地雷処理シミュレーション『被亜』。指のツイスターゲームのような操作感が仕掛ける緊迫感、そして歴史の追体験について韓国の開発チームに聞く【TGS2024】

2024.09.28
注目記事イベントレポート東京ゲームショウ2024
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2024年9月26日(木)から29日(日)の4日間、幕張メッセで開催されている『東京ゲームショウ2024』。展示されたゲームの中から、今回はホール10にある[Selected Indie 80]コーナー A08の「爆発物処理班」が開発する地雷処理シミュレーションゲーム『被亜』を紹介します。

また、韓国コンテンツ振興院ゲーム人材院の第5期メンバーが集まって結成された開発チームに、一見パーティーゲームのような操作方法によって表現したい状況と、そして「地雷処理」だけでなく「歴史」という「本作が目指す2つのシミュレーション」について聞きました。

TEXT / 田端 秀輝

目次

複雑な操作の中で失敗を繰り返すプレイはパーティーゲームのよう。しかし…

本作は、地雷を踏んでしまったプレイヤーが、いかに冷静に適切な行動を取り、爆発しないように処理して危機から逃れるか…というゲームです。基本的にはキーボードとマウスで操作します。

操作説明と、とあるメッセージが表示されると、ゲームが始まります。

攻撃を受け手足が動けない上官を抱えるという状況下で、森の中を歩いていくと…

あっ!

地雷を踏んでしまったようです。

ここで足を離すと爆発してゲームオーバーになってしまうので、5秒以内に適切な入力し、それを維持しないといけないのですが…え!入力するのそれか!!!

この体験については、ぜひ会場でプレイしてみてください。

(一部操作方法の説明文を隠しています)

足を離さないような入力を維持したまま、地雷の解除作業に入ります。

まずはしゃがみ、そこから教本に従いスコップで地雷周辺の土を取り除きます

バッグの中からスコップを取り出すのですが、操作としては「Gキーを押し続けバッグを開く」→さらに「Hキーを押し続けスコップを握る」→「マウスの右ボタンを連打して掘り続ける」という形になります。しかも、地雷を踏み続けているためのキーも押したままである必要もあります。

その時の左手の指の状態はこうなります。

続いて、ドライバーを使って地雷の蓋のネジを外します

「Fキーを押し続けて」ベルトから、「Eキーを押し続けて」ドライバーを取り出します。さらに細かい作業をするために「Cキーを押し続けて」ランタンを点け、マウスでネジのところをクリックし続けます。ああ、「地雷を踏み続けるキー」も押したままにするのを忘れずに。

その時の左手の様子はこうなります。

この、押すべきキーを増やしたり減らしたりするプレイ感覚は何でしょう…例えるならば、指のツイスターゲームでしょうか!

さて、ネジを外したところで、イノシシが近づいてきました。このままランタンを点けているとイノシシを刺激してしまい、襲われてしまいます。

そこでイノシシに見つからないようにするため、解除作業に必要なランタンを消す必要があり、、「Cキーを離す」のですが…

誤って「地雷を踏み続けるキー」からも指を離してしまいました…

その結果、地雷は爆発してしまいました。ゲームオーバーです。

他にも、血を流し続ける上官に応急処理をしたり、銃撃に襲われたりといったトラブルが襲ってきます。

複雑な操作と様々な課題の中、何度も爆発して失敗を繰り返していくプレイ感覚は、パーティーゲームのようでもあります。

こうして、(同時にさまざまなキーを押しながら)道具を使いアクションを繰り返していく、無事地雷解除となります。

ユニークな操作で再現する地雷解除の状況、そして歴史の追体験

会場で開発チームのみなさんに、このタイトルのゲームシステムの狙いや、そもそも本ゲームが開発されたかについて伺いました。

プログラマーのキムさん(左)と翻訳担当のキムさん(右)

ゲーム中、地雷を解除するにあたりいくつものキーを同時に押したり、あるいは状況によって離したりする必要があります。しかも解除にだけ集中すればよいという事ではなく、イノシシが襲ってくる、止血もしないといけないなどいくつものトラブルが発生します。何より、地雷から足を離さないような入力をし続けなければなりません。

このような複雑な操作が求められる仕様になった理由をプログラマーのキムさんに伺ったところ。地雷を解除する状況は緊張する状態であり、タイムリミットによる焦りもあり、さらに周りに対しても気を配らないといけない。そういうシチュエーションを再現、つまりシミュレーションしたかったからと述べました。

ちなみにプログラマーのキムさん曰く、クリアするまでに10回くらいは失敗して爆発させてしまう(あるいは別の要因でゲームオーバーになってしまう)バランスであるとのこと

翻訳を担当したキムさんも、このゲームの目的は2つのことをシミュレーションすることにあるといいます。

目的の1つは地雷を解除する状況をシミュレーションすること。そしてもう1つは、歴史をシミュレーションすることです。

ゲーム中に地雷を解除すると、韓国での地雷に関する歴史が伝えられます。

1950年6月25日に勃発した韓国戦争(日本では朝鮮戦争とも言われる)は、1953年7月27日に休戦状態になりました。この戦争時に数十万発もの地雷が埋設されました。そして戦後も地雷は埋設され続け、今もDMZ(非武装地帯)には韓国・北朝鮮両軍が設置した地雷が100万発以上あると本ゲームは語ります。

そして戦後、そして現在も民間人の地雷爆発事故は発生し続けているとのことです。

そもそも、本ゲームが作られたきっかけは1966年に開発メンバーの祖父に起きた出来事にあると、開発メンバーは語ってくれました。

本ゲームは、操作方法のユニークさから失敗も笑えるパーティーゲームのようでもあるのですが、同時に地雷解除時の切迫した状況も追体験することができます。まさに「地雷解除シミュレーション」です。

そして、地雷による被害は戦時中だけでなく終わった後も続いているということをゲームプレイを通じて実感できる「歴史のシミュレーション」でもあります。

「被亜」は2024年12月にSteamでのリリースに向けて開発中です。なおリリース時には、標準的なPCデバイスでプレイできるバージョンと、とある入力デバイスに対応してより地雷解除に近い状況が体験ができるバージョンの2つが用意されるそうです。

「地雷解除シミュレーション」である本ゲームが狙う2つのシミュレーションを、東京ゲームショウの会場(ホール10の[Selected Indie 80]コーナー A08、「爆発物処理班」ブース)にて体験してみてください。

紹介動画 https://youtu.be/oGAPtiRQ0Gk
販売サイト(ストアページ) 未定(Steam予定)
リリース時期 2024年12月予定
『被亜』紹介動画東京ゲームショウ2024公式サイト
田端 秀輝

「ゲームと社会をごちゃまぜにして楽しんじゃえ」がモットーの、フリーのコンテンツ開発者。節電ゲーム「#denkimeter」やVRコンテンツ、体験型エンタメの開発をしています。モニター画面の中だけで完結しないゲーム体験が好きで、ここ十数年注目しているのはアイドルマスターです。

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