インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン9」レポート。「やさしめ弾幕STG」や「結び目理論」をもとにしたパズルなどをピックアップして紹介

インディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン9」レポート。「やさしめ弾幕STG」や「結び目理論」をもとにしたパズルなどをピックアップして紹介

2025.08.21
注目記事イベントレポート
この記事をシェア!
Twitter Facebook LINE B!
Twitter Facebook LINE B!

2025年8月3日(日)、東京都立産業貿易センター浜松町館の3階・4階展示室にてインディーゲーム展示会「東京ゲームダンジョン9」が開催されました。

本記事では、同イベントの様子や出展作品をピックアップして紹介します。

TEXT / じく
EDIT / 藤縄 優佑

目次

ニーズに応えて生まれた「ビジネスチケット」が今回から導入

「東京ゲームダンジョン9」は300以上の団体が出展し、2,900名以上が来場したインディーゲーム展示会です。

今回から入場チケットとして、「ビジネスチケット」が販売されました。出展している団体と商談、情報収集、営業活動といったビジネスでの目的で入場したい方に向けたチケットで、一般チケットより高価ではありますが1時間早く入場できる点などを特徴としています。

ビジネスチケットに関してゲームダンジョン事務局代表の岩崎氏に話をうかがったところ、ビジネス関連の方々からできるだけ多く出展作品を見て周りたいニーズに応えた形とのこと。

入場時間が1時間早い点については、一般チケット・当日券・当日16時以降(新規入場無料)と、入場時間を分けることで入場者の混雑緩和の一助になれば、という考えもあったうえでの仕組みです。

会場内のマップや出展団体一覧などが掲載されたパンフレットが入場者に配布された

気になる作品たちをフォトレポート!

『赫夜 -カグヤ-』 / 合同会社Flypot

『やさしめ弾幕STG「赫夜-カグヤ- 」 PV』

オーソドックスな縦スクロールの弾幕シューティングゲーム(STG)です。通常ショットや、パワーショット、ボムを駆使して全方位から出現する敵を倒していきます。

射撃方向はボタンを押して変更できる

本作品の特徴は難易度が低めな「やさしめ弾幕STG」であること。難易度のNormalがそれに該当し、普段からシューティングゲームを楽しむプレイヤー向けにはHardやHellといった難易度が用意されています。

Normalでは画面外から敵が出現する方向を警告アイコンで予告したり、敵弾の量・スピードが調整したりされています。

やさしめな調整がされているとは思うのですが、シューティングゲームに不慣れな筆者にとっては過度な手加減をされているようには感じず、弾幕をかいくぐりながら上手に敵を倒しているように思わせてくれました。

主人公たちの顔のグラフィックは常時表示され、フルボイスでの会話が発生するのも特徴。会話内容は状況に応じて変化するという

全方位から敵が出現するのは難しく感じるが、出現方向が事前に警告アイコンで予告してくれる。避けたり射撃方向を切り替えたりして備えられるので、初心者でもプレイしやすい

同作の開発者 AKI氏は『エスプガルーダ』『エスプレイド』といったシューティングゲーム好き。それでも、たとえば『怒首領蜂』は1コインで3面に進めるくらいの腕前だそうです。

弾幕シューティングゲームは開発者側もプレイヤーも上手い人が多く、難易度が高くなりがちと感じたAKI氏は、自分でもクリアできるようなシューティングゲームがあっても良いのではと考え、本作を開発していると話していただけました。

難易度の調整については、「敵の放つ弾の量は減らしながらも、敵の数は減らさない」「敵は多く出現するが1、2発で簡単に倒せる」といった、敵を倒す気持ちよさを担保しながらも難しくなりすぎない工夫を凝らしています。

開発エンジンはアンリアルエンジンで、VFXツールのNiagaraで弾幕を作っています。ノードベースでパーティクル(本作の弾)を作成でき、弾幕のバリエーションの追加・調整がしやすい点が便利とのこと。高難易度のモードでは、毎回ランダムな弾幕を出現させることも検討しているともお話していました。

Niagaraを活用して生まれた弾幕

『赫夜 -カグヤ-』はSteamで2026年にリリース予定です。

『赫夜 -カグヤ-』SteamストアページAKI氏 Xアカウント

『コメンテーター』 / テバサキゲームズ

「『コメンテーター』Steamストアページ開設トレイラー」

ニュース番組のコメンテーターとして、番組で取り上げる各ニュースに対するコメントのスタンスを決める、世論操作系報道ノベルゲームです。

ニュース番組前の打ち合わせでコメント内容(批評のスタンス)を決める

試遊したときの主な操作は、「強く支持」「支持」「不支持」「強く不支持」という4つの批評スタンスに適したニュースを選ぶだけ。しかし、複数のニュースに対して同じ批評スタンスは設定できません。

番組スポンサーに関連したニュースを扱うこともあり、その際にどういったスタンスのコメントをするかも考える必要があります。さらに、制限時間も設けられているため、じっくり悩む時間がないのも特徴です。

各ニュースを4つの批評スタンスに割り振る

批評スタンスをすべて確定、もしくは時間切れとなったら番組が始まり、選んだ批評スタンスに応じたコメントが発言されます。

画面左側で話しているキャラクターがコメンテーター

放送終了後は、視聴者の反響が「番組の話題性」として、番組スポンサーからの反響が「スポンサー満足度」として、ニュースごとに数値化されます。

コメンテーターとしてどう評価されたのかがわかる。なお、今後は倫理観に関する項目も実装予定という

本作の開発チーム「テバサキゲームズ」の方にお話をうかがってみました。

開発のきっかけはブラウザゲーム『The Republia Times』をプレイしたこと。日刊新聞の編集長として記事とレイアウトで世論を操作するゲームで、「これをもっと日本人に伝わるように、日本を舞台にした作品を作りたい」と思ったとコメントいただきました。

フリーゲーム『The Republia Times』は記事執筆時点でもWeb上でプレイ可能

ニュースは、発生した出来事を誰かが編集して報道され、編集した報道に対してリアクションが生まれる流れが面白いとも話しています。また、コメンテーターも仕事としてコメントしており、その背景にはスポンサーや番組の存在などがあるといった、メディア側の人間としての体験も提供したいとのこと。

「私立高校無償化」など、日本で実際にあったようなニュースをゲーム内で扱っている。なお、開発にはUnityを使い、特別なツールやアセットは利用していないそう

ゲーム内で扱うニュースについては実際にあった出来事を参考にしており、その報道の深掘りや、ニュースに対して世間がどう反応したかも調査。さらに、ゲーム内ニュースへの4種類のコメント(批評スタンス)はプレイヤーが納得する形にしたうえで提供と、リアリティへの注力具合がうかがえます。

『コメンテーター』 は、Steamにて発売予定です。

『コメンテーター』Steamストアページテバサキゲームズ Xアカウント

『Unknot! -アンノット!-』 / P.F.J.

『Unknot! -アンノット- トレーラー (日本語 ver.)』

ヒモの結び目をドラッグ操作でほどく、ステージクリア型の物理シミュレーションパズルゲームです。

ヒモの挙動は物理シミュレーションをベースにしており、こちらの操作に対してうねうねとリアクションする様子は本物のヒモとは材質が異なりそうな、まるで生き物のような感覚を覚えます。

ゲームルールは、ヒモをドラッグして引っ張り、重なりや結び目のない状態にすればステージクリアです。ヒモの向きを裏返す「Flip」や、ヒモの重なりの順序を入れ替えられる「Swap」という操作も駆使しながらほどきます。

本作を開発しているP.F.J.氏は、紐の結び方や絡まり方を数学として研究する「結び目理論」をもとにして、本作品を開発したそうです。

固く絡まった状態で引っ張るとヒモが跳ね返ってしまう。こうしたケースも物理シミュレーションによって再現されている

開発にあたっては、いくつかのゲームエンジンを検討した結果、オープンソースでコンパクトなGodotを採用しています。物理シミュレーションについてはJolt Physicsを使い、ヒモの摩擦力やけん引力などを細かく調整しているとお話していました。

制限時間は設けられておらず、じっくりとパズルに挑戦できる

『Unknot! -アンノット!-』は、Steamで2025年第3四半期にリリース予定です。

『Unknot! -アンノット!-』SteamストアページP.F.J.氏 Xアカウント

『Robot Hospice』 / Buttercup garden

『【ゲーム制作】「Robot Hospice」愛されたロボットたちを看取る終末アドベンチャー【PV2】』

ゲームタイトルにある「ホスピス」とは、つらさを緩和して最期まで希望通りに生きることを目標とした施設や仕組みを指します(※)。本作品は、人間と生きてきたロボットたちが最期の時を迎える「ロボットホスピス」を舞台にした、終末アドベンチャーゲームです。

※ 参考:国立がん研究センター

主人公は新人スタッフの「ミドリ」

目的は、施設にいる5体のロボットと交流して信頼し合える関係を築き、最期を看取ることです。プレイヤーの選んだ選択肢次第で、ロボットとの別れ方が変化していきます。

ビジュアルは懐かしさや優しさを感じさせるドット絵で描かれており、BGMには昔のファミコン風の楽曲が流れます。

ファミコン風の楽曲が複数収録されており、テキストメッセージで歌詞もイメージしやすい

開発者の「どこかしらどこ」氏は、物語を作るのが趣味で本職でもそれに近いことを仕事にしているとのこと。そんななか、自分で操作できる形で物語を体験できる、「ゲーム」という表現に強く惹かれて本作を作り始めました。

同氏は日頃からルンバのようなロボットに対して命のようなものを感じ、壊れても捨てられないそう。ロボットに心が宿っているよう見えるが増えてきた昨今、その存在に対して人々がどのような感情を抱くのか気になったため、物語のテーマに「ロボットのホスピス」を選びました。

AI搭載ロボットと少女の交流を描いたカズオ・イシグロ氏の小説『クララとお日さま』を読んだことで、「ロボットが最期まで大切にされる未来があっても良いのではないか」と本作品に思いを込めたとのことでした。

開発ツールはRPGツクールMZ。タイルでマップを描く機能などがドット絵と相性が良くて使いやすいと、同氏は話しています。アドベンチャーゲームとして自分が見せたい画面になるよう、たとえばメニュー画面やメッセージウィンドウなどは、これまでRPGツクールを使われてきた先人の知恵に頼りながら独自に作成しています。

日々少しずつ開発を進めて勉強と制作を往復しながら自分のイメージを画面に反映してゲームにするのは本当に楽しいと、ゲーム開発の醍醐味も語っていただけました。

『Robot Hospice』は、Steamで2026年にリリース予定です。

『Robot Hospice』Steamストアページどこかしらどこ氏 Xアカウント

東京ゲームダンジョンは2022年8月7日の第1回開催から3周年を迎え、外伝なども含めると10回以上も開催されています。

東京ゲームダンジョンは、初回開催から順調に規模が拡大してきた感があります。今後もインディーゲーム開発者やファンたちの拠りどころとして、また新たな出会いやビジネスの場として、発展していくことを強く望みます。

なお、ゲームダンジョン事務局による今年の開催としては、9月14日(日)の「愛知ゲームキャッスル2」(ゲームダンジョン事務局が運営に協力)、11月9日(日)の「東京ゲームダンジョン10」、 12月27日(土)の「大阪ゲームダンジョン」が予定されています。

「東京ゲームダンジョン」公式サイト「東京ゲームダンジョン」Xアカウント
じく

ゲーム会社で16年間、マニュアル・コピー・シナリオとライター職を続けて現在フリーライターとして活動中。 ゲーム以外ではパチスロ・アニメ・麻雀などが好きで、パチスロでは他媒体でも記事を執筆しています。 SEO検定1級(全日本SEO協会)、日本語検定 準1級&2級(日本語検定委員会)、DTPエキスパート・マイスター(JAGAT)など。

関連記事

ゲーム業界関係者が押さえるべき「フリーランス法・下請法」の要点を解説【CEDEC2025】
2025.08.21
立体音響ボイスチャットがゲームデザインの可能性を広げる!CRI ADX&TeleXusをフル活用したボードゲーム風RPG『VIractal(ヴィラクタル)』におけるサウンド演出【CEDEC2025】
2025.08.21 [PR]
『デベロッパーズ』マンガ家・新井春巻氏が見た“インディーゲーム開発者”のリアル。キャリア形成サバイバルガイド【CEDEC2025】
2025.08.19
企業でもAIやLLMを活用できる“仕組み”を作る。CygamesのAI導入手順と運用アーキテクチャ【CEDEC2025】
2025.08.08
【8月30日(土)東京開催】ゲームづくりが楽しく学べる無料イベント「ゲームメーカーズ スクランブル2025」イベント情報(随時更新)
2025.08.07
『ストリートファイター6』“人間らしいAI”と“成長の楽しみ”が対人戦ハードルを下げる。「Vライバル」ができるまで【CEDEC2025】
2025.08.05

注目記事ランキング

2025.08.15 - 2025.08.22
VIEW MORE

連載・特集ピックアップ

イベントカレンダー

VIEW MORE

今日の用語

被写界深度(DOF)
ヒシャカイシンド
  1. Depth of Field(DOF)とも呼ばれる。カメラの焦点(ピント)があっているように見える範囲のこと。
  2. 3DCGにおいて、1をシミュレーションするエフェクト。注目させたい部分に焦点を合わせ、それ以外の部分をぼかすことができる。ゲームの開発現場においては、ボケ自体のことを示すことが多い。
VIEW MORE

Xで最新情報をチェック!