2022年11月13日(日)、秋葉原UDX2階 アキバ・スクエア + 4階 UDXギャラリーにて『デジゲー博 2022』が開催されました。デジゲー博は、今年10回目の開催となる同人ゲーム・インディーゲームの展示・即売会イベントです。本記事では、イベントの様子をお届けするとともに編集部のチェックした作品を紹介します。
TEXT / 佐藤 悠介
EDIT / 酒井 理恵
目次
記念すべき第10回目の開催に多彩なゲームが集まる
デジゲー博は2013年の初開催以来、年1回のペースで開催され今年で10回目を迎えました。この節目の年に、記念ステッカーの配布や記念トレーナーの販売が行われました。
今回は新型コロナウイルス感染症流行以降初めて200組を超えるサークルが出展し、イベントは多くの人で盛り上がっていました。
VRや大型の筐体を使用し、今の技術をふんだんに取り入れた作品がある一方で、いかに小さな容量に収めるかに主眼をおいたミニマムでレトロなPCゲームまで、バラエティ豊かなゲームが揃うのもデジゲー博ならではの魅力です。
さまざまな出展者のなかから、編集部が注目したサークルをいくつかご紹介します。
『MINDHACK』VODKAdemo?
『MINDHACK』最新トレーラー
ホでヴ氏、紅狐氏、ササン三氏の3人で結成されたインディーゲームクリエイター集団「VODKAdemo?」は今回展示する作品がサークルとして初めて作った作品ながらブースに行列ができていたサークルです。ホでヴ氏、紅狐氏、ササン三氏が互いの作品のファンであったことからTwitterで交流が始まり、住まいが近くなったことをきっかけに共同でゲームを制作し始めるに至ったそうです。
展示していた『MINDHACK』は、「悪人の頭をお花畑にする」をテーマにしたテキストアドベンチャー。試遊時に登場した人物はウニのような頭を持った悪人やフード姿の隊長。そして白い手袋をつけた手だけが見えるプレイヤーこと「先生」。
プレイヤーは悪人たちの精神に巣食う人格の歪み「バグ」にアクセスし、対象の歪みの原因となっている記憶を探り、書き換えて更生させていきます。
本作は、主人公の視界を映し出すPOV表現のために、プレイ画面には常に主人公の手を表示。選択肢やイベントではこの手が動き回り、一風変わった体験ができます。手の動きは手書きのアニメーションによって表現されており、これはプロのアニメーターであるホでヴ氏が制作しています。モーショントラッキングなどを使わず手書きにしたのは、アニメーターである自身が一番豊かに手を表現できる手法だったからだと言います。
制作はお互いのアイデアをどんどん膨らませ、掛け合わせる形で進んだそうです。シナリオからイラスト、イラストからシナリオへ。お互いのクリエイティブへのリスペクトがこの相互作用を加速させたのかもしれません。
『MINDHACK』は2022年冬にアーリーアクセス開始を目指して開発を進めるとのこと。Steamの製品ページではゲームの約1割ほどをプレイできる体験版が配信されています。
サークルとしては、本作の配信後もノベルゲームやパズルゲームを制作したいと意気込みを語りました。
『MINDHACK』公式サイト『コックピットシミュレーター』Project ICKX
「Project ICKX」はデジゲー博初回開催から参加しているサークルです。今回は『コックピットシミュレーター』を展示していました。
本作は戦闘機に乗って富士山周辺360キロメートルを自由に遊覧するというもので、湾曲スクリーンと専用のコントローラーで戦闘機のコックピットを模した巨大な筐体に座ってプレイします。
元々VRコンテンツとして開発された本作は、国土地理院の制作する基盤地図情報および基盤地図情報数値標高モデルをもとにVoxcellDesignが制作したUnityパッケージ『富士山ビューワーVR』とProject ICKXが制作したフライトアクションゲーム『Vertical Strike Endless Challenge』のプログラムを組み合わせて制作されています。正確な地理情報と忠実に再現された戦闘機の操作、大掛かりな筐体によって実際に戦闘機を操作して空を飛びまわっているような体験が得られます。
右手で機体の向きを、左手でスピードをコントロールする。コックピットのほうがゲーム機のコントローラーとくらべて操作と飛行の対応が体でわかりやすいという
『音札 -おとふだ-』mtsgi
「mtsgi」も筐体が目を引いたサークルでした。
このサークルの手掛ける『音札 -おとふだ-』は、音楽ゲームと花札を組み合わせた対戦ゲームです。プレイヤーは、音楽ゲームをプレイしながら、手札を取捨選択します。手札をプレイすることで相手に干渉しながらゲームは進行し、最終的に音楽ゲームの得点と残った手札の役の得点を合わせたスコアで勝敗が決定します。
「音楽ゲームの対戦モードでは同じ楽曲をプレイするだけで対戦している感が得られない」と考え、対戦ゲームとしての面白さを演出するためにこのようなシステムを考案したとのこと。本作の特徴ともいえる細長い筐体は、2人が同じディスプレイに向き合ってのプレイが可能で、相手の手札を見ながら自身の行動を決定する心理戦としての要素が強化されています。
また、本作は非接触型ハンドトラッキングセンサー「Leap Motion Controller」が導入されており、空中で左右に手を振ったり、手を握ったりといった3次元入力操作もゲーム中に行います。
対戦相手がどれくらい叩けているかを見ながらの音楽ゲームの体験は格闘ゲームをプレイしているかのような緊張感がありました。
『音札 -おとふだ-』公式ホームページ『デモリッション ロボッツ K.K.』Throw the warped code out
『デモリッション ロボッツ K.K.』では対戦ゲームを盛り上げる興味深いシステムを取り入れていました。
本作は4人対戦型のビル破壊アクションゲームで、プレイヤーはどれだけ効率的に建物を破壊できたかを競います。Twitchとの連携によってゲームをプレイする配信者だけでなく、配信を見ている視聴者もゲームに干渉できるようになっています。
視聴者は、マップ内に罠を設置して配信者を邪魔したり、必殺技のゲージを貯めて応援したりできます。設置した罠にユーザーネームが表示され、プレイ終了後には設置した罠の数に応じたランキングが表示されることで、視聴者は配信により没入できます。
2022年7月31日にTwitchで実施した『デモリッション ロボッツ K.K.』試験配信の様子。配信動画に操作可能なUIが表示されている
視聴者がゲームプレイに干渉できる作品は他にも存在しますが、本作は視聴者用のUIがあるという点で異なります。UIは、配信画面にレイヤーを被せることで表現しており、GENVIDのSDKで実装されています。視聴者は単純なクリック操作でゲームに干渉でき、特定の配信者が動かすロボットを視聴者が選択し続けることも可能となっています。
配信者への邪魔する方法としては、視聴時間ごとに追加されるポイントを使用するものに加えて、課金でのアイテム購入を考えているそうです。今後の開発では、視聴者が制作したマップを配信者がプレイできるようになる機能の実装が考えられています。
『デモリッション ロボッツ K.K.』公式サイト『犯罪者隔離世界』ACT
「ACT」のアドベンチャー×ミニゲーム『犯罪者隔離世界』はゲームクリエイターあざみ氏主催のもと、約40人のチームでゲーム制作を行ったとのこと。個人制作のグループとしてはかなり大所帯です。メンバーはUnityゲームクリエイターによるコミュニティ『Unityゲーム開発者ギルド』で知り合った人やTwitterにおけるメンバー募集への応募者によって構成され、デザイナーやエンジニア、声優などさまざまな役職の人がいるとのこと。
この大人数のチームをまとめるために、あざみ氏は1日に3回打ち合わせをすることもあったそうです。
本作は、テキストアドベンチャーを週刊連載形式で配信するゲームで、全12話のエピソードが週に1話ずつ、それぞれ違ったジャンルのミニゲーム付きで配信されます。それぞれのミニゲームは、ゲームジャンルによってのプレイヤーの得手不得手を考慮し、ストレスを感じないようスムーズにクリアができるように工夫されています。
『犯罪者隔離世界』公式サイトそれぞれのこだわりが独創的なゲームに
今回取材したブースからは、開発者さんたちのこだわりが見て取れました。「mtsgi」の対戦形式や「Throw the warped code out」の視聴者にも参加させる仕組みなどです。次回のデジゲー博でこうした「こだわり」がどのようにゲームの表現を広げていくのか、今から楽しみになるイベントでした。
デジゲー博2022 公式サイトゲームメーカーズ編集部。とにかくゲームが好きで、プレイするジャンルはRPG、SLG、FPS、ADV…とさまざま。『CoD』シリーズでは、アマチュアプレイヤーとしてのesports経験も。
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