厳しいゲーム規制はなぜ生まれ、開発者はどう対処してきたか。コンソール市場から紐解く中国ゲーム産業の歴史【「中国ゲーム市場」徹底攻略Vol.02】

2025.03.15
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ゲームのグローバル展開が必須になりつつある中、新たな市場として日本に文化が近い「中国市場」の魅力やゲーム展開する上でのポイントを紹介する本連載。中国でゲームのパブリッシング事業などを手がけるグラディーク代表 高橋 玲央奈氏より、中国市場の分析やゲーム展開における重要ポイントを語っていただきます。

第2回は、中国でゲームを販売する上で避けて通れない独自の規制について解説。中国政府がなぜ厳しい規制を設けたのか、それに対してユーザーやゲーム開発会社がどのように対応してきたのか、中国ゲーム業界の歴史を2000年代まで遡って紐解いていきます。

TEXT / 高橋 玲央奈
EDIT / 神山 大輝, 田端 秀輝, 浜井 智史

目次

中国政府の厳しい規制をどうにか切り抜けてきた、開発者・ユーザーの生存戦略

中国にはゲームの販売に必要な「版号ネットワークゲーム出版物番号)」という許可制度があります。原則として、版号を取得していないゲームは中国では流通できません。

しかし実際のところ、中国国内には海外版コンソールゲーム機が流通しています。これらは通常通りストアに接続でき、版号がないゲームもプレイできてしまいます

また、Steamにも中国版と海外版が存在しますが、海外版にアクセスすれば版号がないゲームを購入できてしまいます。つまり、中国ユーザーの実態としては、版号がないタイトルもSteamなどを通して遊んでいる状況にあります

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日本では市場全体が一つの企業の意思決定に左右されるケースはあまり見られませんが、こと中国市場においては、政府機関や一つの企業による意思決定が市場の構造を大きく変え得るといえます。

中国の有名な慣用句に「上有政策、下有対策」という言葉があります。「国家など立場が上の者が施策を打てば、民衆はその対策を生み出す」という意味で、中国ではこの考え方が常識のようになっています。

中国ゲーム市場に限らず、新たに登場した規制や市場に対応する際は、それらが生まれた経緯や歴史を知っておくことが重要です。歴史を知ることで、次に何が起こり、どう対策すればいいかが考えやすくなるでしょう。

今回は、中国政府によるゲーム規制の動向と、それに対してユーザーやゲーム開発企業がどのように打開策を講じてきたか、中国ゲーム業界の歴史を振り返ります。

版号が生まれた経緯は?中国ゲーム業界の発展と規制の歴史を振り返る

規制の裏で流通し続けるコンソールゲーム

筆者が中国ゲーム産業年次総会2024での登壇を終えたあと、ちょうどGOTYの発表が行われた日のこと。私は20代の同僚とともに、会場から車で10分程度の場所にあるアパートに向かい、その一室でひっそりと暮らす「中国ゲーム市場の生き証人」に会っていました。

山肌にへばりつくように建てられたアパート群は、どれも同じような見た目をしていました。配車サービスで呼んだ運転手も全く土地勘がないようで、私たちを降ろすと物凄い速度で去っていきました。

平日の昼間にしても全く人気のない道を、百度地図(Googleマップ的なアプリ)を頼りに歩きます。目的地のアパートに入ると、1階に垢抜けない扉を見つけました。扉には「卡姆乐屋(カムラウ)」と書かれた紙。私は思わず「絶対ここだ!」と興奮気味に声をあげました。

扉の周りを「幸運を呼ぶ赤いお札」が囲っている

恐る恐るインターフォンを押すと、白髪に白く長い髭を蓄えた仙人のような人物が出てきました。「ホッホッホッ。若者よ、よく来たな。自由に見ていっていいぞよ」という感じの中国語で、彼は私たちを招き入れてくれました。

私たちが訪れたのは、ゲーム博物館「卡姆乐屋(カムラウ)」。出迎えてくれた人物は、「北京のゲーム仙人」こと館長の王さんです。

左は筆者、右にいるのが館長の王さん。

王さんの後ろにある金看板には、セガサターンの正規代理店を示す文言が書かれている

「カムラウ」は1988年に開店した中国最初のゲーム専門店。当初は北京市中心部、鼓楼西大街の胡同エリアに店舗を構えていましたが、2010年に再開発の影響でアパートの一室に店舗を移し、現在に至ります。

胡同エリアは長らく「中国の秋葉原」と呼ばれていました。コンソールゲームの販売が規制されていた2000年から2015年の間、カムラウはいわゆる「ゲームの駆け込み寺」としてゲームの修理を受け付けてきました。2015年以降はコンソールゲームの販売が解禁され、メーカー公式のサポートも再開しましたが、カムラウには現在も修理の依頼が絶えず、中国全土からゲーム機が送られてくるといいます。

70歳近い館長の王さんと3人の従業員で日々ゲームの修理が行われているカムラウには、自然と古いゲーム機が集まり、ゲーム博物館然とした姿が形作られていました。

歴代家庭用ゲームの最新機種も含めたロジックボードや電源カードが、一枚一枚の基盤に手書きの細かい解説を添えて展示されている。新旧ゲーム機を隅々まで知り尽くしている「カムラウ」ならではの展示といえる

「カムラウ」の収蔵品に関する詳細は別の記事に譲りたいと思う

展示されているゲーム機は多岐にわたります。主に中国国内で流通していたゲーム機が取り揃えられており、大部分は日本のゲームメーカーにも馴染みのあるものばかり。少なくとも中国の首都北京においては、「カムラウ」が開店した1988年当時からコンソールゲーム機が流通していたことがわかります

ファミコンの海賊版ハードも多く見られますが、「カムラウ」がセガサターンの正規代理店であることからもわかる通り、いわゆる次世代機競争の時代にはリアルタイムで正規品も販売されていました。

中国では2000年頃よりコンソールゲーム機が規制されてしまうわけですが、それ以降も日本のゲームは中国国内で流通し続けました。

任天堂は2002年、中華系アメリカ人の顔 維群 博士とともに、ゲーム会社「神遊科技(iQue)」を設立。翌年の2003年にコンソールゲーム機「iQue Player」を発売します。このゲーム機は「NINTENDO64」をベースとしているのですが、本体機能がコントローラーに統合されています。言うなれば「コントローラー型のゲーム機」です。見た目を変えることで「コンソールゲーム機」の定義を外れ、規制の網の目を抜けるという、いわゆる裏技的な手法でした。

「iQue Player」(画像は「iQue」公式サイトより引用)

その後、神遊科技は2004年より「ゲームボーイアドバンス」の展開を開始。こちらはコンソールゲーム機ではないため規制対象とならず、正規品を展開できました。中国では『逆転裁判』シリーズが大人気IPとなっていますが、これは「ゲームボーイアドバンス」や「ニンテンドーDS」などの携帯ゲーム機が正規に流通していたことと深い関係があります

一方でソニーは、自社ゲーム機を中国で正規展開しない道を選びました。中国では「PSP(PlayStation Portable)」も人気だったのですが、それらは全て個人輸入品だったということになります。また「PlayStation」および「PlayStation 2」は海賊版も流通していました。

「カムラウ」に収蔵されている「PlayStation」のメモリーカードの基板。正規品/互換品/偽物に分類されているが、1つとして同じ基板がないところが当時の海賊版競争の激しさを物語っている

オンラインゲーム全盛期から版号の登場

コンソールゲームが規制される中、規制の影響が及ばないオンラインゲームが黄金時代を迎えることとなります

2000年代にはPC向けMMORPGが登場し、中国を席巻しました。もともと中国では1994年に初の国産PCゲーム「神鷹突撃隊(Magic Eagle)」が発売されて以来、PCゲームが一般的なものとなっていました。また、中国最大のゲームイベント「ChinaJoy」を主催する業界団体「中国音数協」が設立されたのもこの頃です。

2004年には「ChinaJoy」第1回が開催。「ChinaJoy」は中国音数協が毎年開催する中国最大のゲームイベントで、写真は2024年開催時のもの(画像は「ChinaJoy」公式サイトより引用)

しかし、時代が下るにつれて国産ゲームの波は低くなり、海外PCゲームの翻訳版が正規/非正規入り乱れて流通する「大海賊版時代」が到来します。この時代はPCゲームの海賊版競争も厳しく、いわゆるパッケージソフトは収益性が低くなってしまいました。日本でも秋葉原で怪しいコピーDVDが売られていたり、P2P(※)によるゲームプログラムの違法な受け渡しが話題になったりした時代です。
※ サーバーを介さず、端末同士で直接データの受け渡しを行う方式

それに対して、オンラインゲームはサーバー上でユーザーをリアルタイムに管理できるため、相対的に収益性が向上しました。2001年にネットイースがリリースした『夢幻西遊』をはじめ、盛大遊戯の『傳奇世界』や、パーフェクトワールドの『パーフェクト ワールド -完美世界-』など、中国国内のゲーム会社が数多くのMMORPGを展開し、人気を博しました。当時の中国では経済的な理由でPCを購入できる人が限られていたことから、日本でいうネットカフェがPCゲーマーの舞台になりました。

国外産のゲームも話題を呼び、日本でも人気の高かった『ラグナロクオンライン』は知らない人がいないほどの大盛況となりました。

(画像は『ラグナロクオンライン』公式サイトより引用)

こうしてオンラインゲームが全盛期を迎えていた一方、中国政府は2003年より、ゲームの長時間プレイから未成年を保護することを目的に「版号ネットワークゲーム出版物番号)」制度を開始しました。

版号を取り仕切るのは、中国国内のメディア規制を司る行政機関「中国国家新聞出版署(※)」。制度が始まった当時、規制対象は主にPCゲームでした。中国ではゲームもメディアの一種とみなされ、行政により管理されているのです。
※ 版号開始当時は「中国国家新聞出版放送総局(中国国家新闻出版广电总局)」という機関で、再編成を経て現在に至る

中国国家新聞出版署はデジタルゲームなど電子コンテンツのほかに、書籍(图书)や新聞(报纸)といったさまざまなメディアを管轄している(画像は中国国家新聞出版署のWebサイトのスクリーンショット)

MMORPGブームにより収益を上げた中国ゲーム企業は、2000年代後半から2010年代にかけて海外ゲーム企業の買収に動き出します。

QQやWeChatといったオンラインコミュニケーションツールで収益を上げたテンセントは、人気MOBAゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』の開発元であるRiot Gamesを2009年に買収。2012年には、当時Unrealシリーズで有名だったEpic Gamesの筆頭株主となりました。

テンセントが2015年にリリースしたモバイル向けMOBAゲーム『Honor of Kings』は、現在でも中国のモバイルゲーム売上のうち50%を占めるといわれるほどの人気タイトルとなりました。『パズル&ドラゴンズ』や『モンスターストライク』といった日本タイトルも一時期リリースされていたものの、モバイルゲームでは日本は存在感を示せず、現在に至っています。
※ 一連の中国ゲーム産業の歴史に興味のある方は、中村彰憲「中国ゲーム産業史」(ビジネスファミ通)を手にとってみることをおすすめします。ここには書ききれなかった中国ゲーム業界の様々なトピックがまとめられています

(画像は『Honor of Kings』公式サイトより引用)

翌年2016年5月24日には、各自治体に「モバイルゲームパブリッシングサービス管理の通知(关于移动游戏出版服务管理的通知)」が送付され、版号の制度がモバイルゲームにも適用となり、未承認タイトルの配信が禁止されました

この制度変更は「モバイルゲームの出版サービス管理をさらに規範化し、受理および審査業務の効率を向上させること」を目的としたもの。審査内容にはゲームの内容や著作権、倫理性などが含まれ、とくに未成年者への悪影響を防ぐための措置が強調されています。

また、海外企業は中国国内のパートナーを通さないとモバイルゲーム配信の申請ができず、審査を受けられないという内容になりました。

広東省広播電視局のWebサイトには、「モバイルゲームパブリッシングサービス管理の通知(关于移动游戏出版服务管理的通知)」の文面が掲載されている(画像は広東省広播電視局のWebサイトのスクリーンショット)

そして2018年末、中国のゲーム市場を揺るがす大事件が起こります。版号の新規発行が10ヶ月にわたって停止したのです。

高橋玲央奈

私も当時リリース予定のゲームに版号を申請していたのですが、今月は版号が出ないっぽい、翌月も出ないっぽい……と待ち続けていました。3ヶ月経ったあたりで「あれあれ?」とみんなパニック状態になっていたのを思い出します。

半年が経過しても版号は出ず、これが原因で事業を停止する会社も出てきました。中国版App Storeでゲームを配信する際にも版号が必要であり、Google Playはそもそも中国のモバイル端末では接続できません。版号がなければ新規タイトルをリリースできないのです。

2017年には年間9,000本のタイトルに出ていた版号ですが、この事件を経て2019年は約1/6の1,570本まで減少しました。これ以降、中国のスマホゲーム市場の成長率は、コロナ禍の一時期を除いて横ばいになっています。

版号に縛られない海外製の「正規品」ゲーム機が主流に

2019年には任天堂がテンセントとコラボし、「Nintendo Switch」(以下、「Switch」と表記)の中国版をリリースします。

ところが、中国版Switchに対応するゲームをストアで販売する際も版号が必要だったため、多くの人気ゲームがリリースされませんでした。ゲームのラインナップが停滞する中、このゲーム機は実質的に『リングフィット アドベンチャー』と『ジャストダンス』の専用機と化します。

間隙を縫う形で、テンセントに並ぶ大手IT企業アリババが展開する中国最大手の通販サイト「タオバオ」にて、香港版/日本版Switchが大量に販売されます。この時期は日本でもSwitchが品薄になっていた時期です。

海外版Switchは海外のストアに接続してゲームを購入できるため、版号のないタイトルも海外のストアを通して遊べるようになりました。

2015年にはソニーも「PlayStation 4」を正式に展開開始。これは、中国版でも特定の操作を行えば海外ストアに接続できるというものでした。

「PlayStation 4」は2015年3月20日(金)に中国展開が開始された(画像はPlayStation公式サイトより引用)

円安も相まって日本製ゲーム機が中国に普及したことで、オンラインストアからゲームを即購入できるシステムが確立しました。こうして、海賊版ゲーム機が流通しているわけではないにもかかわらず、中国ゲーム市場の公なデータとしては可視化されない、史上初の「正規版」市場が完成したのです。

日本の開発者は版号を取得できない?版号の取得に必要な条件

中国で売られているゲームの中には、グレーな手段により規制をくぐり抜けているケースも多く見られます。これを読んだ方の中には、当然「正規の手続きを踏んでゲームを出したい」という方もいると思います。

「正規の手続き」とはつまり「版号を取得する」ということになりますが、その取得方法はかなり複雑です。

まず、版号には国産ゲーム向け/外国産ゲーム向けの2種類があり、それぞれ取得方法が違います。版号が与えられるタイトルの本数は、国産ゲームが毎月約80~100本、外国産ゲームなら年間およそ120タイトル。外国産ゲームに版号が与えられるタイミングは、以前は年1回でしたが、現在は隔月ペースの場合もあり不安定です。

中国国家新聞出版署のWebサイトによると、2025年2月は中国国内のオンラインゲーム110タイトルに版号が与えられた(画像は中国国家新聞出版署のWebサイトのスクリーンショット)

この版号ですが、国産ゲーム向け/外国産ゲーム向けにかかわらず、外資企業や外国企業は取得できません。日本のゲームが版号を取得するためには、中国現地のパブリッシャーと組むことが前提となります。

ただし、中国国内の企業でも無条件に取得できるわけではありません。版号の取得には「ICPライセンス」(インターネット上でお金を得るのに必要なライセンス)や「インターネット文化経営許可証」、「インターネット出版許可」といったライセンスが必要です。それらを申請するにあたっても、企業規模や人員に関する細かな要件が定められており、専業でゲームパブリッシングを手がける大企業しか申請できないようになっています。

版号取得における重要事項は「ソフトウェア著作権」と「未成年対応」

版号の申請に必要なものは数多くありますが、重要なのは「ソフトウェア著作権」(软件著作权登记号)と「未成年対応」です。

「ソフトウェア著作権」は、ゲームの著作権を正当に保持していることを示すもの。中国における著作権は日本と同様に、作品を創作した時点で発生する「無方式主義」を取っていますが、正当に著作権を保持していることを示すには著作権登録が必要です。「ソフトウェア著作権」を登録する際は、ゲームのソースコードの提出が求められます。これは日本でも同じなのですが、これに抵抗があるゲーム会社の話はよく聞きます。

もう一つの「未成年対応」は、2021年8月に国家新聞出版署より発表された新たなガイドラインで、未成年者の「オンラインゲーム依存症」の予防を目的としています。これにより、18歳未満がオンラインゲームをプレイできる日は金曜/土曜/日曜および祝日に限定され、時間帯は午後8時から9時までの1時間と定められています。厳格な管理を行うため、ゲームを遊ぶ際は身分証明書による本人確認が義務付けられています。中にはインカメラでなりすましチェックなどを行っているゲームもあります。

そのほかにも、データセキュリティ法や個人情報保護法の規定によりユーザー情報を中国国内に留めておく必要があるなど、さまざまな規定やガイドラインを遵守する必要があります。版号の発行の可否は、これらのガイドラインに加えて「オンラインゲーム管理規定」に沿っているかどうかを中心に審査が行われます。審査中は作品が各種規定に沿うように何度も修正を重ねる必要があり、その過程で表現を削られてしまうこともあるのです。

2021年9月には、『あつまれ どうぶつの森』や『スーパーマリオメーカー 2』といったタイトルが規定に抵触し、中国の通販サイト「JD.com」から一時姿を消した

中国の一般企業や日本の大企業でも、版号を取得してゲームを配信するハードルは高いものとなっています。

一方、海外版Steamや海外版コンソールゲームを通して中国に進出する場合は版号が必要なく、煩雑な規制の影響をほとんど受けずにゲームを公開できます。現状では、多くの企業がこの選択肢を取っています。

市場をゆるがすのは政策だけではない。ニンテンドーeショップが中国で使えなくなる中、ユーザーが取り得る選択は

中国でのゲーム展開における懸念は、版号などの制度によりゲームそのものが管理されていることだけではありません。例えば、Switchでリリースするようなゲームでも、中国国内の情勢に左右されて販売できなくなる恐れがあります。それに関連する事例をひとつご紹介します。

2024年11月26日、中国版Switchを展開するテンセントは、中国国内向けのニンテンドーeショップおよびネットワークサービスを段階的に終了すると発表しました。中国で流通している海外版Switchのうち9割は日本版/香港版だといわれています。今回の発表により、中国国内において海外版Switchのユーザーがさらに増加する可能性が高まりました。

和訳すると「中国におけるNintendo Switchネットワークサービス運営の調整に関するお知らせ」(画像はテンセントによる「Nintendo Switch」公式サイトより引用)

さらに1月30日には、日本国内向けのニンテンドーeショップにおいて、海外で発行されたクレジットカードやPayPalでの決済を終了すると発表されました。

日本では「転売対策」と報道されていたこのニュースですが、中国や台湾では「日本のニンテンドーeショップが使えなくなる!」と悲痛の声が上がりました(台湾には台湾版Switchがなく、日本版/香港版Switchが流通しています)。中国のSNS「ウェイボ」ではこの件がトレンドに上がり、議論が巻き起こりました。

台湾においては、2月18日に「台湾任天堂株式会社」の設立が発表されたことで事態は沈静化しつつありますが、中国においてはまだまだ不安定な情勢になっています。

現在も決して少なくない量の日本版Switchが通販サイト「タオバオ」で販売されていますが、これらは日本のニンテンドーeショップにつながる仕様であるため、今後は日本以外の国で発行されたクレジットカードでのゲーム購入ができなくなります。代替策として、現地では「パッケージ版ゲームソフトの購入」「プリペイドカードによる決済」「ダウンロード版ゲームコードの購入」など抜け穴的な流通が横行している現状もあります。

高橋玲央奈

中国では独自のレギュレーションがあり、安定してゲームを出す難易度が高いです。結局現状ではSteamを通して個人の管理下でゲームを配信することが一般的になっています。

今後の動向はわかりませんが、ひとつだけ言えることは「上有政策、下有対策」、対策はいくらでもできます。次回はいよいよ実践編として、ローカライズ・カルチャライズについて書いていきます。お楽しみに!

「グラティーク」公式サイト
高橋 玲央奈

日本と中国でゲーム会社を経営している。ゲーム開発、配信のみならず日中間でのゲーム海外進出、ローカライズ、マーケティング、コンサルティングなどを行う。2019年9月2023年9月まで一度も帰国せずに中国に滞在し、日中ゲーム産業の架け橋として奮闘。過去の作品として「円谷プロ ウルトラマン 大決戦!ウルトラユニバース」「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ炎のカスカベランナー」「マッピー 対決!ネオニャームコ団」などがある。廈門国際アニメフェスティバルゲームコンテスト審査員。2021ゲーム産業白書、2024ファミ通ゲーム白書中国担当ライター。iGi(indie Game incubator)メンター。

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