Physically Based Renderingの背景とライティングで映えるキャラクターのセットアップ
山本氏は家庭用ゲームのプログラマーであると同時に、個人活動としてUE向けVRMモデルインポータプラグインである「VRM4U」の開発を行っています。
VRMとは、VRアプリケーション向けの人型3Dアバター(3Dモデル)データを扱うための、glTF2.0をベースとしたファイルフォーマットです。
「VRM4U」について、インポーターと書かれているが、山本氏いわく「VRMファイルをUE上でお手軽に使うためのツールセット」という認識で開発しているとのこと。今回のバーチャルライブにあわせて機能拡張が行われている
VRMモデルをUEにインポートする「VRM4U」の使い方
「VRM4U」の導入方法ですが、ダウンロードしてUEのPluginsフォルダに配置し、[Edit (編集)] > [Plugins (プラグイン)](UE5の場合)で「VRM4U」のチェックボックスをONにすれば完了です。
「VRM4U」を有効にした後、VRMファイルをドラッグ&ドロップすれば、モデルがインポートされます。
.fbxから.vrmへの変換はこちらを参考に、UniVRMやBlenderなどを利用して行おう
インポート時にはマテリアルのオプションを選択できる。今回のライブでは、ライトが馴染むように「SubsurfaceProfile」モードを設定した
さらなるルック向上を目指すための質感・揺れもの調整
軽く雰囲気を見るためだけであれば上記の手順のみで構わないとのこと。
今回のバーチャルライブにおいては、Physically Based Rendering(PBR)であるUEのライトを生かしてよりルックを向上させるため、質感や揺れものに関して細かく調整をしていきます。
まずは質感の調整について。テクスチャを利用して、メタリックやラフネスの調整を行います。
龍ヶ崎リンさんの角や鎖の部分は、メタリックやラフネスで質感を調整した
半透明の調整については、Translucentだと問題が発生しやすいので、ディザリングを使っています。
宗谷いちかさん(画像左)のスカートのフリルの部分が半透明の調整の対象
疑似的なリムライトをMatcapを利用して設定しています。
そのほか、細かい調整も行っています。前髪などのZOffset(カメラに対して前後方向の位置)を調整しているのに加え、白目のメッシュがくぼんでいることによる陰影を防ぐための板を配置しています。さらに、顔の陰影の緩和や衣服のディテールを上げるための法線の補正・追加や、髪の毛や衣服に対してSubsurfaceProfileを適用して顔とのバランスをとるような調整が行われています。
茜音カンナさんを例に。衣服はMegascansから適した素材を取得している
最後に負荷と見た目のバランスを考え、細かな調整で最適化を行っていきます。
ライブでは、白目用の板がライト変化時に間接光を拾ったりUnlitだったため暗闇で光って見えたりしたことを受け、Opaqueに変更している。白目用の板とフェイシャルのアニメーションとの干渉に注意といった解説も。詳細な説明は「VRM4U」解説ページのマテリアル調整ウインドウやTipsを参照
今回のライブにおける揺れものはKawaiiPhysicsやControlRigで制御しています。
今回は試行錯誤の結果、手首や脚の動きに応じた袖やスカート・コートの位置調整をControlRigで行い、そのうえでKawaiiPhysicsによる物理演算で袖などの先端を揺らしている
「VRM4U」でVRMをインポートするとアニメーションに必要なアセットも自動生成されます。スケルトンについてはIKRigが生成されるため、UE標準のマネキンからのリターゲットも可能です。フェイシャルについてはVRMの設定に対応した表情パターン(BlendShape)を制御できるようになります。
以上の流れで、山本氏によるバーチャルライブ向けのキャラクターモデルのUE向けセットアップの解説が行われました。
「VRM4U」解説ページには、VRMモデルをUEFNで使うための手順や、これまでのセットアップ例が掲載されたギャラリーページも用意されている
「VRM4U」公式サイト「UEなんでも勉強会 - バーチャルライブ編 - vol.1」
「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。