ゲームマーケットは、東京と関西で毎年開催される日本最大のアナログゲームイベントです。今年3月に開催予定だった『ゲームマーケット2022大阪』が新型コロナウイルス感染者数増加を受けて中止されたため、2021年11月に開催された『ゲームマーケット2021秋』以来およそ5か月ぶりの開催となりました。
TEXT / ゆう すけ
EDIT / 神山 大輝
目次
多くのボドゲファンで賑わう『ゲームマーケット2022春』
2022年4月23日(土)と24日(日)の2日間、東京ビッグサイトにて『ゲームマーケット2022春』が開催されました。2日で約16,000人もの来場者が訪れ、コロナ禍以前の数字とまではなりませんでしたが、会場は多くのボードゲームファンで賑わっていました。本記事では、『ゲームマーケット2022春』の1日目の様子をお届けします。
ゲームマーケット主催の『アークライト』注目の新作や独自の取り組み
『ゲームマーケット2022春』を主催しているアークライトは、『Kaiju on the Earth LEGEND』シリーズ第1弾『ゴジラ』や、ワイナリー経営をテーマにした人気ボードゲーム『ワイナリーの四季』の新拡張『ブドウ畑の訪問者』などの人気作品の販売を行っていました。
他にも、『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』や『ブレイブリーデフォルト』のキャラクター・モンスターのデザインで知られる松浦 聖氏がイラストレーターを務める『HIDDEN LEADERS』日本語版の発売発表が行われました。
アークライトでは、ゲームマーケットで発表される作品を商品化を前提に評価する「アークライト・ゲーム賞」という取り組みを行っています。メーカーから販売されずに埋もれてしまう優れたゲームを1つでも多く世に広めるという理念のもとで実施されており、受賞作品はアークライトによる商品化および販売がサポートされます。
『ゲームマーケット2022春』でも、前回受賞した作品をリメイクした商品群が展示されていました。
人気ボードゲームカフェの派生ブランド『JELLY JELLY GAMES』
会場入口の近く、JELLY JELLY GAMESのブースでは、新商品『ミタイナ』の発売や『ユーテル』と『シャーロックとピカソ』の先行発売が行われていました。
JELLY JELLY GAMES は、世界中のボードゲームが遊べることで人気なカフェ『JELLY JELLY CAFE』を運営する株式会社ピチカートデザインが企画するボードゲームブランド。ボードゲーム開発の監修や海外ボードゲームの翻訳作業など、ボードゲームのパブリッシング事業を行っています。昨年度まではJELLY JELLY CAFE名義で出展を行っていましたが、今年度からはより自社製品自体にフォーカスするためにJELLY JELLY GAMES名義での出展となっていました。
アプリ開発にも注力する『すごろくや』新たな販売展開の形も
高円寺と神保町に実店舗を持ち、年間20タイトル以上の国内版制作販売を手掛けるすごろくやでは、『ポンジスキーム』や『フィヨルド』などをはじめ多くの人気ボードゲームの販売が行われていました。
特に目を引いたのは、ARと連携させて遊ぶホラーボードゲーム『アメリアの秘密』。仕組みこそシンプルですが、スマートフォンでマーカーを読み込むことによりホラー演出を楽しむことができ、展示方法の珍しさから多くの参加者が集まっていました。
すごろくや代表取締役 丸田 康司氏は過去に『MOTHER2』や『風来のシレン』シリーズに携わっていたこともあり、アナログボードゲームの企業でありながら自社内でのアプリ開発にも積極的に取り組んでいるとのこと。ボードゲームのスマートフォンアプリ移植も行われており、現在はアプリ『すごろくや』にて『お題ロボ』や『ナンジャモンジャ』などの試遊版が提供されているほか、昨年末には『ゴブレットゴブラーズ』のアプリ版もリリースされています。
また、ブース内ではすごろくやの新しい試み『すごろくやスタンド』の展示・紹介もされていました。
『すごろくやスタンド』は、すごろくやが選定した定番ボードゲーム約20種類を商材とし、ボードゲーム専用の商品棚と商品札などをセットで店舗導入できるサービス。どんな場所でも「小さなボードゲーム売り場」を始められる仕組みとなっており、現在も業種を問わず申し込みを受け付けているとのことです。
出展に対するさまざまな経緯や想いが見えた『個人ブース』
ゲームマーケットでは、個人制作の作品も数多く展示・販売されています。ここからは、編集部がチェックしたいくつかのタイトルをご紹介します。
限界牛柄神経衰弱『MOU / モウ』/かなめもーしょん
ルールは神経衰弱そのままですが、カードの絵が牛柄になっていることで難易度が非常に高くなっています。
前回のゲームマーケットに出展していた人の「ノリでゲームを制作して出展してみた」という言葉に感銘を受け、『MOU / モウ』を約一ヶ月で完成させ、『ゲームマーケット春2022』への出展を決意したそうです。「作品さえあれば誰でも出展が可能で、多くの人に遊んでもらうことができる」という気軽さもゲームマーケットの良いところです。
たべカワ系ボードゲーム『ハムのサンドイッチ屋さん』/Graphic335
可愛いらしいデザインで注目を集めていた『ハムのサンドイッチ屋さん』は、印象的なアートワークを企画・制作するクリエイターチームGraphic335と、『シノミリア』や『ギリギリカレー』などで人気のゲームデザイナー 大塚 健吾氏が共同で制作した対戦型のボードゲームです。
また、本作のゲームデザインを担当した大塚 健吾氏は、『サラウアバク』の展示も行っていました。『サラウアバク』は、キャラクターデザインを『逆転裁判』シリーズで知られるイラストレーター 岩元 辰郎氏が、同梱される小説の執筆を『逆転裁判』シリーズのシナリオディレクター 山崎 剛氏が担当することで注目を集めた対戦型の推理ボードゲームです。
「made in 新潟」なダイスアクションゲーム『モンスターコロシアム』/Laugh Games
『モンスターコロシアム』は、スカウトフェイズとバトルフェイズを繰り返してゲームが進行します。バトルフェイズでは、ダイスを穴の空いた六角形のステージに投げ合い、出た目に応じて他のプレイヤーを攻撃します。「ボード内にダイスを投げ込む」という発想が目を引きました。
本作は「made in 新潟」なのも特徴。新潟で活動するLaugh Gamesが、同県の企業や学校と協業して制作を行っています。イラストは新潟県新潟市の日本アニメ・マンガ専門学校の生徒が担当しており、六角形の箱の制作は新潟県三条市の株式会社トキワ印刷が担当しています。
また、若いクリエイターも目立ちました。本記事で紹介する2人の小学生クリエイターは、どちらも他人からの勧めではなく、自身のボードゲーム好きが高じてゲーム制作を始めるに至ったそうです。
アナログゲームの祭典に飛び込んだ『make.ctrl.Japan』
今回特にユニークだったのが、アナログゲームの祭典にして特殊なコントローラーを用いたデジタルゲームを展示するmake.ctrl.Japanの特設ブースが展示されていたこと。make.ctrl.Japanは、サンフランシスコで人気のイベントalt.ctrl.GDCをモデルにした、ユニークなコントローラーを使用したゲームを展示するイベントです。アナログの入力装置である特殊なコントローラーとデジタルゲームを組み合わせた、複数の作品が展示されていました。
『もしもしパニック』/明治大学 総合数理学部 橋本研究室
明治大学 総合数理学部 橋本研究室が制作した3つの電話機を使用したゲームです。次々に掛かってくる電話に対し、電話を切ったり、受話器を重ね合わせたりなどの適切なアクションを行い、ハイスコアを目指します。
『WIND HERO』/赤星 俊平、斎藤エドワード
『WIND HERO』は、ハンディ扇風機とプロジェクションマッピングを組み合わせて制作された作品。次々とやってくる敵をハンディ扇風機の風で吹き飛ばしながら、ゴールを目指します。HTC Viveトラッカーでハンディ扇風機をトラッキングし、Touch Designerでマッピングした映像を投影しており、ゲーム自体はUnityで実装しているとのことです。
『ボス,ブラインド,ブランデー』/Wataru Nakano × MIYAZAWORKS
「ブラインドで遊んでいると怒られてしまうので、いっそのこと遊ぶものにしてしまおう」という発想から生まれた『ボス,ブラインド,ブランデー』は、ブラインドとブランデーグラスをコントローラーとした二人対戦用のゲームです。ブランデーグラスを回してパワーを貯めて、ブラインドに手をかけることでパワーを放出(攻撃)できます。タイミングによってはカウンターが発生するなど、対戦ゲームとしての駆け引きも楽しめる作品です。
make.ctrl.Japanのブースでは、他にもユニークなゲームを見ることができました。
次回のゲームマーケットは、2022年秋頃に開催が予定されています。
近年更に盛り上がりを見せるアナログゲーム業界ですが、企業も個人も含めて一同に介するイベントは本当に貴重な機会です。既に規模拡大も告知されているため、感染状況等に左右されず、大いに盛り上がりを見せることを願ってやみません。
ゲームマーケット 公式サイトmake.ctrl.Japan 公式サイトゲームメーカーズ編集部。とにかくゲームが好きで、プレイするジャンルはRPG、SLG、FPS、ADV…とさまざま。『CoD』シリーズでは、アマチュアプレイヤーとしてのesports経験も。
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