現実のライブ演出をバーチャルライブにも導入。UE5で照明を制御する「DMXプラグイン」の使い方と事例紹介

2023.08.04
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2023年7月25日に、VTuberプロダクション「ななしいんく」が開催したバーチャルライブを題材にしたアンリアルエンジンの勉強会「UEなんでも勉強会 – バーチャルライブ編 – vol.1」が開催されました。

本記事では、前述のバーチャルライブでテクニカルサポートを担当したLeon Gameworks  遠藤 俊太氏による、『バーチャルライブ制作におけるTips&UEFNでバーチャルライブするには』と題した講演をレポートします。

TEXT / 神谷 優斗

目次

※ なお、本講演はUnreal Engine 5.2の情報に基づいています

登壇した遠藤氏

リアルのDMXコントローラーと同様に扱える「DMXプラグイン」

アンリアルエンジン(以下、UE)には、リアルのライブなどで照明機器を制御するために使われる通信規格DMX(DMX512)の信号を扱う、DMXプラグインが用意されています。このプラグインにより、リアルのライブと同様にDMX信号を用いてUE上の照明などの機器を制御し、バーチャルライブの演出が可能になります。

DMXプラグイン群

通信規格のDMX(DMX512)では、1つのケーブルで512チャンネル、チャンネルあたり256段階の信号を送受信できます。

リアルのライブでは、1つの照明につきカラーやズームなどに対応したチャンネルが複数割り当てられる。機器ごとに占有するチャンネル数が決まっているという

機器のチャンネル設定が可能な「DMX Library」アセット

次に、遠藤氏はDMXプラグインの使用方法について解説。チャンネルの設定は「DMX Library」アセットに保存します。

「DMX Library」アセットのエディタ画面に表示されるFixture Typesタブでは、機器が使用するチャンネルを指定します。

カラーやズームといったチャンネルを機器ごとに設定する

ある項目に対して使用するチャンネル数も指定可能。例えば、角度は2チャンネル(16bit)使用しないと360度を1度単位で制御できなくなってしまう

また、機器の追加や、設定したチャンネルの割り当てはFixture Patchタブから行います。

なお、DMXはUniverseという概念を持ち、1本のケーブルが制御できるチャンネル数の上限と同じ512チャンネルを管理します。Fixture Patchタブでは、UniverseとUniverse内のチャンネル番号を指定することで、各機器にチャンネルを割り当てます。512チャンネル以上が必要な場合は、都度Universeを増やして対応します。

なお、今回のバーチャルライブでは8つのUniverseを使用したとのこと

DMX信号を制御して機器を動かせる2つの機能

ライブで実際に機器を動かす際は、リアルのDMXコントローラーからDMX信号を送受信します。ただ、DMXプラグインであれば、DMXコントローラーを所有していない場合でもUEエディタから機器の制御が可能です。本講演では、エディタからDMX信号を扱う2つの機能が紹介されました。

1つめは、Control Consoleです。Fixture Patchタブで作成した機器のリストからコントロールしたい機器を追加すると、ウィンドウに対応したフェーダーが表示されます。

フェーダーは自由にレイアウト可能。レイアウトはアセットとして保存します。

[+Add]は現在の行に、[+Row]は新しい行に機器を追加する

レイアウトはアセットとして保存しないと終了時に失われてしまう

2つめは、Channel Monitorです。指定したUniverseが管理する全チャンネルの値を一覧できます。

以上の2つの機能を組み合わせると、以下の動画のように機器を制御できます。

Control Consoleでチャンネルの値を変更し、Channel Monitorで全体をモニタリングする

DMXプラグインに関する学習には、エンジンのDMXテンプレートプロジェクトが参考になるとのこと。そのほか、こちらのチュートリアルも紹介されました。

ライブ時に起こったAAによる「残像」問題

DMXプラグインの説明後は、先のバーチャルライブで起こった問題とトラブルシューティングの一例が紹介されました。

まず、UE5デフォルトのアンチエイリアシング手法であるTemporal Super Resolution(TSR)で発生した問題を取り上げました。TSRでは、速度ベクトルと過去のフレームに基づいて、現在のフレームを生成します。そのため、速度ベクトルが適切に計算されないと不自然な残像が発生してしまいます

ライブでは、特にゴボ(※)を回転させた時などに顕著に残像が出てしまったそう。
※ 照明にかぶせる絵柄をのせた板。模様などを投影するために使われる。UEではLight Functionなどで表現可能

ゴボの残像は根本的な解決が現実的でなかったため、「TSR.ShadingRejecytion.Flickinig 0」コマンドを用いて抑制しました。

UEFNでバーチャルライブの演出は可能?

最後に、遠藤氏はUEFNにおけるバーチャルライブの可能性に言及しました。

講演時点でのUEFN(v25.11)では、ブループリントやDMXプラグインなどが使えないため、代わりに「シーケンサー」の仕掛けを使うのがよいとのこと。シーケンサーであれば、ライトの制御やアニメーションの再生、マテリアルパラメータコレクションの制御などが可能です。

シーケンサーでアクターやカメラを動かす際は、「CameraRig Rail」や「Zip Line」を使用すると、Splineに沿って移動させられるTipsも紹介されました。

また、Verseを活用することで、よりインタラクティブにアクターを動かすことが可能です。

Verseからは、プロップを移動させるMoveTo関数やアニメーションを作成・再生するAnimation Controllerが使用できる

ライトには、UEFNにプロップとして用意されているムービングライトを使うのがよいとのこと。

このライトは色を変更できる

また、アセットはUE5からの移行が可能です。

DMXプラグイン自体は移行できないが、プラグイン内のマテリアルは移行できたそう

最後に遠藤氏は「各プレイヤーが自由な視点で視聴できるのがUEFNの強みである」とし、本講演を締めました。

Leon Gameworks 公式サイト「UEなんでも勉強会 - バーチャルライブ編 - vol.1」 配信アーカイブ『バーチャルライブ制作におけるTips&UEFNでバーチャルライブするには』 講演スライド
神谷 優斗

コーヒーがゲームデザインと同じくらい好きです

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