YouTuber・ドズル氏がゲームの企画書に初挑戦!配信映えするゲームはこう作れ!――空想企画会議 ドズル編【前編】

YouTuber・ドズル氏がゲームの企画書に初挑戦!配信映えするゲームはこう作れ!――空想企画会議 ドズル編【前編】

2025.11.10
注目記事ゲームづくりの知識ルールをつくるしくみをつくるクリエイティブモードマインクラフト
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「一緒にアイデアを出し合って、架空のゲームの企画を考えてみませんか?」というぶっつけ本番なインタビューの第2回。お相手を務めるのは、YouTubeでのゲーム実況や配信を中心に多彩な活動を展開するクリエイター集団・ドズル社を率いるドズル氏!

マインクラフトをはじめとした実況動画で数多くのファンを魅了しながら、自らの会社でコンテンツ制作の幅を広げ続ける同氏と、ゲーム会社であるヒストリア代表を務める佐々木 瞬氏が約2時間を掛けて、「俺の考えた最強のゲーム」をペライチ企画書に落とし込みます。

目次

株式会社ドズル 代表取締役 ドズル

5人組でゲーム実況を行うドズル社の代表。医大生からYouTubeクリエイターになった異色の経歴を持ち、『マインクラフト』などのゲーム実況を中心に活動中。YouTube登録者数は254万人↑

株式会社ヒストリア 代表取締役 佐々木 瞬

ゲーム会社ヒストリアの代表。『Faaast Penguin』プロデューサー、『ライブアライブ』ディレクター。ゲームの企画仕事やテクニカルなことをやっている。Unreal Engineが好き。

YouTuber ドズル氏がゲームの企画書に初挑戦!

今回は「架空のゲームの企画書を作る」企画です!ゲームの企画書はさまざまなスタイルがありますが、今回はアイデアをまとめやすい形式のコンセプトシートを用意しました。

タイトル ゲームタイトル。
企画の段階で決まっていなくても良いが、
この時点でいい案が浮かぶとあとがラクになる
ジャンル名 この作品を一言で表すジャンル名。
「○○アクションRPG」など、
どのジャンルか分かりつつ独自性も表現できるとベスト
プレイ人数 作品のプレイ人数
プレイ時間 作品のプレイ時間。
今の時点ではざっくりでOK
ターゲット 一番遊んで欲しい人は誰か?
このゲームを遊んで、楽しめる人はどんな人か?
プラットフォーム PC向け?スマートフォン向け?
ハードによってユーザーと出来ることが変わってくる
テーマ 何を題材にしたゲームかを記載
システム 核となるゲームシステム(遊び)を記載
このフォーマットは<テーマ>ならではの<システム>に
落とし込むことで独自性が生み出しやすいようにしてある
特徴 作品の特徴を書いていく。箇条書きで問題ない
イメージ画像 イメージ画像があると想像しやすい。
絵を描くか、画像を引用して利用しよう

ゲームのアイデアを出しながら、このシートを埋めていくのですが……まず、ドズルさんはゲームの企画書を作ったことはありますか?

ゲームの企画書は初挑戦ですね!

今日は現役の実況者ならでは、消費者目線に近い立場ならではの視点で「こういうのが面白いのでは?」を無責任に喋っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします!

おお、楽しみです!(上手くまとめきれるかな……。)

企画で大切なのは、無数のアイデアを的確にゲームのルールに落とし込んで、プロジェクトが迷走しないように道筋を立てること。

ただアイデアを書いていくだけではなく、きちんと開発ができるレベルのゲームに仕上げたいですね。頑張りましょう!

頑張ります!

ただ、はじめてのゲーム制作で超大作を作るのは難しいですよね。

だから今回はゲーム実況者が選びやすい、「0.5秒見ただけで面白そう!」と思ってもらえる“強いコンセプト”を持つ作品を作りたいと考えています。

0.5秒というのはすごく大事です。明確で強いコンセプトが、ドズルさん自身の好きなモノから自然と出てくるのが一番いいことだと思います。

実況映えするタイトルには2つの要素がある

さて、私自身が実況者ということで、今回はしっかり実況映えするゲームにできたらと思っています。

実況映えには2つの観点があって、1つは「サムネとタイトルが浮かぶか?」です。配信で遊ぶゲームを探すときも、「ゲームは面白そうだけどサムネ、タイトルが浮かばないな……」という作品は選定から外れてしまうケースがあります。

例えば『8番出口』はすごくシンプルで、サムネ・タイトルを作れと言われたらすぐに作れる。異変があれば引き返すというゲームの魅力が画像1枚と1文で表現できるからです。

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かつては視聴者が「この動画はなんだろう?」と考える時間がありましたが、今はコンテンツが多いので、すぐに他の面白そうな動画に目移りしてしまうということでしょうか。

今のYouTubeのサムネイルは「一コマ漫画」なんです。

僕が好きな「ジェラードンチャンネル」は、一番面白いところをサムネイルでネタバレしています。これもコンテンツが増えている時代の戦略だと思うんですよ。

サムネイルとタイトルが浮かびやすいということと、もう1つの観点はなんですか?

ゲームの中身は、ツッコミどころがあるといいです。つまり「介入の余地」が必要です。

一本道ではない、やることが分岐するゲームで、その都度プレイヤーの感情が動いて、怖がったりツッコんだりとリアクション取れるゲームが配信者としては理想です。

「こういうサムネイルが良い」から逆算してゲームの企画を考える

サムネイルから逆算すると考えやすいかもしれません。

サムネイルと企画が上手くいった例として「大富豪おじいちゃんシリーズ」があります。山や海を削るなど「1人では無理では?」という膨大なタスクを達成するサムネイルで、インパクトがあると同時に、どうやったのか手段が気になる内容です。

ヒントにしたのはヴァンサバ(※)。最初は少しずつ敵を倒して、最後は物量で盛り上がる、という掛け算の面白さを意識していました。

山を削り取ったりビルを解体したり、大富豪おじいちゃんの依頼にドズル社メンバーが応える「大富豪おじいちゃん」。土をスコップに換金するなど道具のアップデートをしながら困難に立ち向かうシリーズは、いずれも人気が高い

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インフレ系の作品は良いですね!自分も『クッキークリッカー』はハマりました。

クッキークリッカーは大好きですが、配信では選びにくいんです。終わりがないゲームは、配信で選ぶハードルが高いんですよ。

終わりがなくてコアファンが付いているゲームは、止め時が難しくなるんです。

ふむふむ、終わりが描けないゲームは、実況者にとって選択しにくいってことですね。一方、ストーリーやゲームデザイン的に「ここはまだ序盤だよ〜」というのが明らかだと、そこで止めてしまうのも微妙になりそうですね。

大富豪おじいちゃんも終わりを意識してて、海の水を抜くなり、山を削るなり、その中でインフレを作って、次のテーマはまた1からスタートする構成なんです。

終わりがちゃんと決まっていて、それがサムネとタイトルになる」だと、インフレ系かつ1つの配信枠で取り扱えて、かつ映える作品になりそうです。

終わりがあって、インフレ系。それ以外で検討したいものはありますか?

ドラマ性でしょうか。『RimWorld』のような、一度きりの人間物語が好きです。あとは『The Rangers In The South』のようにキャラクターが復活できないRPGも良いですね。

「その瞬間の勝ち負けでその後のすべてが変わる」という性質はドラマが生まれやすいですね。負けたら3年間が終わってしまう、甲子園の応援にも通ずる要素があります。これも企画に盛り込みたいですね!

これらの要素を付箋に書き込んで整理していく

「終わりがある」「インフレ」「ドラマ性」をもとにテーマをブレスト

今まではシステムの観点を話していたので、次はテーマを決めたいですね。ゲームは、システムとテーマを掛け合わせで生まれるものです。例えば「好きな世界観」ってありますか?

「神視点」が好き。小さい人間が動いているのが好き。でも、あんまり実況映えしないんですよね……。

画面が動かないですもんね。俯瞰になっちゃうから。

そういえば、今は一人称のシミュレーションゲームも流行っていますね。例えば『Supermarket Simulator』は、実際のスーパー店員からコメントが来るんです。他の人も「こんなスーパーはいやだ」「こんなのはいきたい」などコメントがしやすい

そして僕らも店員の立場でロールプレイしながら実況できる。良い題材なんですよ。

ロールプレイは普段と違う配信者の姿も見れるし、コメントも盛り上がりますし、取り入れたいですね。共通認識があったり、対象者が広かったりする対象が良さそうです。

普段、よく行くお店はありますか?

よく行くお店ですか。うーん、飲食店や駅、事務所……

ヨドバシとか、整体とか……。

……あ、あとはよくジムにも行きますね!そういえば、マッチョってコンテンツとして面白いんですよ。

おお、良いですね!マッチョは立派なコンテンツですし、ゲームのテーマとしても良いと思います。

本当ですか!たしかに自分がムキムキになるゲームは珍しいですね。

自分の顔やアイコンを合成できて、みんなマッチョになるようなコンテンツ。これはサムネ映えが完璧ですね!

マッチョというテーマをゲームシステムに落とし込む

最初は貧弱なボディから始めたいですよね。たとえばメタボ体型やガリガリ体型から選べるようにして、『これがこんなに変わりました!』と見せられると良いかも。

トレーニングは、ただクリックしてダンベルを上げ下げするだけだと面白くないですよね。

パワプロの「栄冠ナイン(※)」のような、選択肢から練習メニューを選ぶ形式でもいいかも?シミュレーションゲームは、アクションが苦手な実況者も楽しめますから。

では、アクションではなくシミュレーションゲームの方向で考えましょうか。

※ KONAMIから発売の『実況パワフルプロ野球』シリーズの「サクセス」モードの一種。育成シミュレーションの形式で、練習や試合を行うことで主人公の能力を上げていく。「栄冠ナイン」は従来のサクセスと比較してゲームオーバーがない、試合のアクション性がない、そして複数選手を育成できるなどの特徴がある。プレイヤーは高校野球の監督となり、全国制覇を目指す

“終わりがある”要素で言えば、例えば「100日後の大会に向けて筋トレする」などのゴールを設定したいです。そして、それが2時間くらいのボリュームだと一番いい。

ランダムでトレーニングメニューが提示されて、毎ターン成長していく。たまに怪我もする、みたいなゲームはどうでしょうか?

いいですね!

それだと100日後だけではなく、中間目標もないといけないですね。マイルストーンがないと成長の動機がないので。

たしかに!あと、太っている体形からスタートすると、最初から重量は上げられるが脂肪を有酸素で落とさないといけない、瘦せ型だと脂肪はないが最初に扱える重量が違うなど、スタート地点の分岐もできそうだと思いました。

「マッチョ」というキーワードを皮切りに、ドズル氏からさまざまなアイデアが噴出!これをうまくまとめられるか?

成長にプロテインが必要だったりすると、お金の要素も必要ですよね。本当はジムで鍛えたいものの、そのお金がないからバイトしないといけない、とか。中間大会で賞金が入るから、そこでバイトを辞められて、さらにトレーニング効率が上がるとか。

バイトにも選択肢があると良いですね。引っ越しバイトは筋肉もつくし時給がそこそこ。逆に、時給が高いけどまかないが美味しくて太っちゃうバイトなど、ランダムのガチャ要素があるといいと思います。

これまで出た要素を付箋に書き出していく。この段階では育成シミュレーションのようなゲームを想定していた

どう鍛え、なにで競い合うのか。それはゲームシステム足り得るのか

そういえば、トレーニングはあまり細かくし過ぎない方がシンプルで良いと思いました。

上半身・下半身、あるいは足や腕など大まかなトレーニング箇所があるイメージです。

むしろ全身で考えてました……そこはドズルさんの意見に従いましょう。

ちなみに、マッチョが集う大会、例えばボディビルなどはどうやって勝敗が決まるんですか?

筋肉がどれくらいキレているか。切り込みが入っているかの美しさ、そしてデカさ。ポージングの美しさ。この辺りですが、ゲーム的には分かりにくい部分ですよね。

そうですね……。それと、ボディビルシミュレーターだとターゲットが狭くなりすぎます。

あくまで「鍛える」軸で、最後に大きな大会がある、くらいで考えますか。

これ、ジャストアイデアなんですけど。

最初は県大会、そこから地方大会、全国大会。そこから先に世界大会で、最後に宇宙大会でマッチョな宇宙人と戦うというネタ的なインフレも良いと思うんですよ。

リアルなボディビル大会ではなく、むしろ宇宙大会優勝を本当のゴールにするような、突拍子のない展開の方が面白くないですか?

良いですね!とにかくボディビルシミュレーターになるのが一番ダメで、あくまで鍛えるを軸にしたインフレ系ゲームにしないといけないと思います。

さあ、ここまででテーマが膨らんだので、さらに「システム側」を深堀りしていきましょうか!

いよいよ次は企画書作りだ!

後編は11/11(火)公開予定! 

ドズル社 公式YouTube
神山 大輝

ゲームメーカーズ編集長およびNINE GATES STUDIO代表。ライター/編集者として数多くのWEBメディアに携わり、インタビュー作品メイキング解説、その他技術的な記事を手掛けてきた。ゲーム業界ではコンポーザー/サウンドデザイナーとしても活動中。

ドラクエFFテイルズはもちろん、黄金の太陽やヴァルキリープロファイルなど往年のJ-RPG文化と、その文脈を受け継ぐ作品が好き。

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