2022年8月7日(日)、東京都立産業貿易センター 浜松町館にてインディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」が初めて開催されました。初開催にもかかわらず開場時から活気を帯び、心地よい空気感を維持したまま終了を迎えました。
本記事では東京ゲームダンジョンの様子、出展されていたインディーゲームをピックアップして紹介します。
2022年8月7日(日)、東京都立産業貿易センター 浜松町館にてインディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン」が初めて開催されました。初開催にもかかわらず開場時から活気を帯び、心地よい空気感を維持したまま終了を迎えました。
本記事では東京ゲームダンジョンの様子、出展されていたインディーゲームをピックアップして紹介します。
INTERVIEW & TEXT / じく
EDIT / 藤縄 優佑
東京ゲームダンジョンの会場は、そこかしこで参加者たちの笑顔であふれているのが印象的でした。出展されたゲームについて感想や意見を語り合うだけでなく、出展者同士が交流や情報交換をするシーンも多く見られる、温かな空気で満ちたイベントだと感じます。
東京ゲームダンジョンでは、すべての出展者に長机1個ずつ均等に割り振られています。これまでの評価や開発規模などによる区別は存在せず、すべての出展者がいわば「横一線」で参加しています。
公式サイトに掲載された出展者紹介やYouTubeで配信されたPV、当日のブース設計など、出展者たちの創意工夫が存分に発揮される場としても興味深いイベントでした。
ここからは、注目を集めたブースや、筆者が気になったインディーゲームなどを紹介します。
※一部のゲーム画面は、各出展者のPVやSNSから引用しています。
作品名:『腹筋&スラッシュ』
開発:Softfunk Hulabreaks
スマホに内蔵された傾きセンサーを利用して、スマホをお腹に置いて回数をカウントするハクスラRPG風の腹筋カウンターで、Android/iOS向けにリリースしています。
ブース前にマットを敷いて実演し、来場者も体験できたのはオフラインイベントならでは。お話を聞いてみると、1か月で開発したとのことでした。
作品名:『BearRunner Any% RTA』
開発:しゅんて
レギュレーションはAny%、何でもアリのルールのRTAを体験できるランゲーム。「バグ」をアイデアとして取り込んでおり、ゲーム機に挿し込んだカートリッジに振動を与えるとキャラが壁抜けするといった現象が起こります。
そうしたバグを活用してタイム短縮を狙い、数多くの来場者が挑戦。ランキング入賞者にはオリジナルのカートリッジラベルが配られました。
なお、本作はしゅんて氏が「フリーゲーム投稿サイト unityroom」で公開している『Any% Glitched』を元にしたもので、こちらはPCからWebブラウザ上でプレイ可能。
作品名:『Traditional Story』
開発:atelier mimina (アトリエ ミミナ)
ゲーム作家・デザイナーである紙パレットさんのアトリエatelier miminaも出展。同アトリエがリリースしたアドベンチャー+リズムアクション『ジラフとアンニカ』のほか、紙パレットさんが中学2年生の頃から6年かけて開発し、28年封印していたMSX2向けRPG『Traditional Story』も展示されていました。
同作はブースに用意されたMSX2+とiMac上で試遊できました(iMacでは、Mac OS 9上でエミュレートしたMSX2エミュレータを使用したという)。『Traditional Story』は、年内に頒布と通販を行う予定とのことでした。
作品名:『亜電』
開発:鷹館
一度見たら忘れられないカワイイグラフィック、ダンスで相手が吹き飛ぶ不可思議な設定など、独特な要素だらけでクセになるベルトスクロールダンスバトルゲームです。
主人公「とあか」の通常攻撃は体当たりだけですが、攻撃を当て続けると相手はダウンし、その後は(なぜか)ダンスできる状態に。最後まで二人でダンスすると、相手は(なぜか)吹っ飛んでダメージを受けるので、その流れを繰り返して相手を倒します。
相手の猛攻をかいくぐりながら攻撃し続けるスリルや、その先には爽快感を伴うダンスが待っている構成がうまく、「もっとプレイしたい」と思わせてくれます。
鷹館氏は、夢の中で敵をボコボコにするカワイイベルトスクロール『夢核』(YumeCore)を過去にリリースしており、『亜電』は同作のテイストを受け継いでいるように見受けられます。『亜電』が気になった方は、『夢核』をプレイして鷹館氏のゲームの魅力を体感するのもアリでしょう。
作品名:『BEAT AIMER!』
開発:シグナル・コンポーズ
音楽制作会社であるシグナル・コンポーズが開発中の“FPSリズム”ゲーム。FPSプレイヤーにとってはおなじみの「エイムトレーニングツール」に、リズムゲームを組み合わせた点に珍しさを感じます。
楽曲を選択すると360度見渡せるステージ上に大小さまざまな的が現れるので、リズムに合わせてマウスで的を狙い撃って、ハイスコア獲得を目指します。大半の的の位置は動きませんが、動く的も出現。簡単にフルコンボさせてくれない作りになっています。
素早いエイムの練習だけでなく、いわゆる「追いエイム」の練習にもなりそうで、FPSをプレイする前の準備運動としても活躍しそうです。リリース時にはどのような楽曲が追加されるのか期待したいところ。
作品名:『ヒメをゴールへつれてって』
開発:RYOCHAN COMPANY
ちまっとしたかわいらしいドットキャラを操作する、ステージクリア型のパズルゲーム。
目的はタイトルの通り、「ヒメ」をゴールまで連れていくだけ。ヒメ自体も操作可能ですが、ヒメはブロックや水路などのトラップに対して無力です。そこで活躍するのが、特殊能力を持つ仲間たち。
仲間もヒメも全キャラ同時に同じ方向に動くシステムとステージのギミックを見極めてクリアを目指します。試行錯誤しながらクリアすのも良し、最善手を求めて考え抜くのも良しと、遊び応えのあるゲームです。
『ヒメをゴールへつれてって』のデモ版は、unityroomにて公開されています。
作品名:『Chronicle』
開発:Harvest Game Farm
羊皮紙に描かれたようなビジュアルと高い自由度に引きつけられる、iOS向けRPGです。
正統派ファンタジーを思わせる世界を冒険するRPGで、どこに探検に行くのも、誰を仲間にするのも自由。戦闘はほぼ自動で進行するため、アイテムやキャラ、隊列など事前の準備が大切となる仕組み。
音楽以外はすべて出展者ひとりで制作されており、お話を聞いてみると「印象深くしつつ工数も抑える」ことを考えた末にこうしたビジュアルが生まれたとのこと。
自分探しタップゲーム『ALTER EGO』などを手掛ける、カラメルカラムによる放置型おつかいアドベンチャーゲームです。記憶を失ったおしゃべりな生首「アズナナ」と、しゃべることができない少年が、空き缶拾いや店での売買によってお金を稼ぎ、町からの脱出を目指します。
登場するキャラのデザインや印象的なBGMなど、作り込まれた世界についつい浸ってしまいます。ブースには、かわいいアズナナのぬいぐるみも展示されていました。
作品名:『東京珈琲パンデチカ』
開発:ヘビサイドクリエイション
感染禍のなか、東京のカフェで働くアドベンチャーゲーム。コーヒー豆選びから抽出まで行いつつ、お客さんと会話やカードゲームを楽しめます。会話はフルボイスで展開し、自然とゲームに没入しやすく感じました。
開発したのは、異世界で相棒の猫と一緒に動画配信者として冒険するRPG『●LIVE IN DUNGEON』をリリースしたヘビサイドクリエイション。舞台設定などにこだわりを感じる同チームだからこそ描ける『東京珈琲パンデチカ』の続報を心待ちにしたいと思います。
作品名:『∀stralbringer -蓋影のアーカリウム-』
開発:エンドレスシラフ
エンドレスシラフが開発中の、一風変わったシステムを採用した高難度STG(シューティングゲーム)です。
自機の操作はマウスで行い、敵弾にかするとエネルギーを獲得。このエネルギーを消費することで、ブレードやマルチロックレーザーなどの特殊行動が可能になります。敵弾をかわしつつエネルギー残量を把握し、どんな行動を取るべきかを瞬時に考えなければいけません。処理すべき情報量の多さに圧倒される、ハードなゲームです。
自分でカスタマイズしたメカに謎の生物「ぷにひ」が搭乗して戦うTPS。メカは、胴体・左腕・右腕・脚部・背面装備のパーツを変えられ、100点以上のパーツが登場します。
展示作品の中ではTPSのシューターが珍しく感じ、開発者さんに苦労したポイントをうかがったところ「UIの制作がとくに大変」との回答をいただけました。
海外のトランプゲーム「デュラック」を取り入れたカードRPG。ターンごとに攻守が切り替わる概念や、山札や相手の手札のことも考えながら場に出すカードを決める様子はカードゲームらしさを感じます。そのうえでスキルなどデジタルゲームらしい要素もうまく融合しており、ずっと熱中してプレイできそうです。
以前、別のイベントで展示されていた時よりもチュートリアルが丁寧になったうえにストーリーもしっかりと描かれ、デュラックを知らずともプレイしやすく進歩していました。展示されるごとに進捗を感じ取れる開発者さんの苦労をしのびつつも、完成への期待は高まっていきます。『ゆうしゃデュラック』はAndroid向けに開発中で、iOSも対応予定だとしています。
なお、ブースでは本作の息抜きに作ったというパズルゲーム『かこえるカコエル』も展示。同じ柄のコマを矩形選択して囲むと得点するルールで、制限時間内でハイスコアを目指します。
作品名:『時ヲ刈リ取ル者』
開発:ヨウスコウTV
Unreal Engine 5で開発中のソウルライクゲーム。グラフィックの質が高いうえに難度も高く、完成が気になる出来栄えでした。
開発者であるヨウスコウTV氏に開発の動機をお聞きしたところ、『エルデンリング』が好きで、自分もああいった戦闘やダンジョンを制作したかったとのことでした。
なお、同氏はYouTubeで開発に関する動画も精力的に公開し、東京ゲームダンジョンの出展者にインタビューした動画も公開しています。
イベント当日、閉会前の忙しい中ではありましたが、主催の岩崎氏にお話をうかがいました。
-東京ゲームダンジョンの開催、おめでとうございます。こうして開催を迎えた感想をお聞かせください。
開催直前に新型コロナウイルスの新規感染者数が急増し、会場側で中止・延期の判断が出ないか心配でしたが、無事に開催できてよかったです。
-会場の盛況具合は予想されていましたか?
ここまでたくさんの出展申し込みをいただけるとも思っていなかったですし、今日みたいに行列ができるほど来場していただけるとも予想していませんでした。
-オンラインでのゲームイベントも開催されるようになってきた中で、オフラインイベントを開催する意図はどこにあるのでしょうか。
自分はオンラインイベントになじめなかったことが要因です。インディーゲーム好きとインディーゲーム開発者の熱が直接ぶつかり合うオフラインの場が自分は好きなので、オフラインにこだわりたいですね。
-次回開催の予定や内容について、よろしければお教えください。
2023年1月15日(日)に、今回と同じく東京都立産業貿易センター浜松町館で開催予定です。今回はフロアの半分を使っていましたが、次回は1フロア丸々使って開催します。
つまり、出展者のスペースも倍に増やせます。今回は80枠の募集でしたが、次回は160近くにできると思います。今回は145件もの応募があったため、多くの方を落選させてしまったことが心残りでした。しかし、次は2倍の枠をご用意できたので、ぜひ応募いただければと思います。
また、ほかではあまり見られないので問題が起こるかもしれませんが、次回は先着順で当選できるようにする予定です。
-最後に、今回参加された方や、東京ゲームダンジョンに関心を持たれている方へメッセージをお願いします。
インディーゲーム開発者でもある自分が参加したいと思えるイベント、すなわち出展者さんと来場者さんのどちらも満足し、楽しんでもらえるイベントになるよう、引き続き追求します。スペースが倍になったとしても、その軸は変えずにやっていきます。
初開催にして盛況だった東京ゲームダンジョン、次回はスペースを倍にして来年1月に開催です。会場の東京都立産業貿易センター 浜松館はJR浜松町駅から徒歩5分、ゆりかもめ竹芝駅から徒歩2分という好立地で、施設も新しく、良い環境でイベントを楽しめます。
今回の初開催は閉会ぎりぎりまで試遊される方も多く、本当に楽しめるイベントでした。インディーゲーム開発者の方やインディーゲーム好きの方は、次回の開催に期待しましょう。
東京ゲームダンジョン 公式サイトゲーム会社で16年間、マニュアル・コピー・シナリオとライター職を続けて現在フリーライターとして活動中。 ゲーム以外ではパチスロ・アニメ・麻雀などが好きで、パチスロでは他媒体でも記事を執筆しています。 SEO検定1級(全日本SEO協会)、日本語検定 準1級&2級(日本語検定委員会)、DTPエキスパート・マイスター(JAGAT)など。
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