国内最大級のゲームイベント「東京ゲームショウ2022(以下、TGS)」が、2022年9月15日(木)から9月18日(日)まで開催されました。本記事では、インディーゲームコーナーで展示されていた「Passion Republic Games」と『GIGABASH』に注目。同社の方々に話を伺い、プロジェクトマネージャーを務める国則 友麻氏に通訳していただきました。
TEXT / 藤縄 優佑
EDIT / 神山 大輝
目次
『GIGABASH』とは?
インタビューの前に、『GIGABASH』について簡単に紹介します。本作は日本の特撮作品からインスパイアされた怪獣やヒーローである「タイタン」を操作して戦う、アリーナ型対戦アクションゲームです。マレーシアのPassion Republic Gamesが初めて開発・パブリッシングしたタイトルで、2022年8月5日にSteamやEpic Games Store、PlayStation 4、PlayStation 5でリリースされました。
世界各国をイメージした都市や神秘的な遺跡など多彩なステージが用意され、ステージ上の建物や看板、樹木などのオブジェクトは武器として利用可能。巨大化や必殺技も駆使してほかのタイタンやステージを蹴散らすドタバタしたバトルが魅力です。対戦はオンライン・オフラインのどちらも可能で、シングルプレイ用のストーリーモードも搭載されています。
また、Passion Republic Gamesは、『ゴジラ』が参戦するコラボを9月15日に発表しています。
日本特撮に影響を受け、マレーシアで生まれた『GIGABASH』
――『GIGABASH』は日本の怪獣映画などに影響を受けたようなキャラクターが多く登場します。マレーシアでは、日本の特撮作品は人気があるのでしょうか。
マレーシアは『ゴジラ』『ウルトラマン』『仮面ライダー』などが人気ですね。『ウルトラマンティガ』が国営放送で放映されたことがあるので、多くの方に馴染みもあると思います。また、近年では『ゴジラvsコング』や『シン・ウルトラマン』などが上映されたことで、特撮愛が再燃しています。
マレーシアのアニメ・ゲームイベントには、特撮好きな方も多く来場しています。たとえば『GIGABASH』に登場する「ピピジュラス」は、バルタン星人やヒッポリト星人を参考にしていますが、マレーシアの特撮好きにはすぐに気づいてもらえました。
――マレーシアは、ゲーム業界を精力的に支援しているという話を聞いたことがあります。『GIGABASH』がそういったことを実感した施策があれば教えてください。
MDEC(Malaysia Digital Economy Cooperation、マレーシアの通信マルチメディア省傘下の企業)は国内のゲーム開発を熱心に後押ししてくれていると感じます。『GIGABASH』のケースでは、プロトタイプ作りの資金繰りで苦しかった時期に、MDECから費用の一部を援助していただいたことがあり、とても助かりました。
また、マレーシア国内のみならず、GDC(Game Developers Conference)や東京ゲームショウなど国際的なゲームイベントで、『GIGABASH』をプロモーションする形で支援してくれたこともあります。
開発環境にはUnreal Engine 4を採用
――『GIGABASH』で力を入れたポイントはどこですか?
怪獣やヒーローといったキャラクターのバリエーションの豊かさですね。かわいい、獰猛、ヒーロー……などなど、ユニークではありつつも、どこかなじみのある作りを心がけました。
操作は簡単で、演出は派手。ドタバタしてにぎやかな画になりつつも、戦況は判断しやすくしています。プレイする皆さんが思わず声を上げたり応援したりする、パーティーゲームらしさを楽しんでもらえたらと思います。
対戦ゲームとしても操作技術を高められる深みもあるシステムを備え、上級者が集まると歯ごたえのあるバトルを味わえるようにしています。お気に入りキャラを見つけて操作をマスターし、友達に戦いを挑み、勝つ楽しみを見出していただけたら嬉しいですね!
――『GIGABASH』は、Unreal Engine 4(以下、UE4)を使って開発されています。UE4を導入した理由や、導入して良かったと思うことを教えてください。
『GIGABASH』はレンダリングが複雑であり、ゲームプレイで必要とされる機能も多いためUE4が適切だろうと判断しました。
ブループリントによるマテリアルやパーティクルを作成するツールなどのおかげで、見た目も良いダイナミックなマテリアルやVFXをあまり苦労することなく作成できました。また、ゲームプレイに関連する重要なコンポーネントや機能・構造などがあらかじめ搭載されていることや、それらを利用するとどういったユーザーエクスペリエンスを実現できるか想定しやすいことも利点に感じています。
――ブループリントはあまり使わず、C++でプログラミングしているとも伺いました。
『GIGABASH』はキャラクターごとに保有する技などが個性的なことも魅力の一つです。こうした技のカスタムは、C++のほうが応用が効くと感じています。あとは、弊社のプログラマーさんから見るとC++のコードのほうが読みやすいみたいですね。この考え方が一般的かどうかはわかりませんが……。
――技術的にこだわったポイントを一つ教えてください。
キャラクターが使う技のプログラムに関してお話します。『GIGABASH』は相手だけでなくステージの地形やオブジェクトにもかかわる技が存在し、この実装はチャレンジングでした。見た目と効果、触り心地といったバランスに気を付けて、スカッと楽しく遊べるように実装しています。
上記の話の一例として、「ロハナ」が地面から直線状に茨を生やす技を紹介。技が発動するライン上に建物などが建っていると、建物の下部ではなく屋上から茨が生える。このように工夫した実装により、屋上に立っているキャラクターにもダメージを与えられる
オフラインのゲームイベントに出展する楽しさと試遊の工夫
――TGSに出展した感想を教えてください。
TGSは『GIGABASH』を最初にアナウンスした思い出のイベントなので、またこうして出展できて嬉しいです。せっかくTGSに再び出展できたのだから、大きなことを発表したい気持ちも強く抱いていました。ですので、今回『ゴジラ』とのコラボレーションをアナウンスできたのは本当に良かったです。
――2021年には、特撮・怪獣好きな方が多いイベント「熱海怪獣映画祭」にも出展していたのも印象的です。
熱海怪獣映画祭は初めてパートナーに代理で出展していただいたイベントで、概ね好感触だったと伺っています。『GIGABASH』のリリース後に「熱海で知ったゲームだ!」というお声もお見かけしまして、出展して良かったと思っています。
――イベント出展時のブースの見せ方で気を付けていることを教えてください。
キャラクターで彩り豊かに装飾していることと、心理的なハードルを下げて誰でも試遊してもらいやすいよう、スペースを広く感じられるような設計をしていることです。過去の失敗を踏まえ、4人対戦を快適に楽しむためにモニターは大きいものを選び、音がしっかり聞こえるように音響にも気を付けています。
これにより、試遊している方だけでなく、近くを通る方にも興味を持ってもらいやすくなりました。それと、試遊機はなるべく多く持ち込み、待ち時間なく4人対戦が楽しめるようしたいとも考えています。
TGSに関して言えば、日本人の方に『GIGABASH』を知ってもらいやすくなるよう、各種素材を日本語表記にしています。また、今回は、遊んでくれた方々やフィードバックをくださった方々へのお礼として、ステッカーやトレーディングカードなど、新たなグッズも展開しました。
『GIGABASH』ブースで試遊・観戦などしていただいた方に、少しでも楽しい思い出を残せるようなブース作りやご案内ができたらと思っています。
――イベント出展時の印象深い思い出はありますか。
どこのゲームイベントも思い入れがありますね。どこで出展しても怪獣やヒーロー好きな方に遊んでもらえていますが、国籍もこだわりもバラバラで、こちらも楽しみながら多様な意見を頂戴できています。
こうして思い返すと、来場者の方々と直接やり取りできるオフラインのゲームイベントはいつも楽しく展示できていると感じます。
『GIGABASH』リリース後の気付きとこれから
――『GIGABASH』をリリースしてから気付いたことはありますか。
それはもう本当にいろいろな学びがありました……。ウィッシュリストの数字と実際の売り上げの数字の関係や、販売価格についてのご意見、『GIGABASH』に対するフィードバック、地域別の需要などなど。どれも次につながる学びや経験だと思っています。
『GIGABASH』を応援してくださるファンの方々に支えていただいたことも、とても励みになりました。応援があったからこそ、ゲームをより良くしたいと思いますし、アップデートもし続けようというモチベーションになります。開発期間は4年半と長くなってしまいましたが、建設的なフィードバックや温かな声援が、いつも背中を後押ししてくれていました。
――これからの『GIGABASH』はどう展開するのでしょうか。
先に話した通り、『ゴジラ』とのコラボレーションが決定いたしました!今、チーム一丸でこのプロジェクトに一生懸命取り組んでいるところです。対応プラットフォームも、Nintendo SwitchやXBOXでの展開を視野に入れています。お待たせしてしまって申し訳ございませんが、引き続き応援していただけますと幸いです。
Passion Republic Games 公式サイトPassion Republic Games 日本語版Twitterアカウント編集プロダクション「浦辺制作所」に所属。ITやゲームにかかわる書籍・Webメディアにおいて、執筆と編集を担当している。ゲーム全般が下手だけど好き。
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