2025年9月25日(木)から28日(日)の4日間、幕張メッセにて『東京ゲームショウ2025(以下、TGS2025)』が開催されました。本記事では「Latent Entertainment」が手掛けた、音声認識AIを利用したマーダーミステリーゲーム『深宇宙探査』を紹介します。
TEXT / 種村朋洋
AI対話アプリとアナログコンポーネントが融合した独自のゲームデザイン
『深宇宙探査』紹介映像
『深宇宙探査』は、有人宇宙探査船を舞台にした2人プレイのマーダーミステリーです。
プレイヤーは、キャラクター設定や行動が記されたシートに基づき、事件に遭遇した探査船のクルーになりきって各自の視点から物語を体験し、アナログの地図や「証拠カード」から得られる情報に基づいて事件の真相を推理します。
一般的なマーダーミステリーではゲームマスターが進行役を務めますが、『深宇宙探査』ではゲームマスターが存在せず、AIキャラクター「ミランダ」が進行の一部を担います。
ミランダは実際に生成AIで実装されたiOSアプリで、プレイヤーはアプリを通じてミランダと音声会話を行い、事件に関する情報を集めます。一部の「証拠カード」にはQRコードが記載されており、ミランダに読み込ませることで新たな情報を引き出すことも可能です。
ミランダの応答は物語の展開やプレイヤーの問いかけに合わせて変化します。物語が進むにつれて、ミランダを単なる進行役としてだけでなく登場キャラクターの一人と認識し始め、本当に会話をしているような存在感が表れてきます。
本作は、TGS2025に無料で出展できる公募枠「Selected Indie 80」コーナーの1作として選ばれています。
さらに、AIキャラクターとの対話による独自の体験が評価され、TGS2025で開催されたゲームアイデアコンテスト「SENSE OF WONDER NIGHT 2025」のファイナリストに選出。
AI・デジタル・アナログの要素が融合したゲームデザインについて、審査員から高い評価を得ていました。
SENSE OF WONDER NIGHT 2025配信アーカイブ
初出展でSOWN2025ファイナリスト進出。AIキャラクターと織り成すリアルな会話体験
Selected Indie 80コーナー内の「LatentEntertainment」ブースにて、本作を手掛けたRyo Yoshizawa氏に開発に関するお話を伺いました。
本作はYoshizawa氏が初めて開発したゲーム作品だといい、TGS出展も今回が初となります。
同氏は以前コミュニケーションロボットの開発に携わっていたほか、小説の執筆活動も行っていました。しかしながら、文章だけで構成しなければならない小説という媒体に表現の限界を感じたといいます。
そのような中、マーダーミステリーと出会ったことで「キャラクターになりきる」という遊びに面白さを認識し、物語体験とロボット技術を融合したコンテンツの構想につながったといいます。
ミランダとの対話アプリはUnityで作成。対話を構成するAIエンジンにはOpenAIのAPIを利用することで、オンラインでの情報入力や対話内容の生成が可能となっています。
ミランダが管理する情報は物語の進行に応じて内部的に変化するように設計されており、この技術は特許を申請中とのこと。
開発当初はミランダが過剰に発言を続けたり、重要でない情報を強調したりする問題がありました。自然な会話を実現するため、AIに世界観を理解させる調整に時間を要したといいます。
また、生成AIは同一の質問に対して常に同じ回答を返すわけではありませんが、本作ではこの“揺らぎ”をあえて許容しているそう。プレイヤーが真相までたどり着く過程が“揺らぎ”によって移り変わる様を、本作の楽しさの一つとして捉えられるような設計を目指しているとのこと。
TGSでの展示に先立ち、Yoshizawa氏は本作のプロトタイプを2025年3月23日(日)開催の「愛知ゲームキャッスル」で展示しました。
プロトタイプではミランダの機能をAI音声会話のみに留め、作中世界に登場するAIキャラクターとの対話を楽しむアプリケーションとして展示していましたが、試遊したお客さんからは好意的な反応が得られたそうです。中には20分間もキャラクターと話し込む人もいたといい、キャラクターとの会話に面白さがあるという確信を得たといいます。
またその際、来場者の一人からSelected Indieへの応募を勧められたことが、今回のTGS出展の決め手になったとのことです。
本作は「マーダーミステリーの初心者でも手軽に楽しめる」ことをコンセプトに掲げており、製品版に向けてそのコンセプトを達成できるよう、今後も開発を進めていきたいとYoshizawa氏は語っていました。
ゲームデザインとプレイヤーのインタラクションを考察しながらゲームを遊ぶのが好きです。
ゲーム以外では謎解きイベントや漫画が好きです。
関連記事
注目記事ランキング
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
連載・特集ピックアップ
西川善司が語る“ゲームの仕組み”の記事をまとめました。
Blenderを初めて使う人に向けたチュートリアル記事。モデル制作からUE5へのインポートまで幅広く解説。
アークライトの野澤 邦仁(のざわ くにひと)氏が、ボードゲームの企画から制作・出展方法まで解説。
ゲーム制作の定番ツールやイベント情報をまとめました。
GAME CREATORS CONFERENCE ’25で行われた講演レポートをまとめました。
GDC 2025で行われた講演レポートをまとめました。
UNREAL FEST 2024で行われた講演レポートやインタビューをまとめました。
東京ゲームショウ2024で展示された作品のプレイレポートやインタビューをまとめました。
CEDEC2024で行われた講演レポートをまとめました。
BitSummitで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
ゲームメーカーズ スクランブル2024で行われた講演のアーカイブ動画・スライドをまとめました。
CEDEC2023で行われた講演レポートをまとめました。
東京ゲームショウ2023で展示された作品のプレイレポートやインタビューをまとめました。
UNREAL FEST 2023で行われた講演レポートをまとめました。
BitSummitで展示された作品のプレイレポートをまとめました。
ゲームメーカーズ スクランブルで行われた講演のアーカイブ動画・スライドをまとめました。
UNREAL FEST 2022で行われた講演レポートやインタビューをまとめました。
CEDEC2022で行われた講演レポートをまとめました。



Xで最新情報をチェック!

