在りし高校時代の1日がループする─温かく優しい夢から抜け出すパズルアドベンチャー『One Perfect Day』【TGS2023】

2023.09.25
注目記事イベントレポート東京ゲームショウ2023
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

2023年9月21日(木)から24日(日)の4日間、幕張メッセで開催された『東京ゲームショウ 2023』。展示されたゲームの中から、今回は「Spacepup」が開発するパズルアドベンチャーゲーム『One Perfect Day』を紹介するとともに、同作品の開発者 LIM YUNG SING氏に開発コンセプトや世界観の作り方などをお聞きしました。

TEXT / じく

INTERPRET / 豊田 塁

目次

タイムループからの脱出を目指すパズルアドベンチャー

本作はマレーシアにスタジオを持つ「Spacepup」のパズルアドベンチャーゲームで、Steam/PC向けに開発されています。今回のTGS2023の出展ではまだ日本語版は実装されていませんでしたが、リリース時には英語のほか、日本語・中国語・インドネシア語などアジア圏の言語に対応予定です。

若き日に通っていた高校からゲームがスタート

主人公のアンディはある”悲劇”に遭遇し、若き日の自分として高校時代にタイムスリップしてしまいます。タイムスリップした先では、1日が何度も繰り返される運命にあることが分かります。プレイヤーはアンディを操作して「たった一度の完璧な日」──One Perfect Dayというタイムループから抜け出すのがゲームの目的です。

ゲーム内では学校生活を感じさせる登場人物や風景が描かれている

ゲーム操作はとてもシンプルで、キーボードのWASDによる移動、左クリックによる会話やアクション、右クリックによるアイテム使用が主な操作です。

左クリック長押しでアイテム取得、右クリックでインベントリオープンなど、直感的に操作できる

ゲーム内では登場人物たちの依頼や指示に応えつつ、この謎に包まれた夢のような世界を進んでいきます。中には頭を使う問題やパズル的なミニゲームもあり、ストーリーのアクセントにもなっています。

単語の穴埋め問題、図面通りに植物を配置する、などのミニゲームもある

シンプルなビジュアルとテキストUIが生み出す独特で温かい世界観

今回、本作のプロジェクトマネージャーであるLIM YUNG SING氏に、開発コンセプトや独特な世界観などについてお聞きしました。

TGS2023会場で話を聞かせてもらえたLIM YUNG SING氏。本作のイメージに通じるかのように物腰柔らかくコンセプトやストーリーについて語ってくれた

本作はLIM YUNG SING氏に、プログラマーとアーティストを加えた3人で開発されています。本作の開発環境はUnity、Blenderを使用しており、ストーリーやコンセプトはLIM YUNG SING氏とアーティストの2人で考案したそうです。

温かくて優しいトーンのビジュアルについてお聞きしたところ「夢の中のような世界にしたく、顔なども簡略化して特徴的なところだけ描いています」とのことでした。特に現実の人間を連想させないようにする意図があるそうです。

次に、シンプルなUIに表示されるテキスト表示についてです。会話の相手となる登場人物たちのセリフは頭上に、主人公のセリフやモノローグは画面下に表示されます。

フチ取りされた白文字が読みやすく、対話をしている感覚でスッと頭に入ってくる

この表示方法がシンプルながら読みやすく世界観にマッチしており、その点について聞くと次のように語られました。「当初はテキストを全て画面下に表示していましたが、相手の顔を見て話しているようにさせたくて上に表示するようにしました。会話であることを感じるインターフェースにしたかったのです」

これに対し、マンガのような表示方法は考えなかったのかお聞きすると、「マンガなどよりも、より会話であることを感じてほしかったのです。そして背景などのグラフィックも見てほしいので、吹き出しなどは使わずシンプルなテキスト表示にしました」と教えてくださいました。

公式サイトでダウンロードできる過去のデモ版(左)と、TGS2023で展示されていたバージョンのUI(右)の比較。デモ版では画面下に透過テーブルを配置してすべての会話を表示しているが、TGS2023版では話し相手のセリフがその頭上に表示されている

本作に注目した理由は、柔らかく心温まるビジュアルと、上記のとおり実際に話をうかがったセリフやモノローグの表示方法に惹かれたからでした。そこにはしっかりとした狙いがあり、効果的に作用していることを強く感じます。

そしてアドベンチャーゲームゆえに本記事では明かせませんが、LIM YUNG SING氏が語られたストーリーは温かく優しくも切なさに満ちあふれていました。それは単にストーリーだけでなく、コンセプトやゲームデザインにも反映されています。

サブタイトルは”Ever had a dream so nice you never want to wake up from?”、「目覚めたくないほど素敵な夢を見たことがあるだろうか?」。ここにもコンセプトやメッセージが込められている

TGS2023に出展するまでに1年半の開発期間をかけており、リリースは2024年前半を予定しているとのことです。本作が無事に完成し、日本語版でプレイできるのが待ち遠しいです。

公式サイト https://gospacepups.itch.io/one-perfect-day
販売サイト(ストアページ) 未定
リリース時期 2024年前半
『One Perfect Day』公式サイト東京ゲームショウ2023公式サイト
じく

ゲーム会社で16年間、マニュアル・コピー・シナリオとライター職を続けて現在フリーライターとして活動中。 ゲーム以外ではパチスロ・アニメ・麻雀などが好きで、パチスロでは他媒体でも記事を執筆しています。 SEO検定1級(全日本SEO協会)、日本語検定 準1級&2級(日本語検定委員会)、DTPエキスパート・マイスター(JAGAT)など。

関連記事

8年越しに完結するビジュアルノベル『世界滅亡共有幻想マミヤ』。コミケで出会ったパブリッシャーと二人三脚でリリースを目指す【TGS2023】
2023.10.06
実はFlashで作ってます。制作期間11年探索型・科学ADV『NONUPLE NINE: ASYMPTOTE』【TGS2023】
2023.10.04
推理を面白くする鍵は「70:30」。ヒントもログも一切なしの本格捜査『Scene Investigators』メイキング【TGS2023】
2023.09.29
昭和アニメとPC-9800シリーズへの愛が詰まったADV『機動戦艦ガンドッグ 太陽系物語』はイギリス産。開発者に制作秘話を聞いてきた【TGS2023】
2023.09.29
錬金術師シミュレーター『Alchemist: The Potion Monger』開発元のCEOにインタビュー。4回以上直したポーションづくりの変遷を聞く【TGS2023】
2023.09.28
学生の工夫とアイデアが幕張メッセに集結! ゲームアカデミーコーナーから3作品をピックアップ【TGS2023】
2023.09.26

注目記事ランキング

2024.07.20 - 2024.07.27
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

フォグ(Fog)
フォグ 「霧」を意味する英単語。3DCGにおいて、現実の霧による見た目をシミュレーションする画面効果やエフェクトを指す。代表的なものとして、カメラから遠くにあるオブジェクトの色調を変化させることで遠近感を出す手法がある。
VIEW MORE

Twitterで最新情報を
チェック!