プログラミングで戦闘を自動化!最適解を構築するローグライク
『オートローグ』はその名の通り「戦闘を自動化するローグライク」だ。戦闘前にあらかじめ行動パターンを仕込んでおき、戦闘中はプレイヤーが操作せず全自動で進行するという、プログラミングのようなゲームプレイを特徴としている。
本作では、攻撃や防御などのスキルに発動条件を付与することで戦闘を自動化する。いわばif~else文の要領でスキルと条件を組み合わせ、ひとつのロジックを構築するのだ。
攻撃スキルを「敵のHP残量が10%以下」で発動してトドメの一撃を叩き込み、防御スキルを「自分のHP残量が50%以下」で展開して敵の攻撃を耐え凌ぐ。複数の条件を重ねて付与することもでき、組み合わせ次第で幅広い戦略を生み出せる。
戦闘をクリアするごとに新たなスキルが手に入り、戦闘ロジックをさらに強化できる。ゲームが進むにつれてより細やかな事前準備が必要となっていく。揃えたスキルでいかに窮地を切り抜けるか、最適な戦略を編み出す過程に手ごたえがある作品だ。
『オートローグ』の楽しさは、プログラミングを組み動作確認するプロセスがそのままローグライクに織り込まれているところにある。
プレイフィールは『ファイナルファンタジーXII』のガンビットというシステムにも近い。こちらは味方の行動を条件付けで決めるシステムであり、登場当時も「プログラミング的だ」という声が多く聞かれた。またプログラミングをゲームデザインに組み込んだ先例として、パズルゲーム『Human Resource Machine』なども想起させるところがある。
そうした既存作品に対して『オートローグ』は、やはりローグライクならではの “どんなスキルが来るかわからない”プレイ体験が独自性を放っている。
加えて、戦略がハマって敵を撃破したときの爽快感や、勝利後に獲得できる金銭やレリックといった豪快な見返りなど、プレイヤーが気持ちよく遊べる仕掛けが随所に織り込まれているように感じた。
プログラミングと聞くと一見難しそうな題材に思えるが、本作では丁寧なチュートリアルが用意されているため、プログラミングに馴染みのないプレイヤーでも段階的に遊び方を理解できるようになっている。
オリジナリティを見事に生かしきった本作は、2025年7月5日(土)時点で4万本のセールスを出したことが発表されている。確かな面白さがレビューに反映され、たくさんのゲーマーに本作の魅力が広まった結果といえよう。
「難しそう」なプログラミングの魅力を多くの人に届けるには?演出やチュートリアルなど随所に凝らされた工夫
定期的な宝物氏はもともと『Slay the Spire』などのローグライクゲームや、『Factorio』のように工場でのクラフトを自動化していくゲームが好きだったこともあり、本作もそうしたタイトルから着想を得ているという。
プログラミング的なゲームプレイを取り入れたのも、幼少期から好んでプログラミングに触れていたことが影響している。
難解なイメージを持たれがちなプログラミングを、わかりやすく触れやすいものとしてゲームにしたいという思いを抱いていた同氏。そこで、プレイするたびに最適解が変化する中プログラミングのように自動化の処理を組むというゲームデザインに辿り着いた。
ローグライクの中でも新味のあるゲームデザインであるゆえに、プレイヤーがシステムをすんなりと理解できるように、伝える情報量や順番にも工夫が凝らされている。またご友人らにテストプレイをしてもらい、フィードバックを反映した結果が丁寧なチュートリアル作り込みに表れている。
演出面にも力が入れられており、スキルに発動条件を配置した際の演出や、キャラクターのアニメーション、敵を倒したときにお金やアイテムが発生する演出などが細かく描かれ、「操作しているだけでも気持ちいい」という状態まで磨き上げられている。
またこの洗練された演出は、ゲームシステムを理解するハードルがやや高めな本作において、プレイヤーが完璧に仕組みを把握しきるまでの間に「面白そうなことが起こりそうだ」と期待感を高める橋渡し的な効果も担っている。
「プレイヤーがゲームスタイルを理解するまでの大変さを補助できるように、ビジュアル面で面白さや気持ち良さを感じてもらうことを意識しました」(定期的な宝物氏)
最後に「人気ジャンルのゲームを作る際にオリジナリティを導入したい」と考えるクリエイターに向けたアドバイスを定期的な宝物氏に伺った。
「私自身も模索している段階ですが、現段階の知見としては、やはり初見の人に遊んでもらうのが一番大きいです。プレイ画面を見て、どこでゲームが詰まっているかを把握した上で、適切なゲームプレイのやり方の情報を出していくのが大事だと思います」
ゲーム体験に合った演出ひとつひとつを丁寧に作り込むこと。そしてテストプレイからフィードバックを受け、どうすればゲームシステムが伝わりやすくなるか試行錯誤すること。これらはどちらも地道な努力がものを言う制作セクションでもある。
ローグライク×プログラミングという独自の持ち味に加えて、「面白いけれど理解するハードルが高い」ゲームシステムを楽しくわかりやすく伝える工夫もあいまって、『オートローグ』は多くのゲーマーの心を掴むことに成功した。
本作は現在Steamで販売中。また定期的な宝物氏の公式Xでは、本作のアップデートなどの情報が定期的に投稿されている。興味のある方はぜひチェックしてみてほしい。
定期的な宝物氏 公式Xアカウント「東京ゲームショウ2025」公式サイト
「ジャンル複合ライティング」というスタンスで活動。ビデオゲームを中核に、映画やアニメーションをはじめ、現代美術から格闘技、社会など数多くのジャンルを横断した企画やテキストを執筆している。