頼りになるのは頭脳だけ。ヒントなしに捜査を進め、殺人事件の真相を推理する
YouTube動画『【Tokyo Game Show 2023】 Scene Investigators demo game play』
『Scene Investigators』はプレーヤーが調査官を目指す研修生となり、再現された事件現場から謎を解き明かす3D推理アドベンチャーです。
この推理ゲームの大きな特徴は、ヒントやログなどなしに自分で捜査を行う点です。なにを「怪しい」と思い、なにを「重要情報」と考えてメモするかも自分次第です。
調査が可能な対象はほんのわずかにカーソルが大きくなる
これは記憶するに値する情報なのか? その判断もプレイヤーに委ねられている
会場でプレイした体験版では、ゲームを開始すると5つの質問がプレーヤーに与えられました。
- 誰が5番の椅子に座っていましたか?
- 誰が2番の椅子に座っていましたか?
- クララのいとこは誰ですか?
- 誰が死亡しましたか?
- 誰が殺人犯ですか?
この質問に回答することが体験版でのゴールです。体験版でプレイできるのはゲーム全体の10%程(※)で、製品版とも異なるシナリオです。なお、製品版では、体験版とは別の事件を扱ったケースファイルもプレイ可能とのこと。
※ 最終版のシナリオ数の比率とは限りません
質問は、情報を集めたうえで推理もしなければ回答できない内容
左に置いてあるノートPCをクリックすると、いつでも質問の内容を確認できる
捜査は「書かれている文字を読む」「引き出しを開ける」「ライトで照らす」「鞄の中にあるものを取り出して調べる」などの手段を取ることができます。
しかし、そうした捜査を通しても得られるのは淡々とした事実や手記、記録だけ。解決に必要な情報も不要な情報もすべて同列に並んでいます。捜査を進めるには、情報から起きた事実を想像する力が不可欠です。
どの情報に着目すべきか? 「R」ボタンで日本語訳も表示できる
完全にプレーヤーの手に任された捜査は「推理が難しそう」と感じるユーザーもいるかもしれません。しかし、実際に遊んでみると、どの手がかりを選び取ったとしてもそれを足掛かりにして次の手がかりや新たな謎が見つかりやすい難易度設定となっています。
また、真相へ近づくルートは複数あるため、手がかりとして用意されている情報をすべて集めなくても推理が可能です。
プレイ中は「推理が進む瞬間」と「さらなる手がかりが見つかる瞬間」が波のように交互して訪れ、気が付けばずいぶん長い時間、捜査に没頭してしまいました。
体験版プレイ終了時のメモ。書き込んだ情報でいっぱいに
製品発表直前にあえて削った「ある要素」が推理の面白さに
EQ StudiosのFumie Nagano氏。EQ Studiosはミステリー作品を中心にゲーム開発を進めている
『Scene Investigators』を作るEQ Studiosはネバダ州ラスベガスに拠点を置くインディーゲーム開発スタジオです。2017年に3Dミステリー探索ゲーム『The Painscreek Killings』をリリースしており、『Scene Investigators』はEQ Studiosの2本目の作品となります。
YouTube動画『The Painscreek Killings Trailer』。『Scene Investigators』の前作
『Scene Investigators』開発は全部で9名で行っています。EQ Studiosの中心メンバーはFery Tomi氏、Yuri Matsuba氏、そしてインタビューに応じてくれたFumie Nagano氏の3名。
個人として3名の中心メンバーはCGに興味を持った子供たちへのレクチャーも行っていました。その子供たちの一部は高校卒業後、EQ Studiosのインターンに加わり、本作の開発にも関わっています。こうした事情もあり、本作の開発には幅広い年齢層が携わっています。
本作は2か月間にわたるゲームジャムで一番おもしろかったアイデアを製品版として作りこんだものです。なお、ゲームエンジンはUnityを使用しています。
物語の舞台は、Netflixで配信中(記事執筆時点)のドラマ『3%』の第1シーズン第2話のディナーシーンからインスピレーションを得たそうです。なお、ゲーム内のシナリオ的な要素についてはEQ Studiosが独自に考案しています。
『Scene Investigators』のテーブルを取り囲むこの風景が『3%』のディナーシーンを思い起こさせる
制作にあたり一番大変だった点はシナリオの調整作業で、1つのケースファイルにつき半年~1年程度の時間が掛かったとのこと。
具体的な調整作業で大切にしたのは「70:30」の割合です。実は、本作で真相解明に必要な確たる証拠が用意されているのは70%まで。残りの30%は、プレーヤーの直感による推理によって解明します。
例えば、普段、こんな経験はないでしょうか。その人が身につけている服装から家での生活を想像する……。あるいは、趣味から性格を予測する……。こうしたことは実際に自分が目にした証拠はないのですが、想像した通りであることも多いものです。――証拠がない残りの30%を解き明かすのに必要なのは、こうした直感です。
開発当初は、証拠を集めるだけでも事件が解決できるようにしていたそうです。しかし、発表直前になっていくつも証拠を削除。そして、登場人物の感情面でのバックストーリーが分からないと真相に辿り着かないように調整しました。これは、プレーヤーがバックストーリーを感じとることによって「推理」できるゲームにしたかったためです。
バックストーリーから見えてくる内容とは……こちらは、実際に皆さんがプレイしたうえで見つけてみてください。
シナリオ以外のパートも一筋縄にはいきませんでした。
小物や家具などはMiroボードを使って2D上で配置を計画。しかし、これを3Dに起こしてみると、受ける印象が変わってしまいました。
思っていたよりも暗くてよく見えない、実際に見る視点や角度が変わったことで小物が見つけづらい……。こうした不具合を、ポストプロセスを調整したり、小物の置き場所を変更したりすることで修正しています。
テーブル周辺の物の配置場所は2D上で細かく設計されていた(画像はKickstarterのページから許可を得たうえで抜粋)
本作はシングルプレイのゲームですが、各々の着眼点の違いが生きるゲームであるため、何人かの人と一緒に捜査を進めても楽しめます。また、プレイした者同士で、どのようなルートで真相に辿り着いたか話し合っても盛り上がれそうです。
『Scene Investigators』は2024年10月24日(現地時間)にSteamで配信予定となっています。
2023/10/7 追記
リリース日が決定したため追記しました。
『Scene Investigators』公式サイト東京ゲームショウ2023公式サイト
ゲームメーカーズ編集。その他、ソーシャルゲーム、ボイスドラマ等のフリーのシナリオライターとしても活動中。突き抜けた世界観のゲームが好き。
『サガ・フロンティア』のアセルス編などのゲームを心のバイブルにして生きてます。