バーチャル世界で繰り広げられる楽園管理ホラーADV『トワエデン』。メンバーと講談社GCLの力を借りて電子的で美しい恐怖演出を引き出す【TGS2024】

2024.10.02
注目記事イベントレポート東京ゲームショウ2024
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2024年9月26日(木)から29日(日)の4日間、幕張メッセで開催された「東京ゲームショウ2024(以下、TGS)」。展示されたゲームの中から、今回はあらちりょう氏が開発するADV『トワエデン』を紹介します。

TEXT / tyap

目次

謎解きを通じてバーチャル世界の少女たちをエラーから守る。ポップなグラフィックが繰り広げるホラーADV

『トワエデン』は、バーチャル世界に住む少女たちをエラーから救う楽園管理ホラーアドベンチャーゲームです。

バーチャル世界に存在する精神病棟で暮らす少女たち。永遠の幸せを目指す世界に、少女たちを蝕むエラーが発生してしまいます。

侵食するエラーから少女たちを守るため、プレイヤーはエイ型のAI「EI-AI」として謎解きやミニゲームを通じてエラーの修正をサポートしましょう。

TGS会場では約10分程度の試遊をプレイすることができました。

本作はPCの画面を模したUI内で、アプリケーションやフォルダを操作することでストーリーを進めていきます。

試遊版では、設定から画面の明るさを調整することで、ストーリーが進むギミックの謎解きをプレイすることができました。

ポップなグラフィックと少女たちの明るい雰囲気が相まって、一見するとホラーゲームのようには思えないかもしれませんが、ここで問題が発生します。

ピンクの髪色の少女「リンネ」がゴミ箱の中に落ちてしまい、エラーウィンドウの中に閉じ込められてしまいました。

一度選択肢を選ぶたびに縮小されていくエラーウィンドウ。緊迫感あふれるシーンにエラーが少女たちの命を脅かす存在であることを認識させられます。

ここでは、エラーウィンドウの裏に隠れたハンマーを見つけ、画面を叩き割ることで救出に成功しました。

筆者はリンネを助けることができたが、失敗したパターンを開発者のあらちりょう氏に伺ったところ、死んでしまう可能性もあるそう

今後はリンネの他にも、それぞれのキャラクターや場面に合わせた特別な謎解きを実装予定とのこと。

キュートな色彩とドット絵のグラフィックが紡ぐホラーゲームのギャップは、忘れられないゲーム体験になるでしょう。

試遊版の内容とは直接関係ないが、部屋の模様替えや一筆書きゲームも収録。製品版では謎解きに使用される予定とのこと

ディレクターとして芸術性の高い恐怖演出を引き出すために試行錯誤したメンバーとの安定した開発方法とは

ポップなPC風のUIで展開されるホラーゲームというギャップが魅力的な本作は、どのようにして作られているのでしょうか。ディレクターのあらちりょう氏にお話を伺いました。

開発を開始したのは2022年。

息抜きに遊んだ『There Is No Game: Wrong Dimension』と、『』というMVのグリッチ表現の美しさに惹かれたことが開発のきっかけだそう。この2作品を組み合わせたとき、頭の中でやりたいゲームが思いついたといいます。

昔からスマホの脱出ゲームが大好きでたくさん遊んでいたというあらちりょう氏。

最近は独自のルールや芸術性の高いインディー系パズルゲームを好んでプレイしており、そこから着想を得ることもあるそう。

たくさんの謎解きに触れてきたからこそのユニークな謎解きのアイデア力といえるでしょう。

一方で、謎解きゲームに馴染みのあるあらちりょう氏だからこそ、難易度の調整に最も苦労しているといいます。

過去のゲームイベントにて試遊版をプレイしてもらったところ、謎解きを全く進められなかった人もいたそう。

そのフィードバックを受け、謎解きが得意でない人にも楽しんでもらえるよう、ひらめき重視の難易度を意識して調整しているそうです。

謎解きに行き詰まらないよう、助言をしてくれることも

本作のコアメンバーはディレクターのあらちりょう氏、イラスト担当のハリ氏の2名で開発を行っており、シナリオは共同で考えています。

さらに外注としてサウンド担当のsamayuzame氏、そしてGCLの担当編集者2名のサポートを合わせると計5名が開発に携わっています。

イラスト担当のハリ氏とはかなり長い付き合いがあり、一緒にフリーゲームを遊ぶなかで、「自分たちもゲームを作ってみたい」と考えていたそう。

サウンド担当のsamayuzame氏との出会いのきっかけは、あらちりょう氏がX上にて掲載していたゲームの進捗ポストを見て連絡が送られてきたとのこと。

「元々ハリ氏がsamayuzame氏のファンだったらしく、ハリ氏にsamayuzame氏から連絡が来たと話したらとても驚いていました」と、あらちりょう氏は運命的なエピソードを添えて語ってくれました。

作業は主にあらちりょう氏とハリ氏が中心となって行っており、Discord上に作業進捗を報告するサーバーを作っているとのこと。そこでは壁打ちのような感覚で進捗を投稿をしています。

ハリ氏とは週に一度作業通話を行っており、シナリオやアイデアを考えたり、時には通話を繋いだまま黙々と作業を行うことも。

また、サウンド担当のsamayuzame氏にもときどき作業通話に参加してもらい、アイデアの提案やテストプレイのお手伝いをしていただいているとのことです。

「一人での作業には限界を感じるときがあるため、他のメンバーの進捗が届くと本当に嬉しいです」とあらちりょう氏は話します。

また、フィードバックをもらえたり作業進捗を褒めてもらえることも、モチベーションの向上に繋がっています。

一方で、ディレクターとしてタスク管理の難しさを感じており、仕様変更で没になってしまった要素も複数存在するとのこと。

本作は「RPGツクールMV」で開発されています。

ゲームの開発経験は、10年ほど前から「RPGツクールVX」を使用して個人的に行っていましたが、世に出す作品は前作となる「DEAD END CORPORATION」が初めてだったとのこと。

「DEAD END CORPORATION」の頃からRPGツクールMVにて開発していたことから、そのまま継続して同ツールで開発を開始。

プログラミング経験がない初心者にも扱いやすく、有志によるプラグインが豊富である点を魅力的に感じているとのことです。

ドット絵は「Aseprite」を使用して描画されています。

あらちりょう氏が描いたアイコンやマップなどといったドット絵は、全てハリ氏に一度確認してもらっており、そのフィードバックをもとに色合いやデザインを調整しているとのこと。

テキストや立ち絵の管理は「Googleスプレッドシート」を活用しています。

文字数のカウントを自動化したり、立ち絵の表情に番号をつけることで、メンバー間の共通認識にズレが出ないよう工夫しているそうです。

本作を開発するうえで、あらちりょう氏が最も大切にしているのは「アーティスティックで美しいものに仕上げる」という熱意です。

エラーの表現は恐怖心を抱かせるためだけでなく、ゲームの核と密接に繋がる芸術性の高い恐怖演出になるよう力を入れているそうです。

日常が壊れる瞬間の心が痛くなるような儚さを描写したい」というあらちりょう氏の発言が印象的でした。

イベント出展をきっかけにフェロー制度からGCLラボメンバーへ。担当編集者の手厚いサポートで完成を目指す

本作は「講談社ゲームクリエイターズラボ」(以下GCL)のラボメンバーとして開発を進めています。

応募のきっかけは、過去にイベント出展をした際に、GCLの担当編集者から声をかけていただいたことから。

「周りの方がGCLに応募されているのを見ていて憧れはありましたが、なかなか踏み込むきっかけがありませんでした」とあらちりょう氏は話します。

担当編集者からの後押しもあり、「ゲームクリエイターズラボオーディション」に応募したあらちりょう氏。

その後無事選考を通過し、フェロー制度から正式なGCLのラボメンバーを目指すことになりました。

フェロー制度というのは、ラボメンバーの採択まであと一歩の作品に担当編集者がつき、ブラッシュアップを重ねることで正式なラボメンバー採択を目指すというもの。

どのような流れでラボメンバーに採択されるのでしょうか?

ラボメンバーを決めるにあたって、GCL内で選考会議が行われます。選考会議では企画書を提出する必要があり、その作成が最も大変だったとのこと。

「今まではたくさんのアイデアを頭に浮かべて好きなように作っていたので、本当に作りたいものを自問したり、ストーリー展開やゲームシステムの整理に苦労しました」とあらちりょう氏は話します。

そこで担当編集者の的確なアドバイスや軌道修正、他作品のゲームを例に挙げた改善点や参考点の引き出しの多さに助けられたそう。

また、会話文の添削を行い、セリフのテンポが良くなるよう調整をしてもらえることも非常に助かっているそうです。

そして見事正式にGCLのラボメンバーへと採択された本作。現在は2名の担当編集者が開発をサポートしています。

フェロー制度の時は週に1回のペースで会議を行っていましたが、現在は月に1、2回ほどのペースで会議を行い、作品をブラッシュアップさせているとのこと。

「会議のリアルタイム性だからこそ話せる内容もあるので、本当に助かっています」とあらちりょう氏はサポートのありがたさを教えてくれました。

一方で、ラボメンバーになったからこそ大変だったこともあると話すあらちりょう氏。

最も意識したのが「一つの作品としてのまとまり」だそうです。

前述の通り、GCLに応募する前は好きなように作っていた本作。

そのため、完成させる場合の作業量のコストや、ローカライズを行う際の壁にぶつかってしまったそう。

例えば、開発当初はピクチャ内に日本語を組み込んでいましたが、ローカライズの際に支障をきたしてしまうため、担当編集者のアドバイスを受け修正をする予定とのこと。

「今までは様々な要素を入れることが面白さに繋がると信じていましたが、担当編集者さんにアドバイスをいただいたり、他作品を触っていく中で、シンプルな遊びやすさを追求したほうがいいのだと気づきました」(あらちりょう氏)

現実的な完成を見据えたコストの削減と、プレイヤー目線での視点を持つことができるようになった点が良かったと、あらちりょう氏はラボメンバーとしての学びを教えてくれました。

公式X https://twitter.com/p_p_koumori
販売サイト(ストアページ) 未定
リリース時期 2026年
『トワエデン』紹介ページ(講談社ゲームクリエイターズラボ)東京ゲームショウ2024公式サイト
tyap

ゲームを遊び、ゲームを作り、絵を描き、文章を書くエビです。

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