2022年8月6日(土)と7日(日)の2日間、京都みやこめっせでインディーゲームの祭典『BitSummit X-Roads』が開催されました。今回は実際に編集部がプレイしたタイトルの中から『TOY FORMING』を紹介します。
INTERVIEW & TEXT / 神山 大輝
EDIT / 神山 大輝
描いた絵が惑星を歩き回る!AI活用の箱庭シミュレーション
『TOY FORMING』は、プレイヤーが描いた絵を惑星に配置して楽しむ箱庭型シミュレーションゲーム(iOS/Android)です。
ペイントツールで描いた棒人間は「住人」となってその世界を歩き回り、「りんご」を配置すれば住人が食べにくる。雲を描けば雨が降るし、雨がたくさん降れば海ができ、海ができると魚やタコが生活できるようになるといった具合で、自分の描いた絵で世界が形作られていきます。
描いた絵は「ティラノサウルス」や「住人」、「太陽」などあらかじめ登録されたオブジェクトとの一致度が自動的に測定され、その後に3Dモデル化が行われます。オブジェクト数は全部で125種類で、今回のバージョンでは100種類程度が用意されていました。
描き終わったら左側の再生ボタンをタップ。AIが描かれた対称を識別し、アウトラインをもとに3Dモデル化
- 「住人」が「りんご」を見つけると、近寄って食べる
- 「雲」からは雨が振り、雲の数が多いと海ができる
- 「月」を出すと夜になり、「太陽」と同時に出すと昼夜ができる
- 「ティラノサウルス」は「住人」を襲う
- 「爆弾」は配置後に一定時間が経過すると爆発する。「住人」が「爆弾」を見つけると惑星の外に投げ出す
- 「爆弾」で「ティラノサウルス」が倒せる
これらはあくまで一例。描いた絵は何らかのオブジェクトとして必ず認識されるので、ぐちゃぐちゃっと描いた絵が「タコ」として海を泳いだり、「住人」のつもりが「ガイコツ」になったり、とにかく必ずインタラクションがあるので非常に盛り上がります。
未就学児でも楽しく遊べるという意味では、知育ゲームとしての側面もあります。会場内のブースでは大人も子どもも楽しくお絵描きをして、惑星でのアクションを楽しんでいました。
ARモードも搭載されていた
賑やかなゲームの裏側にある"技術力"
本作を開発したのは、大手ゲームメーカーにプログラマとして17年間在籍し、その後独立した佐々木 一知氏。プログラマとして数多くのコンシューマータイトルに関わった佐々木氏は、当時から「ゲームとAI」の関係性を強く意識していたとのことです。
「AIは話題性がありますが、ゲーム業界で活用するためにはハードルもあります。人間らしい振る舞いやシステムができるAIは、同時に不安定さも抱えています。つまり、決まったゲームギミックに対してはマイナスに働くことも多いんです。でも、この作品はその不安定さを楽しめるようになっているんです」(佐々木氏)。
AI識別によって描かれた対称を特定。例えば、人や恐竜、ウマ、ウサギなどは学習させているが、牛やワニは専用に学習を行っていないという。「特徴を抽出して学習すると、それ以外の対称にも適用できるので、全種類学習させなくても問題なかった」とのことで、当初の想定よりは工数が掛からなかったとのこと
画像は公式サイトより引用
本作は描いた絵をAIが判定してマッチ度を想定。分類(Classification)で対称が何を描いているかを認識し、姿勢予測(Pose Estimation)で目や鼻、口、各関節を認識してキーポイントを作成します。その後、独自アルゴリズムによるスキニングが行われ、事前に用意されたボーンへの追従率などを計算して割り当てます。
佐々木氏いわく「本作は作品の特性的にゲームエンジンの恩恵を受けづらい」との理由から、完全にフルスクラッチで開発されています。開発期間は約2年で、基本的には1人で制作を続けています。
この作品はイラストを介した「AIとのコミュニケーション」であるとのこと。今後さらに住人や生き物のインタラクションが増えれば、単なる箱庭型シミュレーションゲームではなく、新たな地形や生態系が生まれるかも知れません。
リリース予定は2023年2月とのことで、今から手元で遊ぶのが非常に楽しみです。
TOYFORMING 公式サイトゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビューや作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。
ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。
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