して、制限時間内に全ての岩を破壊することが目的です。
――「ロック」というテーマから本作の企画が生まれた経緯を教えてください。
ぷちコン開催期間中に開催されたぷちスタで、全16個のタスクをこなしながら1週間で爆破ゲームを作りました。そのなかで「動きが止まる爆弾を使って岩を破壊する」というアイデアが浮かび、作品に取り入れました。本作の開発は、ぷちスタに提出した作品を引き継ぐ形でスタートしましたね。
――ぷちスタのときから受賞作品と近いものが出来上がっていたんですね。ぷちスタの期間は1週間と短いですが、ゲームのシステムはいつ決まりましたか?
ぷちスタのタスクに「設置したら一定時間で爆破する爆弾を作ろう」という内容がありましたが、これを実装した際「すべての爆弾が同じ時間で爆発すると代わり映えしないのでは?」と感じました。そこで、まずは爆発の時間をずらすシステムが決まりました。
毎日2~3時間ほどかけてタスクをこなしながら、使える爆弾を5種類だけにしたり、1度爆発するまで同じ爆弾を使えないようにしたりと制限を設けることでゲーム性を発展させていきました。
爆弾を投げて動かすアイデアは、「爆弾をキックできるようにしよう」というタスクがうまく実装できず、試行錯誤の末に生まれたものですね。
――ぷちスタの作品からぷちコンの作品へのブラッシュアップはどのように行いましたか?
基本的な仕様はぷちスタから手を加えていません。開発初期はゲームの基幹部分が正しく動作することを重要視し、ゲームオーバーのあとにクリアできてしまうなどのバグ修正をメインに行いました。
その後、ギミック類や新ステージといったコンテンツに加え、見た目やサウンドなどの演出など、作品の完成度を底上げする要素を追加しました。
ステージ制作は、新しいギミックを作成し、ギミック同士を組み合わせる流れでステージを構築していきました。
見栄えに関しては、マーケットプレイスのアセットを使ってビジュアルを洗練させたほか、BGMの追加、UIの変更やステージの開始/終了演出の追加などを行いました。
――制作に使用したツールやアセットがあれば教えてください。
使用したツールはUnreal Engine 5.1のみで、DCCツールなどは使っていません。
本作のオブジェクトやエフェクトなどの素材はすべてマーケットプレイスのアセットです。キャラクターの3Dモデルをローポリテイストにしたのに合わせて、ステージやエフェクトにもローポリのアセットを使用しました。
――本作のレベルデザインや難易度設定はどのように行いましたか?
本作は、いくつかのギミックを組み合わせることでステージを作っています。実装したギミックは「動く床」「ボタンで開くドア」「爆弾を加速させる床」の3つです。
他にも「乗ったら跳ねる床」や「ワープ」などのギミックも構想していましたが、ステージが増えすぎてしまうため採用を見送りました。
――難易度の調整が非常によくできているなと感じました。何かノウハウがあるのでしょうか?
序盤は1つのギミックだけで簡単にクリアできる難易度から始めて、ステージが進むごとに少しずつ他のギミックと組み合わせて複雑になるようにしています。ノウハウというより、あくまで自分自身の感覚をもとに調整しています。
実は、ギミックをたくさん組み合わせてめちゃくちゃ難しいステージを作ったんですけど、自分でプレイしてみたらイライラしてしまって。あまりにも難しくなってしまったステージは、最終的にすべて削除しました。
――ステージ制作にはどのくらい時間がかかったのでしょうか?
ゲームのコア部分の実装に2~3週間ほどかけたため、残りの1週間で一気にステージ制作を進めました。最終的には15個のステージを用意できましたが、時間があればもう少し増やしたかったですね。
――つくってきた中でお気に入りのステージはありますか?
5ステージ目が特に気に入っています。この面は誘爆のシステムを上手く使うことで、クリアタイムの短縮ができるんですよね。爆弾の置き方でタイムの短縮を狙えるように設計できたステージは、どれも気に入っています。
――本作の特徴でもある爆弾の動きをロックする(止める)システムはどのように実装しましたか?
ぷちスタの段階では、「Simulate Physics」をOFFにして実装しましたが、爆弾が他のオブジェクトに押される挙動が不安定でした。例えば、爆弾が床に押されると貫通してしまうことがあるんですよね。
ぷちコンに提出した作品では、実装方法を変えました。爆弾にかかる重力を0にし、毎Tick「Set Physics Linear Velocity」で速度を0に設定し続けるようにしています。こうすることで、他のオブジェクトに押されたときに爆弾が貫通せず、狙ったとおりに動作するようになりました。
ロックを解除したらロック前の速度を取り戻すロジックは、ロック開始時の速度を変数として保存し、解除時にその速度を爆弾に再度与えることで実装しています。
――ステージの開始/終了時に床が降ってくる演出の実装方法を教えてください。
床の移動には「Timeline」を使用しています。床の動きをTimelineに設定し、ランダムなPlay Rateで再生することで単一のTimelineでバラバラに降ってくる動きを実現しました。
ステージ終了時の演出は、Timelineを逆再生しています。
岩は移動させず、隕石のようなエフェクトに合わせてスポーンさせています。
――他に実装したものでこだわっている部分はありますか?
ゲーム開始時のカメラはステージ全体を見渡すようにしたり、爆弾を設置するときは微調整できるようにキャラクターをゆっくり動かせるようにしたりと、プレイしやすさに重点をおいて改善を重ねました。他にも、爆弾の射出力を示すインジケーターや、射出方向を示す矢印の透過表示などを工夫してプレイアビリティを高めています。
他にこだわったのは、爆弾の爆発範囲内にある岩や他の爆弾をハイライトする機能ですね。自分で何度もテストプレイしてみて、あったらわかりやすいのになという機能を付け足しています。
――最後に、今後作ってみたい作品や、キャリアの展望について教えてください。
趣味として、今後もアンリアルエンジンでのゲーム制作は続けていきたいです。いつか自分の作品のリリースにもチャレンジできたらいいですね。
今はつくってみたいゲームのイメージが固まっているわけではないので、今後の活動の中でそれを模索しつつ、つくりたいものができたときに必要になるであろうスキルをぷちコンなどで学んでいきたいです。
――これからの作品も楽しみにしています。本日はありがとうございました。
※使用アセットは記事中に登場したもののみ掲載しています
ゲームメーカーズ編集部。とにかくゲームが好きで、プレイするジャンルはRPG、SLG、FPS、ADV…とさまざま。『CoD』シリーズでは、アマチュアプレイヤーとしてのesports経験も。
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