2024年9月26日(木)から29日(日)の4日間、幕張メッセにて日本最大のゲームイベント「東京ゲームショウ 2024」が開催されました。
TGSと言えばインディーゲームだけでなく、ゲームスクールによる多数の出展も大きな特徴。今回はそんな学生の力作が並んだゲームスクールコーナーから、筆者が気になった作品を3つピックアップして紹介いたします。
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TGSと言えばインディーゲームだけでなく、ゲームスクールによる多数の出展も大きな特徴。今回はそんな学生の力作が並んだゲームスクールコーナーから、筆者が気になった作品を3つピックアップして紹介いたします。
TEXT / ハル飯田
EDIT / 田端 秀輝
最初に紹介するのは日本電子専門学校ブースの『SWING GIRLS』。タイトルの通り、女の子がバットをスイングして敵を倒していく2D横スクロールアクションで、滑らかに動くスイング動作が印象的です。
スイング範囲の敵は攻撃一発で倒せるだけでなく、バットなので敵が発射した弾を打ち返しての攻撃も可能。さらにスイングを最大までチャージして当てれば敵を吹っ飛ばし、奥の敵にぶつけて倒すコンボも狙えます。
敵を吹っ飛ばす瞬間にはゲームにストップがかかって「カキーン!」という気持ち良いサウンドが流れるので、シンプルな仕組みでもプレイの手ごたえは十分。何より元野球部の筆者としてはキャラクターのスイング姿勢が非常に美しいのも気になりました。
今回はステージ2までの出展で、チュートリアル要素からボス戦までを実装。まだまだギミックや要素を足していく余地はある内容ながら、短い時間でも「気持ち良いアクションの手応え」と「モーションの鮮やかさ」という2点を突き詰めたことが伝わる作品となっていました。
『SWING GIRLS』の企画は「野球とゲームを組み合わせよう」というアイデアからスタートし、野球で気持ち良い瞬間である「ホームラン」を軸にしようと考えて練り上げられたものとのこと。ゲームエンジンはUnityで、PhotoshopやVisual Studioを使用して開発されています。
スイングによる打ち返しの処理はプレイヤーキャラクターの腰の高さの座標を取り、弾や敵の高さとの座標を結んでベクトルを作って跳ね返すように処理されています。飛ばした敵はほどよい連鎖を生むよう、0.5秒経過するか2回跳ね返るまで画面に判定が残るよう調整されているそうです。
開発当初は「自分でボールを取り出して打つ」という攻撃方法だったものの、テンポが悪くなってしまうため没案に。そこからも仕組みを入れては消しを繰り返す試行錯誤の日々となりましたが、1カ月前に決心して「チャージしてスイング」するのみというシンプルさに着地したそう。チャージしながら移動できるのでテンポ感も良く、引き算でのデザインが奏功したと言えるのではないでしょうか。
そして1スイング6枚ほどのアニメーションで描かれている滑らかかつ美しい打撃モーションの秘訣は、なんとメジャーリーガーの大谷翔平選手。デザイナーがスイング動画をコマ送りで検証して描き上げた力作で、単独でドットと背景、そしてラフまで手がけたデザイナーにはチームメンバーからも感謝の言葉が贈られていました。
日本電子専門学校 TGS情報ページTGSのスクール展示では独自の操作デバイスを取り入れた作品も目立ちます。中でもバタバタとドアを忙しく操作する姿が会場で注目を集めていたのは、神奈川工科大学ブースの『睡魔退散』です。
本作は2枚のモニター前に設置されたドアと窓型のデバイスを「閉める」動きで操作するゲーム。モニターに「勉強中の邪魔をしようと部屋に入ってくる睡魔」がスポーンしてくるので、画面中央の攻撃判定に入ったタイミングで上手く閉めて撃退を狙います。
操作もルールもシンプルですが、左手は奥へ押して閉める、右手は左へ引いて閉めるという動きの違いもあって実際にプレイしていると混乱してしまう面白さが印象的。ついつい両手を同時に動かしてしまったり、倒したつもりになって片方のモニターから目を離してしまったりという現象もあり、マルチタスクをこなしていく面白さに近いプレイ感が味わえました。
ブースでは2人で手分けして遊ぶ親子の姿も見られるなど大盛況。睡魔の動きも意外とすばやく「今だ!」と思ってから閉めると間に合わないため、多少の「予測閉め」が攻略のポイントになるかもしれません。
楽しい動きで操作するデバイスのポイントは、ドアと窓の上部に設置されたローラースイッチ。これが押されるとモニター裏に設置されたArduinoへと送信され、そしてゲーム部分を動かしているUnityへと情報が送られて処理が進む仕組みになっています。
開発チームの皆さんによれば、本作は「身近なものをユニークな操作デバイスに出来ないか」という会議からドアを題材にチョイス。しかし実際のゲーム内容についてはメンバー間でもすり合わせに時間がかかり、今の形に辿り着くまでが大変だったそうです。
デバイスは大きく動かす窓には軽さを重視してバルサ材を採用し、ドアは本物に近い感触のスギを使用。耐久面の工夫だけでなくいくつも予備を準備して会期に臨んでいるとのこと。
睡魔は同時に複数体を倒すとスコアが大きく加算される仕組みになっており、単に連打するだけでは高得点が記録できないようになっているのもポイント。特殊なデバイスでゲーム性を高めるための工夫が盛り込まれていました。
神奈川工科大学HP神奈川工科大学 情報メディア学科 広報部X独自のデバイスでの展示を行っていたブースは他にもあり、愛知工業大学もそのひとつ。本ブースでは会期の4日間で日替わりのゲームを展示しており、訪れる日程によって体験できるゲームが異なります。今回紹介するのは一般公開日初日にあたる28日(土)に展示されていた『虫歯アニマルズ』です。
本作は動物園の飼育員となってカバやトラの虫歯を解消してあげるというポップな世界観のゲームで、口を表現した大きな模型に設置された歯を大きなブラシで上手く磨いていく直感的な操作をゲームに落とし込んでいる点が特徴です。
歯ごとに磨くべき角度が違うので単純作業を感じることもなく、磨くべき歯が光ってから徐々にライティングが変化していくので視覚的に「磨けている感」が味わえるのも面白いポイント。制限時間内に磨き終えられた歯の数によってプレイヤーの飼育員レベルが評価されるという1分ほどのミニゲームになっています。
動物の口が並んでいる光景のインパクトはもちろん、ブラシで歯を磨いている人の姿を見ればルールが一目瞭然ということもあってか、海外の来場者からの関心を大いに集めていたのも印象的でした。
この歯磨きゲームのポイントは特製の「歯」にあり、中に圧力センサーが入っていて外からブラシによる刺激を受け取ってUnity製のゲームが制御されています。ツールにはVisual StudioとArduinoを使用しているとのこと。
ゲームのアイデアは動物園で観た「カバの歯磨き実演」をゲームで再現しようと考えたことからスタートしており、当初は紙コップを歯に見立てて圧力センサーによる遊びの検証を行っていましたが、かなりの耐久性が必要と判断して素材にレジンを採用。
まず石粉粘土で作った歯の模型をサーフェイサー加工してシリコンで型取りし、その型でレジン制の歯を作って中に圧力センサーと2つのLEDライトを埋め込むという、実に手間のかかる工程によって強く磨いても問題のない歯を実現しています。
動物の顔はウレタンフォームを何層にも重ねてからやすりで削って塗装しており、中にコードやスピーカーが埋め込まれています。丈夫ながら軽量なため「出展に向けての運搬がスムーズ」というメリットもあったそうです。
「歯を磨く」動きを認識してゲーム化するためにはさまざまな手法を検討しており、開発当初はブラシの方にセンサーをつけるというアイデアもあったそうですが、ピンポイントで磨く楽しさを追求するため現在の形式になったそう。冒頭に動物の会話シーンを音声つきで盛り込むなど、デバイス面以外にもしっかりと作りこまれた作品でした。
愛知工業大学HPTGSのスクールコーナーではここ数年でVRゲームの出展やチャレンジングな技術デモの出展も増えており、他のエリアとはまた違った形で新しいゲームと出会える魅力的な空間になっています。
特にこのイベントでの出展を目指して企画・開発されてきたゲームも多く、会場でのプレイのみを想定しているからこそ可能な独自のデバイスが並ぶ光景は“スクールコーナーならでは”の面白さでした。
東京ゲームショウ2024公式サイト大阪生まれ大阪育ちのフリーライター。イベントやeスポーツシーンを取材したり懐ゲー回顧記事をコソコソ作ったり、時には大会にキャスターとして出演したりと、ゲーム周りで幅広く活動中。
ゲームとスポーツ観戦を趣味に、日々ゲームをクリアしては「このゲームの何が自分に刺さったんだろう」と考察してはニヤニヤしている。
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